清岡卓行『アカシヤの大連』

dlimcblog2012-07-17

 大連という地名をいつ知ったのか覚えていませんが、『アカシヤの大連』が1969年(昭和44)芥川賞を受賞してニュースになったのはかすかな記憶があります。おととし初めて大連オケに参加することになり、帰国してから長年気になっていたこの作品を読んでみました。講談社文芸文庫に収められていたのは次の作品でした。

アカシヤの大連
  朝の悲しみ
  アカシヤの大連


大連小景集
  初冬の大連
  中山広場
  サハロフ幻想
  大連の海辺で

紀伊國屋書店BookWeb http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4061960040.html


 最初の「朝の悲しみ」は、大連から引き揚げて21年後に妻を亡くした著者が最初に書いた小説で、続いて書いたのが「アカシヤの大連」です。それは東京の大学生であった主人公が敗戦の年の春に故郷の大連に戻った時から、結婚し1948年に引揚船で日本に帰るまでを描いた作品でした。大連という街の歴史と地理、そこに暮らす人々の日常がいきいきと伝わってきました。
 次に納められた「大連小景集」は、引き揚げ後34年ぶりに大連を再訪した著者が、その翌年に発表したものです。小さな文庫本の中に長い時間が凝縮されていて、実際に大連で見た光景と重なって印象深い読書となりました。