『嘲笑う男 異色作家短篇集16』レイ・ラッセル/永井淳訳(早川書房)★★☆☆☆

「サルドニクス」(Sardonicus)★★★☆☆
 ――サルドニクス城は九十九折りの山道を登りつめた行きどまりに位置していた。長身の男を一瞥しただけで、一瞬のうちに多くのことが理解された。わたしの目の前に現れた男は、何かの恐ろしい病気のために、唇が常に開いた状態になっていて、顔全体が絶えず笑っているように見えるのだ。

 大時代がかったいかにも怪奇小説なノリは、十九世紀を舞台にしていることから考えてもわざとなんだろうけど、結局のところ、十九世紀的な物語を利用して新しい物語を作ろうというのではなく、古いタイプの怪奇小説を書きたかっただけなんだな、ということがわかる。翻せば、古い怪奇小説が好きな人間にはたまらない作品である。
 

「役者」(The Actor)★★☆☆☆
 ――舞台裏では支配人がせかせかと歩きまわっていた。「また失敗だろう」「いや、きっと成功する」とすかさず演出家が答えた。

 切れ味の乏しいショート・ショートである。まさかこういうのがこの先ずっと続くのだとは思わなかった……。
 

「檻」(The Cage)★★☆☆☆
 ――「あの男は悪魔の化身だという、もっぱらの噂でございます」と、伯爵夫人はいった。夫は、さも軽蔑したように鼻を鳴らした。

 アイデアはあるのだけれど、それを小説として完成させることが不得手なんじゃないだろうか。「役者」といい本篇といい、だからなんなの的な作品に終始してしまっている。
 

「アルゴ三世の不幸」(The Exploits of Argo)★☆☆☆☆

 あーもう、読んだけど、以下あらすじ書く気にもなんないよ_| ̄|○。読み返すことは、たぶん二度とない。
 

「レアーティーズの剣」「モンタージュ」「永遠の契約」「深呼吸」「愉しみの館」「貸間」「帰還」「バベル」「おやじの家」「遺言」「バラのつぼみ」「ロンドン氏の報告」「防衛活動」
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 『嘲笑う男』
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