どらまん。

2010-07-20

[]「P2!」を読んで、個人競技のスポーツ漫画について思う

P2! ―let's Play Pingpong!― 1 (ジャンプコミックス)

P2! ―let's Play Pingpong!― 1 (ジャンプコミックス)

連休中、2006年から2007年にかけてジャンプで連載された卓球漫画「P2!」全7巻を初めて読みました。で、思ったことをとりとめもなく。

速さが足りない!

良くも悪くもジャンプの漫画だなあ、というのが真っ先に思ったことでした。

登場するキャラクター達はみんな魅力的(相馬と晶が好きです)。卓球描写もなかなか迫力がある。サーブ・それに対するレシーブ・さらにそれに対するスマッシュを一コマで描けるってのは卓球ならではですね。「絶影」なんかの厨っぽい技名も漫画っぽくてイイ。連載が続いていれば、もっともっと面白くなっただろうと思わされます。

とにかく、打ち切られ方が豪快すぎる…。せめて秀鳳学園戦はきっちり描かせてあげようよ…。

未読者の方に向けて説明すると、地区大会準決勝で主人公・ヒロムが所属する久勢北が名門・秀鳳と対戦することになります。5試合行われるうちの初戦で両チームのエース同士が壮絶な戦いの末、久勢北主将・遊部が勝利。んが、その後久勢北は2連敗。そして4人目としてヒロムが秀鳳の主将・高槻との試合に向かうところで連載終了。ないわー。監督が初戦に向かう遊部に対し「お前が負ければ久勢北も負ける」と言う場面がありますが、あれは「お前の試合で人気が出なければ連載が終わる」と同義だったのかもしれません。

ヒロムと高槻の試合さえ描くチャンスがあれば、化けたんじゃないかと思えるんですけどねー。ヒロムの1回戦での試合は軽く鳥肌立ったし。ただまあ、仕方ないかと感じる気持ちもあります。ヒロムは全くの卓球初心者という設定。だったら早くヒロムをある程度のレベルに上げなければならないと思うのですが、才能の片鱗は見せるものの、最終7巻まででヒロムの試合がまともに描かれたのは地区大会1回戦のみ。これは流石にテンポが遅すぎる。

どうしてこうなったかといえば、他のキャラクター達の試合を描くことにページが割かれたからなんですよね。魅力的なキャラが多いことが仇になったのかも。

「ヒカルの碁」と「ベイビーステップ」

集団競技を扱うのなら、たくさんのキャラを出す必要があるのはわかる。じっくり丁寧にチームワークを描くのは大切でしょう。しかし個人競技を扱い、しかも初心者を主人公に据えた以上、そんなに多くのキャラクターを出す必要があっただろうか、と思います。もっと主人公をどんどん成長させ、かつその成長速度に説得力を与えるような工夫をしておくべきだったのではないか。

個人競技を扱い、初心者が主人公である少年漫画である「ヒカルの碁」「ベイビーステップ」と比べてみます。

P2! ―let's Play Pingpong!― 7 (ジャンプコミックス)

P2! ―let's Play Pingpong!― 7 (ジャンプコミックス)

ヒカルの碁 7 (ジャンプ・コミックス)

ヒカルの碁 7 (ジャンプ・コミックス)

ベイビーステップ(7) (少年マガジンコミックス)

ベイビーステップ(7) (少年マガジンコミックス)

「P2!」の最終巻である7巻時点の内容を比べてみると、「ヒカルの碁」では主人公・ヒカルはすでにプロを目指して院生になっています。「ベイビーステップ」の主人公・エーちゃんもプロを目指すことを決意し、全国ナンバーワンの実力者・難波江と対戦しています。成長速度が段違い。

なんでこんなに違いがあるかといえば、単純に作品内の時間の流れ方が早いってのもありますが、両作品とも主人公の成長速度を早める要素があるからでしょう。ヒカルには佐為という最高の指導者とアキラという同年代最強のライバルがいる。エーちゃんも名門テニスクラブに入り、身近に同年代トップクラスの選手がいるという恵まれた環境があるうえ、持ち前の分析力がある。

それと、両作品とも「部活」の扱いが軽いんですね。ヒカルは中学の囲碁部をとっととやめてしまうし、エーちゃんはそもそも学校のテニス部に入らない。この辺は、集団競技の漫画でも最近描かれることが多い気がします。中学野球ではシニアリーグ、サッカーではJリーグのユースの存在なんかが漫画の世界でも(メインではないにしろ)描かれることが増えている。学校の部活だけがスポーツの世界ではなく、むしろ高いレベルにある選手は小中学生のころから部活以外の世界で戦っているということが読者の側にも知られてきているんでしょうか。

卓球の世界でも、福原愛は小4でプロになり、中学のころには世界を転戦していたそうで。実際「P2!」の中でも川末晶は中学1年生にして女子卓球界の有名人というキャラで、福原愛に近い存在だと思われます。P2!でももうちょっと、晶のいる世界にヒロムが近づけていれば…と考えずにはいられません。

成長スピードと脱・部活

まとめると、主人公の成長スピードと、部活にこだわらないことが、今後個人競技を題材にするスポーツ漫画には重要なのではないか、ということです。特に、真っ向からテニス・卓球・陸上・水泳・囲碁・将棋・格闘技あたりのスポーツで頂点を目指す姿を描こうとする作品には(囲碁・将棋がスポーツなのかはともかく)。

なんか「P2!」をdisってるみたいだなぁ。P2!は本当に面白かったんですよ。もう1度書くけどヒロムと高槻の試合が見たかったのに、ああ…。今後、熱い卓球漫画が読めることを願っています。

(関連)

最近のスポーツ漫画はテンポが悪い?

whale6098whale6098 2010/07/23 01:57 はじめまして。
以前から主にベイビーステップ関連の記事を読ませてもらっています。
今回も非常に面白い考察でした。

私はP2!がダメだったのは部活云々よりも、藍川ヒロムの成長物語なのか久勢北の躍進の物語なのかはっきりしなかったことだと思います。

個人競技の団体戦を描く以上、全ての試合を描いていたらどうしてもテンポが悪くなってしまいます。(ベイビーステップは個人戦なのでちょっと違うかなと)
そこで例えばヒカルの碁ではヒカルの成長物語として、ヒカルの試合はじっくり描く代わりに他の人、筒井や加賀の試合は数コマ程度しか描写していません。
またチームの躍進を描く場合はスポットを当てる人が増えるので、その分1試合当たりにかける時間を短くしてどんどん進める必要があります。例えば青学の躍進を描いたテニスの王子様では、1つの対戦の中でじっくり描く試合以外は結果だけにしたり、2面展開を使う事で途中の描写を省いています。

それに対してP2!では作者が描きたいものを全て描いてしまった(これは打ち切りが怖いからかもしれませんが)ので、話がなかなか進まずチームが躍進していく印象は受けないし、またヒロムの成長物語として見るにはヒロムの成長・活躍を描いた場面が少な過ぎたかなと感じました。
もちろん私もP2!はとても面白かったしもっと続いて欲しかった。ジャンプじゃなくてマガジンに掲載されていればあるいは...なんて思います。
(蛇足...でもマガジンに掲載するならもっと濃い絵の方が良いかな?この絵はサンデー向きだと思うけどサンデーなら熱さを抑えてあっさりした話が合いそう。)

私なりの考えをまとめると、個人に焦点を当てるのかチームの物語にするのかをはっきり決めて、あまり寄り道しないことが重要だと思います。

いきなりの長文失礼しました。

doramandoraman 2010/07/23 22:52 はじめまして。コメントありがとうございます。

>ヒロムの成長物語なのか久勢北の躍進の物語なのかはっきりしなかった
それはありますね。最初の練習試合なんかも、面白いけど長かった印象ですし。
初心者であるヒロムを主役に設定した以上、ヒロムの成長をもっと描いてほしかったと僕は思います。

ジャンプじゃなければ、というのも確かに考えてしまいます。やっぱりサンデーじゃないかなあ。スポーツものでこれだけ面白ければ10巻以上は続きそう。

いろいろと丁寧に描き過ぎたのかな、という印象は受けてしまいますね…。

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