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2012-08-08

糖質に着目した糖尿病療養食についての個人的見解:その3

| 16:50 | 糖質に着目した糖尿病療養食についての個人的見解:その3を含むブックマーク 糖質に着目した糖尿病療養食についての個人的見解:その3のブックマークコメント



シリーズ第3回です。

その1:http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120731/1343725208

その2:http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120801/1343814599


予告通り、どらねこが感じている従来型の食品交換表を用いた低エネルギー食の問題点について言及していきます。


■糖尿病食品交換表とは

食品交換表は、糖尿病の問題はエネルギーの過剰摂取にあるという考えの元、決められた範囲内で食品を選ぶことによりバランスの摂れた低エネルギー食の献立を自分で作成できるようにしたツールです。要するに、これに従って献立を考えれば医師の指示通りのバランスのとれた低エネルギー食を達成できるという事ですね。

食品交換表中の食品は、大きな特徴により4群に分類し、さらに含まれている栄養素の種類により、表1〜6と調味料のグループ分けが行われております。表1〜6の食品は1単位を80kcalと決め、1単位あたりの食品重量が書かれており、同じ表の中に含まれている食品同士を同じ単位数で交換することが可能という仕組みです。そして1日の指示エネルギー量に応じ、嗜好などに配慮し各表から何単位摂取をするか決定しますが、3食はなるべく均等な配分となるようにするのが原則になっております。

例えば、指示エネルギー量が1600 kcalであれば、20単位となり、1日の配分は朝食6単位、昼食7単位、夕食7単位・・・というように配分され、それぞれの単位配分に従い、表1〜6の食品を割り振ることになります。

また、指示エネルギー量によって異なりますが、食品交換表を用いると糖質エネルギー比は60%程度になると考えられます。


■どらねこが考える交換表の問題点

食品交換表には比較的栄養バランスのとれた献立をつくりやすい、覚えれば簡単に献立のアレンジが可能・・・などなど良い点も確かにあります。しかし、糖尿病で特に重要な問題である食後高血糖については食品交換表の考え方では十分な対応が困難です。また、低エネルギーのバランス食は痩せている人には不向きである事、たまに満足感を持てるような食事をしたいというある意味当然の欲求にも応える事が困難な点など、デメリットがメリットを上回ってしまう人も多いのでは無いかとどらねこは考えます。次の項目から個別の問題点を細かく見ていくことにします。


■食事摂取基準との違い

人間が生きていくためには食事をとらなければなりません。食事により、消費したエネルギーを補充するわけですが、必要なエネルギー量と同等もしくはそれ以上を確保しなければ身体を維持する事はできません。食事からのエネルギーが消費エネルギーよりも少なければその分身体を削って熱を発生させる事となり、痩せるというわけです。これについては糖尿病の人もそうでない人も同じです。(当たり前ですが)

さて、個人がどれくらいエネルギーを消費するのかを知るためには、二重標識水法という手法が正確なのですが、簡単に計測ができる方法では無いので、普段は別の方法を用いて見積もりを行います。一番わかりやすいのは体重の変化を調べることでしょう。エネルギー量が過剰なら太りますし、不足しているのであれば痩せるはずです。これで食べている食事が自分にとって多いのか少ないのかが分かるのですね。ですが、この方法は時間が掛かりますし、一定の期間に食べた量をある程度把握しておかなければなりません。そこで、個人のエネルギー消費量の見積もりは「日本人の食事摂取基準」という科学的根拠に基づいた基準を参考に求められる事が推奨されます。

ところで、食品交換表では指示エネルギーに基づいて単位を割り振る事になっていると二つ前の項で述べましたが、この指示エネルギーは食事摂取基準と違う方法で求められるため、場合によっては求められるエネルギー量に大きな違いが現れる事があります。例を挙げて検証してみます。

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次に男性の場合を見てみましょう。

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どうでしょうか。食品交換表では低エネルギー食を推奨しているからか、必要と考えられるエネルギー量よりも少なくなる傾向があるようです。計算式の特徴から、特に男性についてはその差が大きくなると考えられます。太り気味で減量が必要な人であれば良い場合もあるでしょうが、日本人の糖尿病者には痩せているのに発症する人が比較的多い事を考えると必要以上に痩せてしまうという危険性があります。糖尿病は食事療法も大事ですが、運動がとても大切である事が知られております。そして、運動を行う為には、その分をまかなうエネルギー摂取が必要になります。物足りない食事で運動をする気力が維持できるでしょうか? 現実にやたらと少ない指示エネルギー量で苦労している方をどらねこはよく目にします。これらは食品交換表を用いた食事療法からの脱落と関係しているとも考えられます。


■低エネルギー食で血糖値が下がるのは?

食品交換表を用いた療養食で血糖コントロールが良くなるケースもけっこうあるとは思います。それはどういう仕組みによるのでしょうか?少し考えてみましょう。


1日に摂取する糖質量が減ることによる高血糖の抑制:

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同じ糖質エネルギー比60%であっても、総エネルギー量が少なくなれば身体に入る糖質量は少なくなります。

当たり前の話ですが、糖質エネルギー比が同じであれば、摂取エネルギーが100kcal 増える毎に身体に入る糖質は25g 増える事になります。低エネルギー食では必然的に糖質摂取量が減り、高エネルギー食に比べれば食後の高血糖は抑えられそうです。


バランス良く食品を組み合わせて食べる事による血糖上昇抑制効果:

精製度の高い糖質(主にグルコース主体の多糖類、少糖類など)を単独で摂取した場合には食後血糖値はたいてい急上昇します。食品交換表ではある程度多くの食材を用いたバランス食を提案しているため、ごはんとジャガ芋の煮物程度の質素な食事に比べれば食後の急速な高血糖をある程度は抑制できる可能性はあるでしょう。


体重減少による効果:

過体重の人ではインスリンの分泌量の割にその効果が十分に得られない*1事があります。低エネルギー食による減量効果はこれの改善が期待できます。勿論、既に十分に減量している人については期待できません。


■健康的な身体を維持したい

低エネルギー食ならば結果的に糖質摂取量が下がるから問題がない・・・、本当にそうなのでしょうか。

例えば、やや血糖コントロールが不良のやせ気味の人に継続的な運動を奨めたとします。運動の量が増えれば消費エネルギーも増えますから、糖質エネルギー比が一定ならば、その分糖質摂取量が増える事になります。すると、1回に口にする糖質量が多くなりますので、食後高血糖のリスクが増してしまいそうです。もし血液検査データの悪化があれば医師からの指示エネルギーは下がってしまうかも知れませんし、薬物療法の導入を奨められるかも知れません。これってどうなのでしょう?

こうしたケースで、摂取する糖質の量は一定にしたままで運動した分のエネルギーはたんぱく質や脂質で補えば、エネルギー不足を招く事はありません。このあたりが食品交換表の考えの限界であるとどらねこは思います。


■健康的な食事って?

病院給食みたいな食事こそ健康食では?というようなイメージを持っている方はけっこういらっしゃると思いますが、あのように毎回決まった分量の食事を続けるという事はあまり自然ではないと思うのですね。ところで、どらねこには矢鱈と油モノを食べたくなる日があります。暑い日にはさっぱりしたモノを、我慢が続いたあとには羽目を外したくなるような日もありますし、胃の調子が悪いときは何も食べたくなくなる事もあるでしょう。体調やその日の気分を考慮せず毎日同じ分量、同じ栄養割合の食事が提供されるというのは果たして健康的なのでしょうか?どらねこはそんな疑問を持っております。

糖尿病であっても、糖質の量を管理し、血糖上昇をゆるやかにさせる食材を組み入れればある程度自由な食事をする事が出来ることがしられております。なんだか油モノが食べたいなぁ、そんな日があっても良いのです。次の日は少し少なめにすればよいのですから。栄養バランスについて考えれば数日平均で辻褄がそれなりに合えば良いのですから。ほら、とあるおじさんブロガーの食生活もこんな感じですよ(笑)。一週間のうち1日くらい糖質エネルギー比が20%くらいになる日があっても良いじゃないですか。それが続けば心配がでてくるというだけの事なんですよ。

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交換表はある程度簡便にバランスの良い献立をつくれるツールに過ぎないという事を忘れてはいけないと思います。療養食はあくまで手段であり、目的では無いのですから。


■おわりに

糖尿病には幾つかの食事療法がありますが、どの方法を用いるにせよ予想される結果が自分の目的に適ったものになるようなモノを選んで欲しいとどらねこは思います。食品交換表に問題があるように、他の食事療法にも問題点は同様に存在するのです。血糖コントロールが良くても別の病気を招いてしまうのは望ましくないでしょうし、糖質を控えるのが良いと思いすぎて、大好きな食べ物を我慢しすぎるのもまた不健康であるかも知れません。食事療法も運動療法も薬物療法のどれも有用なツールです。冷静な判断で自身にあった組み合わせを見つけて貰えたらなぁと思います。

*1インスリン抵抗性