春の書店に並んだいくつかの新しい仕事

先月ずっとやってた仕事が花咲くように次つぎと書店に並び始めました。
月刊『リアル・デザイン』書評欄 これから毎号執筆を担当します。毎月カラー1ページで和洋書新刊をセレクトした上でテーマごとに関連書籍を2、3冊合わせて紹介していきます。最新号(No.35、2009年5月号)ではアンディ・ウォーホルと音楽産業の連関に焦点をあてた展覧会《Warhol Live》の図録と同時刊行されたウォーホルのジャケ仕事のカタログレゾネを採り上げました。
昨年からインダストリアルアートコースに所属していることもあって、デザイン誌からの連載の依頼はタイミングがよくうれしい。コースの他の先生が専門とするプロダクト、空間、グラフィック、メディアなどデザインの諸領域に関する新しい書物と毎月たくさん向かい合う状況をつくることで、僕自身のポスト・インダストリアル体質(<苦笑)をデザイン界の動きと照合しながら、デザイン史の言説にも接続していけたらという秘かなる構想。

Real Design (リアル・デザイン) 2009年 05月号 [雑誌]

Real Design (リアル・デザイン) 2009年 05月号 [雑誌]


スタジオボイスコーネリアス・インタビュー 新譜『CM3』とDVD『SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW』の発売を前に訊いたもので、9・11以降=21世紀の不穏な時代感覚と情報共有の進んだ状況で彼が何を考え、提示してきているのかが、小山田ファンである僕自身の最大関心事だったのですが……詳しくは掲載誌を読んでください。記事タイトルは「共時性の共有から共感へ」──これらのキーワードはコーネリアス本人がとくに打ち出しているわけではないけれど、僕は彼の仕事に「共」の字に象徴されるさまざまな可能性を日々感じています。


現代アート事典』書籍化 美術手帖の2008年4月号特集「現代アート事典」が書籍化されました。担当執筆項目は「ポップ・アート」、「グラフィティ・アート」、「ネオ・ポップ/シミュレーショニズム」。ポップ/ネオ・ポップに関しては僕の関心領域として言うまでもありませんが、グラフとアートについて公式なかたちでこうして活字にまとめたのは初めて。事典の一項目なのでいずれも長くはないが、1980年代後半にグラフィティがアメリカ絵画に吸収されていったメカニズムが、90年代のブリット・ポップとYBAの関係、さらには2000年代の日本の現代美術がオタク文化を吸い上げていった過程と相似していることなど、これまで美術の文脈ではほとんど語られることのなかった観点を盛り込み&ちりばめてあるという秘かな意欲作です。

事典はじきに定本となり、次なる言論を生み出す礎となるべきものなので、やがて散見されるであろうエフェクトにも期待しながら、自分でも今回の三項目の周辺領域についてもっとまとまったかたちで書いておきたい気がむくむくと湧いてきてはいるのだが、このへんはネタの流動が激しい。1年前の雑誌掲載時にこの事典にバンクシーを入れるのはまだけっこう冒険的だったはずなのに、1年経って書籍化されてみるともう目新しくも何ともないことに、小さく拍子抜けしてみたりも。

現代アート事典 モダンからコンテンポラリーまで……世界と日本の現代美術用語集

現代アート事典 モダンからコンテンポラリーまで……世界と日本の現代美術用語集


アートワーカホリックアノニマス おっと、連載コラムも忘れずに。『クロスビート』2009年5月号も本日発売。音楽周りの文化表象論「アートワーカホリックアノニマス」は前回に引き続きオバマの大統領選挙戦の合言葉《Yes We Can!》のルーツをR&Bからソウル・ミュージックから、はたまた「ボブとはたらくブーブーズ」まで文化史的に縦横無尽に接続しています。文中では《Yes We Can!》は日本語に訳すなら、あの居酒屋チェーンの《よろこんで!》か「笑っていいとも!」の《そうですね!》に最も近似しているという珍説を披露してますので、どうぞご笑覧ください。
バンクシーの陰に隠れて米国以外ではイマイチ人気のないグラフィティ出身の画家シェパード・フェアリーのオバマグラフィックについても触れてみました。

ちなみに『クロスビート』誌でのコラム連載は、住倉良樹のペンネーム時代から数えると通算13年目に突入。回数にして150回!? レコジャケに関する独り言はもはやライフワークになりつつあります。


あとは、Chim↑Pomの『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』に寄稿したものが今週末に出る。明日3月19日に出版記念パーティーがあります。