スティグリッツのフェアトレード論
これは(いつか)読まねば。すぐ和訳がでそうな気もするけど。
『Joseph E. Stiglitz=Andrew Charlton, 'Fair Trade for All: How Trade Can Promote Development'』(梶ピエールのカリフォルニア日記。)より
http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20060113#p1
なぜこれまで自由貿易が貧しい途上国に利益をもたらさなかったのか。一言で言えば、自由貿易体制において圧倒的発言力を持つ先進国により自由貿易体制がゆがめられ、途上国に過度の負担を強いてきたからだ。「自国農業の保護」という名目から、途上国の主要輸出物である一次産品への比較的高い関税率が容認される一方、途上国からの非熟練労働力の受け入れにはほとんど注意が払われず、そのかわり知的財産権や海外投資家の権利の保護といった先進国の企業に利害に関わる問題ばかりが優先的に議論され続けた。その結果、途上国間ではWTOのルールに対する不信感が広がり、途上国にとって先進国との貿易と同じくらい大きなウェートを占める途上国間の貿易では関税を引き下げたり貿易規模を拡大する努力がほとんどなされなかった。これでは、途上国が自由貿易による利益を得られなくても当たり前だ。
この、「自由な貿易体制の維持のためにはむしろ各国政府の積極的な協調や介入が必要とされる」という考えは、取引における「情報の不完全性」を重視するスティグリッツが取り組んできた理論的成果にもとずく。この理論的な側面がまとめられた部分は、最新の理論や実証研究の成果に基づいたもので、非常に中身が濃く勉強になる。特に本書で強調されるのは、貿易の自由化に伴う「調整のコスト」とそのための補償の必要性だ。貿易が自由化されることによって、国内の財の相対価格および部門間の利潤率は大きく変化する。部門間の労働力移動がスムースにいかなければ失業率も増加するだろう。貿易自由化は、そういった「調整コスト」により損失を受ける部門や経済主体に対して、貿易の受益者や政府がどのような形で補償を行うかを検討しながら慎重に進めていく必要がある。
STIGLITZ : FAIR TRADE FOR ALL (Initiative for Policy Dialogue Series C)
- 作者: Joseph E. Stiglitz,Andrew Charlton
- 出版社/メーカー: Oxford University Press (Japan) Ltd.
- 発売日: 2005/12/06
- メディア: ハードカバー
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関連項目:
『反資本主義運動と情報の非対称性』
http://d.hatena.ne.jp/dojin/20050516#p2
自立支援法メモ
『自治体の気合』(lessorの日記)
http://d.hatena.ne.jp/lessor/20060124/1138114567