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2013-06-04

[]性奴隷の定義を無視し「慰安婦は性奴隷ではない」と叫んでも反論になってない 性奴隷の定義を無視し「慰安婦は性奴隷ではない」と叫んでも反論になってないを含むブックマーク 性奴隷の定義を無視し「慰安婦は性奴隷ではない」と叫んでも反論になってないのブックマークコメント

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出典:上海派遣軍司令部編纂『日支事変 上海派遣軍司令部記念写真帖』1938年2月刊

1938年1月、正月早々、南京に開設された慰安所に巻脚絆(ゲートル)を外し並ぶ兵士たち


従軍慰安婦にされていた女性たちの実態が「“sex slave”性的奴隷」「“Sexual slavery”性的奴隷状態」であることは国際刑事裁判所ローマ規程や、国連人権委員会で採択された文書の定義をみても否定できない事実なんだけど、日本国内では自分勝手に強制連行と結びつけたMy定義で否定するトンデモ論がはびこっています。


こんな感じです。

「強制連行を認めると、世界からは日本だけが特殊な性奴隷を活用したと評価されるのだ。」(2013年5月17日 橋下徹 Twitter*1

「なぜ日本だけが性奴隷を活用していたと攻撃されるのか。それは日本だけが女性を強制連行していたとされているからだ。アメリカは、慰安婦を強制的な性奴隷と表現している。」(2013年5月17日 橋下徹 Twitter*2


ようするに「強制連行の事実はない、それなのに強制連行して性奴隷にしたことにされている!これは不当だ!」といったレベルのものです。

また橋下徹氏は「なぜ日本だけが攻撃されるのか」などと怒っていますが、90年代の初めから旧ユーゴスラビア内戦、ルワンダ内戦での女性に対する暴力や性的奴隷化が問題にされ、その後も、ビルマ軍政下*3グアテマラ戦時下*4コンゴ東部*5などで女性たちが性奴隷状態にされていたことが問題にされています。そうしたことを知らないんでしょうかね。

んで、このレベルの否定論が大新聞である読売新聞産経新聞などでも主張され(こちらの記事*6)橋下氏のツイッターと同様の理屈が展開されています。


これがいかにトンデモかは、以下の国際機関の性的奴隷の「定義」をみれば明らかです。


日本も締約国である国際刑事裁判所データベース及び解説に載せてある「性的奴隷の定義」の要旨

(英語原文と和訳は後述を参照)

  • 「奴隷化すること」という用語については、従来から用いられてきた意味に限定されない。
  • 人を「奴隷化すること」とは、人に対して所有権に伴ういずれか又はすべての権限を行使することをいい、人 ー特に女性及び児童ー の取引(人身売買)の過程でそのような権限を行使することを含む。
  • 人を性的奴隷状態におくことは、奴隷化することの一形態であり、本人の自己決定権、移動の自由および本人の性的活動に関する事柄に対する決定権の制限を特徴とする。
  • 性的奴隷という犯罪は、継続的に性行為を強要されることであり、最終的に強制的な性的活動に至る強制労働も含まれる。
  • 性的奴隷状態とは、強制売春の形態のすべてではないにしても、その大部分を占める。

1998年、国連の人権小委員会で採択されたマクドゥーガル報告書の「性的奴隷の定義」の要旨

英語原文と和訳および解説は奴隷状態の定義 - 従軍慰安婦問題を論じる 奴隷状態の定義 - 従軍慰安婦問題を論じるを参照

第2章 犯罪の定義

第2節 奴隷制(性的奴隷状態を含む

  • 奴隷制の定義は1926年の奴隷条約において明記され、その定義は「奴隷状態とは、所有権を伴う権力の一部もしくは全部が一個人に対して行使されている状況もしくは状態である」、レイプなどの性暴力の形態による性的接触も含む。
  • 「性的(sexual)」という用語はこの報告書では奴隷制の一形態を説明する形容詞として使われており、別個の犯罪を示すものではない。あらゆる意味で、またあらゆる状況で、性的奴隷制は奴隷制である。性的奴隷制には、女性や少女が「結婚」を強要されるケースや、最終的には拘束する側から強かんなど性行為を強要される家事労働その他の強制労働も含まれる。
  • 奴隷制という犯罪は政府の関与または国家の行為がなくても成立し、国家の行為者によるものであろうと民間の個人によるものであろうと、国際犯罪に相当する。さらに、奴隷制とは人を所有物として扱うことを指すが、その人が金銭で売買ないしは人身取引されていないという事実をもって無効となることは決してない。
  • 奴隷制の定義には、自己決定権、移動の自由、自己の性活動に関する事柄の決定権の制限などの概念も内在している。個人的には被害を受ける相当の危険を犯して奴隷状態から逃げることができたとしても、それだけで、奴隷制ではないと解釈してはならない。
  • 奴隷制にはまた、すべてではないとしても大半の形態の強制売春も含まれる。「強制売春」とは一般に、他人に支配されて性的行為を強要される状態を意味する。
  • 原則として、武力紛争下では、強制売春と呼びうる実態はたいていの場合、性的奴隷制に相当する。

まとめると、

前借金という名の人身売買により身体を拘束され、自分のことを自由に決定する権利および移動の自由などが一部あるいは全部制限され、隷属状態で所有物として扱われる状態を奴隷状態と言います。人身売買の事実がなかった場合でも、最終的に慰安所のような拘禁施設で継続的に性行為を強要(強制売春)される状態ならば性奴隷状態と言います。

さらに「最終的に強制的な性的活動に至る強制労働も含まれる。」とありますが、1996年に、国際労働機関(ILO)の条約勧告適用専門家委員会は、慰安所での女性たちの状態が1930年の「強制労働条約 第29号」(日本政府は1932年に批准)に違反していると認定しています。


英字新聞などを読んでても、アジア、中東、アフリカにとどまらず、欧米などでも人身売買(Human Trafficking)によって売春をさせられていた女性を、強制売春(Forced prostitution)か性的奴隷状態(Sexual slavery)の被害者として表記するのは、わりと一般的なんじゃないでしょうかね。

で、強制連行の有無ってこの定義と何か直接、関係あんの?


参照


ICL Database & Commentary

国際刑事裁判所ローマ規程データベースおよび解説

http://www.iclklamberg.com/Statute.htm

(以下の条文の和訳は、外務省HP:和文テキスト「国際刑事裁判所に関するローマ規程」http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty166_1.pdf による。脚注の和訳は翻訳家のid:Stiffmuscleさんによる。)

(以下、条文)


The Rome Statute

ローマ規程

Article 7 Crimes against humanity

第7条「人道に対する犯罪(人道に対する罪)」


1.  1項

(c) Enslavement;[24]

(c) 奴隸化すること[24]


(g) Rape,[28] sexual slavery,[29] enforced prostitution,[30] forced pregnancy,[31] enforced sterilization,[32] or any other form of sexual violence of comparable gravity;[33]


(g) 強姦[28] 、性的な奴隸(性的奴隷状態)[29]強制売春[30]、強いられた妊娠状態の継続[31] 、強制断種[32]、その他あらゆる形態の性的暴力であってこれらと同等の重大性を有するもの[33]


2. 2項

(c) "Enslavement" means the exercise of any or all of the powers attaching to the right of ownership over a person and includes the exercise of such power in the course of trafficking in persons, in particular women and children;


(c)「奴隷化すること」とは、人に対して所有権に伴ういずれか又はすべての権限を行使することをいい、人 ー特に女性及び児童ー の取引(人身売買)の過程でそのような権限を行使することを含む。


(以下、脚注の解説)


奴隸化すること[24]

[24] The term "enslavement" should not be limited to its traditional sense. According to article 7(2)(c) enslavement means the exercise of any or all of the powers attaching to the right of ownership over a person and includes the exercise of such power in the course of trafficking in persons, in particular women and children.


[24] 「奴隷化すること」という用語については、従来から用いられてきた意味に限定すべきでない。

7条2項(C)において、奴隷化することとは、「人に対して所有権に伴ういずれか又はすべての権限を行使することをいい、人(特に女性及び児童)の取引(人身売買)の過程でそのような権限を行使することを含む」と記述されている。


性的な奴隸(性的奴隷状態)[29]

[29] Sexual slavery is particular form of enslavement which includes limitations on one's autonomy, freedom of movement and power to decide matters relating to one's sexual activity. Thus, the crime also includes forced marriages, domestic servitude or other forced labor that ultimately involves forced sexual activity. In contrast to the crime of rape, which is a completed offence, sexual slavery constitutes a continuing offence.

 In Katanga and Chui, Decision on the confirmation of charges, 30 September 2008, para. 431, PTC I held that "sexual slavery also encompasses situations where women and girls are forced into 'marriage', domestic servitude or other forced labour involving compulsory sexual activity, including rape, by their captors. Forms of sexual slavery can, for example, be practices such as the detention of women in 'rape camps' or 'comfort stations', forced temporary 'marriages' to soldiers and other practices involving the treatment of women as chattel, and as such, violations of the peremptory norm prohibiting slavery."


[29] (人を)性的奴隷状態におくことは、奴隷化することの一形態であり、本人の自己決定権、移動の自由および本人の性的活動に関する事柄に対する決定権の制限を特徴とする。このことから、性的奴隷という犯罪は、最終的に強制的な性的活動に至る強制結婚、家庭内使役または強制労働も含まれる。

レイプという犯罪では、犯罪行為が既に完遂されているのとは対照的に、性的奴隷状態では犯罪行為は継続中である。

コンゴの)カタンガ案件及びチュイ案件に対して、(国際刑事裁判所の)PTCI(Pre-Trial Chamber I: 予審第一法廷)が2008年9月30日に行った嫌疑の確認の決定(decision on the confirmation of charges )の431段落において以下のように明言している。「性的奴隷には、女性や未成年女性がその捕獲者によって強制的な性的活動を含む『結婚』、家庭内使役またはその他の強制労働を強いられている状態も含まれる。

性的奴隷状態の形態には、例えば、『レイプセンター』や慰安所』内での女性の拘禁、将兵との一時的な強制『結婚』、または女性を所有物として扱うその他の慣習も含めることができ、それ自体が人を奴隷状態に置くことを禁じた強行規範に違反している。」


強制売春[30]

[30] It is argued that sexual slavery encompasses most, if not all forms of forced prostitution. In comparison with rape and sexual slavery, enforced prostitution can either be a continuing offence or constitute a separate act.


[30] 性的奴隷状態とは、強制売春の形態のすべてではないにしても、その大部分を占めることが明らかになっている。

強姦や性的奴隷と異なり、強制売春は、継続中の犯罪である場合もあれば、法律が別途存在する場合もある。

(強調は引用者)

*1Twitter / t_ishin: 日本の知識人よ。慰安婦問題に関して、目を覚ませ。強制連行の有 ... Twitter / t_ishin: 日本の知識人よ。慰安婦問題に関して、目を覚ませ。強制連行の有 ...

*2Twitter / t_ishin: 日本をはじめ世界各国が戦場の性において、女性を活用し、重大な ... Twitter / t_ishin: 日本をはじめ世界各国が戦場の性において、女性を活用し、重大な ...

*3:2011年1月号 『法学セミナービルマ女性国際法廷

*4グアテマラ|かつて性奴隷にされた女性たちが証言台に立つ |IPS Japan グアテマラ|かつて性奴隷にされた女性たちが証言台に立つ |IPS Japan

*5国連:コンゴ東部で大量の虐殺や強姦 止めるための行動を | Human Rights Watch 国連:コンゴ東部で大量の虐殺や強姦 止めるための行動を | Human Rights Watch

*6:「欧米諸国では、慰安婦を「性奴隷」(sex slave)と表現するケースが目立つ。この表現は、92年に慰安婦問題が外交問題化した際、「強制連行」だったとの記事や証言(その後信ぴょう性は否定)が出回ったため、「売春婦」(prostitute)とは異なるとして広まったとされる。(2013年5月21日 読売新聞)」橋下氏が慰安婦発言の撤回を拒否する理由 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 橋下氏が慰安婦発言の撤回を拒否する理由 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

dempaxdempax 2013/06/04 11:13 「広義の強制性」と「狭義の強制性」を区別し「狭義の強制性」を「官憲が家に押し入って連れて行くという強制性(はなかった)」(2007/03/05参議院予算委員会・小川敏夫[民主党]への安倍晋三首相答弁)と例示

海岸から連れ去られた拉致被害者は「自己責任」であり「狭義の強制性」はなかったから、朝鮮人民民主主義共和国国家機関の責任はなかったと言うのだろう

StiffmuscleStiffmuscle 2013/06/05 22:04 人を性奴隷状態におく、性奴隷制度("sexual slavery")は、そもそも白人奴隷制度 "white slavery"と呼ばれていたもので、それは醜業三条約にも表されています。
『醜業ヲ行ハシムル為ノ婦女売買禁止ニ関スル国際条約(1910年)』の英語原題は"INTERNATIONAL CONVENTION FOR THE SUPPRESSION OF THE WHITE SLAVE TRAFFIC"に着目すれば、そのことは明白です。http://ianhu.g.hatena.ne.jp/keyword/%E9%86%9C%E6%A5%AD%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%82%8F%E3%81%97%E3%82%80%E3%82%8B%E7%82%BA%E3%81%AE%E5%A9%A6%E5%A5%B3%E5%A3%B2%E8%B2%B7%E7%A6%81%E6%AD%A2%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%9D%A1%E7%B4%84

dj19dj19 2013/06/05 23:50 日本政府が戦前に加入していた国際禁止条約の名称に「“white slave traffic”奴隷の売買」禁止の表記が含まれている事実。
とても重要なことなのですが、「日本国内」ではほとんど知られていないですね。

dempaxdempax 2013/06/06 10:11 橋下徹があいもかわらず【ズレまくった】発言
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「日本人と、韓国や世界とで、慰安婦の姿への認識に相当なずれがある。事実が明確化していないところが最大の原因だ」と述べ、日本政府が強制連行の有無を明確化していないことが問題との考えを改めて示した。


大阪市役所での定例記者会見で質問に答えた
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朝日新聞 2013/06/06 (38面 社会)

tarari1036tarari1036 2013/06/10 23:39 はじめまして、タラリです。
di19さんでも、Stiffmuscleさんでもいいのですが、

>その定義は「奴隷状態とは、所有権を伴う権力の一部もしくは全部が一個人に対して行使されている状況もしくは状態である」、

このまま、ネトウヨの平均的、知的水準のひとに提示しても、彼らの意見を変えることにはなんら役立たないと私は思うのです。だって、私自身が何度読んでも理解できないんですよ。

たぶん、権限(おそらくpower)という言葉が日本と英語で訳しきれないからではないかと思いますが、私だと多分英文原文で読んでも同じです。

日本語にしたときはかなり言葉を補わないと意味が通りにくいと思います。思い切り意訳でもいいから私訳、試訳してみてください。お願いします。

dj19dj19 2013/06/11 09:21 タラリさんへ
その1926年の奴隷条約の箇所はid:Stiffmuscleさんかid:kmiuraさんによる和訳ですが、そんなに理解しづらいでしょうかね。私は専門家ではありませんので「思い切り意訳」の要望には応えられませんが、手元に法学者の前田朗氏の著書『人道に対する罪』青木書店,2009年があり確認してみたところ同書p.125では「権能」の訳語が当てられていました。若干、表現も異なるので、こちらの方が分かりやすいかもしれません。原文と対訳にすると以下のようになります。

====
Slavery Convention
Signed at Geneva on 25 September 1926
1926年、奴隷条約
http://portal.unesco.org/culture/en/files/38440/12815475701Slavery_Convention_%281926%29.pdf/Slavery%2BConvention%2B%281926%29.pdf
(奴隷条約、第1条)
(1) Slavery is the status or condition of a person over whom any or all of the powers attaching to the right of ownership are exercised.

(第1項)奴隷制度(奴隷状態)とは、その者に対して所有権に伴う一部又は全部の権能が行使される個人の地位又は状態をいう。

(2) The slave trade includes all acts involved in the capture, acquisition or disposal of a person with intent to reduce him to slavery; all acts involved in the acquisition of a slave with a view to selling or exchanging him; all acts of disposal by sale or exchange of a slave acquired with a view to being sold or exchanged, and, in general, every act of trade or transport in slaves.

(第2項)奴隷取引とは、その者を奴隷の状態に置く意思をもって行う個人の捕捉、取得又は処分に関係するあらゆる行為、その者を売り又は交換するために行う奴隷の取得に関係するあらゆる行為、売られ又は交換されるために取得された奴隷を売り又は交換することによって処分するあらゆる行為並びに、一般に、奴隷を取り引きし又は輸送するすべての行為を含む。
====

以下は同書p.126の解説です。理解の助けになると思いますので合わせて紹介しておきます。

「奴隷化の客観的要素は、その権限の行使であり、主観的要素は、その権限を意図的に行使することである。奴隷化の罪には、所有と支配が含まれる。支配について、クナラッチ事件判決(2001年2月22日)は、「誰かの行動に服せしめる支配、物理環境の支配、心理的支配、逃走を防止する措置、実力、実力の威嚇又は強制、接続、独占するという主張、残虐な取り扱いや虐待、性労働の支配」をあげている。」

tarari1036tarari1036 2013/06/11 23:40 早速、回答くださいましてありがとうございます。

条約文であり、つまりは法律の文章ですから、厳密で簡潔に書かれています。
この文章を意訳するというのも少々無理かなと思います。
いっぽうで私は「慰安婦は性奴隷である」ということを一般の人に向けてわかりやすく書くことをいつかすることになると思います。そのためには、この文章を元にして説得することはちょっと無理だと感じています。

ネットでいろいろ探すとこういうのに当たります。

「奴隷とは、人間でありながら所有の客体即ち所有物とされる者を言う。人間としての名誉、権利・自由を認められず、他人の所有物として取り扱われる人。所有者の全的支配に服し、労働を強制され、譲渡・売買の対象とされた。奴隷を許容する社会制度を特に奴隷制という。」

これだと私もすぐわかり、人にもすぐ説得できます。
こちらをベースにして第一条第一項を説明したなら説得も可能かもしれません。

Slavery=奴隷制,power=権能 がわかりにくさを作っていると思います。

次は解説のための私的超訳です。原文の主語・述語関係もまったく変えています。

奴隷制度(奴隷状態)とは、その者(奴隷とされている者)に対して奴隷主が所有しているが故に持つ強制力のすべてまたは一部を使ってその者(奴隷とされている者)を思うがままにすることができる、そういう状態が社会・集団・組織に築かれている状態。


次に同書p.126の解説ですが具体的名詞が多いのでイメージしやすいということはあります。しかし、文章は何をいっているのか首をひねります。

>奴隷化の客観的要素は、その権限の行使であり、主観的要素は、その権限を意図的に行使することである。

(私訳)外部から見た場合、奴隷所有者が奴隷に対して強制力を行使していることが奴隷としていることの証明であり、奴隷所有者にとっては強制力を意図して行使していると感じることが奴隷所有者であることの証明である。

>奴隷化の罪には、所有と支配が含まれる。

(私訳)人を奴隷にしていることは罪悪なのだが、その罪悪は奴隷を所有することと支配することのふたつである。

>(支配の種類については)誰かの行動に服せしめる支配、物理環境の支配、心理的支配、逃走を防止する措置、実力、実力の威嚇又は強制、接続、独占するという主張、残虐な取り扱いや虐待、性労働の支配」をあげている。

名詞ばかりですから、問題は少ないですが、「接続」は訳が不適ではないでしょうか。

dj19dj19 2013/06/13 15:04 タラリさんへ

マクドゥーガル報告書がなぜ1926年の奴隷条約を明記しているかといえば、日本軍の慰安婦制度が創設される以前に国際慣習法として人の奴隷化が違法とされていたことを明確にし、国には責任が生じ、さらに慰安婦とは被害者であると承認させるためです。私がこのエントリで取り上げた際も、よくある「法をや条約を過去に遡って適用するのは…」うんぬんといった抗弁が通用しないことを確認しておきたいと考えました。1926年、当時の奴隷条約においてさえ、人を「所有」物とすることが奴隷化の概念として明記されていたというは重要なことでしょう。

そして、奴隷条約の第一項「奴隷制度(奴隷状態)とは、その者に対して所有権に伴う一部又は全部の権能が行使される個人の地位又は状態をいう。」を、わかりづらいと感じるのはおそらく奴隷化する側の犯罪行為について記述されているからではないでしょうかね。第二項が「奴隷取引」となっていることからも、当時、問題にされた人身売買を念頭に条約が書かれているのでしょう。

ただ性奴隷(慰安婦)の被害の形態というのは多様であり、当時の内地や植民地では人身売買のケースが最も多かったと吉見教授が述べているわけですが、そうした形態に収まりきれない中国、フィリピンなどの占領地で将兵による拉致とその後の拘禁により性暴力を繰り返し受けたケースも数多く報告されています。90年代初めから問題となった旧ユーゴスラビア内戦などでの性奴隷化も後者のケースがよく報じられていたと認識しています。

例えば、広辞苑では以下のように定義されていますが、
『広辞苑』第五版:「奴隷」
(2)「人間としての権利・自由を認められず、他人の支配の下にさまざまな労務に復し、かつ売買・譲渡の目的とされる人。」

これだと「かつ売買・譲渡の目的とされる人」と付記されており、これではマクドゥーガル報告書の「性奴隷」の定義「奴隷制とは人を所有物として扱うことを指すが、その人が金銭で売買ないしは人身取引されていないという事実をもって無効となることは決してない。」や国際刑事裁判所ローマ規程データベースにある「性的奴隷という犯罪は、継続的に性行為を強要されること」「性的奴隷という犯罪は、最終的に強制的な性的活動に至る強制結婚、家庭内使役または強制労働も含まれる。」をカバーしきれていないことになると思います。


>ネットでいろいろ探すとこういうのに当たります。
>「奴隷とは、人間でありながら所有の客体即ち所有物とされる者を言う。人間としての名誉、権利・自由を認められず、他人の所有物として取り扱われる人。所有者の全的支配に服し、労働を強制され、譲渡・売買の対象とされた。奴隷を許容する社会制度を特に奴隷制という。」


奴隷状態の説明としては大体そんな感じでいいとは思いますが、性奴隷の説明としてはそれに収まりきらない被害の形態があり不十分だと思いました。検索したらwikipediaに載せてある文章のようで、出典はgoo辞書になっており、
どれい【奴隷】の意味 - 国語辞書 - goo辞書
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/161590/m0u/
を参照し記述されているようです。

「一般の人に向けてわかりやすく書く」ことを焦点にするのなら、辞書の載せてある定義を参照し説明していくというのはひとつの良い方法だと思います。ただその場合も出典を確認できる状態にしておかないと説得力に欠けると思います。誰でも編集可能なwikipediaは使わないほうが無難でしょう。

他にも例えば「所有物とされる者」という定義でいえば、制限された中に一部、自由があったような所を見つけ出し所有物でないとか奴隷ではないといった恣意的な解釈で否定する論者というのが必ず出てきますので、「一部又は全部の(奴隷条約)」とか「奴隷化することという用語については、従来から用いられてきた意味に限定されない。(国際刑事裁判所ローマ規程)」と付記され定義を狭く解釈出来ないようにしているのでしょう。
文末の語句も「〜を〜という。」と限定した書き方にせず、「〜を特徴とする。」「〜も含まれる。」と定義の範囲を限定しない書き方にするのが望ましいと思いました。まぁ結果として分かりにくいと感じる文章になることは否めませんけどね。

tarari1036tarari1036 2013/06/14 20:30 精密な定義の話は参考になります。一般の奴隷と性奴隷における特殊性の問題についてはもっと伺いしたい点があるような気がしますが、いまのところははっきりした疑問として浮かんで来ません。また、いずれ教えを請うこともあるかもしれません。今後ともよろしく。

つ 2013/06/15 09:52 先日のTBSラジオの吉見秦討論で秦センセ、慰安婦は高給で大将よりいい給料もらってたし宴会にも参加して楽しんでいる、どこが性奴隷なんだ?!と妄言を吐いておられましたねw

aikoku_senseiaikoku_sensei 2013/06/16 14:56 橋下市長は田さしいです。間違ってるのはあなたです。

popoipopoi 2013/06/20 02:58 慰安婦制度が「性奴隷じゃない」、てのは。
ワタミが、「ブラック企業じゃない」てほざくのと同様である、と。
そういう言い方だったら、ゴネてる方々の中で、判って下さる御仁も、少しは増えますかね。
当時の、自由売春たることが担保されてない状況と、現在の、労基法が形骸化してる状況とか、対置も、或る程度はさせ易いかと考えるのですが。

或る意味、大変都合良く、ワタミが、現在の政権与党たる、自民党に擁立されておりますし(ワライ)。

つ 2013/06/21 18:40 ワタミの従業員は嫌ならやめるって選択肢があるので奴隷「状態」ではあっても奴隷とまではいい切れない。ワタミがあれなのは間違いないですが。軍慰安婦はやめるって選択肢がないですから奴隷ですね。

aa 2013/06/23 21:00 そこまでわかっていたにもかかわらず、じゃあなぜ、誰も戦中から戦後、慰安婦自身が訴えるまで問題にしなかったのか、という疑問があります。日本だけでなく韓国がです。
ここまで、ひどく人権を侵害するような行為が行われていて、そのことを知っていたはずなのに、なぜ日本や韓国、また世界が問題にしていなかったのでしょうか?

つ 2013/06/25 11:23 aさん、オランダは問題にしてちゃんと現場の首謀者を処刑してますよ
「誰も」ってのは間違いです
東京裁判でも証拠資料として提出されています
まあアメリカ人が直接の被害者ではなかったので、本格的には追求されなかった
のかもしれませんが。
韓国では被害者がものすごく名乗りでにくいって社会状況がありました。
80年代までは勧告は民主化もしてませんでしたし。
やはり被害者が名乗り出ないと問題にしにくいでしょ。
それから「そこまでわかってて」って書いてますけど、正直90年代に入るまで
よくわかってなかったってのも確かですよ。
90年代以降いろんな資料が発掘されたし被害者も名乗り出て状況がわかってきた
って感じですよ。

性被害って被害者がものすごく名乗り出ることが難しいってのはわかると思います。


まあどうせ知ってて書いてるんでしょうがねw