どろぼう日記

2008-04-13 「クラシック・ミステリのススメ」

クラシックミステリのススメ』という同人誌が出ました。


創元や早川などといった老舗出版社以外の国外ミステリに興味があるけど、

不案内なのでなかなか手が出ない、

というお方を想定して本書は編集されております。


国外(翻訳)ミステリの叢書を網羅的に紹介しているので、資料としても面白いです。

この本があなたの読書生活の一助を担えれば幸いであります。



ちなみにぼくは内容で貢献できなかったので、

昨日のMYSCONで売り子をしていました。

sugiemckoysugiemckoy 2008/04/23 21:29  貢献しなかったなどととんでもない。ありがとうございます。

dorobow7dorobow7 2008/04/24 22:08 下巻ではもう少しがんばります。

男だけど潮ぴゅっぴゅしたよwww男だけど潮ぴゅっぴゅしたよwww 2009/06/15 02:06
すげっ!!! 昨日の女に潮 吹 かされた!!!!!
イった後もキトー攻めされたら急に力入んなくんなって頭真っ白になってさぁ、
したら凄ぇ勢いで透明の液がチソコからブシャー!って出てマジ焦ったよww
女が潮 吹 くのは当然として、男が潮 吹 くなんて思わなかったわぁwwwww
頭がブッ飛ぶぐらい気持ちいいからやってもらってみー??

http://shiofuki.navi-y.net/eaNo7sm/

マンスジが大好物だwwwwマンスジが大好物だwwww 2009/06/22 15:46
マンスジフリークの俺様としてはやっぱ一人じゃ足りないんだよねw
いつもとりあえず3人呼んでお気に入りのスジの子にパンツのまま顔に乗ってもらって他の子はハメたり舐めてもらったりって感じかなー?
3人まとめての方がバイト代も多くもらえるし一石二鳥だろ( ̄ー ̄)にやり

http://ahan.yumenokuni.net/huetlNo/

いよっしゃーーっ!!!!いよっしゃーーっ!!!! 2009/06/22 16:20
これ始めたら女釣れすぎーw ww
いつもテ〃リ嬢に金払ってたのがバカみてぇ。。
だってヤる度に金くれんだもんヽ(´ー`)ノ
ぶっちゃけ風俗は卒業ッス(´ー`)y─┛~~

http://dopyun.quitblue.com/XZJgcWo/

えふwwえふwwえふwwwえふwwえふwwえふwww 2009/08/14 06:55
ケイジの奴・・ネットやっててコレ知らないって何なのwwwwww
金に困ってるみたいだから教えてやったらソッコーでヤりやがったしww
てかあいつキモデブなのに何でいきなり8 万貰えてんの???
わけわかんねぇしwwwwwww

http://kachi.strowcrue.net/2bfxYIa/

2007-09-26

[]「死の相続」セオドア・ロスコー

ミステリ

本書は主に戦前パルプ小説誌で活躍した作家、セオドア・ロスコーの代表長編作品である。

「ハイチに住む資産家の叔父が殺された」語り手である青年カートのガールフレンドピートは叔父イーライの顧問弁護士と名乗る老黒人からそう告げられる。葬儀に参加し遺産を相続するため二人はハイチに赴き、葬儀の会場となるイーライの屋敷で彼の使用人たち出会う。だが、彼らは一癖も二癖もあるアクの強い連中だった。そして葬儀も終わりに近づいたころ老弁護士の口から遺言が読み上げられ、遺産相続の条件が判明するが、それは驚くべきものであった……

息をもつかせぬ怒涛の展開で、読者を最後まで引っ張っていくのがこの作品の特徴。テンションの高さは章題にも現れており、14の章題のうち半分にあたる7つに感嘆符が付いている。ちなみに邦題には付いていないけど、原題はきちんとエクスクラメーションしてます。内容もパルプ出身の作家の作品らしく、B級ノリ感満載。のっけから『そして誰もいなくなった』ばりの皆殺し展開で、物語の佳境には「ゾンビ」まで登場する。しかもその「ゾンビ」、山賊を率いて暴動を起こすし。折からの悪天候と葬儀の太鼓のリズムが鳴り響く不気味な状況で展開する連続殺人事件は、密室殺人をはじめとする不可能犯罪てんこもりの大盤振る舞い。しかもそれがラストではロジカルに解かれていくんだぜ。意外なことに。

まぁ、犯人の行動には説明がうまく付けづらいところもあるんだけど、おおむね納得いく解決ですよ。とくに密室脱出のトリックはなかなか読ませます。

本書の魅力はカオティックな展開がラストの解決編でいきなりロジカルになると言うこの落差にあると言っても過言じゃない。あとは登場人物全員が怪しすぎて、かえって皆犯人らしくないところが個人的には好みでした。

作中の言葉を借りるならば「酔っ払ったポーが『不思議の国のアリス』を書きなぐったような」作品。テンション高い、変な本格が好きなら(『赤い右手』とか?)おすすめ

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2007-09-25

[]「推定相続人ヘンリー・ウェイド

推定相続人  世界探偵小説全集 (13)

推定相続人 世界探偵小説全集 (13)

ミステリ

本書は英国ミステリ界きってのノーブルな出自を持つ作家ヘンリー・ウェイドの代表作。准男爵家に生まれた彼の作品には、高貴な品格の漂う格調高い作品が数多い。軍隊将校を務めた後に高級行政官としての職務に携わった経験が生かされたのか、警察組織の内部構造や事件捜査の活動内容をリアルに描く手腕に定評がある。

小説主人公である放蕩者のユースタス・ヘンデルが、親戚の親子が水難事故で亡くなったと聞かされるシーンから幕を開ける。だが本書を実際に読む段には、まず巻頭の登場人物表の隣に載せられた家系図に注目してほしい。そしてヘンデル家一族の面々をユースタスが回想、説明する際には、誰がどういう姻戚関係にあるのかを確認しながら読み進めることをおすすめする。それが物語プロットの根幹にかかわる部分なのだが、やや入り組んでいるため普通に読みすすめても関係の把握が困難なのだ。

この後、生活に困窮したユースタスは、自らが本家の遺産相続人になろうと親族の殺害計画を立てる。いわゆる倒叙ミステリ的な展開を遂げるのだが、後半から段階的に皮肉な様相を呈してくる。ユースタスは自ら考案した計画が原因で災厄に見舞われることになるが、事態は彼自身の意図したものとは違う方向に進展していく。そして物語は最終的に意外な結末へとたどり着く。

この「意外」というのは主人公にとってであって、ミステリ慣れした読者には本書の結末はある程度予想できるだろう。その理由はプロットの端正さと丁寧に張られた伏線にある。スマートミステリほど論理的に妥当な構成を持つものが多いため、演繹という言葉意味とその働かせ方を心得たものには、ある程度展開が予想できるからだ。

しかし、巧緻なプロットを抑制された文章に乗せて展開させていくその手際の見事さは、読者が本格ミステリに親しんだ者であれば必ずや感嘆させられることだろう。

最後の一撃」もまたよし。

構成の美しさと皮肉の効かせ方がチャーミングな本書は、ミステリ初心者と上級者におすすめスレた人には向かないかも。

[]昨日の記事の訂正 ていうか補足

僕は寄稿しただけです。自分では作ってません。

紛らわしいね。

[]星

自分で自分のエントリに加えることもできるんだ。

何その機能。

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2007-09-24

[]「陸橋殺人事件」ロナルド・A・ノック

陸橋殺人事件 (創元推理文庫)

陸橋殺人事件 (創元推理文庫)

ミステリ

本書は「ノックスの十戒」でお馴染みのR・A・ノックスの長編デビュー作。ちなみに本格ミステリのパロディとして不朽の名作と呼び声高い作品。

事件の舞台はイギリスの田舎町。ゴルフ場から程近い鉄道の陸橋の袂で、転落する際に顔を削られたらしき死体発見される。素人探偵に憧れるモーダント・リーヴズとそのゴルフ仲間たちは、検死審での結論や警察の見立てを当てにならぬものと見なし独自の捜査を行うが、やがて彼らの推理現実の事件の間に奇妙なねじれが生じてきて……

語り口は平易にしてユーモラス。なので、20年代に書かれたミステリにしてはかなり読みやすい。これは訳が比較的新しいこともあるだろうが、やはり作者の筆力の賜物だろう。リーヴズやカーマイクルが述べる推理のもっともらしさと、その推理が行き着く先の落差は爆笑もの。

「最後に読む本格ミステリ」というのが本書に付けられたキャッチコピーだが、言いえて妙である。ノックスは本格ミステリマニアであり、本書もかなりプロットの複雑なハード・パズラーという体裁がとられている。もっとも、実際には犯人当て小説(フーダニット)をパロディ化した作品なので、いわゆる普通探偵小説のような展開を期待すると、意想外な事件の決着に唖然とすることになるだろう。

真田啓介はアントニイ・バークリー著「最上階の殺人」の解説において、本書との関連――探偵が述べる推理の妥当性とその恣意性をクロースアップした作風――について述べ、先鋭性においてバークリーの方が優れているとしている。個人的にもそれには同意するが、容赦なく探偵小説を批判する側面の強いバークリー作品とは違った、ユーモラスで憎めない皮肉っぽさがノックス作品の魅力だと思う。

ありきたりなミステリに満足できなくなった、擦れたファンにおすすめ

[]ていうか告知

文フリで同人誌売る予定です。現在鋭意製作中。

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2007-09-23

[]「海のオべりスト」チャールズ・デイリーキング

ミステリ

北大西洋横断中の豪華客船で起こった殺人事件。衆人環視の中で銃撃を受けた被害者は、弾丸が心臓に達する直前に毒殺されていた。事態を重く見た船長は偶然乗り合わせた4人の心理学者たちに助力を仰ぎ、事件の真相を探ろうとするのだが…


本書は「鉄路のオベリスト」「空のオベリスト」へと続いていくオベリストシリーズの第一弾にしてデイリーキング名義のミステリとしては処女作

手がかり索引といった趣向から窺えるように、作者が読者に対してフェアな記述と伏線の提示を心がけているのが特徴の一つ。また、事件の舞台がモダンな施設であること、4人の心理学者たちが繰り広げる推理合戦(多重解決)など、魅力はパズラーとしてのそれに留まらない。

黄金期の探偵小説がもつ独特の典雅な雰囲気を余すことなく味わえる好作品となっている。

ヴァン・ダインや初期のクイーンの諸作において指摘されるような捜査場面の退屈さも、現在進行形で事件が目まぐるしく展開する本作では感じられない。

ややもするとパズルとしての厳密さに傾倒しがちな他の黄金期におけるアメリカ本格作品と比較して、この読んでいて心地よく感じられるほどのサービス精神は特記に価する要素だ。

惜しむらくは、心理学者たちの提示する推理が、実行犯を特定するというよりも犯人の内面や行動傾向の分析にシフトしていること。読み物としては面白いものの、犯人当て小説としての完成度の底上げには貢献していない。

また探偵役によって開陳される真相も、論理で裏打ちされた推理に基づいてるとは言いがたい。犯人が実際にとった行動を完全には説明できていない点に不満が残る。

ちなみに、読者が記述から犯人を推定する場合、ある一点に気が付けさえすれば簡単に割り出すことができる。実は、この一点突破的なプロットが続編「空のオベリスト」ではミスリードとして用いられており、共通の趣向の中に仕掛けがあるという意味で、十全に作品を堪能するにはシリーズを発表順に読むのが好ましいだろう。

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2007-08-29

[]「絞首人の一ダース」デイヴィッド・アリグザンダー

絞首人の一ダース (論創海外ミステリ)

絞首人の一ダース (論創海外ミステリ)

ミステリ

論創海外ミステリといえば作品ごとの毀誉褒貶の激しさと難のある訳で(一部で)有名だが、本作はレーベル随一の水準と評判の短編集。硬質な訳も作風とマッチしている。

本書に収録された作品の特徴は、登場人物の心理に重点を置かれて書かれていること、(それと表裏一体なのだが)ミステリとしてはひねりの少ないものが多いことなどが挙げられる。

心理をプロットの根幹に置いた作品と言えばスタンリィ・エリン(奇しくも本作の序文はエリンの手によるものだ)の諸作が思い浮かぶが、エリンの場合は心理がいわば事件の固定的な関数として機能しており事件を成立させる要素の1つとして扱われるのに対し、アリグザンダー作品の場合、心理とは物語の中心であり、その流動的な動きを描くことが物語の第一目的となっている。

ミステリとは「因」か「果」のどちらかを強く志向するジャンルであるが、アリグザンダー作品は「因」から「果」に至るまでの過程を描くことに多く筆が割かれている。その理由はおそらく「なぜそのような心理に至ったのか」ということを十全に表現するためだと考えられる。

ミステリとしてひねりのない展開をするという所以もそこにある。作者の興味の対象は読者を翻弄することにはなく、あくまで心理がなぜそう働いたのかを丁寧に描写することにあったのだろう。

ちなみに収録された短編の中にはハードボイルド色の強いものが含まれているが、上記の人間描写とプロット関係はある種のハードボイルド作品にも当て嵌まる説明だと思う。

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2007-08-28

[]「10ドルだって大金だ」ジャック・リッチー

ミステリ

クライムマシン」で2006年このミス海外編1位を獲得したことも記憶に新しい、ジャック・リッチーの日本オリジナル傑作選。

作者の持ち味であるスマートな文体とツイストが効いた構成は、前短編集と同様。本作はより軽妙な作品が多く収録されていて、モッサリ感は皆無と言ってよい。

ただその分、本格としての構築性は(前作と比べて)やや落ちるか。

とは言えリッチー作品が持つ魅力はプロットの複雑さだけではない。テンポよく切れ味のある文章と無駄のない展開の端正さにこそリッチー作品の本質があると見る向きには、本作は間違いなく傑作と言える。

読書とはある種の錯覚を前提にした行為である。ジャック・リッチーはどうすれば読者にこころよい錯覚を与えうるのか、その呼吸を心得ていた作家なのだ。

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2007-05-28

[]「百万のマルコ」柳広司

百万のマルコ (創元推理文庫)

百万のマルコ (創元推理文庫)

ミステリ

これまで手堅い(でも地味な)本格ミステリを上梓してきた作家柳広司の手による最新短編集。

舞台は13世紀末のジェノヴァ。戦争捕虜として牢獄に入れられた若者たちは、その単調で刺激のない生活に暇をもてあましていた。だが、新たに入獄してきた捕虜<百万のマルコ>(マルコ・ポーロ)が語る不思議な話を聞いている内に、いつしか彼らはその話が内包する謎に関する議論に夢中になっていく。

各エピソードに登場する謎は一つ一つピックアップしていくとどれも小粒であり、クオリティ自体も玉石混交の嫌いが強い。例えば逆説としての洗練度はチェスタトンと比較にもならず、オチのスケールは泡坂妻夫に遠く及ばない。

しかし、本書の魅力は、小粒が故に持つ軽みにこそあるのではないだろうか。暇つぶしの為の小話という体裁や、素っ気ない語り口なども、その傾向に拍車をかけている。

個人的なお気に入りは、他と比して落差の激しいオチと伏線のヌケヌケ感が素晴らしい「色は匂えど」、定番のネタを上手く料理した「雲の南」、語りのレベル差を利用した余韻が独特な「ナヤンの乱」など。

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2007-05-25

[]

双生児 (プラチナ・ファンタジイ)

双生児 (プラチナ・ファンタジイ)

SF

世界幻想文学大賞受賞作「奇術師」が映画化されたことでも話題の作家クリストファー・プリーストの最新訳小説FT文庫でなくハードカバーの単行本で発刊された。ソフトハードも重厚な作品となっている。

内容の説明に入ろうと思ったが、本作の内容は大変説明しにくい。なぜなら物語の軸が1つでなく、多様なリアリティを主張する記述が混在するためだ。

なら散漫な話なのかというと、そうではない。それぞれの記述が語るリアリティは一定の法則に従って存在しており、物語世界の全貌を把握することも(読解に対する努力を惜しまなければ)可能だ。

主流文学よりの作風といわれるプリーストだが、この法則の適用こそが本作をSFに留まらせている要素であると言う事が出来る。

ところで、プリーストといえば小説の冒頭部分を状況説明に費やし、読書に対するモチベーションをがんがん削いでくることでも有名だったが(「奇術師」や「逆転世界」で挫折した人は大体これが理由だろう)、この作品では最初から読者の気を惹くよう配慮された展開が遂げられている。冒頭における謎の提示といえば島田理論を思い浮かべるが、本作でも提示された謎は解体するのでご安心を。ただし、その解決を十全に理解するには積極的な読解が不可欠なので留意されたし。

最後に、本作の魅力について。

記述の体系としての美しさもさることながら、その体系を破綻させることなく成立させている設定の妙。それが本作の魅力だろう。

「英空軍爆撃機操縦士にして良心的兵役拒否者」という矛盾した存在、J・Lソウヤーとは何者だったのか、その謎をノンフィクション作家スチュワート・グラットンが解き明かそうとするが(ちょっと要約しすぎ)…といった単純な冒頭からは考えられない物語展開。複雑な構成に複雑な設定、さらにメタテキストまで混入してきて世界像の把握もおぼつかない記述。すべて説明可能なようでいて、自己完結することは決してない小説構造。

それらがもたらす快楽をぜひ味わっていただきたい。

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2007-05-24

[]

SF短編集。

クリフォード・D・シマックはアメリカ出身の作家少年時代は祖父が経営する農場で育ち、大学中退後、新聞記者を経てSF作家となった。

その出自ゆえだろうか作風はやや牧歌的な雰囲気を有しつつも通底する怜悧な視線が独特の世界観を形成している。

本書ではコミュニケーションテーマに据えた作品を中心に収録。異質な知性同士の邂逅をメインモチーフに、ユーモラスながらもどこか無常感(観)を帯びたSFが楽しめる。

集中では『ジャック・ポット』が一番好み。宇宙各地を飛び回るトレジャーハンター発見した惑星にそびえ立つサイロ状の建築物の正体とその価値をめぐる話。

[]

めっちゃ更新サボってたー。

とりあえず、ミクシィ日記のコピペでお茶を濁してみんとす。

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2007-05-23

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LAコンフィデンシャル〈上〉 (文春文庫)

LAコンフィデンシャル〈上〉 (文春文庫)

LAコンフィデンシャル〈下〉 (文春文庫)

LAコンフィデンシャル〈下〉 (文春文庫)

ノワール

3人の警官を通じて描かれる、50年代のロサンゼルスを主要な舞台に生じた事件一連についての犯罪小説

主人公たちはそれぞれ違う立場や思惑から次々と発生する事件の捜査を進めるが、捜査が進捗すればする程事件が持つ根の深さが明らかになっていく。事件の全体像は茫漠として把握されきれないまま物語は進行する。しかもそれに伴い登場人物同士の相関関係も複雑化の一途を辿っていくため(主人公の内2人にそれは顕著)読者が全容を推察することは困難を窮める。

しかしながら、中途においてバラバラに配置されていたピース伏線)も、最終的には収まるべきところに収まり、事件の全容も読者に対して明示される。

この構成の美しさは本格ミステリにも通じるものがある。実際、解説によると作者のエルロイはロスマクに傾倒していた時期もあるようなので、プロットに拘る作風のルーツはそこにあるのかもしれない。

また、人物造型の巧みさにも作者の非凡な才能が表れている。

功名心の塊のようなエド・エクスリーや復讐の権化バド・ホワイトといった強烈なキャラクターたちは、リアリズムを損なわないよう気を配りつつも誇張された描かれ方で存在を主張し、 彼らの間に蠢く嫉妬、怒り、軽蔑などの(主に負の)感情は、物語を推し進めていくためのダイナミズムとして利用されている。

あとこれは『ブラックダリア』にも言えることだけど、作中に猟奇的な側面を与えるような事象が出て来るにもかかわらず理知的な構成の印象も強く残り、それらの葛藤する要素が独特の読後感を演出しているように思えた。これはエルロイ以外の作品では得難い感覚かもしれない。

大傑作です。

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2007-05-22

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デス・コレクターズ (文春文庫)

デス・コレクターズ (文春文庫)

ミステリ

前作『百番目の男』も骨太の本格だったけど、今作はプロットの複雑さと完成度が一つ上のレベルに達してる。要素(伏線)の配列の美しさは相変わらずだし、要素同士の関係性に込められた意味と要素の数量自体が増加しているところに作者の構成力と手際よさ,そして筆力の向上を感じた。

単純なインパクトで比較すると、真相の「奇想」度は前作には及ばないかもしれない。しかし、謎の不可能性と合理的解決の間にある「落差」は、前作に勝るとも劣らない。

あと、登場人物たちの魅力も追記しておく。レギュラー陣による掛け合い描写は堂に入っている。題名にも採られているデス・コレクターズ(死の収集家)はガジェットとして面白いだけでなく、その性向すら犯人に利用されている(つまり作者によってプロットに組み込まれている)。

現代アメリカミステリ(かなりB級)と本格ミステリの融合。本格好きには是非とも読んで欲しい作品。

ただし、本文及び解説に前作の犯人を想起させかねない記述があるので、そういうのを気にされる方、先入観なしで読みたい方はまず前作から手にとることを強く勧める。

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2007-05-21

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ハード・ボイルド。

僕がアルバート・サムスンにもっとも近しいイメージを持つ探偵はライツビル以降のエラリークイーンだ。これはもう、そう思えてしまうのだからしかたがない。やはりクイーンはアメリカのミステリ作家として偉大な存在だと思う。崩壊する家庭の悲劇やサイコパスを扱った精神分析学的ミステリといった、その後アメリカを席巻するタイプミステリをかなり早い段階から発表していることがその証左である。

本作においてサムスンの担う役割は「事件を観察し全体像を読者に提示するための名探偵」のそれであり、おのずと事件の性格は強い求心性を持ったものとなっている。

これは、「事件に対してメタレベルから俯瞰出来る人物」を真相を看破した探偵以外にも想定せざるを得ないような性格の事件でないと犯人対探偵という二項対立の構図が崩れ、探偵がヒーローとして描かれる必要性すら疑わしくなるためだと考えられる。そう、サムスンヒーローなのである。かつてのマーロウやリュウ、そしてエラリーヒーローであったように。作者の他のシリーズキャラクター、パウダー警部補と比べると、よりサムスンヒーロー性は際立つと思う。

本作はヒーローを描く物語としての探偵小説であり、事件を中心に据えた謎解き小説としての探偵小説でもある。そしてその両者の相性がいい事は偉大な先達が証明している。

ラリーが僕にとってのヒーローであるのと同様に、サムスンも僕にとってのヒーローなんだろう。

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2007-05-20

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ミステリ

本作は奇術師、紋章上絵師などの肩書きを持つ異色作家泡坂妻夫の第四長編。相変わらず伏線の張り方が巧みで、文中の至る所にトリックが仕掛けられている。

非常に細密に練られたプロットを有する本格ミステリであるが、物語中で描かれる皮肉な愛憎劇もまた本作の魅力の1つ。

本作とそれに先行する「乱れからくり」や「湖底のまつり」などの長編の間には共通する要素として物語進行上の「皮肉」の存在が挙げられる。

私見だが、その「皮肉」は本格ミステリとして読者に真相を悟らせないための配慮というだけでなく、構築性の高い泡坂作品を人工的な作り話に止まらせない働きも担っているのではないだろうか。

個人的には「妖女のねむり」の方が好み。しかし本作は物語として美しい。

多くの人に手にとってもらいたい名作なのだけど、残念ながら版元品切れ中

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2007-01-30

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夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

恋愛ファンタジー。「片思い作家」と称される森見登美彦の最新作。妙に古臭い言い回しの(でも読みやすい)文体や、韜晦的な造形の男主人公など、作者の持ち味を存分に楽しめる作品に仕上がっている。

二人の主人公がともに荒唐無稽なキャラクターなのだけど、とにかく一人称の語りが楽しく、読み進めていくうちに自然と彼らに親しんでしまう。珍しく恋愛(ラブコメ)をメインに据えた物語である点もこの親しみやすさの一因か。ハッピーエンドだしね。

あと、古本市での我慢大会や学園祭におけるゲリラ演劇など変なイベントも目白押し。この学園祭シーンのように、日常と非日常の狭間のマージナルな空間を演出させると流石に上手い。出自がファンタジーノベル大賞であることにも得心がいこうというものだ。

読んでいるだけでここまで楽しい作品には滅多にお目にかかれるものではないだろう。読むという行為が快楽に直結しているような読書体験を得られた。2006年でもっとも楽しい時間を過ごした本。おすすめ。

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2006-12-25

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独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

ホラー。

本書は日本推理作家協会賞短編賞を受賞した表題作を含む八つの物語が収録された平山夢明の第一作品集である。この度、純粋なホラー作品としては初めて、このミス1位を獲得した。

ジャンルはホラーだが用いられる小説手法はバリエーションに富み、ミステリ的な構成の作品からSF風の世界観で展開する作品までと作風の幅が広く、読者を飽きさせない。作風ごとに文体や人物造型を全く変えるなど、作者のテクニシャン振りを存分に堪能できる作品集になっている。

個人的なベストは着想と構成と落ちが綺麗に纏まり決まった「Ωの聖餐」だが、地図の一人称で語られるというユニークな設定の表題作、今最も旬な海外SF作家グレッグ・イーガンを彷彿させる「オペラントの肖像」や「卵男」、特異すぎる登場人物と人体を破壊する際の描写と破壊方法のアイディアが楽しい「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」なども面白く読めた。ホントに高水準な作品ばかり。

フックが多いので、いろんな人にお薦めできる本だと思う。グロ描写に耐性があれば、という条件付きだけど。

たとえば小林泰三が好きな人だったら間違いなく楽しめるよね。

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2006-12-24

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百番目の男 (文春文庫)

百番目の男 (文春文庫)

ミステリ

本書はジャック・カーリィの第一作品にして、2005年度1バカミスと評される怪作である。

はじめのうちは「過去のしがらみに現在も振りまわれている主人公が、現実の事件を捜査する内にトラウマと相対することになる」というハードボイルド風のテンプレに則っている点や、ストーリー展開が所謂サイコサスペンス的である点などから「典型的な現代アメリカミステリ」といった体裁の作品かと一見、思うだろう。しかし、クライマックスまで物語が進展したところで、そこにとんでもない真相が待ち構えていることを読者は知る。この衝撃(笑劇)の真相を以って、「2005年度1バカミス」という称号を手にしたのだろう。常人には思いつけないネタである。

もちろん、丁寧にプロットされた伏線、読みやすい文体、(気の良いパートナーや分かり易く厭味な敵役や深刻なパーソナリティを持つ兄やヒロインなどといった)個性的な登場人物たちなどといった点も、本書の魅力であることは確かだ。だが、このラスト破壊力の前にはやや色を失ってしまう。

とはいえこの真相も、ただ一笑に付すだけではもったいないと個人的には考える。「フィジカルな「首切り」と死体に書かれたメンタルな「暗号文」という対照的なサインが、犯人の意図を悟った瞬間に付与された属性が反転してしまう」という構図に興味を覚えた。

構成もなかなか堅実で、実は本格テイスト強め。

前述したとおり、読みやすく楽しいミステリなので色々な人にお薦めしたいのであるが、それには色々支障を来たしそうな作品だといえるだろう。

バカミス好きの方には文句なくお薦めなのだけど。

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2006-12-13

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夜よ鼠たちのために (新潮文庫)

夜よ鼠たちのために (新潮文庫)

ミステリ

超絶技巧のミステリ短編集。

連城作品には「男女間の情念」をプロットに組み込んだ作品が多いという傾向があるが、本書もその例に漏れず、夫婦の間(親子の間という場合も)に存在する激しい(もしくは歪んだ)情念が引き起こす事件を描いた作品集になっている。

収録作はそれぞれトッリキーかつ無駄のない構成を有し、作者の紡ぐ美文がそれに彩りを添え、物語の終焉後に独特の読後感を残す。

特に圧巻は表題作である。トリックと人物設定とストーリーが交互作用して、妖しくも美しいゲシュタルトを形成するという、本格としてもサスペンスとしてもハードボイルドとしても傑作という素晴らしい作品。全ミステリ読み必読のマスターピース漫画でいうと『デビルマンクラス。ちょっと嘘。

ちなみに関口苑生が解説で

「連城はダメ男を描くのが抜群に上手い作家で、物語の中心はいつもそのダメ男たちであり、登場する女性はその相対物に過ぎない(大意)」

と述べていたのだが、卓見だと思う。

ダメ男とそのコントラストとしての女性キャラ」というテーゼは、西澤保彦や米澤穂信あたりの諸作と比較しても面白いかも。

未読の人にこそ、ぜひ手にとってもらいたい作品なのだが、残念ながら現在版元品切れ中

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2006-12-12

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SF

本書は「銀河帝国の弘法も筆の誤り」や「蹴りたい田中」などの駄洒落SFでお馴染みの作家田中啓文が著した大作SF。前述の二作とはかなり趣を異にし、硬派な世界観を有した物語になっている…と思ったら、大間違いだった。

設定や描写に気合が籠められた今作は、作者のSF作家としての集大成的な作品だと言えるだろう。特に人体を痛めつける際の描写は中々にいやらしく、このあたり同じくホラーSF作家小林泰三の諸作を髣髴させる。

根幹となるアイディア自体はありふれたものなのだが、それをそうと悟らせないための構成と、計算しつくした上で明かされる満を持してのエンディングには思わず溜息が漏れた。

人物と世界の設定が一つになって物語は収束する。この機能美の構成こそが田中啓文の持ち味であり本質なのだと思う。

傑作です。

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2006-12-11

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向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏

ホラーミステリ

前作「背の眼」で日本ホラー小説大賞特別賞を受賞した道尾秀介の受賞第一作。

小学生の視点から描かれる白昼夢めいた物語。友人の死体消失事件の謎を追う主人公パートと、死んだ友達の隣人パートに別れて話は進行する。

相変わらず構成は巧みだが、すっきりしない結末がホラーとしての味というよりもミステリとしての欠点と受け取れてしまい、私的に少し評価を下げた。

「一発かましたれ」的なスピリットは買うのだが、「本当に必要かこの設定?」や「ご都合主義な展開多いな」などといった不満に対して、最後に明かされる真相だけで説明責任を果たしているとは思えない。

構成のロジカルさは評価出来るが(特殊な原則に従って運行する世界観を上手く処理して本格作品に仕上げる手腕は認めざるを得ない)だからといってこの作品を素直に本格として評価できるかというと違う気がする。ただしこれは作品の性格そのものが弱点であると言うより、私の趣味や資質が作品と折り会わなかった結果が所以であることを強調しておく。

この世界観が魅力的に感じられかつ結末を受け入れられる度量の持ち主(あるいは偏った人)が読んだならば、楽しい読書になるかもしれない。

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2006-11-28

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顔のない敵 (カッパ・ノベルス)

顔のない敵 (カッパ・ノベルス)

ミステリ

対人地雷を扱ったミステリを中心にした短編集。収録作では唯一、デビュー作のみ地雷を扱った作品ではない(物語中に地雷が登場しない話もあるが)。

対人地雷というテーマプロットレベルに落とし込む技術は素晴らしい。地雷及びそれにまつわる付随物の特質を生かしてトリックプロットを構築し、それが見事に作品に昇華されているため「とってつけた」感があまり感じられない。

各編とも本格としてかなりの完成度を誇り、いわゆる逆説や論理アクロバットの妙を味わえる好作品揃い。

だが最近作の三編はやや水準が下がっており、これは少々残念。構成は良いが、ロジックは練り込み不足かもしれない。

さらに付言すると、各作品に通底するヒューマニティへの(無条件、無批判な)信奉が読んでいて薄ら寒いというか、狂気を感じさせる。

とはいっても、今年出た(うちで僕が読んだ)ミステリ中でもベスト級の作品集であることは間違いない。

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2006-11-26

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背の眼

背の眼

ホラーミステリ

本書は第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作にして、現代本格ミステリ界の若手ホープ、道尾秀介デビュー作である。

超常的な現象を扱いつつも本格ミステリ的な性質も併せ持つ、ハイブリッドな造りとなっている。

本格としてのスタイルはかなりオールドファッション。つまり王道である。現代を舞台にした本格でここまで直球かつそれが浮いていないところに、作者の非凡さを感じさせる。

丁寧に張られた伏線ラストで回収されていく手際は素晴らしい。が、そこまでの道程がいかんせん長すぎて、読んでいて少し疲れた。シンプルプロットの割にはページ数が多く、やや冗長。

登場人物の設定の使われ方にも疑問が残る。片方はともかく、もう一方の人物に特殊な能力を付与する積極的な必然性は感じられない。京極夏彦を意識してるのだろうけど、あまりに有名かつ完成度の高い先行作品を読者に意識させることは、作品の評価を相対的に低めてしまう危険もあると思う。

と、苦言を呈してはみたもののプロットの構築能力には目をみはるものがあるので、この作品に見られた弱点が次作以降で克服される事を願っています。

本格好きな人におすすめ

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2006-11-21

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はじまりの島 (創元推理文庫)

はじまりの島 (創元推理文庫)

ミステリ

「種の起源」というあまりにセンセーショナルな著作を発表し当時保守派イギリス人から目の敵にされていた学者、チャールズ・ダーウィン主人公に据えた本格ミステリ

物語は、ダーウィンが博物学者として同乗した海軍船ビーグル号が世界一周の航海中に立ち寄った島、ガラパゴスで起こった連続殺人事件を中心に展開する。

次々と起こる不可能犯罪は(解説でも語られているとおり)カーを彷彿させガラパゴスという島の不気味な雰囲気にマッチしている。その謎を解き明かす探偵の推理も端正で本格としての完成度は高い。

ダーウィン思想が周囲にもたらす影響」というメインテーマを同じようなアナロジーで作品の冒頭とラストに持ってきた構成も上手いと思う。

作品のテーマミステリとしてのプロットを巧みに絡めた良作。

ただし、手堅くはあるが総じて地味な印象の作品だとも言える。作者は娯楽に徹しきれない人かもしれない。

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2006-11-20

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ナイチンゲールの沈黙

ナイチンゲールの沈黙

ミステリ

「チームバチスタの栄光」でこのミス大賞を受賞した海道尊の第二作品。 表題はフローレンスナイチンゲールと鳥のナイチンゲールダブルミーニングであり、どちらも登場人物の一人(ていうかヒロイン)を指す。シャアが乗っていたMSではない。

抽象的な表現だけど、前作よりも平べったいような印象。物語の中心となる謎にオリジナリティがなく、起こる事件も地味で魅力薄。だがそこかしこに謎の解決への伏線が張り巡らされており、その点ではフェアでバランスのとれた構成だとも言える。

かるがゆえに、総体として作品を評価しようと試みると、上記のような印象を抱いてしまうのである。

前作でラノベ的と評されたキャラクター性は、よりメリハリを利かせられていて個性を掴みとり易くなっているため個体認識スムースに行える。翻意すれば、中音がやや貧弱なドンシャリな造りとも。

読んでいて退屈しない作品だとは思うが、細部の詰めは総じて甘めだ。

とはいえ、この厚さを一気に読ませる筆力は大したものである。登場人物の掛け合いやSF的な部分の描写力は本書最大の読ませどころだろう。

ミステリとしての精度に拘らない、単純に娯楽作を求める人にはおすすめ

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2006-11-19

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落下する緑 永見緋太郎の事件簿 (創元クライム・クラブ)

落下する緑 永見緋太郎の事件簿 (創元クライム・クラブ)

ミステリ

ジャズに纏わる物語ばかりを収録した連作短編集。主人公の2人はいずれもジャズミュージシャンであり、各編ジャズに用いられる楽器(サックスやウッドベース)などの小道具が登場し、謎解き部分もそれらのガジェットや登場する奏者が中心となって展開する。

田中啓文作品にしては珍しく、地口やグロネタがあまり出てこない。あとがきによると編集側からの指示らしいが、それが奏功し、ジャズというモチーフに相応い洒落た雰囲気を作り上げている。

各編ごとにテーマがはっきりしていており、登場する楽器やその奏者のパーソナリティを題によって暗示させ、起こった事件や生じた謎を探偵が解き明かすことにより彼らのアイデンティティを明らかにする、という構図が一貫している(面倒くさいので例示や引用はしないけど、読めばわかると思う)。

この作者の作品殆ど全てに言えることなのだが、モチーフをジャンル小説として処理する手際が素晴らしい。

いつもの関西ノリの田中啓文が苦手な人にも、ちょっと手にとってもらいたい良作。装丁イマイチだが。

勿論、好きな人にもおすすめです。

ChloeChloe 2006/11/22 00:54 ぼくはこの装丁好きですけれど。ごてごてしているのが駄目、ということでしょうか?

dorobow7dorobow7 2006/11/27 01:43 まぁそんな感じです。あまり趣味の良いごてごてではないなぁ、と。

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2006-11-08

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後輩に「最近更新してませんね」と言われたので更新したった。やったった。

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2006-11-07

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館島 (ミステリ・フロンティア)

館島 (ミステリ・フロンティア)

ミステリ

東川篤哉東京創元社における第一作目となる本書は、作者が得意とするコメディタッチの本格推理小説。東川作品の例に漏れず、今作でも物語の前編に渡ってギャグが横溢するという構成をとっている。しかし時折、ギャグの中に真相へ至るための手掛かりが忍ばされていたりするので、たかがギャグと侮ってはいけない。

チェスタトンも名作『折れた剣』で「伏線を隠すならギャグの中へ」とブラウン神父の口から言わせてるしね。うそだけど。

事件の舞台となる「館」は瀬戸内海に浮かぶ小島に建てられたもの。ちなみにこの島、瀬戸大橋の橋梁の建設予定地にもなっている(事件は80年代に起こった、という設定なのである)。

読んで暫くすればトリックの種類は推し量れてしまうだろうし、そうなると犯人像もおぼろげに浮かび上がってくると思われる。しかし本書の魅力はフーダニットやハウダニットだけにあるのではなく、むしろ状況設定の必然性に対しての説明にこそあると筆者には感じられた。

本格特有の、細かい辻褄合わせの妙を楽しみたい人にはおすすめの作品。褒めてる様に思えないかもしれないけど褒めてますよ。

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2006-11-06

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ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉 (笑酔亭梅寿謎解噺 (2))

ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉 (笑酔亭梅寿謎解噺 (2))

ミステリ

ダジャレの王様田中啓文の最新作は落語をモチーフにしたミステリ連作短編集の第2弾。本書は副題に「笑酔亭梅寿謎解噺2」とあるとおり、笑酔亭梅寿、梅駆の師弟が活躍するシリーズの第2作目に相当する。

前作から今作までの筋を説明すると、

これっぽちも落語に興味をもたない天涯孤独少年、風祭竜二がひょんなことから落語会の大御所、笑酔亭梅寿の内弟子になり、師匠の無体な仕打ちに愚痴をこぼしつつも次第に落語が持つ魅力に気づいていく、というもの。

落語の素人主人公に据える事により、落語に明るくない読者でも物語に親しみを持ちやすいよう配慮されている。

この二作目では梅駆が新人演芸コンクール全国大会に出場して惨敗するところから始まり、テレビやラジオ仕事で大失態を演じたりしながらも師匠や先輩芸人たちに見守られ成長していく過程を描いている。

この師弟愛や人情が本シリーズが持つ大きな魅力の一つである。メチャクチャな行動をとっていると思われた梅寿の隠された真意に思わずホロリとさられせて物語が終わったり、逆にいい話と思わせておいて最後にひっくり返してオチ、という構成だったりと、ハナシの中心に「愛情、人情」が置かれていることは間違いない。

本格ミステリとしての側面にも触れておくと、収録されている各編のタイトルが落語の題から採られていることからも推測できるように、作中に起こる事件や謎解きもその落語にちなんだ内容になっている。このあたりの趣向はマザーグースの詩歌を世界観の背景に持つ山口雅也の「キッドピストルズシリーズの各編を彷彿させる。謎の質としては逆説が多いのでチェスタトン泡坂妻夫が好きな人におすすめ

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2006-09-22

[]思いつき

小説を楽しむ際に、「技巧」そのものを楽しむ人や「技巧」によって何がなされたかを楽しむ人がいるけれど、前者のほうがより幸せな読書体験を送れるような気がする。単純に。

特に本格ミステリを楽しむ際には。

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わたしを離さないで

わたしを離さないで

主人公のキャシーは優秀な介護人だった。しかし物語の冒頭でその職を退くことになる。彼女は自分が幼年時代を過したヘールシャムでの思い出や、そこを出てから遭遇した出来事を読者に対して語りかけていく……

本書は幼少時代から現在までの思い出やエピソードを主人公自身が回想するという形式で綴られている。話の運び方はパターン的であり、ある話の最後に出てきたキーワードを次の話の主題にしていくという部分と、それを現在の視点から評価したり、時代が下った後でのエピソードを補完的に挿入したりする部分から成っている。

この「回想録」という形式と主人公の冷静な語り口が、本書最大のテーマが読者の前に現れたときに重大な作用をもたらす。

そこに至っては、主人公やその幼馴染たちが繰り広げた「青春」なぞ、やたら卑近なものに思えてくる。だが、それが故に愛おしく感じられる。

ミステリ的な部分もあるがそれは読者の興味を惹くためだけの趣向でなく、主人公たちと「謎」を共有することでシンパシーを強める働きを担っている。いくつかの「謎」は物語が展開するにつれ徐々に明かされていくが、ラスト近くでの「最大の謎」が解明されるシーンを除いて非常に淡々としている。

ここいらも「抑制された筆致」と評された所以であろう。登場人物も主要なキャラを除けばあとは淡白な描写しかされていない。

非常にじわじわとしか本性を現してこない物語であるが、「主人公が目的地に向う」というラストにおいて、遣る瀬無さは最高潮に達する。最後まで抑制された筆致であるにもかかわらず、あふれ出る情感に圧倒される。

構成も文体も人物の造形も計算されつくしている。傑作だと思う。

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2006-09-19

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ボトルネック

ボトルネック

暗黒青春ファンタジー

二年前に亡くなった友人を弔うため現場の東尋坊に来た主人公は到着直後に親からの電話を受ける。危篤状態だった兄が死亡したので通夜に出るために至急帰ってくるように、という内容であった。不本意ながらも帰宅しようとする主人公。だがその直後、風に煽られた彼は崖から転落彼は眩暈を感じると同時に天地が逆様になったような浮遊感に襲われ「落ちた」と思った瞬間、記憶が途切れる。

主人公は目を覚ますとなぜか自分が金沢の公園に戻ってきている事に気づく。状況がよく飲み込めないまま帰宅するが、家には見知らぬ女性が居て……

以上が本書の冒頭のあらすじ。このあとの物語は、自分が一種のパラレルワールドに来てしまったことを知った主人公が元の世界に帰る方法を模索しつつ、この世界と元の世界の差異とそのファクターに気づいていく、という方向に展開していく。

このパラレルワールドに登場するキャラクター達がまたくせ者で、設定された性格(及び配置された相関)が皆一様に御都合主義的。この「世界が機能的に造られている感じ」がリアリティのなさ(人工性の強さ)として批判されかねないようにも思えたが、ちゃんと作者はラスト予防線を張っている。これから読まれる方は安心召されよ。

ちなみに本書は読者を「痛がらす」ことに特化した青春小説である(特にタイトルの真意)。肥大した(最初はみんなしているものだという前提をあえてしてみる)自我をすり減らすことが成長ならば青春とはその過渡期であって本書のテーマはその過程の失敗にあるのではないだろうか。自己同一性や自己の存在理由を扱った作品として、本書で行われている呈示はかなりえげつない方法だと思う。そして、その手の作品としての完成度は高い。(とはいえ確かに攻撃力は高いものの防御にはやや不安が残るかもしれない。「ジョルト」のカウンターのような感じで)

ただ気になるのは、米澤穂信という作家が今までにものにしてきたビルドゥングスロマン成長小説)において、「挫折」からそれを克服するまでを主眼に書いたものが皆無である点。今回の作品はそれを一歩、逆のベクトルに推し進めた作品だが。はたして米澤キャラが真に「成長」するのはいつの事か。

ミステリ要素もあるがテーマの強調、呈示に奉仕させるための機能という趣が強く総じて薄味なので、そこだけを期待して読むと肩透かしを食うかも。

痛い青春モノが好きならば。

  • 蛇足(ややネタを割ってます)

続きを読む

[]四捨五入すると…

読みにくいのでアブストラクトだけ字体を変えようと思ったのだけど(人の猿真似)、適当なタグを失念してしまった。。。

とみに記憶力が低下した。もう年だね。寄る年波に惨敗。あとはただ去るのみ。

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