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歯切れが悪いのは仕様です。


2017-03-03

[]【告知】竹沢幸一先生還暦記念ワークショップ「日本語統語論研究の広がり」(3/27、筑波大学東京キャンパス)

 すでにどこかで見かけた方もいるのではないかと思いますが、竹沢幸一先生還暦記念ワークショップ「日本語統語論研究の広がり―理論と記述の相互関係―」が開催されます。特に申込み等必要ありませんので、気軽に足をお運び下さい。ちなみに私も発表します。

 ここにも概要を載せますが、詳細は下記の専用ページをご覧下さい。

  • 日時:平成29年3月27日(月) 13:30〜17:30
  • 場所:筑波大学東京キャンパス文京校舎 120講義室
  • プログラム
    • 趣旨説明:島田雅晴(筑波大学)
    • 基調講演「生成文法の理論的展開と日本語の格現象の分析―事実観察と理論構築の相互関係―」竹沢幸一(筑波大学)
    • ワークショップ 第1部:日本語からの統語研究
      • 「可能文の格パターンと他動性再考」石田尊(筑波大学)・田川拓海(筑波大学)
      • 「焦点卓越言語としての日本語における定形節のフェイズ性」三上傑(東北大学)
    • 第2部:日英対照言語研究
      • 「日本語における<過程>と<状態>の言語化―英語との対照を通して―」佐藤琢三(学習院女子大学)
      • 「価値判断の二次述語とモダリティに関する日英語比較統語論」松岡幹就(山梨大学)
    • 全体討論

言語学ワークショップ 日本語統語論研究の広がり

 私は竹沢先生が主指導教員だったわけではないのですが、生成文法については第一の恩師ですね。それと現在筑波大勤務ということもあって企画者などさせていただいております。

 格がメインの発表を公的な場でするのはもしかしたらはじめてかもしれません。実は卒論・修論は格絡みなので自分では意外なのですが。

2017-02-13

[]言語学なんでも(あり)研究会で発表します(3/10、京都大学)

 先日告知した下記のシンポジウムの前日に、標記の研究会を行います。

こちらは名称からもわかるように、ゆるめの研究会を予定していますので(参加者によってはシビアな場になる可能性もあります)、気軽にご参加下さい。

 詳細は下記の通りです。

  • 日時:2017年3月10日(金)14:00〜
  • 会場:京都大学総合研究2号館1階第9演習室
  • プログラム:
    • 14:00-趣旨説明
    • 14:05-14:30 「なーちゃんとみっちゃん:滋賀県湖北方言のアクセント」脇坂美和子(京都大学大学院生)
    • 14:35-15:15 「代名詞複合語から考える」淺尾仁彦(国立研究開発法人情報通信研究機構)
    • 15:15-15:30 休憩
    • 15:30-16:10 「命令形と命令(文)がずれるとき」田川拓海(筑波大学)
    • 16:15-16:55 「副詞「半分」 in 事象投射理論」小西正人(北海道文教大学)
    • 16:55-17:05 休憩
    • 17:05-17:45 「北薩摩方言のアスペクト」黒木邦彦(神戸松蔭女子學院大學)

脇坂さんの丁寧な企画・運営によってこちらも豪華でおもしろそうなラインナップになりました。ありがとうございます。

 私は命令(文)の環境における形態と統語のずれの話として、否定命令の形態論と以前からちょこちょこやっている愚痴命令文を取り上げるつもりなのですが、けっこう時間が厳しそうなのでどちらかを軽めにするかもしれません。

 さいきん、なかなか研究発表の時間が取れず、ましてや遠征など…という状況ですので、限られた機会によくばって複数の発表を詰め込んでしまい結果たいへんになるというパターンが定着してきました。今から自身の苦しむ姿が目に浮かびます。

2017-01-16

[][]「ら抜き」の(断片的な)文献リストをちょっと更新

 先日「ら抜き」関係の記事を書いたこともありまして、

 他のお仕事で入門書的な本をざっと確認する作業があったのでついでに「ら抜き」への言及についても調べて、下記の(断片的な)文献リストに追加しておきました。

 追加したものは、下記の5件です。すべて「コラムや簡単な解説など」への追加です。

  • 山田敏弘 (2004)「§2. 活用」『国語教師が知っておきたい日本語文法』, pp.19-20, くろしお出版.
  • 加藤重広 (2006)「第6章 助動詞の分類と態の助動詞」『日本語文法入門ハンドブック』, p.39, 研究社.
  • 沖森卓也(他)(編) (2006)「第5章 文法」『図解日本語』, p.118, 三省堂.
  • 定延利之 (2009)「3章 品詞と活用」『日本語教育能力検定試験に合格するための言語学22』, pp.148-149, アルク.
  • 日本語文法学会(編) (2014)「可能動詞」『日本語文法事典』, p.124, 大修館書店.

ほとんど索引で確認するだけでこれだけ出てくるので、細かく調べると相当いろんな文献で言及されてそうですね。ちなみに狙い目は文法だと「活用」「可能」を扱っているところ、社会言語学では「ゆれ」や「世代差」を扱っているところです。

 ところでこういう更新の余地がある情報はブログの記事という形式とはあまりなじまない感じがしますね。ずっと個人サイトをリニューアルしたいと思っていてそちらがなんとかなれば移すという手がありますが、今のところいじる余裕がありません。

2017-01-12

[]シンポジウム「日本語文法研究のフロンティア」で発表します(3/11、キャンパスプラザ京都)

 国立国語研究所主催のシンポジウム「日本語文法研究のフロンティア ―形態論・意味論・統語論を中心に―」で研究発表をします。今年度は学会発表をしませんでしたのでなんだかこういう場はかなり久しぶりな感じがします。

 このシンポジウムは以前刊行された以下の論文集に関連したものです。

日本語文法研究のフロンティア

日本語文法研究のフロンティア

 シンポジウムの概要は以下の通り。

  • 日時:2017年3月11日 (土) 10:00〜17:00
  • 会場:キャンパスプラザ京都 2階 ホール(アクセス情報
  • 発表(細かいスケジュールはリンク先をご参照下さい)
    • 田川拓海 (筑波大学)「外来語動名詞の形態統語研究に向けて―範疇,語種,形態構造―」
    • 佐々木冠 (札幌学院大学)「現代日本語における未然形」
    • 森篤嗣 (帝塚山大学)「旧 JLPT 語彙表に基づく形態素解析単位の考察」
    • 森山卓郎 (早稲田大学)「接続詞と文脈的意味をめぐって」
    • 長谷川信子 (神田外語大学)「文の機能と文の階層・サイズ ―生成文法の視点から―」
    • 中俣尚己 (京都教育大学)「日本語に潜む程度表現」
    • 天野みどり (大妻女子大学)「構文の意味派生の推進と抑制 ―テモラウ構文とテクレル構文を例に―」
    • 佐藤琢三 (学習院女子大学)「<全該当>を表す語の主観性と集合形成」

シンポジウム「日本語文法研究のフロンティア ―形態論・意味論・統語論を中心に―」 | 国立国語研究所

 そのうち公開されるかなと思いますが、私の発表の概要を載せておきます。

本発表では、現代日本語における外来語動名詞(サ変動詞)を対象にした形態統語論研究を進める上で重要な現象及び問題点の整理を行う。まず、外来語動名詞(例:スタートする)の選別の基準について検討し、基本的には漢語動名詞と同じような取り扱いが可能なことを確認した上で、1) 動詞と判別してよいかどうか、2) 自他の観点からどのような分類が可能か、の観点から外来語動名詞の具体的な分類案を提示する。次に、外来語動名詞の性質を漢語動名詞と同様のテストを用いて調べると、動名詞の統語的な性質と形態構造の複雑さが一致していないことが明らかになり、外来語動名詞を用いることによって語種と形態構造の関係性について具体的に検証できることを示す。最後に、外来語動名詞に含まれる接辞と外来語動名詞に付く接辞の振る舞いと形態論研究の可能性を紹介する。

上記論文集に書いた外来語動名詞の話の概要+論文には詳しく書けなかったこと(関連する話題、問題点・課題、今後の展望、おもしろそうな現象等)の紹介をする予定です。

 私はともかくけっこう豪華なメンバーになっていますので興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。

2017-01-08

[][]これまでに書いた言語学に関する読み物(本や論文)の紹介記事まとめ

 これまでちょこちょこ本や論文の紹介記事を書いてきたのですが、個別のタグやキーワードで探すのが難しいので(なかば自分のため)まとめの記事を作っておくことにしました。

 なお、網羅的なものではなく、販促・宣伝用の記事は外してありますし、自分が読み返して改めて紹介するような内容ではないなと思ったものも載せていません。なので、私自身が書いた本や論文に関する情報はほとんどないです。ややこしいタイトルですみません。

 各項目内では、下に行くほど新しい記事になるように並べてあります。

言語学の入門書紹介

  1. 言語学の入門書その1:黒田龍之助『はじめての言語学』 - 思索の海
  2. 言語学の入門書その2:定延利之『日本語教育能力検定試験に合格するための言語学22』 - 思索の海
  3. 言語学の入門書その3(やや番外編):斎藤純男・田口善久・西村義樹(編)『明解言語学辞典』 - 思索の海

個別のトピックに関する記事と合わせた本や論文の紹介

  1. 「国文法」についてきちんとした専門家による現代的な評価/解説を読んでみたい人へ - 思索の海
  2. 【紹介】日本語学会2012年度春期大会シンポジウム「グローバル市民社会の日本語学」の各講演が文章化されています - 思索の海
  3. 文化庁の2013年度「国語に関する世論調査」の造語関連についてちょっとだけ(読書案内もあるよ) - 思索の海
  4. 自然言語と形式言語と(あと否定に関する文献とか)(追加文献あり) - dlitの殴り書き
  5. 地域とことば:福島の方言は東北方言か?に便乗(読書案内付き) - 思索の海
  6. 大学での(アカデミック)ライティング教育の難しさとかについてちょっとだけ(推薦図書について追記あり) - 思索の海
  7. 授業の資料公開:(日本語学における)文章研究の文献の探し方+α - 思索の海
  8. 英語の語彙は豊富(と言える)かという問いをどう考えればよいか、について補足(ちょっとだけ読書案内付き) - 思索の海
  9. 役割語と翻訳、「外国人」のステレオタイプに関する読み物をいくつか紹介 - 思索の海
  10. 「ないべき」の話についてちょっとだけ補足(+否定に関する読書案内第2弾) - dlitの殴り書き

書評や書評のようなもの

  1. 今さら書評:鈴木孝夫・田中克彦(2008)『対論 言語学が輝いていた時代』 - 思索の海
  2. 書評は難しい&方言(コスプレ)のはなし&卒論についてもちょっとだけ - 思索の海
  3. たまには専門の話:Bobaljik 2012の書評を書きました - 思索の海

断片的な文献リスト

  1. なんかトリビアルな「ら抜き」関係データベース(メモ) - dlit@linguistics - linguistics ?
  2. 起点を表す(ように見える)「に」に関する先行研究 - dlit@linguistics - linguistics ?

おまけ

 下記のシリーズは隙あらば紹介しているのでやや冗長な感じもしますが、いちおうこれも言語学に関するトピックの本を取り上げたものなので載せておきます。

2017-01-07

[]言語学の入門書その3(やや番外編):斎藤純男・田口善久・西村義樹(編)『明解言語学辞典』

はじめに

 過去のシリーズはこちら

 今回取り上げるのは辞典です。

明解言語学辞典

明解言語学辞典

フォローしているアカウントの方の発言も多いのですがこの流れはぜんぜん覚えていません。この時何やってたんだろう…

前置き:専門的な辞典・事典の使い方(やや番外編である理由)

 上記の三省堂のサイトには「初学者から研究者まで使える」と書かれています。確かに便利で、私も授業準備等でちょくちょく引くことがあります。

 では、初学者にとってはどうかというと、確かに初学者でも使える辞書だとは思いますが、初学者がこれをいきなり読んで「理解」するのはかなり厳しいでしょう(私はもう初学者ではないので推測ですが)。

 理由はそれこそ明解というか「辞典」なんだからある意味当たり前な話で、各項目の記述が非常に簡潔だからですね。専門的な辞典・事典は一般的な辞典よりは各項目の説明が丁寧であることが多いですが、『言語学大辞典』のように場合によっては1つの項目に何ページも割いているものはむしろ珍しく、これだけで内容が把握できるのはむしろある程度基礎的なトレーニングを積んだ人だと思います。

 では、初学者はこういう「辞典」をどう使えば良いのでしょうか。私のおすすめは「ポータルにする」と「復習・確認に使う」です*1

ポータルにする

 知らない、あるいはうろ覚えの用語に出会ったときにこの辞典で調べることによって、その用語について

  • どの研究領域やトピック(音韻論、社会言語学、表記、…)に関連する用語・概念なのか
  • 他のどのような用語・概念が関係しているのか

をある程度知ることができます。その後、他の用語をこの辞典や他の辞典で調べたり、入門書や専門書を調べたり探したりしてください。このような作業に慣れていない方には面倒に思えるかもしれませんが、結果的にこのような手順でやる方が早いことも多いです。

復習・確認に使う

 「言語学概論」のような授業をどこかで受けたり、数冊言語学の入門書・概説書を読んでも、基礎的な用語・概念を定着させるのは実はけっこう難しいことなのではないかと個人的には考えています。その後に、文法論や意味論といったさらに詳細な個別の研究領域の勉強を進めることによって、基礎的な用語・概念の理解も進むという側面がどうもあるようなのです。

 正確な理解を得るためには、一度勉強したはずの用語や概念でも、出会う度にその内容や理解の具合を確かめ直すという作業が複数回必要になってきます。

 もちろん、一度、あるいは何回か触れたことのある用語・概念については自分が過去に使用した入門書・概説書・専門書をもう一度読むというのでもいいのですが、こういう辞典の簡潔な記述で確認するというのも1つの手です。理解したと思っていたのに辞典の記述だとよくわからないというのであればまだ理解できてないという可能性がありますし、以前読んでさっぱりだった項目を読み直してわかるようになっていた時には勉強の成果を実感することができます。

他の本のお供として

 というわけで、全くの初学者がこの辞典だけで言語学に入門することはおすすめしませんが、他の入門書が概説書、専門書を読んでいく時に併用することをおすすめします*2

特徴

 前置きを細かく書きすぎてしまいました。以下、この辞典の特徴について簡潔に紹介しておきます。

安い

 税込2,376円です。自宅用、携帯用、保存用(?)と3冊買っても1万円行きません。言語学の研究者にとっては驚き…と一般化できるかはわかりませんが、少なくとも私はこの内容でこの値段というのはかなり驚かされました。

コンパクト

 かなりコンパクトで持ち運びに向きます。ペーパーバックなので軽いですし。私自身は非常勤の授業の時にかなり重宝しています。

 今だと『言語学大辞典(術語編)』をPDF化するというような方法もないではないですが、

言語学大辞典〈第6巻〉術語編

言語学大辞典〈第6巻〉術語編

辞典のような本は「パラパラめくれる」利点が大きいと思いますので、この辞典の存在はやっぱりありがたいですね。

分量は十分?

 コンパクトということで気になるのは内容量なのですが、項目についてはこのサイズでよくここまでカバーしているなというのが私の印象です。「この項目を載せないのはまずいのでは…」というのは今のところ思いつきませんね。ただやはり1つの項目についての記述はかなり簡潔なものもあります。これはしかたないところかなと。

新しい

 もう一つの大きな利点は、この辞典が「新しい」ことです。そりゃ2015年に出たから当たり前なんですが、新しいということは、古いものに比べて新しい研究成果を反映させられるということです。

 わかりやすいのは認知言語学に関連する項目が多く立てられていることですね(「アフォーダンス」「図・地」「認知言語学」「百科事典的意味論」「プロファイル」「メタファー」「メトニミー」「用法基盤モデル」等)。

 あと、音韻論の理論の項目がすごく充実していますね(「生成音韻論」や「最適性理論」だけでなく「韻律形態論」「音律音韻論」「語彙音韻論」「自然音韻論」「自律分節音韻論」「素性階層理論」「統率音韻論」「非線形音韻論」「不完全指定理論」「分節音韻論」すべて独立した項目になっています)。

 生成文法関連だと「極小主義」「進化言語学」辺りが新しめの内容でしょうか。項目は少なめですが、「語彙機能文法(LFG)」「主辞駆動句構造文法(HPSG)」もきちんと立項があります。

 他にも「おっ」と思ったのは「役割語」「枠付け類型論」(Talmyのあれ)などの項目でしょうか。

 また、項目自体は古典的なものでも、新しめの内容を盛り込んでいるものもあります。たとえば、「言語相対論」ではPinkerの研究や認知言語学との関連にも触れられています。

 用語として新しいというわけではないのですが、「作用域」「変項」辺りの「なんかあまり詳しい説明もなくよく出てくるけど具体的に何を指しているか初学者にはいまいちわかりにくい」用語(私の主観)について項目があるのもいいですね。

その他の特徴

 執筆者名が項目の最後に明示してあるのは個人的に好きです。そこからすぐに書籍・論文を探せたりしますし。

 索引が最初にあるのは使ってみるとけっこう便利です。索引自体も丁寧に付けられていて使いやすいです。

 付録は、言語学の事典だと鉄板でしょうがやはりIPAと音声学関連の情報がまとめてあるのは便利ですね。もちろん英日対照表も付いています。

気になるところ

 おそらく様々な制約等があってこのような形になっていると思うので、以下は難癖に近いかもしれません。

文献の提示

 文献が示されている項目とそうでない項目があります。内容を読んでいると文献を挙げようがないものもありますが、やはり専門的な辞典・事典では文献情報があるとありがたいです。ただ文献情報は意外と記述に行数かかりますからね…

内容の新しさ

 新しい成果が採り入れられているという話を上でしましたが、そうでない項目もあるように見受けられます。もちろん、項目によってはそれほど新しくする必要がないものもあるわけですが、ちょっと気になるものもありました。たとえば、「形式意味論」の項目では三分の一の分量が「理論の限界」に当てられている一方、1990年代以降の進展にはまったく触れられておらず、ちょっと厳しいかなと感じます。

内容自体の適切さ

 すべての項目を詳しく読んだわけではありませんので、専門的な内容に誤りがないことまでは保証できません。今のところ気になる書き方はありましたが、「明らかにまずい」記述には出会っていません。専門家の方は、見つけたらぜひどこかで指摘してほしいです。

おわりに

 最後に少し難癖も付けましたが、やはりこの内容でこのコンパクトさと値段はすごいです。この特徴は、最近出ている他の専門的な辞典・事典、たとえば

日本語文法事典

日本語文法事典

などとは一線を画すものだと思います(もちろんどちらが優れているというかいう話ではなく目的・用途が違うわけですが)。言語学が気になる、あるいはやらなきゃいけないという方はぜひ手に取ってみて下さい。

*1:初学者だけがやる使い方というわけではありません。私は復習・確認に使うことが多いですが、(特に不慣れな領域の話については)ポータルとして使うこともあります。

*2:初心者の段階で複数の本を平行して読むのは混乱する、というような人もいるかもしれませんが、私は「あれこれ読む」ことが結果的に理解を進める・深める上で効果的なことがけっこうあるのではないかと考えています。

2016-11-16

[]【告知】形態理論研究会第3回:Homonymy & Synonymy(11/19, 早稲田)

 もう今週末だよ、どうすんだよ、ということで告知です。

 研究会の主旨については下記のページなどご覧下さい。

 第3回のテーマは標記の通りHomonymy & Synonymyです。現準備段階では両方できる気があまりしないのですが(おい)

 以下概要です。

  • 日時:2016年11月19日(土曜)13:30〜17:00ぐらい
  • 場所:早稲田大学早稲田キャンパス8号館B106教室(早稲田キャンパス南門を入ってすぐ左手の建物)
  • Ustreamのチャンネルで配信予定
  • (過去のものを含めた)発表資料:Documents | 形態理論研究会
  • Twitterのハッシュタグ:#wislimt21

 気軽にご参加下さい。

2016-10-28

[][][](スランプ?)専門家として何をどこまでどんな調子で書くか

 最近、こちらになかなか書けていません。そもそも特に理由がなくても平気で半年ぐらいほったらかしにするブログではあるのですが…

 別館やついったーを見ている方は「やっぱり育児大変なのね」とお思いになるかもしれませんが、主な理由は仕事量の増加です。詳しくは書けないこともあるので書いてない(書きたくもない)んですが、まあきついです。こないだも大学からおすすめされたストレスチェックで心理的仕事負担量的な項目は要注意でした。ただ育児を自分の生活システムにまだうまく組み込めておらず、うまく回せてなくて結果厳しいことになっているということはありそうです。

 さて、書き始めたら愚痴だけで止まらない感じになってしまいそうなのですが、書いて公開するところまであまり至らない理由の一つに、「専門家が素人向けに専門のことを書くのはマウンティング(なのでそもそもそも良くない)」というタイプの意見を複数回目にしてちょっと気になっているということがあります。

 下記のエントリに書いたように「恩返し」的な心持ちはありますが、別に「専門家だから書いた方が良いだろう」などと思って色々書いているわけでもなく、

利己的な動機(言語学や日本語学に興味を持ってその世界に入ってきてくれる人が増えると嬉しい、専門的に見ると言語に関する変な言説があまり広まると営業妨害になることもあるのでどこかに対抗言説を置いておきたい)も大きいので、今のところ「やっぱりマウンティングなので書くのやめます」という選択肢は考えてないのですが、やはり「どう書くのか」「どのように書くのか」「どれぐらいの強さで書くのか」というのは悩ましいです。数年間ずっと考えてきていることではあるんですけど、難しいですね。

 そこでちょっと聞いてみたいんですが、自分に何か専門分野があってそれについてwebに何か書いている皆さん(職業専門家や大学教員に限りません)、自分の専門分野について書くときに何か気にしていること、心がけていることはありますか?

 本当はここで私が気にしていることなどを丁寧に提示するのがフェアなのでしょうが、それを整理し始めるとこのエントリの公開にいたらないのではと途中で気付いたので、愚痴と呼びかけだけで上げてしまいます。

 もし何か書いてもよいなという方がいらしたら、他の方の目にもとまりやすい方が良いと思いますので、ブログ等の(自身が書きやすい)場所に公開してくれると嬉しいです。もちろんここのコメント欄でも構わないのですが。

 「非専門家なんだが専門家が書いたもののこんなところが気になる/気に入らない」というような話でもよいかもしれません。

2016-05-12

[]【宣伝】『日本語文法研究のフロンティア』という論集に動名詞の自他の形態論(+外来語)の話を書きました

 こんなエントリを書いている場合ではないだろうという声があちこちから聞こえてきそうですが、Amazonにも情報が出ていたので宣伝しておきます。

日本語文法研究のフロンティア

日本語文法研究のフロンティア

発売日は6月1日になっていますね。5月の学会の展示販売では買えるようですが。

 ちなみに、各論文のタイトルはくろしお出版のサイトから見ることができます。

目次

[形態論と統語論のフロンティア]

動名詞の構造と「する」「させる」の分布 田川拓海

現代日本語における未然形 佐々木冠

旧JLPT語彙表に基づく形態素解析単位の考察 森篤嗣

名詞並置型同格構造 森山卓郎

文の階層性と文中要素の解釈 長谷川信子

[意味論のフロンティア]

日本語に潜む程度表現 中俣尚己

母語話者と非母語話者の逸脱文の意味解釈 天野みどり

構文としての「切っても切れない」 佐藤琢三

[文章・文体・発話研究のフロンティア]

社会科学専門文献の接続詞の分野別文体特性 石黒圭

「話しことば的」な文章に見られる話しことばとは異なる表現 野田春美

4つの発話モード 定延利之

[対照研究、習得・日本語教育研究のフロンティア]

日本語と中国語の真偽疑問文と確認文の意味 井上優

教育現場とのつながりを意識した対照研究の試み カノックワン・ラオハブラナキット・片桐

第二言語習得研究と第二方言習得研究の統合に向けて 渋谷勝己

「産出のための文法」から見た「は」と「が」 庵功雄

非母語話者の日本語理解のための文法 野田尚史

くろしお出版WEB

 トップバッターですね…ちなみに僕だけ助教なんですが、「一番下っ端がフロンティアへの切り込み隊長」ってなんか死亡フラグ的な響きが…

ポイント

 さて、この論文は副題まで含めると

  • 動名詞の構造と「する」「させる」の分布─漢語と外来語の比較─

となっています。

 取り扱っている現象は、それ自体では自他同形である動名詞(サ変動詞)のタイプと、それにつく「する」「させる」の振る舞いがちょっと複雑であるというもので、先行研究も色々あります。

 いつも通り(?)統語的な分析を提示しているのですが、その対象を漢語系の動名詞(例:勉強する)だけでなく、外来語系の動名詞(例:チャレンジする)にも広げたところが、個人的にはこの論文の面白いところだと考えています。

 日本語の動名詞の研究って漢語系の語彙についてはかなりの蓄積があるのに、外来語系の語彙についてはあまり言及がないのがこれまで不思議だったのですよね。調べてみたら、思ったより研究が少なくて驚きました。

 あまり緻密な調査をしたわけではないのですが、そこそこの量の外来語動名詞のリストを補遺として付けてありますので(自他のざっくりとした分類付き)、ぜひこれから色んな方にいじりたおしていただきたいです。記述だけでもかなりやることあると思いますし、理論的に見ても色々おもしろいことが見つかるかもしれません(たとえばre-や-ingといった接辞が借用された時にどうなるのかとか)。

理論研究への思い

 ふだんはあまりこういうこと書かないんですが、せっかくの機会をいただきましたので、理論研究と日本語研究に対する個人的な思いについても最後に少し書いておきました。ちょっと長いですが下に引用しておきます。あくまでも僕の立場から見ると、という話であることにご注意下さい。内容が内容だけに弱気な表現が多いです…

 最後に,日本語研究における理論研究について少し触れておきたい。

 “いわゆる”理論研究と“いわゆる”記述研究の接点を探る試みは定期的に行われているが ,各研究分野が発展を続けている状況において個人が両方の研究をフォローし続けることは年々困難になってきているとさえ言えるだろう。筆者にはその両方に関わり続けることで自身の研究が進んだり,面白いテーマが見つかったりするという体験・実感があるので,できれば多くの研究者にお勧めしたいところであるが,上記のような事情もあり実際にはなかなか気軽には踏み切れないかもしれない。

 理論研究が主眼でない研究において理論研究に言及したりその枠組みを援用したりする場合に多いのは,その概念等を問題解決・分析に使うというやり方であるように思われるが,ここではそれに加えて,理論研究(の知見)を問題発見のために(も)使ってみることを提案したい。理論研究の問題設定,テーマにはもちろん各理論特有のものも多いが,その理論の外である程度広く共有できるものもまた多く存在する。

(具体的な分析に触れているところなので中略)

 また,本稿で取り上げた外来語のように,多くの研究の蓄積がある現代日本語(共通語)においてさえ現象面の解明や詳細な記述がまだまだ必要なことも多い。そのような新しい記述が記述研究だけでなく理論研究にインパクトをもたらすこともあるだろう。筆者は外来語がその候補の一つになりうるのではないかと期待している。

 筆者の個人的な信念として,「良い理論は良い記述を生み出し,良い記述は良い理論を生み出す」というものがある。残念ながら筆者個人でそれを実現することができたという実感はまだないが,そのような研究や交流には実際に遭遇してきた。特に複数の研究者が交流・関係を持つことによって実現される可能性は現在の状況においても高いのではないだろうか。本稿を読むのはおそらくどちらかというと記述研究になじみがある方が多いのではないかと想像しているが,これを読んで「理論研究者と(もう少し)話をしてみよう」「理論研究のイベントに(少しなら)参加してもいいかな」といったことを考えてくれる方がわずかでも増えてくれれば,日本語を対象とした理論言語学研究に携わっている者としてこれ以上の喜びはない。

おわりに

 僕のものはおいておいても豪華な内容になっていると思いますし、どこかで手に取っていただければ。僕もこれから他の方の論文を読むのが楽しみです。

2016-03-22

[](非在籍者による)三原健一先生と大阪外大の思い出

 日常に流されているうちにあっという間に時間が経ってしまいましたが、先週大阪大学箕面キャンパスで行われた三原健一先生の最終講義に参加してきました。三原先生のWikipediaのページはだいぶ情報が少なかったのでAmazonのリンクでもはっておきます。

下記の言語学会のシンポジウムや

論文集でもお世話になりましたので(宣伝)、

活用論の前線

活用論の前線

教え子だと思われていたこともあるようなのですが、実は私は三原先生の授業は一度も受けたことがありませんし、ゼミに出たこともありません(厳密に言えばゼミの合宿に参加させていただいたことはあります)。

 ちなみに、「先生」と勝手に呼んでいるのは、学恩があると勝手に思っているからです。

 私が生成文法の枠組みで活用の研究をしてみようと思ったのにはいくつかの要因があるのですが、その一つとして、

の論文の最後に活用の研究って(まだまだ)必要じゃない?的なことが書かれていたというのがあるのですね。背中を押してくれたというか。

日本語学と生成文法

 私が研究を始めてまだ15年経っていませんが、いわゆる日本語学から研究のキャリアをスタートした人が生成文法を基盤にした研究をすることは減っているという印象があります。その良し悪しは別として、三原先生の退職というのは一つの象徴的な区切りに見えてしまいました。そんな状況にあるからこそ私みたいなのが研究者として生き延びられるという側面もあるのかもしれませんが…

大阪外大

 久しぶりに箕面のキャンパスに行ったのですが、懐かしかったです。

 実は筑波大学と大阪外大(の日本語研究関係)は私が筑波大で院生になる前に合同で勉強会・研究会をやっていた時期があったようなのですが、当時三原先生のゼミに所属していた依田悠介さんの尽力によって、数年間復活させることができたのですね。その期間は筑波大の方から大阪外大に行ったり、逆に大阪外大の院生の皆さんに筑波大に来てもらったりしました。結局うまく引き継ぎができず、次の世代に受け渡すことはできなかったのですが…

 その合同勉強会には三原先生のゼミ以外からも参加者がいたのですが、中心はやはりそこというわけで、色々お世話になりました。というか、今もお世話になっています。卒業生の方も勉強会に来てくださったりもしました。私だけ懇親会に参加ということもあったりして、「なんか東の方から飲み会に参加しに来てるやつ」ぐらいの認識の方もいらしたのではないでしょうか。そんなやつにもよくしていただき、本当に三原先生とゼミの方々には感謝です。

 さいきん大阪の方にはあまり足を運ぶことができず、行ってもすぐ帰らないといけないことも多くて、ちょっとさみしいですね。この最終講義の日も日帰りでした。

 というわけで、私は大阪外大に何らかの形で所属していたことはないのですが、あの箕面のキャンパスは院生時代の大切な思い出の一つです。部外者の勝手な感傷ですが、箕面キャンパスの移転の話を聞いたときは少しさみしさを覚えました。

おわりに

 最終講義の話はぜんぜん書いてませんね…いやなんか思い出にひたってしまいまして。最終講義って「あの人も卒業生なのかー」みたいなのが分かっておもしろいです。こんなに院生時代からふらふらしていられたのは私の所属ゼミの方針が「どんどん外に武者修行に行け」で、私はそれをよいことにかなり好き勝手やってきたのですが、今思うと本当にありがたいです(当時はそれが当たり前でしたので…)。