大連国際音楽倶楽部10周年記念演奏会に寄せて:2004年12月

大連国際音楽倶楽部10周年記念演奏会に寄せて
大連会評議員  水納 隆司


 遂にその日がやって来ました。
 2004年の大連日本人学校の10周年記念日が10月16日と決定し、各方面の努力により大連国際音楽倶楽部もこの日に合わせて大連訪問が可能になったのです。大いなる幸運であり、中方、日方双方の調整努力の賜物でした。
 大連日本人学校校歌は清岡卓行作詞、團伊玖磨作曲で、特に團先生には生前大連オケの説明を差上げた時に、大変ご興味を持って頂き、いつか大連オケの伴奏でこの校歌斉唱をということを、お約束した経緯があります。同じ年に成立した二つの組織が図らずも校歌を軸にその軌跡を交差させることができることになりました。
 大連国際音楽倶楽部も翌日10月17日に第10回記念演奏会を挙行することになりました。今回の第10回大連ツアーには総勢39名という過去最大のメンバーが参加、そのうち10名は応援の皆様でした。


 秋晴れの周水子空港に到着後、早速夕刻からはいつもの通り中山少年宮での練習に入り、練習後はいつもの宴会が始まりました。観光の時間が殆ど無いのに、継続参加者が多いというのも大連オケの特徴です(曰く、大連病とも)。
 中山少年宮は1990年ごろ建設、青少年の教育を主眼に、音楽や語学、体操等の学習を取り入れた大連市政府肝いりの施設で、担当主任がおり、入口の上には薄─波揮毫の看板が掛かっています。中山広場からは七七路を通って、またフラマホテル側からは三八広場経由五五路を通って、大連植物園の右対面にあります(坂道を右折)。以前は4階で、最近は1階の大練習場で練習が可能に成りました。中方の代表はチェロ教師の辛梁(シンリャン)先生です。子供達やその父兄が熱心に参加しているのが印象的でした。
 今回の練習曲の中心はベートーベンの「運命」全曲でしたが、それとともに大連日本人学校校歌も大切なメイン曲として扱われ、オーケストレーションは指揮者の鷲見尚保先生に入念に仕上げて頂きました(オケ伴奏では中国国内初演)。練習は、日本人、中国人が交互に座席を取り、言葉は通じなくても、音楽魂で補い、一つの譜面を追うという国際オケ本来の交流が行われ、成果も上がりました。


 いよいよ10月16日の当日になり、会場となるフラマホテルの2階宴会場には大連日本人学校の4歳児から中学3年生までの約130名が集結、特設舞台の前面の殆どを幾層も覆うような華やかな雰囲気が作られていました。それだけでも感動的な光景でした(大連日本人学校は1994年7月2日開校式挙行―生徒数約20数名)。
 大広間の会場には、大連市長ほか文化関係の主だった中方の市政府幹部が顔を連ね、日方も大連総領事ほか大連商工クラブの関係者も多数参加、大連日本人学校関係も山本校長ほか教職員、父兄等が詰め掛け混雑の様を示していました。
 勿論、大連会関係者また創立当初応援してくれた中国人スタッフや日本人スタッフも遠路駆けつけてくれました。初代音楽教師の孫玉文先生の元気な顔も見えました。とりわけ大連日本人学校また大連オケの設立に貢献された湯川誼さんも北京から駆けつけました(同氏は中国南方に小学校を建設する等教育には情熱を注いで来ましたし、日本人唯一の大連京劇団外国人顧問でもあります)。
 わが大連国際音楽倶楽部も、鷲見先生指揮のもと特設ステージに上り、序曲の後本題の大連日本人学校校歌を約130人の子供達の歌声に合わせ伴奏、大広間は全員の歌声に包まれ、しばし歓喜の時が続きました。喜びに溢れた子供達の光り輝く顔、顔・・・全員が10年目の祝福と、オーケストラ伴奏で盛大に会が取り行われた喜びで胸が一杯になる思いだったと推察されます。これで故團伊玖磨先生とのお約束も果たせました。
 続いて運命の1楽章を演奏、今回の大きなテーマである大連日本人学校との共演を無事終えることができました。終演後の祝賀パーティーにも参加、大連各方面との旧交を温めました。


 さて翌日10月17日(日)は本来の我々大連オケの本番の日です。午前中中山少年宮での練習のあと、大連市政府の近くの大連市青少年宮に移動、午後2時過ぎより第10回記念演奏会が開催されました。当日の曲目は「金と銀」、「トリッチトラッチポルカ」、「アンネンポルカ」、のほかモーツアルト「フルート協奏曲第一番」 (ソリスト 島村麻理)、そしてニコライの「ウインザーの陽気な女房達」そしてメインのベートーベン 交響曲5番「運命」でした。
 指揮の鷲見先生と日中ほか団員の心合わせた演奏が展開されました。大連オケもようやく10年目でシンフォニー全曲を手がけられるようになった記念すべき演奏会で、会場を埋めた中国人、日本人その他の方々の熱烈な拍手を頂きました。大連市政府関係者ほか昨日の日本人学校式典にいらした方々も多く参加して頂き、こちらの10周年も成功裏に終わりました。よくぞここまで続いたとの思いです。終演後いつにもまして盛大な打上会が市内飯店で開催されたのは言うまでもありません。
 こうして日本からの総勢約40名の一行も無事帰国の途につき、帰国後にはまた盛大な反省会?も開催され、10周年目の秋も過ぎて行きました。大変意義のある10周年記念大連ツアーであったと大連日本人学校関係者並びに大連会、現地日本人商工クラブほか関係の皆様のご協力に深く感謝申し上げます。
(2004年12月)

2011年9月8日水納さん提供