豚蛇 編『たまいしまぜまぜ』2&3号/『ヌ・ガァ・クトフンの臓物』

廃道楽クトゥルー市場2↓…
http://domperimottekoi.hatenablog.com/entry/2018/04/24/050640
…にて入手の『たまいしまぜまぜ』第3号(2018/4月号 豚蛇出版)読。黒月蝶「邪神を描く事造る事〜HOW TO BUILD EVIL」はタイトル通り描画or造形(後者に重点)によって邪神を表現する技術を解説し作者実作品の写真(カラー含む)&イラスト付きの高実践性エッセー。列挙される工具・材料類も微に入り細を穿って具体的且つパソコン等デジタル系に頼らない徹底即物性が快感。創造に関心ある向きを触発するに相違ない即効入門篇──が遺憾乍ら個人的には創造性皆無の菲才者ゆえ只管感心するのみで慚愧。黒月氏は母体誌『玉石混淆』創刊号で創作をものしているが本誌今号では他に「クトゥルー都々逸」(!)をも披露の多才。編者豚蛇氏があとがきで「半ば黒月蝶特集」と謳う通りの活躍だがその豚蛇氏も「クトゥルー・ギャラリー」では負けじと画才発揮で吃驚! 両氏『宇宙船』誌投稿仲間だった由で積年のクト交友脈々。他 中沢敦「捩れ凝る究極」(未完成不定期連載第2回)は副題に不定期とある通り前号(↓下記紹介)には載っておらず未入手の創刊号に第1回掲載の模様。緻密な描写による廃寺の不気味な雰囲気が興趣唆る。2002年執筆とのことで新作ではないがこの際継続に期待。

一方『たまいしまぜまぜ』第2号(2017/12)での豚蛇氏は龍●●●(りゅうどうとうてつ=漢字不可)名義にてクト詩「湖神来たりて」とE・P・バーグランド「混沌の宇宙より」(あらすじ)の訳を担当。前者は本邦独自のクト地名とされる鳴兎子(なうね)に纏わる得意の七五調詩で鳴・兎・子の3字をさり気なく入れ。後者は作家バーグランドの未完作の梗概で黒山羊シュブ=ニグラスに触れ。巻末の「鳳夢夜「ゼロ次元の悪魔」執筆依頼書・企画書抜粋」は未完クトゥルーSFを巡る私信の公開でキャラ&設定の提案等こんなの載せていいの的乍ら興味深し。他 中沢敦「回帰せる怪奇」は自作英語詩の自訳 千熊敦「「新撰組怪異譚」設定文書抜粋」は『玉石混淆』2号掲載作で言及される邪神の図付き解説…と盛り沢山。両号通じて編者豚蛇氏の透徹したマニアック志向が印象的。

さらに遡って2011/1月に同じ豚蛇出版より刊行の『ヌ・ガァ・クトフンの臓物』(何やらん連星ルギイの胆汁めく凄い誌名だがヌ・ガァ…はラヴクラフト『闇に囁くもの』中で囁かれる謎語に因む由)。目玉は長田豪和の力篇創作「冥き迷霧の彼方に」。魔書『腐汁ノ大河』に絡む巻き込まれ型神話で悠揚迫らざるノンシャラン文体は作者あとがきにもあるように往時の倉阪鬼一郎作品世界の影響を思わせ感興大。因みにこの長田氏は(明かしてよいと思われ)編者豚蛇氏の別名義だそうで近年の『妖神乱舞』等での詰屈擬古文調思うと多彩さ見事。書評欄ではタイスン『アルハザード』ヴェリッシモ『ボルヘスと不死のオランウータン』逢空万太這いよれ!ニャル子さん東雅夫編『リトル・リトル・クトゥルー』等紹介され個人的には未知の早矢塚かつや『名門校の女子生徒会長がアブドゥル=アルハザードネクロノミコンを読んだら』に食指。他 錢倉金徳のPCクト画(スミス「ヴルトゥーム」題材)や龍●●●(りゅうどうとうてつ=漢字不可)の謎書物『輪轉』紹介や黒月蝶(癩々県名義)の俳句も。総じて編者豚蛇氏の斯界席巻への一過程を垣間見る気分で感慨。

↑写真下端の『リトル・リトル・クトゥルー』には豚蛇氏作2篇掲載されているが…自らによる上記書評では可成辛口。別機紹介予定。