もうダマされない為の読書術講義(?):その1



このエントリは座談会の形式で以下の本についての書評をシリーズ物としてアップしていくものです。どうぞ宜しくお願いします。
光文社新書:『もうダマされないための「科学」講義』菊池誠 松永和紀 伊勢田哲治 平川秀幸 飯田泰之+SYNODOS/編
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334036447



■もうダマの感想まだなの?
う〜ん、『もうダマを読んだ感想を書きます!書きます!』と随所で発言してきたけれど、どんな感じで書こうかしら?ハードル上げ過ぎてしまったなぁ。

??:何を悩んでいるんです、どらねこさん。

どらねこ:あっ、みつどんさん*1、東京へ来る度に遊んでくれて有り難うございます。いやぁ、斯く斯く然々なんですよ。

みつどん:なるほどー、実は僕も『もうダマ』手に入れたんですよ、先日やっと読み終えたばかりで。

どらねこ:どんな感想持ちました、参考までに教えて貰えたら嬉しいな。

みつどん:いやぁ〜ホント為になる!買って良かった!!各分野で活躍されている方々がそれぞれ必要な科学についての為になるお話が一冊でまとまって読めるのだから、たいへんオイシイ!です。もう、美味しすぎて体重が心配ですよ。

どらねこ:(そう謂えば前回会った時よりも大きいような・・・)まぁ、確かにそれぞれ単独で読んだ場合タメになるとは思ったのですが・・・うん。

みつどん:どうしました?何か問題でも?

どらねこ:うん、何となく違和感があるんですよね、まずタイトルと中身が噛み合っていないような。勿論それだけじゃないのですが。

みつどん:ふむふむ。折角ですし、全員揃ってもう一度その話をしませんか。黒猫亭さんも『もうダマ』買ったそうですよ?

どらねこ:なるほど、クロネコッティさんの事だから喋りたくてたまらない筈だし、上手いこと感想引き出して美味しいところを貰えばいいですね。

黒猫亭:罷り越してござる。

どらねこ:あ、そのお約束の台詞は黒猫亭*2さんですね。実は、ごにょごにょごにょのごにょなんですよ。

黒猫亭:なるほど、そう謂う事ですか。簡単に目を通しただけなのですが、オレも少々気になった部分はありましたね。良いでしょう、少し落ち着ける場所に移動して話をしましょう。

みつどん:お腹にたまるものを出してくれるところでお願いします。
・・・
・・・
・・・

どらねこ:このお店で良いでしょうか?

みつどん:ここカラオケだよね?

どらねこ:案外お話しをするのに向いてると思いますよ、呼ばないと店員来ないし。

みつどん:歌を歌う場所で歌わないというのは僕の美学に反して――

どらねこ:あっ、ここ揚げ物も頼めるんですよ。

みつどん:がちゃ。あ、ポテトチップと大盛り焼きそば、エビチップにポップコーン、唐揚げにピザもお願い。

黒猫亭:見ているだけで胸焼けがしてきたが焼きそばだけは頂こうかな。大好物なんですよ、あっ甘エビの唐揚げ頼みませんか?揚げた海老は好きなんですよ。

どらねこ:どらねこは見てるだけで良いです。


■率直な感想

どらねこ:では、早速本題にうつりたいと思うのですが。

みつどん:どらねこさんは、なんかしっくり来ていないんでしたね。どんなところが気になったのですか?

どらねこ:他の方も指摘しているのですが、タイトルと中身が一致していないと謂うのが一つです。もうダマされない為に読む本なら、まずダマされていた事実があって、それはまっぴらごめんだ、じゃあそうならないように・・・と手にとるはずなのですが、個人むけのハウツーじゃなくて、個人でだけでは解決の難しいやたらと大きなテーマが語られていて、なんだこりゃ?となってしまいそうな気がします。寧ろ付録が一番タイトルに即している印象はありました。

黒猫亭:ネットの書評でもそう謂う声がありますが、たしかにこれはハウツー的な性格は弱いとは思いますね。寧ろ科学と社会を巡る諸問題の概説と呼んだほうが適切かもしれない。

どらねこ:ダマされない為にと謂うテーマで考えれば、『影響力の武器』なんてベストセラーがあります。その本ではこんな騙しの手段があるけれど、これこれこう謂う理屈で信用したり引っかかってしまうのです、と。人の思考の特性や状況によりどれぐらい影響を受けてしまうのかなど、ダマされてしまう理由と、引っかからない為のヒントが述べられているんです。このタイトルであれば、そう謂ったアプローチを期待してしまうのですが、この本の中には菊池さんの文章で軽く紹介されているだけの印象を持ちました。

黒猫亭:「ダマされない」と謂うフレーズに拘るなら、「自分はダマされていないと思っているあなたも実はダマされているのかもしれない」と謂う気附きをもたらすと謂う解釈もアリはアリでしょうね。たとえば片瀬さんの事例集で挙げられている震災デマについては、全部デマだと識っているわけでもない読者もいると思います。これを読んで改めて「え、あれはデマだったの?」と感じる読者もいるでしょう。それぞれの著者が挙げている事例についてもその種の驚きがあるのかもしれない。その意味で、「実はダマされていた」と謂う発見を与え、「では、どうすればダマされないのか」と謂う提言までを含んだストーリーだと謂う読み方もあるのかもしれない。そうだとしても、「どうすれば」と謂う部分の提言が弱いことは事実ですね。

どらねこ:特に第四章は、読者に何を求めているのか、何を学ぶ必要があると訴えているのかどらねこには分かりませんでしたね。なんて、毒舌吐いてスミマセン。実のところ一気に読めて面白くはあったのですよ。ただ、これって万人向けじゃないよね、と率直に思ったわけです。

黒猫亭:読み手を選ぶと謂う見方もあれば、意外と誰でもそれぞれの立場なりの読み方が出来るかなと謂う見方もある、と謂う感じですかね、オレは。自分自身がこの本の読者としてどう謂う位置附けになるのか、よくわからないと謂うところはありますが(笑)。

どらねこ:他の章でも気になる点はいくつかありましたが、後ほどじっくり話したいと思います。面白いのですが、手放しで絶賛できないんですよ。そこを3人で解きほぐせたらいいなぁ、と思ってます。ところで、黒猫亭さん個人的にはどんな感想を持ちましたか?

黒猫亭:どらちゃんの謂うようなタイトルとの乖離もそうだけど、それよりも本全体の構成が気になったかな。まぁ、既存の記事を流用したと謂うことで仕方ないとは思うのですが。個々の記事は問題含みながら関心のある読者にはそれなりに良いものとなっているけれど、全体の構成があまり良くないと思いますね。全体の構成が良くないので、一章で述べたことを踏まえて二章、三章と進んでいくわけでないから、一貫したロジックのストーリーとなっていないので違和感を持つ人も出るんじゃないかな。それで、読み終わった後に「で、結局ダマされない為に自分は何をすれば良いんだい?」と謂う事にも成りかねない。四章と付録を除けば元々が震災後の状況を踏まえて書かれた文章では無いのでしょうがないのだけどね。

どらねこ:なるほど、でも四章については震災後に書かれたのですよね。

黒猫亭:そのはずですよ。平川さんだけは、他の筆者が何を書いているのか読んでから自分の原稿を書くことが可能だったはず。ただ、現実問題としてそこまでの時間や労力を割くかどうかは本人次第だし、シノドスからのオファーの内容次第の部分で一概には言えませんけどね。

どらねこ:ところでみつどんさんはさっきから押し黙ったままですけれど、何か意見はありますか?

みつどん:あ、どうもごちそうさま。カラオケの飯は脂っこくてイケナイよね。

黒猫亭:壁の真ん中に口があって、その周りがブキミなくらいテラテラつやつやしているって、もう完全に妖怪では・・・

どらねこ:やだなぁ、妖怪じゃなくてただの寄生生物*3じゃないですか・・・じゃあ、各章毎の感想は次回以降につづくと謂う事で。

つづく・・・

*1:このブログでもおなじみのミスターモノリス、柔らかな物腰の割に指摘は鋭い。頼りにしてます。

*2:共通点は色々と黒い猫であるがどらねことは別人。複雑な事象も解きほぐし説明するチカラは惚れ惚れする。目が痛くなるのが玉に瑕

*3:ゼイニィhttp://d.hatena.ne.jp/T-3don/20110102/1293971967参照