文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

稀代の詐欺師・竹中平蔵の説く『郵政民営化』のトンデモ経済学に異議あり!!!


僕が「文藝時評」を連載している保守・右派系のオピニオン雑誌「月刊日本」の来月号で、「郵政民営化見直し」と「かんぽの宿疑惑」に関する論考を書くことになったが、そこで僕は、論考のタイトルを、「稀代の詐欺師・竹中平蔵の説く『郵政民営化』のトンデモ経済学に異議あり!!!」とすることによって、竹中平蔵という怪しい人物を、学問的な背景と根拠に基づくまともな経済学者、あるいはエコノミストとしてではなく、ひそかに特定の有力政治家に接近し、立て板に水のごとき詐欺師的語りで相手を洗脳し、そして一度、その政治家の洗脳に成功し、信頼を勝ち得、その懐に入り込むや否や、その政治権力を悪用して、論敵や批判者を様々な手段で排除しつつ、マスコミを通じた情報宣伝工作という方法で大衆世論をも洗脳し、次々と自説や持論を実行に移していくという、いわゆる「稀代の詐欺師・竹中平蔵」という観点から書いてみたいと思っている。竹中平蔵批判の言説は、小泉政権時代から、これまでにも多く出たと思われるが、僕の目にした限りでは、いずれもステレオタイプ化したワンパターンの竹中平蔵批判の言説が多く、つまり竹中平蔵を、その駆使する経済学な「数字」や「専門用語」に幻惑されて、まともな経済学者やエコノミストとして批判したものが多く、従って竹中平蔵の急所と弱点に届く言説が少なく、その結果、竹中平蔵という「悪徳商人」を追い詰めるにはいたらなかったように思われる。つまり、これまでに書かれたり、話されたりした竹中平蔵批判の言説も、たとえば「市場原理主義者・竹中平蔵」論も「新自由主義者竹中平蔵」論も、それはそれで正しいのだろうが、それだけでは、竹中平蔵の本質や弱点に迫りきれていない。僕が、竹中氏に関して興味を持つのは、その「語り口」、ないしはその「語りの技」を駆使した「メディアコントロール」とでも呼ぶべき「政界遊泳術」や「マスコミ遊泳術」、あるいは「大衆洗脳・扇動術」の側面であって、彼の経済学や経済分析ではない。植草一秀氏は、こう書いている。

小泉政権時代に「メディアコントロール」が激しい勢いで強化された。竹中氏が関与した「郵政民営化広報」では、IQの低い国民を「B層」と命名して、「B層」を「郵政民営化広報」のターゲットにするとの戦略に則って実際に広報活動が実行されたことが、国会で明らかにされている。
小泉政権のメディアコントロールに深く関わったと見られる飯島勲元秘書は、「スポーツ紙」、「ワイドショー」、「婦人週刊誌」が情報伝達媒体としてとりわけ重要であるとの考え方を示していたと伝えられている。小泉竹中政権は「B層にターゲットを絞った情報操作」を基本に据えていたと一般に指摘されている。

 人間は、不得意な分野ではなく、もっとも得意な、自信のある分野で、弱点を曝け出し、そして自滅するものである。今回の「かんぽの宿」疑惑の発覚後、竹中氏はいち早く「かんぽの宿」疑惑追求の言説に反応し、新聞やテレビで、得意の「さわやかな弁舌」を惜しげもなく披露しつつ反論や反撃を繰り返し、当初は、あたかも、立ち向かう敵どもを、つまり「小泉・竹中改革」や「郵政民営化」を批判する者どもを、木端微塵に論破し、撃退したかのような勢いであったが、そこに、まさしく竹中氏の弱点と本質が露呈し、結局、竹中氏は、その得意の「語り」によって「墓穴を掘る」ことになったと言っていい。「雉も鳴かずば撃たれまい…」ということである。というわけで、竹中平蔵氏の「かんぽの宿」疑惑騒動に対する反論を、以下に引用しておこう。ここでは、いかにも竹中平蔵氏らしい単純素朴な、誰にでも分かりやすい「説明」がなされているわけであるが、ここにこそ竹中平蔵氏の「墓穴の掘り方」の典型的な実例が示されていると言っていいだろう。

竹中平蔵 ポリシー・ウオッチ】かんぽの宿は“不良債権
2009.1.19 02:4(産経新聞)


 ■無視される機会費用

 鳩山邦夫総務相の「かんぽ」(簡保)に関する発言が注目を集めている。郵政民営化に当たって、いわゆる「かんぽの宿」は期限を決めて廃止または売却されることが決まっている。その売却先としてオリックスの名があがっていることをとらえて、反対の意向を表明したのである。その真意をめぐって衆議院予算委員会でも民主党から質問が出されたが、総務相は改めて反対の意向を明らかにした。しかしこの発言は、民営化に当たっての基本精神に反するものであり、かつ政策決定のプロセスそのものに大きな弊害をもたらすものだ。かんぽの宿は、郵政にとっていわば「不良債権」であり、この処理が遅れればそれだけ国民負担が増大することになる。

 かんぽの宿は、今でも年間約50億円の赤字を計上している。民営化に当たって、これを廃止・売却するのは当然のことである。まず、完全民営化されたかんぽ生命保険には、他の民間企業と同様、保険業法が適用される。当たり前の話だが、民間の保険会社がホテル業を営むことはあり得ないことだ。ホテル業のリスクが、金融の本業に影響を及ぼすことがあってはならない(いわゆるリスク遮断)からである。だからこそ法律は、10年以内の完全民営化を目指すかんぽ生命には、5年以内(2012年9月まで)の廃止または売却を義務付けた。

 国会答弁を聞く限り、総務相が今回の70カ所一括売却に反対する理由は次の2点である。第1に、資産価格が落ち込んでいる今の時期に、急いで売却するのは適切ではない。第2に、オリックス宮内義彦会長は規制改革会議の議長を務めており、郵政民営化による資産処分にかかわるのは「できレース」的である。

 第1の点から見ていこう。こうした発言は、少し前に株式売却に関して首相からも発言されたことがある。しかしこの議論は、経済学の初歩的な概念である「機会費用」というものを無視した、誤った認識と言わねばならない。今のような不況期に資産を売却する価格は、確かに好況期に比べて低くなる。しかし民営化された郵政は、売却した資金を新たな事業資産に投資することになる。その際、そうした投資資産の購入価格も不況期には安くなっている。従ってこれは相対価格の問題であり重要な経営判断なのである。いつが適切かは、市場や経営を知らない政治家や官僚に判断できる問題ではない。経営者が判断するべき問題である。そもそも民営化とは、民間の判断に任せることであり、経営判断の問題に政治が口出しすること、しかも機会費用の概念を理解しない政治家が介入することは、根本的に誤っている。

 ■民間人排除の論理

 第2の点についても、根本的な錯誤がある。まず、郵政民営化のプロセスに規制改革会議が関係したことはない。基本方針を決めたのは経済財政諮問会議であり、制度設計は内閣官房の準備室が行った。その際にいくつかの委員会も作られたが、宮内氏がそのメンバーになったことはなかった。同氏が郵政民営化にかかわったというのは、ほとんど言いがかりのようなものである。

 より重要なのは、民間人が政策過程にかかわったからその資産売却などにかかわれない、という論理そのものに重大な問題があることだ。今や政策決定における民間人の役割は極めて大きなものになっている。経済財政諮問会議や各省の審議会・委員会にも民間人が関与する。しかし、いったん政策が決められたとして、それに関係する経済活動がその後できないとなると、民間人はだれも政府の委員会メンバーになどならなくなる。郵政民営化の枠組みを決めた諮問会議の民間議員は、郵政の株が売却される際、それを購入してはいけないのか…。これは、政策決定における民間人排除の論理に等しい。

 気がつけば、こうした政策論議に参加する民間人の活躍が、以前ほど目立たなくなっている。宮内氏が活躍した時期には、経済財政諮問会議でも奥田碩氏や牛尾治朗氏が活躍していた。しかし、こうした民間議員が、以前ほど活躍できない雰囲気が広がっており、特定省庁によって書かれたペーパーが民間議員の名で提出されるケースも目立っている。鳩山総務相発言は、政策にかかわる民間人の自由な発言をますます抑制し、結果的に族議員と官僚を奮い立たせるものである。

 筆者が失望したのは、この問題を国会で質問した野党が、大臣発言をむしろ擁護する立場にあったということである。そもそも、特定の利害に偏った族議員と官僚のゆがんだ政策をただすために、民間の有識者を政策決定の中に入れている。にもかかわらず、誤った事実認識と経済常識の欠如によって、結果的に民間人を政策過程から排除するようなことを与野党一体となっておこなっている。これが日本の政治の実態である。

 売却に当たって、総務相の認可が必要になっているが、これは入札手続きが公正に行われているか、民営化の趣旨全体に則しているか、国民負担を大きくしないか、といった点をチェックするためのものだ。報道によれば、入札によってこうした手続きは正当に行われている。かんぽの宿という不良債権の処理が遅れれば、資産はますます劣化し、国民負担を一層大きくする。早期に一括売却をすることこそが、資産価値を最大化する道である。その意味で、担当する総務相発言は国民負担を増やすというとんでもない方向を目指しており、野党もこれに賛同しているのである。

 かんぽの宿をめぐる今回の発言は、郵政の価値を棄損し、政策決定を族議員と官僚に有利にする効果しかもたない。民営化の当初の法律の定めに沿って、早期に一括売却を進めることこそが内閣の使命である。


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