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とらねこ日誌

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2013-06-19

リンゴ農園に突撃(?)してリンゴ農家の本音を取材したよ(後編)

| 12:16 | リンゴ農園に突撃(?)してリンゴ農家の本音を取材したよ(後編) - とらねこ日誌 を含むブックマーク リンゴ農園に突撃(?)してリンゴ農家の本音を取材したよ(後編) - とらねこ日誌 のブックマークコメント


(前編)はこちら→http://d.hatena.ne.jp/doramao/20130618/1371549428

※注意※

前編記事中にある腐らん病対策の高分子吸収体ですが、効果が無いと考えられているとコメント欄でご指摘頂きました。この件についてHさんは効果が無いのであれば止めようと思う。早いうちに効果が無いことが分かったのはラッキーです。ちなみに周辺の農家は自分のところの他の園地ではどろ巻き法をやっています、とお話し頂きました。

前編では「実は無農薬には魅力がある」と語ってくださったHさん。では、どうして無農薬に挑戦しないのでしょうか。


■無農薬には魅力がある?


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ど:魅力があるのに挑戦しないというのはやっぱりリスクがあるんですよね。

Hさん:ええ、無農薬無肥料の定義はおいといて、木村さんが推奨されている農薬散布なしに大きなリンゴを実らせた事自体はすばらしいと思いますよ。だけど、木村さんのウェブサイトを見ると安定した収量を確保できてないみたいなのですよ。

ど:確かにそうみたいですね。特に2009年は不作で十分に供給できなかった旨が以前掲載されてましたね。他にも友人や来訪された方にも収量が十分でないという話をしている様子が、ネット上でも見られますね。

Hさん:今の収量の7割しか確保できなくても毎年安定して収穫できるのなら、やってみたいとは思いますが、木村さんはそこまで至るまでに数年は収穫なかったようですし、現在も収量などのデータを公表してませんからね。

ど:リスクが大きすぎるわけですね。

Hさん:そうした数値の公表無しに、他の農家はなんで無農薬栽培をやらないのか?というのはフェアじゃあないですよ。木村さんの農法に成算があるのなら、きっと青森県りんご協会*1などからアナウンスがあると思うんですよね。ですけど、そうした動きは今のところないですからね。ある程度信頼しているそうした研究機関などが検証し、再現性がある事がしめされれば、農家は農薬使用に変に拘らずに採り入れると思いますよ。

ど:意外と柔軟なんですね。

Hさん:そうですね。商売ですからメリットがあれば挑戦しますよ。逆にそれが無いと思っている人が多いから手を出さないんです。普段の栽培でも、農薬を使わずに虫や病気を手間がかからずに撃退できる方法があるのなら、ちゃんと利用するんです。腐らん病対策でも、良い方法があれば新しいアイディアがあればどろ巻き法でもオムツでもとり入れますし、害虫の天敵がいればそれを利用したり、と。


■リンゴに対する誤解あれこれ


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豪雪によるリンゴの枝被害。わい化栽培だけでなく、雪による枝折れは農家にとって深刻な問題。放置すると病気の原因となることも。


ど:では、もう一つ質問したいことがあるのですがよいでしょうか。ツイッターでこのまえリンゴが古くなると表面がテカテカするワックスについて書き込んだのですが、けっこう反応があったのですよ。アレって農家が出荷するときに塗っているのだと思っていたという方がけっこういらっしゃるんですね。あれは、リンゴ自体が分泌していて、虫を付きにくくしたり、水分が飛ぶのを防いだりしているんですよね。

Hさん:ああ、なるほど。ワックスはジョナゴールドにでやすいですねぇ。自分のところにもそんな誤解をする人いますよ。でも、一番多いのはいわゆる「みつ」についての誤解ですねぇ。

ど:え、そうなんですか?どんな誤解なのですか。

Hさん:「Hさんのところのリンゴは自然でイイねぇ、ちゃんと蜜が不揃いに入ってるからね」といわれるんですよ。話を聞くと、注射で蜜を入れているんじゃないかと思ってるみたいなんですね。

ど:いやぁ、それは全く考えた事なかったです。

Hさん:「みつ」は今でこそ人気ですが、昔は「りんご密病」なんて呼ばれてまして、長期保存すると「みつ」の部分が悪くなりやすいから生理障害とみなされてたんですよ。

ど:へぇ〜〜〜

Hさん:「みつ」はフジという人気品種に入りやすいんだけど、完熟したあとに中心部に貯まることから、完熟りんごの証しでもあるので確かにみつりんごは甘いですね。でも、みつが入っていないというクレームなんかもいただくことがあって、品種による違いがあることや、必ず入るわけではない事を説明するのが大変ですね。

ど:評価は時代とともにかわるものなのですね。私も食品学などをやっていたので、食品成分についてはちょっとわかるのですが、「みつ」の部分にたまっているのは糖アルコールの一種ソルビトールで、ソルビトール自体の甘さはショ糖(砂糖の主成分)を1とすると0.5〜0.6ぐらいなので、たいして甘くないんですよね。なので、その部分を食べても美味しいわけじゃないし、アレは細胞から水があふれでている状態なので食感もよろしくないし。

Hさん:なるほど、ソルビトールの甘さですか。

ど:話をずらしてしまってすみません。他にはどうですか?

Hさん:う〜ん、あとはやっぱり農薬についての誤解が多いかな。まかれた農薬は植物にしみこむと思っている人が多いんですよね。

ど:ああなるほど、自分の周りにもリンゴの皮は農薬がしみこんでいるから絶対食べちゃダメという人がいますね。本当のところはどうなのでしょう?

Hさん:基本的に内部に浸透して残留するような薬剤は危険だから認められて無いと考えて良いですよ。だから、農薬を散布したあと雨が続くとせっかくかけた農薬が流れてしまって、効果がでない*2なんて事があります。なので、農薬散布は晴れが続くときに行うものなんです。かけたら吸収されてとどまるのならそんな苦労はないですけど、安全が優先ですから。

ど:農薬って流れちゃうんですか。

Hさん:そうですよ。それと農薬をかけて病気や虫に喰われないようにするのは、主に葉っぱに対してで、実には基本的に直接はかけないんです。収穫前1ヶ月以降は全く使わないですよ。

ど:へぇぇ、そうなんですか。

Hさん:袋かけはしますけど、袋を外したあとに虫にやられるなんて事はあまりありませんね。基本的にリンゴ果実自体には農薬いらないんですよ。熟したりんごの敵はカラスです。美味しそうなのばかり狙いやがる。

ど:カラスは頭イイですからねぇ。

Hさん:葉っぱにかける農薬も、昆虫がサナギから成虫にならないような薬とか、特定の昆虫にだけ効果があるとか、無差別に殺すような薬でもないんですよね。

ど:農薬をまいて育てた野菜は虫も食べないなんて誤解もありますよね。

Hさん:そうそう、そんな誤解。農薬がかかるとそこから中に入り込んで農薬に汚染した野菜になってしまっているというイメージは強いんですよね。だから虫も食べないと。

ど:植物を育てた事がある人だと理解して貰いやすいのですが、一般の人はそういうものかと思ってしまいますよね。農薬まいて虫食いの被害がない野菜でも、アオムシを乗っけてあげればちゃんと食べますからね。市販の野菜クズで、昆虫飼育ができるので試して貰えれば笑い話にしてもらえると思うんですけど。

Hさん:そうそう(笑)。そういえば、不可能だと考えられていた無農薬栽培に成功、というキャッチコピーですが、個人的には元々不可能とは思ってはいないですね。

ど:といいいますと?

Hさん:近所に比較的放任の農園があって、ほとんど病害虫の防除をやってなかったのですけど、秋にはちゃんと実ってましたね、小さかったですけど。

ど:へぇ〜、育つ物なのですね。

Hさん:小さいのは摘果もちゃんとしていなかったからで、収量に拘らなければ可能なのかな、と。でも、これが成り立ったのは周囲の農家がちゃんと病害虫対策をやっているからだと思うんですよね。

ど:周囲の防除にフリーライドしている・・・と。

Hさん:そういうことです。例えば木村さんのところも、そうじゃないというのであれば、それを実証するために、周囲に農園のない地域に圃場を用意し、研究者と一緒に実証研究すれば良いと思うんです。でも、そんなことをしているという話はききませんね。

ど:もし有用な農法であり、それを周囲が採り入れるのには不可欠な検証でしょうね。

Hさん:木村さんの件かどうかは不明なのですが、この地区の農家の方で、農薬散布を行わない農家の人がいて、害虫や病気の発生源*3になってこまると役場に団体で苦情を訴えたなんて事がありましたね。役場としてはどうしようもないみたいでスルーされたようですけど。

ど:安易に採り入れる人が続出すればそういう事が今後もおこるかも知れませんから、注意が必要ですね。

Hさん:繰り返しになりますが、木村さんの苦労や努力の結果、現在の成功があるのは素晴らしいと思うのですけど、残念ながら数字がありません。それが大学や研究機関などがきちんと条件を揃えたところで検証していただければいいなぁと思うのですけどね。

ど:良さそうなところがあればどんどん採り入れる貪欲さはリンゴ農家にある事がわかりました。


■でも本人は危険なのでは?

ど:消費者は安心してリンゴを食べて良い事が分かりました。ですが、農薬を散布する農家のかたについてはどうなのでしょう? 木村さんの始めた切っ掛けというのが、妻の農薬による皮膚障害という事でしたし。周囲の農家で同様の症状を持っている人などはいますか?

Hさん:うーん、そのような話はきいたことないですね。よっぽど昔であればわかりませんが。農薬を機械で散布するときは防護服を着ますし。あと、農薬の準備中には良くないのかも知れないけど肌の露出があって少しかかってしまう事もあるけど、なんとなくかゆくなりそうな気がするから、水で洗い流すようにはしているけどね。

ど:なるほど。もしかすると、農薬そのものが問題というより、その人が特定の成分に敏感に反応する体質だった可能性もありそうですね。確かに、その人にとってその薬剤は害悪ですから、避けたいという気持ちになるのはわかります。天然の物質でも漆にかぶれる人もいればそうで無い人もいるように、アレルギー反応ってそんなものですよね。大丈夫な人は気にしなくて良い、と。

Hさん:いやぁ、ウルシに実は弱いんですよ。山菜採りでやられた事あります(笑)。自分がウルシに弱いからといって、ウルシはけしからん、撲滅せよとは思わないけどね。


■理想のリンゴは?

ど:まだまだお伺いしたい事はありますが、もうこんな時間ですしこれで終わりにしたいと思います。繁忙期だというのに、作業を中断させてしまい申し訳ありませんでした。

Hさん:いえいえ、楽しかったですよ。普段リンゴ農家の話を聞く機会のない人がどんな感想を持つのか楽しみですね。それと、リンゴ農家だけど反復作業は飽きるから丁度良かったよ(笑)。

ど:最後になりますが、Hさんが理想とするようなつくりたいリンゴってどんなものでしょう?

Hさん:そうだねぇ、味も大事なんだけど新鮮なリンゴの歯ごたえというのは長持ちしないのだけど、あの歯ごたえを長持ちさせたいねぇ。そんなガリっとした固さが長持ちするリンゴをつくりたいねぇ。

ど:成算はあるんですか?

Hさん:いや全然無い(笑)。でも、そういうリンゴつくってみたいですね。

ど:今日はありがとうございました。


■おわりに


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リンゴ農家にとって忙しい時期であるというのに、午前中の大事な時間を割いてまで取材を受けて下さったHさんには感謝の気持ちでいっぱいです。

「無農薬は魅力だよ、使わないですむならそれにこしたことはない」と仰っていたHさんの言葉がとても印象に残りました。リンゴ農家の方は消費者に安定して良い品質のリンゴを届けることが最優先と考えており、再現性の確認されていない*4方法においそれとは挑戦できないのだなぁ、という事が実感できました。事実、農薬を使わない良さそうな方法があれば、その都度とり入れており、新しいことに挑戦しないという頑なな農家というイメージと異なり、柔軟でしたたか(?)なリンゴ農家の実際の姿を見ることができたのはとても貴重な体験でした。

木村秋則さんのリンゴストーリーも感動的ですが、それぞれの農家にも様々な物語があるんだなぁと取材を通して感じたところです。Hさんの理想とするリンゴができた時には、真っ先に買いに行きたいと思いました。



■追記6/21

コメント欄にて農薬の使用方法等について、栽培法により違いがあることなどを指摘頂きました。

Hさんの農場は有袋栽培というリンゴに袋がけをする方法ですが、袋をかけない無袋栽培では害虫に対する対策などに違いがあるという事です。

http://tahata.seesaa.net/article/366998796.html

*1:その他、県や研究所などの信頼できる機関の指導はかなり参考にしているとのこと。勿論、失敗もあるため全面的に信用しているわけではないですと仰っていました。

*2:流れる事もそうですが、効果が出るぎりぎりまで薄い濃度で使用するように設定されているので、雨で薄まれば十分な効果が期待できなくなります。それぐらいの配慮がなされているそうです。

*3:この件とは別に、農薬をまかない農園に隣接する農園を農薬の試験地としているという企業からの情報もあります。無農薬農園に近いところは実験対象となる害虫が多く、試験に丁度良いからという理由だそうです

*4:しかも周辺への迷惑になる可能性が否定できない

kiya2015kiya2015 2013/06/19 18:04 ブコメでvegan_lionさんが書かれているように、
あなたのやっていることは
苦労してリンゴを作っている木村さんや
苦労して映画を撮っているスタッフのみなさんに対する
ハイエナ行為です。
科学的に正しいとかいう錦の御旗でみんなの苦労を大所高所から評論してブクマ稼ぎ、
浅ましいとはお感じにならないのでしょうか?

えみりえみり 2013/06/19 18:21 あらいやだ。苦労しているリンゴ農家は木村さんだけじゃないですよってお話だということが読み取れない人がいるみたいね。

doramaodoramao 2013/06/19 18:27 苦労した方が報われる物語って魅力的ですよね。
私も大好きですよ。

kiya2015kiya2015 2013/06/19 20:24 茶化してないで、誠実に答えてください。

他のブコメにも誠実な訴えがありましたので転載します。

Zarathustra1951-1967さん
「これが成り立ったのは周囲の農家がちゃんと病害虫対策をやっているからだと思うんですよね。」
とところは、ろくな根拠が述べられてない単なる想像。
現場の人がそう言うのはわかるけど、太字で強調するのは何様?

どうお答えになりますか?

山口(産婦人科)山口(産婦人科) 2013/06/19 21:12 農家でも何でもない、園芸好きのおばはんですが、kiya2015さんにひとこと。

 他人の家に囲まれた庭で農薬散布したくないという理由で、農薬なしで3年頑張りましたが挫折しましたよ。うどんこ病やらヨトウムシやらイラガやら赤星病やら、もうでるわでるわ。バラとかボケとかはことに弱い気がします。同じバラ科なので、リンゴも病気に弱いんじゃありませんかね?

 で、周りが病気や害虫を駆除してくれるから無農薬の農家が成り立つというのも、今の風疹の流行を見たら分かりませんかね。農薬を撒いた農家が風疹のワクチンを打った人に相当します。周り中ワクチンを打った人ばかりなら、一人二人ワクチンを接種しない人がいても感染しませんよね。でも全員がサボればどうなります?

 農家でない人でも、これくらいの想像はつきますよ。

tawafutawafu 2013/06/19 21:23 木村さんの虫に対する考え方を理解してから取材してほしかった。虫が動物と同じようにおいしい作物を食べるという一般的な認識のままでは、無農薬栽培は失敗します。お互いの本質がわからないままでは、慣行農家側を代弁しているだけで、中立的なフェアな内容にはなっていないと思います。

かとうかとう 2013/06/19 21:31 どらちゃん、お疲れさまです。
Hさん、面白いお話を伺わせて頂き、ありがとうございます。


山口さん
当然そうですよね。集団免疫の考え方と同じですよね。
集団免疫と違う所は、農薬を撒かれた時点で虫が逃げようとするわけで、その時撒いてない一角があればそこに生きてる虫が逃げ込む。その場所で生き延びた虫が、農薬の効果が薄れた頃にまた回りの圃場に出て行く。
これを繰り返してると、農薬耐性がついた虫も出やすくなるわけで、誰の得にもならない。
『無農薬』をやってる人の側も損なんですよね。周りから集まっちゃうから。隔離された場所でやるのなら、完全にその農園の経営者の判断だけでいいんですが。

doramaodoramao 2013/06/19 21:51 >山口(産婦人科)さん
本題とはずれてしまいますが、予防接種有害論にはホント腹立たしく思っております。一部の本当に受ける事が困難な人の健康を守るものが集団免疫という考え方なのですけど、理解が進まないですからね。

doramaodoramao 2013/06/19 21:54 >tawafuさん
中立的なフェアな内容を書こうと思っての記事ではありませんのでご期待に添えないかと思います。

doramaodoramao 2013/06/19 21:55 >かとうさん
どうもです。Hさんも多くの方が読んでくださりビックリしてました。

コテハンコテハン 2013/06/20 10:01  病害虫の巣になるのは結構実例があるようです。リンゴではありませんが、その点がネックになり訓化数年間の無収入と廻りにかける迷惑の二点が無農薬実施へのハードルという農家が多いです。
 有機肥料に関しては、あまりにも当然ですが、元々の地味、生産する作物の種類によって要求度は変わるようです。全てが同じような団粒構造の土壌を好むわけでなく、砂質や粘土質を好むものもあります。土壌を作るのは100年単位で考えないと行けないそうで、一世代ぐらいで善し悪しが言えるお話しではないようです。

GreWaGreWa 2013/06/20 13:42 >kiya2015さん
いやだからHさんも「数値に出して欲しい」って言ってるんじゃないですか。単に周りの努力にフリーライドしているだけかもしれない、という推測は普通はしますよ。

おにぎりおにぎり 2013/06/20 14:04 賛否両論あるなか実際に農家の方に取材までされているdoramaoさんの本記事は大変興味深かったです。

しかし、ブログが普及しはじめてから爆発的に増えましたね
”個人”ブログに”公共性”を求める輩が

ブロガーの方が何のためにブログをやるかっていったら個人的感情や意見を配信するためではないかと思うのですが…。
そのなかには”公平な立場をある程度意識した個人の意見”も存在するわけで、
何を書くかは個人の自由でしょう。

「何を書いても許されると思ってるのか!?」という言葉が聞こえますが、
許されないのであればその【権限】を持った誰かが動きます。

少なくともPCの前でコーヒー片手に書き込んでるアナタにその権限はありません。

itohitoh 2013/06/21 00:30 いつもblogを拝読しています。
今回のエントリーは私にとって色々と関係のある内容でもあり,非常に参考になりました。

なお,リンゴ農家H氏のコメントで一部事実誤認と思われるものがあり,私のblogで取り上げさせていただきました。

http://tahata.seesaa.net/article/366998796.html

doramaodoramao 2013/06/21 08:15 記事拝見しました。
農薬をかけた野菜を虫の件ですが、その話は私が振ったもので、人が食べる状態を想定してのものです。そのあたりまで注釈で書いた方が良かったかも知れません。


農薬についてのご指摘は、市販の農薬でも浸透性のものが存在しますし、私も用いているところですので、その点も誤解を招くところはあると思います。ご指摘ありがとうございます。


農薬の取り扱いは栽培方法によって異なる事をブログ記事のURLとともに注釈しておきます。

ありがとうございます。

itohitoh 2013/06/21 20:53 私のblogを紹介いただき,ありがとうございます。

リンゴ農家であるH氏の現場からの声は,とても参考になりました。
ただ,生産現場をあまりご存じない方が今回のエントリーだけで判断されると誤解を招きかねないと思われる点を,私のblogで取り上げさせていただきました。

今後とも,参考になる情報を期待しています。

(某日ののぎ茶会に参加し,doramaoさんの発表を拝見した者です。
その際も参考になる情報が聞けて,ありがたかったです。)

doramaodoramao 2013/06/21 21:12 こちらこそご指摘頂き、ありがとうございました。
午後に参加頂いた方でしょうか?
ちょっと恥ずかしいです。

紅玉好き紅玉好き 2013/06/27 01:10 蜜の入ったリンゴが嫌いだったので蜜の成分や流行がわかってすっきりしました。ありがとう。

doramaodoramao 2013/06/27 07:59 いえいえ、良かったです。

名無しの権兵衛名無しの権兵衛 2013/09/29 06:58 利己主義があたかも個人の尊厳であり、個人の自由っていうのはどうなんですか?
欲望主義を追求する人間に個人の尊厳の一欠片もない
誰も原発マフィア、原発村の村人みたいな奴らに尊厳も何も感じない
個人の尊厳があって、みんなの尊厳があり、その中で個人の自由っていうのがあるんでしょう

原発マフィアに屈せず、原発再稼働を容認しないという新潟県知事の姿に尊厳、尊敬の念は感じても
原発再稼働を容認する新潟県知事に尊厳も尊敬の念の一欠片も生じはしないのです

尊厳ってなんだ?って言ったら、それを判断できるのは

情(こころ)でしょうね

2013-06-18

リンゴ農園に突撃(?)してリンゴ農家の本音を取材したよ(前編)

| 18:57 | リンゴ農園に突撃(?)してリンゴ農家の本音を取材したよ(前編) - とらねこ日誌 を含むブックマーク リンゴ農園に突撃(?)してリンゴ農家の本音を取材したよ(前編) - とらねこ日誌 のブックマークコメント


弘前市のリンゴ農家へ

最近なにかと話題の「奇跡のリンゴ」ですが、どらねこは映画化以前から興味を持って木村秋則さんの主張や栽培法などの情報を調べたりしておりましました。といっても、興味の対象は「宇宙人に会った」とか、「バクテリアのおかげか自然栽培のお米からは放射線が出ない」といったリンゴ栽培そのものではない部分についてのものでした。

映画化されるとなるとインパクトは大きいようで、普段は話題にならなかったリンゴの無農薬栽培についての話題をちらほら目にするようになりました。あくまで個人の成功例にとどまればよいのですが、映画を見たひとが、なんで危険な農薬を他の農家はやめないの?とか、木村さんの行う農法があたかも理想のように考える人が増えやしないか心配になってきました。

しかし、どらねこはリンゴについては素人です。これは一度リンゴ園を見学して本業の方からおはなしを伺うべきじゃあないか、と思っていたところ、快く見学を引き受けて下さるリンゴ農家の方が現れてくれました。折角の機会ですので、ご厚意に甘え、木村さんと同じ弘前市の岩木地域にあるHさんのリンゴ農園へとどらねこは取材に向かいました。


■まずは園内を見学

弘前市中心部から車で20分ほどの岩木山を仰ぎ見る絶好のロケーション。Hさんのリンゴ園を訪れての率直な感想です。思わず、映画の撮影に良さそうですよね、と口にしてしまいました。


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今日は草刈り作業の予定だというHさんに案内され農場見学。とはいえ、園内は綺麗に整備されております。


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パイプがたてられ、リンゴの樹を支えているのがわかると思います。この農場は「わい化栽培*1」というあまり大きく育ちにくい性質を持ったリンゴを栽培しており、幹があまり太くならないので倒れやすいため、パイプで支える必要があるそうです。


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この何かの茎みたいなのはいったいなんでしょう? 中にはマメコバチという小さいハチが住んでまして、リンゴの受粉用に園内で飼っているとのことです。ミツバチに比べ受粉能力が高いそうで、このハチのお陰で、夜中まで大忙しだった受粉作業から解放されたそうです。冬はこの筒ごと冷蔵庫に入れておけば良いそうで、管理も楽なのだとか。


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まだ小さくてうぶ毛に覆われたリンゴの実です。受粉したリンゴの花は全て実らせると大きく育ちませんので、良さそうな実だけを残す摘果という作業が行われます。Hさんの畑のリンゴは摘果はほとんど終わっておりました。


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これは支柱とぶつかり樹がいたまないような工夫ですね。


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腐らん病に罹ったリンゴの樹です。この病気はValsa ceratosperma という真菌(カビのなかま)が原因であり、放置すると全体に広がってしまうおそろしいものです。根本的な解決策がないそうで、枝にでた場合には、根元からはさみで切りとり燃やしてしまうのですが、幹に出た場合にはこれ以上広がらないように次の写真のような対応を行っているそうです。


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これは、オムツのような高分子吸収体が入ったシートを巻き付けているそうなのですが、常に湿度を保った状態にすると、菌が弱り、症状が抑えられるのだそうです。こうしたおそろしい病気を流行させないために、予防作用のある薬剤を散布するのですが、予防接種と同じく集団できっちりと行う事がやはり大切なようです。例えば、青森県には「青森県りんご黒星病及びりんご腐らん病まん延防止条例」というものがあるのですが、放任状態になったリンゴ園が病気の発生源とならないように、放置されたリンゴの樹を自分たちの権限で伐採することができるようになっています。青森市では、平成23年度実績で、1.59ha の伐採実績がありました。


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と、なんだか急に熱く語りだしてしまってすみませんでした。ええと、今度はリンゴをはぐくむ土壌です。Hさんの農園では下草は刈り込むぐらいで、根元だけ除草剤をつかっているとの事です。

肥料については化成肥料を撒くだけですが、同じ土地で数十年収穫を行っていても収量は安定しているとの事でした。


■率直な感想は?

さて、園内散策も終わり、今日の目的でもある映画の事や所謂自然栽培にどんな考えを抱いているのかを伺う事にしました。


ど:映画が公開されテレビでも特集がくまれたりしてますが、以前と変わった事などはありますか?

Hさん:以前に、NHKスペシャルでも奇跡のリンゴが採り上げられた事があったのですが、それ以上に反響があるなぁ、と思います。やはり本業ですので気になりますからネットでキーワード検索などもするのですが、以前は批判的な意見は出てこなかったのですが、映画化後は賛否両論でてきますので、農家としてはありがたいです。個人的に検証して批判なりをしてくれる方がいるというのは嬉しいですね。

ど:リアルではどうでしょう?

Hさん:父親はアレは物語に過ぎない、といってますね。あと、友人などからは冗談めかしてなんでやらないのだ、といわれることなどもありますね。こまるのは年配の人などから、どうして無農薬で成功した人がいるのにオマエは挑戦しないのだといわれることでしょうか。

ど:やはりそうした話はあるのですね。

Hさん:そうですね、実情を知らない人に説明するのは大変ですね。ちょっと頭に来たときなどは一からしっかりと説明することもありますが。

ど:無農薬に挑戦しないのにはわけがあると?

Hさん:そうです。無農薬って実は農家にとっても魅力的なんですよ。農薬のコストもかかりますし、スケジュールもしっかり守らなければで手間もありますし、なくせるのならなくしたいですよ(笑)。


後編は木村さんの言動などに対する思いや、農薬やリンゴに対する誤解など、Hさんへのインタビューを盛りだくさんです。→http://d.hatena.ne.jp/doramao/20130619/1371611793

*1:従来の栽培法は丸葉栽培などと呼ばれます。普通のリンゴは樹高が高くなりやすく枝を広げるように剪定する事から、本数を植えるためには広い土地が必要で、高い場所のリンゴをせわしなければならないため、労力が大変であるとの事から、リンゴの生育を抑える性質のある台木に接ぎ木した、わい化栽培というものが導入されました。比較的少ない面積に多くの樹を植えることができること、収穫までの期間が短いこと、収穫が楽であるという期待から最近の主流になりつつあります。ところが、いざ育ててみると思ったよりも樹の勢いが良く、省力化に疑問があったり、安定して収穫できる時期が短いなど、色々と問題も見られるようになってきました。メリットはあるもののデメリットもあり、新しいことに挑戦することの難しさも感じる事例です。ちなみに、新わい化栽培という、台木をさらに工夫した新しい方法にチャレンジしている人もいるようです

warblerwarbler 2013/06/18 22:31 参考までに、腐らん病対策は「青森県産業技術センターりんご研究所」に昨年取材をして研究員の方から最新の情報を教えて頂きました。こちらで紹介されているオムツのような高分子吸収体が入ったシートを巻き付ける方法ですが、一時期りんご農家に流行った方法ですが、最終的に効果が確認されず、患部を蒸らした状態にしておくと逆に原因菌が繁殖して悪化する事があるということで、現在はやらない様に指導しているそうです。これとは別の「泥巻き法」という方法は効果が公的に確認されており、薬剤を使用しない民間療法としてはこちらを推奨しているそうです。
一度「青森県産業技術センターりんご研究所」に確認してみて下さい。

HISIHISI 2013/06/19 01:14 こんにちは。後半を楽しみにしています。貴重なお話を有難う御座います。

doramaodoramao 2013/06/19 08:28 >warblerさん
確度の高い情報ありがとうございます。
この件についてHさんに確認したところ、研究機関からのそうした話があるのなら、中止しようという事でした。
周囲の農家もどろ巻き法は実施していたけれど、新しい方法があると聞いてとり入れてみたそうです。

doramaodoramao 2013/06/19 08:29 >HISIさん
期待にこたえられるような後編をおとどけできるかわかりませんが、今日中のアップに向けて書いております。ありがとうございます。

suzuki3350suzuki3350 2013/06/19 20:21 安倍を英雄に仕立て上げて選挙に挑みTPP・原発再稼働・徴兵制度を強行
http://anond.hatelabo.jp/20130527195731

前回の不正選挙はやり過ぎたから地方選挙は大人しくしてるんじゃね?
http://anond.hatelabo.jp/20130604183722

十年後に庶民=労働者の平均年収を150万にする政策だと解りますね?
http://anond.hatelabo.jp/20130618192317

アベノミクス=偽りの好景気演出=消費税増税のネタフリ
http://anond.hatelabo.jp/20130619181552

自民党の支持率は10%もありません・民主党の支持率は40%は余裕であります
http://anond.hatelabo.jp/20130529212746










税と社会保障一体改革を考察するスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/10043/1341399267/l50
【中央銀行・発行権】黒幕は銀行家37【信用創造】
http://uni.2ch.net/test/read.cgi/kokusai/1343051395/

2013-01-21

マクガバンレポートと今村光一さん そしてその後

| 20:06 | マクガバンレポートと今村光一さん そしてその後 - とらねこ日誌 を含むブックマーク マクガバンレポートと今村光一さん そしてその後 - とらねこ日誌 のブックマークコメント

(この記事は以前運営していたブログどらねこ日誌に2009年08月04日掲載したものを大幅に加筆・修正したものです)


■マクガバンレポートの名を借りた代替療法推奨本

マクロビオティック関連本や一部の食育関連書式には、昔ながらの日本食がアメリカで推奨されている例として、1977年に提出されたマクガバンレポートが登場する事があります。

そこで紹介されるマクガバンレポートは次のように紹介されたりします。


5000ページにものぼるレポートである


マクガバンレポートでは理想の食事を元禄時代以前の日本の食事としている


後に大統領候補にもなったマクガバン議員が委員長である


マクガバンレポートは久司道夫の意見を採り入れマクロビオティックの食事を参考にしている


マクガバン議員は副大統領候補であったり、中には副大統領として紹介されているサイトも確認されておりますが、実際にはそのような事はありません。こうした肩書きを利用し、信頼性を高めようという手法は、権威論証とも呼ばれるポピュラーなテクニックですが、事実とは異なる事を書くのはルール違反でしょう。

また、実際の報告は5000ページも無い事、元禄時代の日本の食生活に言及した記述など無い事、マクロビオティックは参考にされていないなど、実態に即した解説ではない事も確認されています。

その検証を丁寧に行ったものが、「火薬と鋼」というブログの次のエントリです。


マクガバン・レポートを巡る伝説

http://d.hatena.ne.jp/machida77/20090802/p1

マクガバン・レポートの真実

http://d.hatena.ne.jp/machida77/20090808/p1

本来まともな報告であったマクガバン・レポートの日本での認識をマクロビオティックや代替療法などがどのようにゆがめられてきたのか、原典の日本語訳である『米国の食事目標(第2版)米国上院:栄養・人間ニーズ特別委員会の提言』を参照し検証を行った記事で大変参考になります。未読の方には是非とも読んで貰いたいです。


■誰が最初にゆがめたのだろう

ところで、日本に於けるマクガバン・レポートの認識がここまでゆがめられてしまったのには、マクロビなどの健康本だけでなく食育本などでも上記のような宣伝文句が繰り返し用いられてきたからだと思います。これは日本の伝統食の良さをアメリカ人も認めている、というわかりやすい根拠としてとても使いやすいモノだったからこそでしょう。ところで、その紹介のされ方は、原典を直接引用したモノはなく、マクガバンレポートの邦訳とされる、とある本を引用と書いてある事が殆どです。どらねこは今回、その抄訳本を書いた今村光一氏の事について書いてみたいと思います。


■今村氏のマクガバン本

『「アメリカ上院栄養問題特別委員会レポート いまの食生活では早死にする」監訳者 今村光一 経済界 刊』この本はたいへん好評であったのか、何回も改訂が行われております。


1981年:初版

1988年:改訂版

1994年:改訂新版(改訂版の装幀を新たにしたもの)

2002年:改訂最新版

1994年の改訂新版が手元にありますので、事実と異なる説明がどのように為されているのかを引用しながら紹介していきたいと思います。


前書きより

 アメリカ上院栄養問題特別委員会(当時、マクガバン委員長、以下M委と略記)が資料も含めて五〇〇〇ページを超える膨大なレポートを発表したのは一九七七年だった。このレポートは、二年間にわたりアメリカばかりでなく世界中から資料を集め、またアメリカ以外の国からも学者を招き証言を求めて出された、きわめて密度の濃いレポートだった。

世界中から情報を収集したこと、5000ページを超えるボリュームであった事が前書きに書かれております。


プロローグ(p18)より

M委は、後に大統領候補にもなったマクガバン議員を委員長に、後に上院外交委員長になったパーシィ議員(もっとも熱心な活動家でミスター栄養委員会と呼ばれた)、一九八八年度の大統領選に出馬中のドール議員。日本でも識られるケネディ議員など大物議員を揃えたアメリカ上院でも重要な委員会であった。

マクガバン議員が大統領候補という記述もこの本にありました。ところで、「マクガバンレポートで示された理想の食事は伝統的な日本食(若しくはマクロビオティックの食事)である」という記述は本書にはありませんでした。初版での有無は確認しておりませんが、この部分については、新谷弘実さんの著書から広まった可能性が高そうですね。


■抄訳とはいうけれど

本書はマクガバンレポートの抄訳という体裁をとっているものの、具体的に引用した部分はあまりなく、「委員会でも証言した○○博士が述べているとか」、「M委ではこんな証言があった」、と記しながらその名前が書かれていなかったりします。また、委員会とは無関係だと思われる別の事例が委員の発言とされる文章のあとに書かれていたりと、どこまでがレポートの紹介なのか、どこからが今村さんの主張なのかがよく分からない構成になっています。マクガバンレポートの抄訳であるとの認識で本書を手にされた方が居たとしたら、その期待は裏切られてしまうでしょう。

さらに問題だと考えられるのは、現代医学や薬学を否定し、代替療法・根拠の乏しい食事療法を推奨する記述が色々とみられる事でしょう。


p32-34より

そしてガン細胞も抗ガン剤に対し、それに負けない細胞に自身の遺伝子を操作して変身することがわかったというのだ。つまり抗ガン剤ではガンを治療できないことが理論的にも確認されたというわけだ。

<中略>

抗ガン剤治療の無効性が、ガン細胞の中の薬剤対抗遺伝子の働きによって理論的にも証明されてしまっては、イヤでも他の方法に転換せざるを得ない。いまのシーンは薬医学から栄養医学への転換を促す象徴的なシーンといえる。

このように、薬医学の問題を指摘し、栄養療法が主役であると述べる今村さんですが、どんな療法を薦めているのでしょうか?


p242-243より

結核が猛威を揮った今世紀前半に独自の対結核食事療法を創始し、九九%の患者を救ったゲルソンは、その後のガンの食事療法も考案、一九三〇年代から約三〇年にわたって末期ガンでも二人に一人は救うという驚異の実績を上げた。

<中略>

これに対しゲルソンは、ガンは心臓病、糖尿病などの成人病と同じく退化病(老化病)であり、とくにその退化の程度がひどい病気だとした。そいsて、退化病なので食事や栄養のとり方によって体全体の退化を逆転させてやれば、体自身の持つガンに対する自然な抵抗力が強化され、それによってガンは自然に治るとした。

ゲルソン療法は、減塩、低脂肪、オーガニック野菜、未精製の穀類、コーヒー浣腸などを特徴とする代替療法ですが、勿論その有効性が実証されておりません。こうした海外で考案された代替療法を今村氏は翻訳を積極的に行い、日本に紹介しているようです。


p244より

ビタミンミネラルのガン治療効果が注目されている

拙訳書『ガンはビタミンで治る』の著者プラサド博士は、国際ガン栄養学会の会長でアメリカ、コロラド大学のガンとビタミン研究所所長であり、専門はガンとビタミンEの関連の研究である。この本はビタミンやミネラルとガンの関連、これらの栄養物質をつかってのガン治療のことなどを書いた本である。また拙著『ガン・奇跡の栄養療法』はこれらの療法の他にゲルソン療法などについても詳しく紹介してある。

このように幾つもの代替食事療法本を翻訳している今村氏ですが、近頃話題になることが多い、酵素栄養学の本も翻訳しております。


『食物酵素のBaka力 病気を防ぎ・治す、健康・長寿も思いのまま E.ハウエル 著 今村 光一 訳解説 ヘルス・ビジネス・マガジン社刊 (2002)』

今村さん自身は健康食品の輸入販売会社も運営しており、訳書で紹介した食品やサプリメントなどを販売していたようです。マクガバンレポート本において、本文を詳しく紹介することよりも、代替食事療法を薦めるための文章が多くなっているのはこのためでは無いかと考えられます。


■今村さんのその後

それまでは積極的に翻訳本を刊行していた今村さんですが、2003年以降は改訂版を除けば新たな著作をみかけなくなりました。どうしたのでしょうか。


日本経済新聞 2002年10月19日 社会面39より

医薬品の無許可販売容疑で逮捕医療ジャーナリスト

神奈川県警生活経済課などは十八日までに、医療ジャーナリストの今村光一容疑者(67)=東京都大田区上池台二を薬事法違反(医薬品の無許可販売など)の疑いで逮捕した。今村容疑者は健康食品の輸入販売会社「うまいもの倶楽部」を経営。二〇〇〇年六月から今年三月にかけてカイロプラティック経営者ら八人に、健康食品計約二百五十万円を無許可で販売するなどした疑い。同容疑者は「一日二、三錠で体調が整う」などと薬効をうたっていたという。

どうやら、輸入販売会社の食品の売り方で摘発を受けたようです。しかし、この後の経過については調べられませんでしたので、裁判となったのか、判決はどうであったのかは不明ですのでこれ以上の言及はおこないません。

そして、この件との関連性は不明ですが、2003年に急逝されたと食品販売会社のサイトに書かれております。

なんとも早すぎる死に複雑な気持ちを抱いてしまいます。

ふぃっしゅふぃっしゅ 2013/01/22 14:05 doramaoさん、こんにちは。
過去の記事も読み返して、とても勉強になります。ありがとうございます。そしてmachida77さんのブログも参考になります。
英語の文章を翻訳すると日本語のほうが少ないページ数になるのだと思いますが、それでもひどすぎですね。
代替療法とそのバイブル本で儲けを得ようとする経済構造が見えてくる話ですね。
またしばらく、私のブログでdoramaoさんの過去記事にトラックバックさせていただくと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

まるもったんまるもったん 2013/01/22 18:00 はじめまして。書き込みするのは初めてですが、しばらく前から読ませてもらってます。大変勉強になってます。
さて、1月12日漬け日経夕刊の記事でも、東京大学名誉教授の月尾嘉男先生が、「かつて米国が医療費抑制のために世界の食事を調べた時、最も理想的な食事は元禄時代以前の日本の庶民の食事でした。」と紹介しております。しかも、この米国政府の調査結果原因で米国に和食レストランが急増したとまで書いています(もちろん、そんな事実もありません)。

元総務省総務審議官という月尾先生が、いったいどこからこのような奇妙な俗説を「学んだ」のかが、気になります。まさか総務省で、ということではないことを願います。
日経新聞はこの手のマクロビ寄りの記事が好きなことも気になります。

どうしたら月尾先生や日経のようなオピニオンリーダーが食育について正確な情報を身につけてもらえるものでしょうか。
doramaoさんのご意見をお聞かせいただければとてもうれしいです。

まるもったんまるもったん 2013/01/22 18:04 漢字変換ミスがありました。ごめんなさい。
正しくは、12日漬け→12日付け、調査結果原因→調査結果が原因
です。

doramaodoramao 2013/01/23 07:57 >ふぃっしゅさん
これはもう、原典にあたる人はどうせ顧客には誰もいないだろう、というやりたい放題ですよね。
この件があるので、代替療法関連の訳本は原典をチェックしないと信用できないなぁ、という余計な心配のコストがかかるようになってきました。相互信頼こそが社会のコストを下げる良い知恵なのですけどね。
ふぃっしゅさんのシリーズもそろそろ佳境ですね、楽しみにしてます。

doramaodoramao 2013/01/23 08:06 >まるもったんさん
情報のコメントありがとうございます。
月尾さんの件は知りませんでした。又聞きなのか、そうした食事療法に親和性があるのかは存じませんが、そうした立場の人が事実誤認で適当な事を大手メディアに垂れ流すことはとても問題だと思います。
広告収入をあてにしたビジネスモデルである新聞やテレビという媒体では、こうした記事とつながるようなハウツー本や健康本の広告主に配慮せざるを得ない構造だと思いますので、当分はこのままなのかな、と思います。
とはいえ、毎日新聞では、以前は明らかに変だろうという所謂ニセ科学的な記事が載ることが多かったのですが、最近ではそうした記事が減っているように思います。
これは、一部記者の取り組みも関係しているようですが、こうした記者の取り組みを応援する読者がいないことには、支持があつまらないモノだと思います。地道な努力となりますが、良い記事、悪い記事とも、その根拠を明確にして支持や不支持を表明するような事が一読者にできる事なんじゃ無いかな、と私は思ってます。

まるもったんまるもったん 2013/01/23 13:00 doramaoさん

どきどきしながら投稿したんですがご回答をもらって小躍りしました(笑)。

>そうした立場の人が事実誤認で

月尾先生の立場を考えれば、事前に確認するのが普通なのになぜ??、と僕も思いました。
新聞/雑誌編集者も、インタビュー記事などは、先生に恥をかかさないために裏を取ってから掲載すると聞いています。今回は裏を取ってないとは変だと思います。

>広告主に配慮せざるを得ない構造

日経は2002年〜一昨年ぐらいまで、食育・農業・生活・医療関連記事がマクロビと疑似科学寄りでした。最近はずいぶん減ってきましたが、今も時々載ります。

指摘を受けて気がつきましたが、日経には頻繁に新谷氏(kikulogでも一時話題になった)の広告が載ってます。広告主の影響、大きいんだと思います。

一方、日経本社の隣のJAビルの農業書専門店が「うかたま」等のマクロビ本を扱ってるんで日経の記者はこの本屋で農業と食育を『勉強』している、という可能性もあるかなと思います。

>これは、一部記者の取り組みも関係しているようです

毎日も疑似科学寄りの記事があったんですね。
毎日本社ビル(パレスサイドビル)にはマクロビレストランが長年入っていることも、影響しているかも??(これは半分冗談です。)
減ったのはきっと小島記者と、元記者の松永和紀先生の尽力のおかげだと思います。


>良い記事、悪い記事とも、その根拠を明確にして支持や不支持を表明

日経にマクロビを勧める記事が載っていたので事実関係を問い合わせたら、なしのつぶてだったという苦い経験があります。

doramaoさんみたいに、支持や不支持をネットで表明して
大勢の人と情報を共有して、草の根で共感の輪を広げて行くことが大事なんだと思いました。僕もそういう活動に少しでも役立てればと思いました。

新聞・雑誌記事で首をかしげるような食育情報を発見したら
コメント欄でdoramaoさんと読者の皆様にも紹介していいでしょうか。(見つかる頻度はだいたい月に1〜2回ぐらいです。)

machida77machida77 2013/01/23 14:38 こんにちは、町田です。
月尾嘉男氏のマクガバン・レポートについての発言は、以前「栄養学のメモと活用」のエントリ(http://d.hatena.ne.jp/kuiiji_harris/20100316/1268746166)で知りました。
どうもこれは本人の持ちネタの一つのようで、「月尾嘉男 元禄」でGoogle検索すると講演会などで発言した例が無数にみつかります。
例)
http://www.pref.toyama.jp/sections/1605/noukan/mizutotsuchi/h18kouen.html
http://www.satoyama-satoumi.com/houkoku2008/kenkyu_activity/archives/2007/04/post_39.html
http://www.reinet.or.jp/pdf/lib_374.pdf
虚偽のマクガバンレポートの話が、月尾氏の伝統回帰の思想を都合良く裏づけしているので多用しているという事でしょう

doramaodoramao 2013/01/23 16:50 >まるもったんさん
賑わっていないコメント欄ですので、あまり効果は期待できませんがかまいませんよ。
月尾さんについては、丁度コメント欄に町田さんが情報を載せて下さいましたので、参考になりますね。
私個人の意見ですが、ある程度相手を信頼している場合や既成事実的に扱われている内容や文化的に好ましいと思われているものについては比較的スルーされやすい傾向があるように思います。
伝統の〜、とあれば読者も好意的に見る傾向がありますので、余計にハードルは下がると考えられます。

doramaodoramao 2013/01/23 16:53 >machida77さん
いつも情報ありがとうございます。調べようかな、と思っていたところでしたので助かりました。
アメリカにも影響を与えている伝統食という構図は色々と擽るものがありますので、講演会でお互いが良い気持ちになるには格好の材料なのでしょうね。

まるもったんまるもったん 2013/01/25 22:47 doramaoさん

ありがとうございます。これからヨロシクお願いします。

>伝統の〜、とあれば読者も好意的に見る傾向がありますので

(良い意味で)懐疑的に話を聞く癖をつけないと、危険なんですね。
余談ですが、伝統という言葉に弱い時代を反映してか
そこに便乗する人も増えているように思います。
塩麹も、発明者の女性は近年発明したと明らかにしているのに、一部の雑誌記事では伝統のような表現をしているし・・・・

新規な伝統がどんどん発明されるのは困りものですね(笑)

machida77さん

詳しく調べてもらってありがとうございます。
リンク先を読んで、開いた口がふさがらなくなりました。
月尾先生には、早く目を覚ましてもらいたいです。

doramaodoramao 2013/01/29 07:59 目的(正義)のためなら少々の逸脱も・・・、という心理なのだとは思います。
でも、それは学問的な場面(それが期待される人)がやっちゃだめですよね。

味噌汁味噌汁 2013/02/01 22:57 よく伝統の日本食と言われますが、具体的に何がそうなのかはよく分かりません。お米・焼き魚・味噌汁に和え物・・・なんていう食事を果たして一般的に日本人はこなしてきたのか。まして、元禄時代以前にこんな食事が一般的だったことなど有りえないでしょうね。

doramaodoramao 2013/02/02 08:46 そうですね。昔の日本は・・・とひとくくりにでいるようなスタンダードは無かったのに、なんとなく一汁三菜の質素な食事をイメージしてしまう人がいらっしゃると思います。お米が多くの方の主食と言えるようになったのはちょっと前の事なのですけれどね。

hirohiro 2016/07/06 14:20 マクガバンレポートを調べてこちらの記事を読ませていただきました。
紹介されている関連サイトなども読ませていただいた上でなのですが、

>マクガバン議員は副大統領候補であったり、中には副大統領として紹介されているサイトも確認されておりますが、実際にはそのような事はありません。

とありますが、副大統領候補ではないようですが、Wikiのアメリカ合衆国大統領候補者には名前がありました。(Wikiが間違っているのかもしれませんが…)

https://ja.wikipedia.org/wiki/Category:%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E5%80%99%E8%A3%9C%E8%80%85

検証を丁寧に行ったものを、丁寧に再検証する必要があるのだと感じました。

2012-10-29

小学校の動物飼育はウサギが推奨されているの?

| 11:09 | 小学校の動物飼育はウサギが推奨されているの? - とらねこ日誌 を含むブックマーク 小学校の動物飼育はウサギが推奨されているの? - とらねこ日誌 のブックマークコメント


■うさぎ飼育が推進されている?

『30代転職組の教員日記(愛知県)〜元システムエンジニアの転身〜』というブログの『【衝撃!】日本全国の小学校で、うさぎを飼育するブームがはじまっています。』という記事を読みました。


『【衝撃!】日本全国の小学校で、うさぎを飼育するブームがはじまっています。』より引用

学習指導要領というものがあり、その内容にそって、学校は授業を行う。

このことは、教師の世界では当たり前のことであるが、知らない保護者も多い。

で、最近その指導要領が新しく改変されていて、低学年の「生活科」では、なんとうさぎの飼育が奨励されているのだ。

新しい学習指導要領が実際の教育現場で運用されるようになり、それに伴い文部科学省が小動物の飼育を推奨し、日本全国の小学校でどんな小動物を飼えば良いのだろう?無難なのはやっぱりウサギかな・・・という話になっているそうだ。

ええと、上記はどらねこの理解に基づく要約なのだけど、小学校も大変だなぁ・・・、そんな感想を持ちかけてふと思った。「まてよ?どらねこの知ってる範囲では動物の飼育は昔から励行されていたような気がするのだけど・・・」そんな風に思ったのでちょこっと調べて(というほどではありませんが)みました。


■指導要領を見てみる

指導要領が新しく改変された為、という事なので「小学校学習指導要領 新旧対照表」の生活科の項目を確認してみます。

現行の部分は「学習指導要領(平成10年度改訂)」で改訂が「新しい学習指導要領」であり、小学校では平成23年4月より運用開始されました。



第5節生活 p83より

f:id:doramao:20121029110521j:image:w540

生活科で動物を飼うことについては旧学習指導要領でも言及されており、この部分は新しい学習指導要領でも変わっておりません。

ちなみに、これ以前の学習指導要領(平成元年改訂)では次のように書かれております。


文部科学省webサイトhttp://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/old-cs/1322331.htmより

5)野外の自然を観察したり、動物を飼ったり植物を育てたりして、それらの変化や成長の様子に関心をもち、また、それらは自分たちと同じように成長していることに気付き、自然や生き物への親しみをもちそれらを大切にすることができるようにする。

動物を飼うことについては以前から指導要領にあった事がわかります。では、どこがかわったのでしょうか。


p84(現行)より

f:id:doramao:20121029110610j:image:w540

1学年から2学年にかけて行う事と書いてありますね。



p84(改訂)より

f:id:doramao:20121029110635j:image:w540

強調はどらねこによる

飼育の仕方について、継続的にという事が強調されております。今までの指導要領に於いても同じように飼育がなされているものと想定されていたものの、学校によってはその時だけの飼育で終わってしまっている事例があった事から文言がかわったものであるよう*1です。


■べつに指定はしていないが

では、文部科学省はウサギなど特定の小動物を奨めているのでしょうか? 言及先の記事では、次のように書かれております。

http://d.hatena.ne.jp/arigato3939/20121020/1350741142より

ウサギ、モルモット、ハムスター、ニワトリやチャボ、というのが、

「学校における望ましい動物飼育のあり方」(文部科学省委嘱研究)

http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06121213/001.pdf

という資料にも掲載されていて、ともかくも日本全国の小学校で、このマニュアルとにらめっこしながら、多くの教員が

「わが校は、いったい何を飼育しましょうかねえ」

と、4月の新学期になると、職員会議であーだこーだと、議論しているのであります。


これをみると、「学校における望ましい動物飼育のあり方」という参考書があり、そこで推奨されているのが5種類、というように読めます。実際にはどのような内容がかかれているのか、冊子を確認してみました。


「学校における望ましい動物飼育のあり方」p11より

f:id:doramao:20121029110758j:image:w540

「これらの小動物は、比較的多くの学校で飼われているが、ここに解説する小動物を、どこの学校においても飼育することを求めているものではない。」

あくまでも例である事がキチンと書かれて居ます。

勿論、小学校という場所、近隣の影響、職員等の配置の問題、地域の文化等々、様々な制約があるなかでの動物の選定になりますから、実際には選択肢は少ないのかも知れません。しかしながら、参考資料にはそういう趣旨ではないと書かれておりますので、その精神を大切にした運用がなされて欲しいとどらねこは思います。

ちなみに、この参考資料は平成12年につくられたもので、今回の改訂にあわせて作成されたわけではない事も書いておきます。

mimonmimon 2012/10/29 23:27 私が通っていた小学校でも、ウサギを飼っていました。昔のことですから、新鮮な野菜クズなどを餌にして、「水をやると死ぬ」という迷信までありましたので、休日でも当番は餌をやりに出かけたものです。
モルモットも暑さや寒さに弱いので、屋外で飼うのは難しいでしょうね。
例示するにも、もっと飼いやすいのを挙げてほしいと思います。

モグモグ 2012/10/30 10:01 私の小学生時代(1976年〜82年)も普通に生き物は
飼っていました。やっぱりウサギ、鶏、教室内のグッピーですね。
確か在学中に鶏のときの声について近所からクレームが入りました。このあたりが、飼うならウサギの要因かもしれませんね
この元システムエンジニアの教員の方にとっては珍しいかも
しれませんが、小学校で生き物を飼うのは普通じゃないですか?
とりあえず「いきものがかり」に謝って下さい

doramaodoramao 2012/11/08 12:57 >mimonさん
お返事遅くなりまして・・・。
新居に引っ越しでドタバタしておりました。
ウサギは水をやると死ぬ迷信はどらねこ世代では死んでおりました。
飼いやすい動物というと、クマネズミあたりでしょうか。

doramaodoramao 2012/11/08 12:59 >モグさん
一応東京の学校でしたが、ニワトリも数種類おりましたし、キジバトやドバトなどやたらトリが多かった記憶があります。
池には色々な生物が住んでいましたねぇ。

2012-09-27

出産施設関連統計から助産所での出産などを考える

| 19:07 | 出産施設関連統計から助産所での出産などを考える - とらねこ日誌 を含むブックマーク 出産施設関連統計から助産所での出産などを考える - とらねこ日誌 のブックマークコメント

助産師であるふぃっしゅさんのブログ「ふぃっしゅ in the water

周産期医療と助産師および助産所の役割や課題や疑問点について問題提起や詳細な解説などなどを行っているブログです。特に最近のエントリは力が入っており、これらの話題から離れていたどらねこもぐぐっと引き寄せられてしまいました。

とはいえ、今のところ言及できるようなネタはありませんので、少し調べ物をして終わってしまいましたが、今後参照できるデータとして一つのエントリにまとめておこうと思いました。


■統計資料を読んでみた

周産期医療の問題の一つに、産科医療の多忙さが挙げられると思います。いつもは人口動態統計を見るぐらいなのですが、医療の関わる問題と謂う事で、我が国の保険統計という資料を閲覧しました。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hoken/national/22.html

厚生労働省「平成22年度我が国の保健統計」

この資料のp35に1施設あたりの分娩数の推移を見ることのできるグラフがありました。

f:id:doramao:20120927181653j:image:w575

産科医の人数を反映したものではありませんので、この数字通りに忙しくなったまではいえないかも知れませんが、病院や診療所の多忙さは伝わってくると思います。


■自然な分娩を求める声としてよくあるもの

病院での出産では無く、助産所での出産を求める声の一つに「病院での流れ作業のような出産や帝王切開や無痛分娩をすすめる人工的な出産よりも、助産所での、自然な出産、妊産婦を尊重した自分ら良い出産を」というものがあります。

こうした声が生まれる背景には、単なる自然な分娩というイメージだけでは無く*1、多忙な現場の状況によりやむにやまれず親身な対応を求めていた妊産婦の気持ちを無視した対応*2により生じている可能性がありそうだと、どらねこは考えております。

もしこの考えが正しいのであれば、助産所での分娩数は病院や診療所のソレに比べて少ない事が予想されます。


■助産所での出産件数は?

これを調べるために、人口動態統計の各種データを確認することにします。

まずは、出産を巡る状況の推移やトレンドを把握したいと思いましたので、出産数と施設別の出産数の年次推移を見てみましょう。(二つ目の表はどらねこ作成です)

f:id:doramao:20120927183754j:image:w575

f:id:doramao:20120927184155j:image:w575

病院、診療所で出産する人の割合が一気に増えていますね。もう一つ、分かっているはずの事ですが、出生数の減少がとても大きいことが改めて感じてはぁ〜、と思ってしまいます。

ところで、これだけ子供の数が減っているのにどうして、産科が多忙なのでしょうか? 1施設あたりの分娩数が増えているという事ですが、つまり産科のある病院、診療所の数が減っているという事です。どれぐらいのペースで減少しているのでしょうか?

f:id:doramao:20120927184430j:image:w575

直接施設数を報告している統計からではないので正確なものではありませんが、出生数の減少ペースを大きく上回る勢いで産科施設が減少していることがわかります。では、これに比べて助産所の状況はどうなのでしょうか?

f:id:doramao:20120927184901j:image

助産所の数は1990年代に大きく減少したようですが、その後横ばいに推移していることがわかります。このデータと人口動態統計にある助産所での出生数をあてはめて、病院や診療所の1施設あたりの分娩数の推移と比べられるような表をつくってみました。

f:id:doramao:20120927185409j:image

助産所も1990年代の急激な減少により、1施設あたりの分娩件数は大きく増えた事がわかりますが、2000年代以降は横ばいとなっており、一般診療所の分娩件数の増加のトレンドとは違った傾向をしめしている事がわかります。2008年について考えれば、1施設あたりの分娩数は一般診療所の半分以下*3です。


■とりあえずのまとめ

考えられないほどに多忙な産科の状況が、助産所での妊産婦の話を聞いてくれるゆったりとした分娩に対する根強い支持の原動力になっている可能性がありそうだとどらねこは感じました。今後ますます状況悪化すれば、そうした要望を取り込んだ「自分らしいゆったりとした出産」に対するニーズは大きくなるかも知れません。開業助産師が運営する助産所がそれの受け皿になる事自体は大きな問題では無いと思います。どらねこが懸念するのは、開業助産師のホメオパシーやマクロビオティックなどといった代替療法への親和性や、自然に拘るあまりの医療の介入する分娩への否定的な態度です。

現状を考えれば、助産所と医療機関との適切な連携が大事になってくることでしょう。こうした望ましい流れをつくるためにも、助産師の方が代替療法への傾倒している現状は解決されて欲しいとどらねこは思うのです。

この記事がこれら問題に真剣に取り組んでいらっしゃる方にちょっとでも役に立てば嬉しいです。

*1:いや勿論これも大きな理由だと思いますが

*2:今は待っていて欲しいとか、話を聞く時間が求めているほどにはとれないとか

*3:勿論、これら統計の分母となる施設が実際に動いているのかどうかや、規模のバラツキなどがあるだろうと思いますのでこれだけでハッキリした事はいえません

ふぃっしゅふぃっしゅ 2012/09/27 22:07 doramaoさん、こんばんは。また記事にしていただいてありがとうございます。
4月9日の「開業権とは何か3」[http://d.hatena.ne.jp/fish-b/20120409]の中で、助産所数と分娩数に関して書いたことがあります。
助産所数は780ぐらいですが、あくまでもそれは開業届けを出した全体数なので、母乳相談やベビーマッサージのような分娩を取り扱っていない助産所も含まれます。
分娩を取り扱っているのは、自宅分娩のみの出張助産所を合わせておよそ440ヶ所のようです。
さらに2008年でいえば、神奈川(39箇所)、東京(54)、埼玉(33)、千葉(21)の一都3件だけで、4972件の分娩、全体の45%を占めています。この首都圏の助産所の中には、月20件以上のところもあることでしょう。
また助産所同士でサポートしあうので、たとえば1件のお産に2つの助産所の開設者がかかわることもあるわけで、かなりゆとりをもって関われますね。しかも、大半が(正確な統計はないのですが)経産婦さんのお産ですから、お産もその後のケアや説明も本当に楽だと思いますよ。
初産婦さんが多い日だと、勤務中、ずっと説明のためにしゃべり続けていますからね。赤ちゃんの世話を手取り足取り説明したり介助したり、たくさん飛んでくる質問に答えていると、ほんとうにしゃべり疲れます。
産科の忙しさってそこなんですけれど、病院管理者も理解してくれないので、産科は健康な人を相手に暇な病棟だと思われています。あ、これは余談ですが。
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私がブログを始めた動機は、助産師だけでの分娩介助の場をなくしたほうがよいのではないかという思いです。
産科専門のドクターカーがすぐに駆けつけられるように整備された世の中になれば助産所や自宅分娩も許容範囲かもしれませんが、それは本当に贅沢なお産といえるでしょうね。
そして何より医師のいない分娩の場を守りたい助産師も根強くいることが問題。だから病院の中に、あえて医師が立ち会わない院内助産なんて発想になるのでしょう。

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もうひとつ。不満の実態もどうなのだろうという点です。
もちろん医療従事者の態度などで改善すべき点もあると思いますが、もともとは「自然なお産」の流れの中で、助産師側の病院へのお産に対するごく個人的な不満が、動きを加速させるために大きくされていった部分もあるのではないかと。
その点を、いま「医療介入とは」で少しずつ掘り下げてみたいと思っています。


相変わらずの長文コメントすみません。またdoramaoさんをますます鍛えてしまう人になってしまいますね。

doramaodoramao 2012/10/03 07:59 お返事遅くなりまして・・・
数年ぶりにヒドイ風邪をひいてしまい、苦しんでおります。
助産師の仕事はしゃべる事だというのもよく分かりました。
さて、ふぃっしゅさんに書いて頂いた内容ですが、別の方からも似たような話をつい先日教えて貰ったのですが、助産師の方の中にも現状を望ましくないと考えている人がやはり居るようですね。
そうした方々が互いに情報交換し、独自の勉強会なりを開けるようになればまた少しは変わってくるのかも、なんて事も思いました。
そうそう、助産師側の病院へのお産に対する個人的な不満というものの背景に、助産教育で教えられた事が関与しているような気がしてます。これこそが、助産師業界全体に関係する大問題だと思うんですよね。

ふぃっしゅふぃっしゅ 2012/10/04 09:43 doramaoさん、それは大変。智恵熱のようなものでしょうか。
どうぞお大事になさってくださいね。
疲れがたまったり緊張がふと解けると風邪をひきやすいですね。
そして→「免疫力アップ」にはまっていきそうな。
助産師もそうですが看護全体に、大学化の流れの中での業績作りという一面もあるような印象を受けています。
看護でいえば1990年代はアメリカの看護をいち早く翻訳して日本に紹介することが目立っていたように感じます。クリティカルパスとかNANDAの看護診断とか。合理的な考え方に学ぶこともある反面、なんだか臨床実践の悩みには答えにならないなぁと感じていました。そのうちに、そういうアメリカの合理的な看護の実践方法が広がる背景の先には、医療費削減・入院短縮、病院の統廃合が待っていたわけです。
看護大学や看護協会の重鎮になる人は、どちらかというとそういう社会の変化に素早く反応できる人とも言えるかもしれません。
助産も教育が大学・大学院化するために、むりやり学問の体裁を整える必要があってなんだか先を急いでいるように見えてしまうのです。
だから結論を急いで、体裁を整えて声に出したものが勝ちのような。
何事にも拙速にならずに、ですね。とりわけ教育の根幹となる研究者には。
看護職の中では、保健師さんの領域というのはあまりトンデル話は少ないような印象ですね。違いは何なのでしょう。

doramaodoramao 2012/10/09 20:25 確かに、看護教育の4年制への移行や大学院の整備、看護学の発展というのは素早かったように思います。養成校でも他領域(医師とか)の影響力の強いような栄養士とは違いを感じます。その辺りで、少し掛け違いがあると、変な方向へと進みやすいような理由なのかな、とは思いますがよく分からないですね。