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2012-07-31

糖質に着目した糖尿病療養食についての個人的見解:その1

| 18:00 | 糖質に着目した糖尿病療養食についての個人的見解:その1を含むブックマーク 糖質に着目した糖尿病療養食についての個人的見解:その1のブックマークコメント

タイトル通りです。

なんでこのような記事を書こうと思ったかと謂いますと、新聞にて極端な炭水化物制限に警鐘を鳴らす記事が複数掲載された事が関係しております。どらねこは今までに当ブログや別ブログどらねこ日誌にて糖尿病の食事療法について何度か言及し、意見を述べてきました。上記のニュースを読んだ人からの様々な反応を見て、自分も何らかの意見表明をした方が良いと考え、今回の記事を書くことにしました。関係する記事二つを引用します。


低炭水化物ダイエットご用心…発症リスク高まる (2012年7月8日 読売新聞より

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=61435&from=popin

炭水化物を制限する食事を長期間続けると、心筋梗塞脳卒中になる危険性が高まるとの研究を、ハーバード大などのグループが英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に発表した。

炭水化物を減らすダイエットが日本でも広まっているが、慎重に取り組む必要がありそうだ。

同研究グループは1991〜92年、スウェーデンの30〜49歳の女性4万3396人の食生活を調査し、その後平均約16年間、心筋梗塞や脳卒中などの発症を追跡調査した。

上記の記事の印象が残っているウチに下の記事が掲載されました。

極端な炭水化物制限「生命の危険も」…学会警鐘 (ヨミドクター)(2012年7月27日 読売新聞)より

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=62329

同学会の門脇孝理事長(東大病院長)は読売新聞の取材に対し、「炭水化物を総摂取カロリーの40%未満に抑える極端な糖質制限は、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながることが多い。短期的にはケトン血症や脱水、長期的には腎症、心筋梗塞や脳卒中、発がんなどの危険性を高める恐れがある」と指摘。「現在一部で広まっている糖質制限は、糖尿病や合併症の重症度によっては生命の危険さえあり、勧められない」と注意した。

この二つの記事は別件ではあるものの、タイミング的には前者が記事に採り上げられた事により、糖尿病学会から言及がなされたものと受け取られそうです*1。この順序は2つ目の記事のインパクトを高くしたのではないでしょうか。また、どらねこは元々そそっかしいため、2つ目の記事を読んだ後に、最初の記事は糖尿病の糖質制限食に言及したものであったと記憶違いをしておりました。もしかすると同じような勘違いをした方が他にもいらっしゃったかも知れません。


■意見表明してみる

【どらねこの基本スタンス】

f:id:doramao:20120731175830j:image:w530

一応上記のような意見*2を持っております。どらねこは単純なエネルギーコントロール型バランス食よりも糖質の量や質に着目した食事療法を対象者の特性に合わせて提案する事が妥当性が高いと考えておりますので、そのあたりのバイアスが存在する可能性を考慮しながら読み進めてくれればと思いつつ、ようやく本題に入ります。ヨミドクターに掲載された学会警鐘記事について、次の3つの点でどらねこは大きく気になりました。それぞれ論じてみます。


【炭水化物を総摂取カロリーの40%未満の制限食は極端か?】

どらねこは極端な炭水化物制限食というと、総摂取エネルギー*3の25%未満の1日の糖質摂取量が100gにも満たないような食事療法を思い浮かべます。脳が1日に用いるグルコースを糖質だけでまかなえる量を大きく下回るような食事ですね。

糖質エネルギー比40%くらいといえば、アメリカ*4の通常の食事で推奨される割合は45〜65%であり、それをやや下回る程度の食事を極端な糖質制限食と扱うのはどうかと思います。また、この下限とされる45%についても、食物繊維を十分とれなくなる事を懸念して定められたものであり、その懸念が無いとすれば、アメリカの食事摂取基準で従来から用いられている炭水化物130g以上の摂取が推奨されているだけです。

40%を少し下回る食事は極端な炭水化物制限食なのでしょうか?この表現にどらねこはやはり疑問を持ちます。


【現在一部で広まっている糖質制限では重症な合併症を持つ人にも薦めているのか?】

現在一部で広まっている糖質制限がどの糖質制限を指しているのかが分かりませんが、その具体例を示さなければ他の糖質制限についても危険視する人が現れるのではないでしょうか? どらねこは迂闊な表現であると思います。

また、重症な合併症で思い浮かぶのは糖尿性腎症ですが、まともな医療者であればそのような方に糖質制限食を薦めるはずがないと思います。これは糖質制限食に固有の問題ではありません。糖質制限食は医療機関受診無しに誰でも気軽にはじめられるものではない、と謂う周知が不足しているのであれば、それについてはしっかり行うべきだと思います。


【推奨されてきた単純な低エネルギーバランス食との比較はどうなのか?】

極端な糖質制限食の危険性を述べておりますが、糖尿病学会が従来から薦めてきた食事療法には問題がないのでしょうか? 糖尿病の問題点は常時高血糖状態がもたらす糖化作用による血管など細胞へのダメージの筈です。十分な血糖コントロールを実現できない食事療法では糖尿病を悪化させ、重篤な合併症をもたらしかねないのです。こうしたメリット・デメリットの比較を行う作業が必要な筈です。糖尿病の話であれば、単なる減量目的での糖質制限には無いメリットが期待されているわけですね。


■次回へつづく

今回は糖尿病学会の警鐘とされる記事について言及しましたが、次回以降は、炭水化物の少ない食事を続けた場合の危険性を明らかにしたとされるハーバード大発の論文に就いての検証や、食品交換表を用いた従来型の低エネルギー食の問題点などを述べたいと思います。

*1:実際は関係しているのかもしれませんが

*2:この表だけで無く、次回以降言及できればと思っております

*3:カロリーは単位であり、エネルギーが正しい用い方である

*4:AMDR値の事で、アメリカ医学研究所の食事摂取基準にある三大栄養素許容分布