Dog Planet Cafe 〜 犬惑星 〜 このページをアンテナに追加

2010-01-13

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きぐるみ唐獅子牡丹

 

◆地元キャラ公募で市民投票断トツ1位の「キンタローマン」が市の審査で12位のキャラに敗れる…南足柄市

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1379269.html

 

 みうらじゅんの「ゆるキャラ」の定義ってたしか、地方自治体や町内会のオヤジたちが酒に酔ったいきおいで「いいじゃん、いいじゃん!」みたいに盛り上がったあげくできあがってしまったマスコットキャラとかって感じだったはず。つまりその背景には「権力」と「政治力」が潜んでいるわけだ。

 そう考えると、このジャッジは至極当然の成り行き。

 

 さらに運営する側からすれば、特撮ヒーローはゆるキャラに比べて何もかも難しい。

 コスチュームに凝れば着ぐるみよりコストはかさむし、アクションのできる人材も必要。

 ショーを設定するなら音響やその他の機材、敵役だって必要だろうし、本人がしゃべるのか声をあてるのか、あるいは司会進行のお姉さんが必要になるかも知れない…

 デザイン費を安くおさえるための公募だってのに、どう考えたってそんな予算は組めないだろう。

 そもそも、そこまで覚悟があるなら最初から公募などせず、とことんプロフェッショナルと話を詰めて作り上げるだろうに。

 

 超神ネイガーのようなクオリティは損得勘定を越えたスタッフの熱意があってこそ実現したものだし、お役所中心では無理な気がする。

 最初の動機の部分で、「頼まれなくてもやってやるぜ!」という勢いがないと…。

 

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 あと、人気投票があまり有効でないことは90年代のキャラクターバブルを省みてもわかるはず。

 かつてキャラクターの経済波及効果が取りざたされた時、キティちゃんやピカチュウに便乗しようとネット上には「人気ランキング1位のキャラは商品化されます」みたいな公募サイトがたくさん現れた。

 で、結局、そんな中から誕生した人気キャラは一匹もいない。

 

 実は僕のつくったスパンキーも某社のキャラクター発掘プロジェクトみたいなのにノミネートしてもらったり、自称プロデューサーみたいな人が世話してやろうみたいな話があったりもした。

 しかし常に、「まずは人気投票で」みたいな話だった。

 知り合いのプロデューサー氏からも、「そんな得体の知れない着ぐるみで街を歩いたって誰も相手にしないよ。まずは着ぐるみは封印して、俺のサイトでランキング1位を獲って…」みたいなこを言われた。

 

 今でこそキャラクターは「選ばれるモノ」ではなく「育てるモノ」という認識が広まってきたけど、当時はとにかく「数撃ちゃ当たる」的な発想しかなかった。

 しかし、実は当時からヒットするキャラクターというのはどれも企業の資本投入によって育てられたものばかりだったのだ。

 キティもそうだし、ピカチュウだってそうだ。

 キティは売れない時期を経て、テコ入れしてブレイクした。

 ピカチュウは当初、数いるポケモンの中の一匹だったのがひときわ人気が高いので、出版社が目を付けてマンガの主人公に起用したのが切っ掛けだという。

 その後、アニメ化の際も主役扱いとなって一気に人気は大爆発する。

 サンエックスだって、こうした競争の中で地道に勢力を伸ばしてきたからこそ、今のリラックマ・ブームにこぎつけたわけだ。

 資本がないなら、個人や小さな自治体はその分、手間ヒマをかけて対抗するしかない。

 

 キャラクターというのは芸能タレントと一緒で、政治力と資本がモノを言う。

 オーディション番組というのは「発掘」という側面ばかりスポットを当てられるが、もっと重要なのは原石を見つけた後の磨き方の方だ。

 つまり、プロダクションがいかに育てるかという方が大きく影響する。

 ジャニーズ事務所だって、デビュー当時はパッとしなかったSMAPや嵐も一流に育て上げた。それ以前に、ジャニーズJr.で充分にしごかれているので、その辺の素人とはかなり違っている。

 

「アダチン」にしろ「やわらか戦車」にしろ、ネットから口コミでブレイクを装ってるけど、思いっきり広告代理店みたいなの噛んでいるわけだし、今でこそ「せんとくんカワイイ〜」みたいに通ぶってる人たちは、彼の出自を完全に忘れている。

 

 実はせんとくん騒動の時も、今回と同じで「権力者」に対する反感があったはずだ。

「権力者が市民の意見も聞かずに勝手にこんな変なキャラ作りやがって!」という怒りが、いつのまにかせんとくんの姿がテレビでしょっちゅう流れるようになって親近感が芽生えると、権力者への怒りはどこかへ消え去り、まるで問題が「可愛いか? 可愛くないか?」論争みたいな方向へすり替えられてしまった。

 そりゃ、可愛いか否かの判断は個人の感性によるところだから、あれを可愛いと感じる人がいてもおかしくはない。*1

 今となってはせんとくんを支持する層ってまるで革新派というか、「せんとくんの良さがわかる私ってステキ☆」みたいなサブカル女の自己陶酔装置に成り下がっている。

 はっきり言ってこんなのポピュリズム以外の何ものでもないと思うのだが…。

 普通、あれだけの反感を買った場合、せんとくん陣営に政治力が無ければ、とっくに潰されていたに違いない。

 っていうか、ひこにゃんは確かに可愛いけど、あれだってバックボーンは彦根藩ですよ。

 かつては日本を牛耳ってた黒幕ですから。

 どれだけの資本投下があったことやら…*2

 

 それに対して、人気投票で選ばれたマントくんの健闘ぶりはなかなかのものだと思う。

 正直、僕は人気投票で選ばれた程度じゃ太刀打ちできないと思っていた。

 しかし、選ばれた後もきちんと育てた人たちがいたからこそ、フィッツのCMでその雄姿が拝めたりするわけだ。

 

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 一方、僕の作ったキャラというのは「ゆるくない」とよく言われる。

 そのおかげで、今回のゆるキャラブームにもあまり乗り切れていない。

 声が掛かれば便乗するけど、ネットの口コミで広がるような要素はひとつもない。

 ネタとしては面白くもなんともないだろう。

 なんせ、王道の可愛さだから。

 

 しかしこれには、それなりの戦略がある。

 こちとら彦根や奈良のような圧倒的な「政治力」を持ち合わせていないので、「可愛さ」という暴力装置によってそれに抗うしかないのだ。

 

 はっきり言って、作った当初は360度、敵だらけという修羅場の中で産声をあげたキャラばかりだ。

 スパンキーの頃は着ぐるみを悪用した犯罪が横行して、歩いてるだけで犯罪者扱いされた。

 ギンジロの時はすでに放置されっぱなしのマスコットキャラがいたおかげで、商店街の一部の人達からは猛反発をくらった。最初の一年間は非公式キャラとして活動し、お客さんの応援によって存続が決まった。

 バンタロについては、立ち上げメンバーの中にやはり反対する人がいて、いろいろ妨害もあった。まあ、そのおかげで反骨精神からいろいろ成長できた部分もあるので、今では感謝している。

 しかしその時は、かつて戦国武将が城を枕に自害したように、負けたら着ぐるみと共に討ち死にする覚悟だった。

 周囲が敵だらけの状態では、せんとくんのように可愛くないという個性は死につながる。

 政治力もない無名のキャラは、相手にされなければ消えるしかない。

 可愛くなければ生き残れない。

 そして生きるためには可愛くなければならない。

 まるで『小悪魔ageha』のage嬢のような悲愴感と共に闘ってきた。

 僕たちは常に、可愛さを武器にゲリラ戦を挑んでいる。

  

 可愛いと言うだけで大衆に迎合していると思われたり、体制側だと錯覚されるが、むしろ立場は逆だ。

 繰り返しになるが、ゆるキャラとは「政治力」と「資本力」があるからこそ、ゆるい存在でいられるのだ。

 キティもピカチュウも、そしてあのミッキーマウスでさえ、血を流しながら歩いてきた道程がある。

 

 キャラクターとは一言で表すならば「唐獅子牡丹」である。

 拠り所もなく息も絶え絶えに、ただ荒野をさすらう孤独なケモノ。

 しかし誰かがふと出会った時にほほえみ掛けてくれるなら、

 そのわずかな瞬間にだけかすかに息を吹き返す、

 窒息寸前の弱く哀しい生き物なのである。

 

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 本文中では「ひこにゃん」や「せんとくん」に対して酷いこと書いてますが、個人的には大好きです。念のため。

 そもそも、政治力と資本金だけであそこまで「育てる」こともできないはず。やはりそこには打算以上の愛情けがあるのだから。

 あとはやはり、ひこにゃんも著作権がらみのトラブル抱えてるし、せんとくんだってみんなご存じのように最初は苦難に遭っている。

 政治力と資本力があってすらこんななので、それがないキャラの苦労はどこも負けずおとらず大変なはず。

 

 さらに、こんな話もあるし↓

 

◆「みんなヘトヘト」「先行きが見えない」ゆるキャラブームの行方は? 

http://yurui.jp/archives/51458782.html

 

 殺伐としたことばかり書いてきたけど、人間同士の感情的な行き違いはどうにもならないけど、キャラクターだからこそ軽々と越えられる「壁」もある。

 キティちゃんとガチャピンがコラボしてたり、ひこにゃんとその他大勢のゆるキャラが共演できたりするように、利害関係の対立する人間同士・企業同士ですら、キャラクターを通すと仲良くなれてしまったりするのだ。

同じ政治力でも、こちらは「権威・権力」ではなく「外交力」のような一面だろう。

 むしろ、こっちが重要で、これがあるからこそ猫も杓子も「うちもゆるキャラを!」と参入してくるに違いない。

 

ちなみにスパンキー、東京に帰ってきてます。

仕事の依頼は、こちらまで↓

http://mt-dog.jugem.jp/?cid=11

*1:西荻窪の駅前に同じ作者の像があるけど、すごく可愛い。もともと作者は仏師なので、イラストには違和感があるけど、デザインとしては秀逸だと思う

*2:まあ、このあたりの言いがかりは、単なるひがみだけど