“Crimson Peak”(邦題『クリムゾン・ピーク』)


クリムゾン・ピーク』写真クレジット:Universal Pictures。
20世紀初頭のNY州バッファロー、幼い頃に母を失ったイーディス(ミア・ワシコウスカ)は、母の幽霊を見た体験をもとに幽霊物語を書く小説家の卵だった。ある時、裕福な実業家の父のもとに、英国貴族トーマス(トム・ヒドルストン)が資金援助を求めてくる。だが、彼の人物と発明に疑問を持った父は投資を断る。
一方、イーディスは父や幼馴染みの医師アラン(チャーリー・ハナム)らの心配をよそに、トーマスに恋心を抱いてしまう。トーマスは冷たい印象の姉ルシール(ジェシカ・チャステイン)をイーディスらに紹介。その直後、忌まわしい事件が起きる。

後半は英国のクリムゾン・ピークにあるトーマスの屋敷へと舞台が移り、若き女性主人公が遭遇する怪奇体験を次々と描きながら、共に暮らす怪しげなルシールとトーマス姉弟の秘密へと迫っていく。

ヒッチコックの『レベッカ』を彷彿させるゴシック・ロマンスもので、毒々しい赤土の上に立つ壮大な屋敷も主役の一つ。塔の一部が壊れたゴシック建築の壊れかけた建築美や、いわくありげな古びたインテリアなど凝りに凝っており、華麗なゴシック・ロマンのジャンル映画としては教科書的な出来栄えだ。
このジャンルは観客を驚かせるショッカー効果よりもミステリーに重点が置かれているので、本当に怖いのは幽霊よりも人間、という世界である。

監督はこのジャンルの第一人者メキシコ人のギレルモ・デル・トロ美術監督出身で、想像力、造形力に満ちた彼の描く異形の者たちの絵は本にもなっている。
作品群には『ヘルボーイ』『パシフィック・リム』系の怪物ものアクションと『パンズ・ラビリンス』系の怪奇ミステリーがあるが、本作は後者。彼の作品の中では最もロマンチックで美しい作品と言えるが、ジャンル映画の枠に収まり過ぎたためか、名作『パンズ・ラビリンス』ような感動や満足感を得ることが出来なかった。

見どころは今や人気と実力共にトップをいく主演の3人。無垢と勇気という両面を表現したワシコウスカ、神経質な青白い貴族がぴったりのヒドルストンが共に好演、レベッカのダンヴァース夫人風のチャステインもかなり怖かった。また、対照的なイーディスとルシールの個性を衣装に反映させたケイト・ホーリーのデザインしたコスチュームが飛び切りの美しさと完成度で、魅了されてしまった。

上映時間:1時間59分。全米のシネコン等で上映中。日本では来年1月8日上映開始予定。
“Crimson Peak”英語公式サイト:http://crimsonpeakmovie.tumblr.com/
クリムゾン・ピーク』日本語公式サイト:http://crimsonpeak.jp/