Dog Planet Cafe 〜 犬惑星 〜 このページをアンテナに追加

2009-06-28

集団ストーカーの恐怖・前編

 

『ひぐらしのなく頃に』という作品に、主人公の前原圭一が古来より隠蔽され続けてきた村の秘密を偶然目撃し、以来、村人全員から命を付け狙われるというエピソードがある。友人からもらった饅頭に針が仕込まれていたり、下校時に謎の自動車にひき逃げされそうになったり、ナタを持った少女にストーキングされたりする。村人たちはみな、表面上はニコニコして普段通りに接してくるのだが、時折、意味深な言葉を呟いて脅迫してくる。圭一は、その言葉の真の意味に気づいてゾッとするのだ……。

 

とまあ、そんな話なのだが物語が進むにつれ、実はそれが圭一の勝手な誤解と妄想に過ぎなかったことが判明する。

原作者の竜騎士07氏はかつて市役所で福祉の仕事をしていたというから、実際にそういう人たちの対応を任されていたのかも知れないし、あるいはかなりの読書家なのでさまざまな書物を参考に作り上げられたものなのかも知れない。

 

物語の中でキーワードとなる「雛見沢症候群」や「L5発症」という言葉には、統合失調症を思わせる雰囲気が漂っている。

たとえば『統合失調症 患者・家族を支えた実例集』という本から、患者の症状を抜き出してみる。

 

・皆が自分の噂して笑っている。

・知らない人がすれ違いざまにひとこと言う。

・「死ね」という声が聞こえる。

・自分がしようとしていることを先取りして言われる。

・テレパシーで命令される。

 

・家が監視されている。のぞかれている。

・盗聴器を仕掛けられている。

・監視カメラを仕掛けられている。

・あとをつけられている。

・命を狙われている。

・みんながグルになって自分をおとしいれようとしている。

・留守中に家が侵入されている。

・どこに行っても、自分を見張る車が停まっている。

 

症例であることを隠して小説に挿入したら、まんまSFかホラーができあがる。

そういえば有名な実話怪談でこんなのがある。

踏切で電車の通過を待っていたら、遮断機の向こう側に白い服を着た女性が立っている。

ふと「この世の者じゃない」と気づき、遮断機が上がった後なるべく目をそらして歩き出したら、すれ違い様にひと言「なぜわかった…」と耳元で囁かれた……。

これ、症例を知っている人間が聞いたら怪談というより患者さんの実体験でしかない。

本の中では統合失調症の症例として紹介されているが、別にこういった類の妄想の抱き方というのは統合失調症に限ったものではない。

精神疾患の患者が抱く妄想は、一見すると多種多様で独自性の高いものに思えるが、実はみんなワンパターンでオリジナリティがそれほど無いという話は有名だ。

 

精神科医の春日武彦氏は、「天井裏に潜んで監視する者」というモチーフが、やたらと都市伝説や小説に多く、また患者たちの妄想と一致することに気づいて一冊の本を書き上げてしまったほどだ。

 

個人的な体験で凄いなと思ったのは、父親と病院に行ったときのこと。

帰り道で唐突に「気づかなかったか?」と問いかけられた。

何の事かとわからずにいると、「今日の先生は別人だった」と言うのだ。

雰囲気は似ているし、名札も同じだったが、別人だったと言い張る。

もちろん、そんなはずはないのだが、父親の中では「自分の様子をうかがうために、教団の人間が医者になりすましている」という設定ができあがってしまっていた。

それからというもの、「さあて、今日はどっちの先生かな」などとニヤニヤ笑いながら通院するようになってしまったのだ。

これは新しいパターンだなと思ったが、「入れ替わり妄想」というのもよくあるのだという例が『キツネツキの科学』という本に載っていた。

 

統合失調症の本や実際に体験した人の話を聞いていると、実に鬼気迫るものがある。

だが、うちの両親からはそれが感じられない。

春日武彦氏も指摘しているが、自分の命を付け狙っているはずの者たちに、親近感すら抱いているようなのだ。

 

うちの母親も、やはり家に侵入されていると訴えていたが、こないだ久々に家を訪ねてみると、「今でもたまに入ってるみたいだけど、気にしても仕方ないから放っておいてるの」と鼻歌まじりに言っていた。

もはや見えない同居人といった感じである。

っていうか、普通はそういうものを幽霊と呼ぶような気もする。

ある程度まで合理的に考える力があるからこそ、存在しない者に「霊」ではなく「ストーカー」というレッテルを貼ってしまうのかも知れない。

 

考えてみると、僕が幼い頃から両親はよく心霊体験をしていた。

かつて「霊」だったものが「ストーカー」に移行してしまったのかも知れない。

僕は都市伝説の定義は「説得力のある嘘・妄想」だと思っている。

確かに、現代では「霊」よりも「ストーカー」の方が説得力はあるだろう。

 

 

ワーキングプア死亡宣告 (晋遊舎ブラック新書 13)

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集団ストーカー―盗聴発見業者が見た真実 (晋遊舎ブラック新書 001)

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屋根裏に誰かいるんですよ。―都市伝説の精神病理

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統合失調症―患者・家族を支えた実例集

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