『武士道セブンティーン』誉田哲也(文春文庫)★★★★☆

 タイトルの通り17歳すなわち進級して高校二年生になった磯山香織と甲本早苗の物語です。福岡に引っ越しした早苗は、剣道強豪校に転校したことを、磯山に正直に打ち明けられませんでした。というわけで、横浜と福岡でそれぞれの剣道を続けてゆきます。

 磯山は前作『シックスティーン』で早苗と会って丸くなりました。なので磯山のほうは成長物語はひとまずおあずけ(すでに成長してしまったのです)、元同期生でいじめられっ子の男子・清水とマイペースな部活後輩の女子・田原美緒に振り回される日々が綴られます。

 一方の早苗は、あろうことかとんでもない部活に入ってしまいました。運動系の部活で勝利至上主義なんてのはよくあることですが、早苗の入った剣道部はまさに「悪」。勝つためには悪も貫く――というほどかっこよくはない、陰湿な部活でした。それでも酔っぱらい顧問の吉野には、何やら曰くがありそうで……。

 二年生も順調に過ぎてゆき、後半では二人がそれぞれの「武士道」と向き合わなくてはならない局面が訪れます。磯山は「暴漢」に対して、早苗は「スポーツ剣道」に対して――。

 はからずも重なった二人の立場を代弁するかのように、(作中で早苗も戸惑っているように王道の実はいい人パターンだった)吉野が語る言葉――「剣道は、武道は、武士道は、相手の戦闘能力ば奪い、戦いを収める」という台詞が、胸を打ちました。

 「強さは力」の香織と「お気楽不動心」の早苗。対照的な相手から多くを吸収したふたりだったが、早苗は、家の事情で福岡の剣道強豪校に転入。そこでの指導方法の違いに戸惑う。一方、香織は後輩の育成に精を出す。互いを思いつつも、すれ違うふたりは、目指す剣道に辿り着けるか。大人気剣道青春小説、二本目。(カバーあらすじより)

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