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雑読にき

2010-08-15

「永遠の0」百田尚樹

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)

日本にとっての終戦記念日アメリカにとっての戦勝記念日だと気付いた今日この頃

ライフ紙に掲載された海軍兵と看護婦キスシーンを再現する「Kiss-In」のイベントがニューヨークのTimes Squareで開催されたそうだ。

不謹慎だとは思わない。


だけど、あの写真看護婦さんが亡くなった祖母と同い年だと思うと、勝者と敗者の間に横たわるあまりにも深い溝に愕然とする。

読経に似た蝉の声、死の灰玉音放送日本人終戦記念日は肌にねっとり絡み付く悲しみに彩られている。

黙祷で語られる8月15日と、若い2人のキスシーンに彩られる8月15日。あまりに違うあの1日を思うと、日米市民が分かりあうことなど、できないんじゃないかと暗澹たる思いに駆られる。忘れることは人間人間らしくあるために必要な安全装置なんだけど。

戦勝を祝うなら戦死者にも哀悼の意を評してほしい。異論はあるだろうけど、靖国とアーリントン墓地は同列で語るべきだと思う。死者を悼んで何が悪い?ヒロシマ・ナガサキに原爆を落としたパイロット達だって、ベトナムで無辜の市民虐殺した兵士達だって、アーリントンに祀られるんだろう?

愛国心」というコトバへのアレルギー反応はいい加減やめるべきじゃないか。


そんなわけで終戦記念日にちなんだ零戦の本。

万年司法試験浪人生ニート)の主人公が、特攻隊員として終戦間近に命を落とした祖父の生涯を調べる。当時の祖父を知る戦争の生き残り老人達を尋ね、インタビューしていくうち、天才パイロットと呼ばれた祖父の生き様が次第に明らかになっていく…。


と、まぁありがちなストーリーでして、特に小説としての面白みはない。老人達の独り語りが見所と言えばそうだが、せっかく主人公がインタビューして回る、という設定なのに、まったく会話がないまま老人達がまるでドキュメンタリー番組ナレーターのように饒舌に過去を語るわけです。

分量にして100ページ以上、1人の語り手が祖父の思い出やら、当時の大本営の狂い具合やらつらつらつらつら語るわけ。インタビューアーは一切口を挟まない。

そんなさァ、昔の知り合いの孫がいきなり尋ねてきて、4−5時間整然と思い出を語るなんて…やってみ?って言われてもできるわけないやん、あほらしい。


浅田次郎の「壬生義士伝」がインタビューアーを表に出さないインタビュー形式で書かれていて大成功しているのに比べ、この本は下手に現代の若者ストーリーに絡めたために、不自然さが拭えない。養祖父が抱える秘密ってのも、最初の方でなんとなく分かってしまうし、どんでん返しというわけでもない。

ニートが祖父の生き様を知り、「もっかい自分も頑張るか!」となるラストも非常にありきたりでつまらない。


恐らく作者が書きたかったことの一つは、「マスコミ戦争責任」について。特攻要員の生き残りである老人の口を借り、『特攻隊員はテロリストだ』と吹聴する新聞記者を『口舌の徒』だと怒りもあらわに非難する。またこの新聞記者が薄っぺらいんだ、コレ。

アメリカからしてみればカミカゼアタック9・11も同じ狂気の沙汰だろう。ただ、国家間の外交手段の最終形態である戦争を、テロと同列に扱うジャーナリストなんて今いるのん?この小説にでてくる記者ってフィクションとしか思えないんだが…もしそれが本当に新聞記者デフォルトなら、日本終わっとる(笑)

戦前の日本が国家的な狂気の中にいて、戦後洗脳がとけた」という言説が正しいかどうかは、祖父母と話をしてみれば分かる。誰も天皇が神だなんて信じてはいなかったと思う。一人一人が一生懸命に日々を生きてきただけだろう。「イヤだ」と言えないことが多すぎた、その空気を「洗脳」と呼ぶのなら、軍部官僚制をそのまま引き継いだ戦後日本も大差ない。

大日本帝国という国家システムが狂気をはらみ、舵取りをあやまったことは間違いない。それはテロという反国家システムにも言えることだろう。しかし、特攻隊員の人たちがテロリストと違うことくらい、別にこの本を読まなくても沢山の戦争関係の絵本映画でわかっていることじゃなかろうか?


ヒトコトで言えば「100均で買える感動」といったところか。

泣かせたいのは分かるけど…あざといのよね。

浅田次郎が同じ題材で書いてくれたら、号泣できると思う。

dokushologdokusholog 2012/08/09 05:13 はじめまして。
私は「読書ログ」という読んだ本の管理やレビューを書くサイトの運営をしています。

課題図書という企画があり、今月は「永遠の0」です!
ぜひ読書ログでもレビューを書いて頂けないかと思い、コメント致しました。

http://www.dokusho-log.com/monthlybook/201208/

他のメンバーのレビューなどもありますので、もしよろしければ遊びにきて頂ければと思います。
よろしくお願い致します。

ahoaho 2012/12/24 15:27 よかった〜。。
評判が良過ぎて、自分の感性がおかしいのか本当に不安でしたので、こういう意見を聞いてほっとします。
まったく同感です。
老人に話を聞いていく順番が都合良すぎるのも何だかねぇ。。あの順番が狂ったら全てが台無しになるわけで。
自分でもビックリするくらい泣けなかった。それっぽいシーン全てが浅はか。
司法試験に再度挑むってのも単純で軽薄。
そしてなにより、小説を読む楽しさが無い。
言い過ぎかもですが小説家としてのセンスが無いと思うのです。。
脚本家って感じがしました。
文章を読む楽しさが皆無でしたね。
ここまで文学的表現が無い、長い本は久々でした。
東野圭吾って感じでした。
すみません。
あまりに読み終えた後、何がいいのか分からなく
打ちひしがれていたので。。
ではでは失礼をば

ハラチハラチ 2013/04/09 12:31 完全に同意です。
最近読んだ中で一番の駄作です。

駄作と評価するのは5年に一回あるかどうかですが、どこをどうしたらここまでつまらない本になるのでしょうか?

題材は良いのですが伝えかたが最悪…

ryojiryoji 2013/05/01 06:32 読んでて面白くないのでほったらかしにしてますが、感動したって感想ばかりでahoさんのように不安になってたところでした。このブログ見つけてよかったア!

masamasa 2013/06/04 10:52 はじめまして。こんばんは。
私も同感です。
前評判がとても良く、ネットでの評価や感想を見ていてもどれも絶賛されていたのでこれは読むべきたど思い込んで買ておいた小説でしたが・・・・。
ほんとうにこの小説にはがっかりさせられました。

インタビューした老人達の語りは、参考文献からそのまま引用したかと思われるようなものばかり。
出てくる記者の歴史認識はありえんし、全体のストリーはみえみえだし・・・・。

私の妻は呼んで「感動した!!」と涙していたので、私の感覚がオカシイのではないかと思っていましたが、駄作だと感じる方が少数でもいて助かっています。

いや〜〜〜。久しぶりの駄作中の駄作でした。
今度の休みに古本屋に売りにいこうと思っています。

零戦虎徹零戦虎徹 2013/08/21 08:38 私も読み終えて(というか読み始めてすぐに)これのどこがベストセラーなのかと感じました。
どこかで読んだような内容が実在の人物まで登場させて延々と書かれているだけなので、放置したた期間が長くて、買ってから読み終えるまで数か月かかりました。

終戦の日、某昼の情報番組に知覧からの生中継で出演されてましたが、
氏の薄っぺらいコメントを聞いてて「ああ・・なるほど」 と思いました。

本は売り飛ばしたいですが、こんな駄作は100円にもならないのではないでしょう。

まんまん 2014/01/06 02:34 お邪魔いたします。
あざとい、でこちらへたどり着きました。
すみません、当方、涙もろいため、原作も
映画も山場では泣いてしまいました。
でも心酔出来なかったため、同じような考えを
持たれている方を探しておりました。
作品としてはどちらも立派だと思います。
これだけのもの、なかなか書けないし、作れないと
私は思います。
退屈せずに読めましたし、観ることが出来ました。
書評、映画レビューで多くの方が絶賛されるのも
やむなし、だと思います。
ただ残念ながら、テクニックはあっても、心がない
というか、計算ずくというか、あざとい感じが終始
つきまといました。
100均で買える感動、とは正にぴったりの表現だと
思います。
そもそも百田さんの思想を受け入れることが出来ない
ところから、私は入りこめなかったのかも知れません。
失礼しました。

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