『神様のジョーカー』1、『モンテ・クリスト伯爵』

『神様のジョーカー』(1)佐原ミズ作画/楠みちはる原作(講談社イブニングKC)★★★★☆
 『鉄楽レトラ』『マイガール』の佐原ミズの新作は、なんと『シャコタン☆ブギ』『湾岸ミッドナイト』の楠みちはるによる原作ものです。すごい組み合わせですね。しかも楠みちはる原作って言われなきゃわかりません、この内容。

 緒方希和にはある力があった。神様に願い事をすると、その願いが叶い、引き替えに大事なものが失われるのだという。おばあちゃんを喜ばせたくて運動会の一等賞を願ったときには自転車が盗まれ、留年しそうなときテストの点稼ぎを願うと父親が事故に遭った。そして茉洋に会って付き合いたいと願ったときも――。偶然だ、と一蹴する茉洋は、就職先が決まらずにいる希和に向かって、自分と同じ会社を受けるように訴えた。その熱意に負けて、希和はつい願いをかけてしまった。代償に悪い事は起こらなかったように思えたが……。

 希和の持っているらしき「力」は、超能力というあからさまな形が取られているわけではありませんし、神様が存在している世界というわけでもありません。やっぱり偶然だったと思っていてもいいのでしょう。「願いごと」と「代償」という組み合わせは、それこそランプの精の時代から、手垢のついた題材なのですが、力や神様の存在を曖昧にすることで、『デスノート』でも何でもいいですが、「力」の範囲を把握して、それを利用しようとするサスペンスものとして優れたものになっていました。運命のカードは生まれたときから決められている。けれど希和のカードはジョーカーだった、という茉洋の言葉がタイトルの由来になっています。
 

モンテ・クリスト伯爵』森山絵凪(白泉社JETS COMICS)★★★★☆
 アレクサンドル・デュマモンテ・クリスト伯』の漫画化――ですが、全1巻!? どんな珍作なのかとページをめくってみましたが、いい意味で裏切られました。原作の魅力を全1巻にみっちり凝縮しています。アルセーヌ・ルパンものの漫画化『アバンチュリエ』もそうなのですが、著者が原作のことを大好きなのが伝わってきます。そこはさすがに岩波文庫版で全7巻のものを1巻に収めるのですから、ナレーションで端折ってしまっている部分もあるにはあるのですが、要所はきっちり押さえてあるので、単なるあらすじ紹介のようなものではなく、一つの作品として波瀾万丈な起承転結を楽しめる完成度でした。デュマ好きにも、興味はあるけど原作のボリュームに手が出せない人にも、おすすめの漫画です。著者は新人さんらしいのですが、いずれは、改めて〈完全漫画化〉してほしいと思いました。

   


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