『冬の灯台が語るとき』ヨハン・テオリン/三角和代訳(早川ポケミス1856)★★★★☆

 『Nattfåk』Johan Theorin,2008年。

 スウェーデンの作家による第二作。

 田舎が舞台なので(警官が少ないがゆえに)「警察小説」にならないところが独特でした。いちおうの探偵役も、ミス・マープルから好奇心を無くしたような人なので、「探偵小説」という雰囲気もしません。泥棒一味三人のうち視点人物も押し込みに消極的。妻を亡くした夫も、「妻は自殺ではない」と言いながらも犯人探しをするでもなく、いわば推理小説的にではなく現実的に生きてゆきます。残された子どもたちとどう生きるのか――といったような、大上段に振りかぶった大げさな葛藤もない。

 おかげでずいぶんとのんびりしている印象を受けました。俳優の演技で言えば、「感情を込めた演技」ではなく「自然体の演技」に近いでしょうか。北欧を特別視するわけではありませんが、こういうのはアメリカものにはない良さだと思います。

 印象に残った一言――。「列車のほうがよかったのに運休なんだ。だからバスに乗るしかない。」(P.367)

 青臭い……かもしれないけれど、こういう感覚は好きです。

 エーランド島に移住し、双子の灯台を望む屋敷に住みはじめたヨアキムとその家族。しかし間もなく、一家に不幸が訪れる。悲嘆に沈む彼に、屋敷に起きる異変が追い打ちをかける。無人の部屋で聞こえるささやき。子供が呼びかける影。何者かの気配がする納屋……そして死者が現世に戻ってくると言われるクリスマス、猛吹雪で孤立した屋敷を歓迎されざる客たちが訪れる――。スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀長篇賞、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞、「ガラスの鍵」賞の三冠に輝く傑作ミステリ。(裏表紙あらすじより)

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