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A Road to Code from Sign.

2008-03-11

ビジネスパーソンが読むべき社会科学書籍(の一部)

| 09:30 |

コンビニ売りのビジネス誌」というと、もうその時点で役に立たなそう、あるいは即物的すぎる、と決めてかかっていたのだが、昨日見つけた『PRESIDENT』08年3月31日号の特集「一流が読む本、二流が好む本」は、割に面白かった。どうせ宗教まがいの自己啓発司馬遼太郎なんでしょ、と思いきや、哲学や社会科学の書籍もそこそこに取り上げられている。

PRESIDENT (プレジデント) 2008年 3/31号 [雑誌]

PRESIDENT (プレジデント) 2008年 3/31号 [雑誌]

ま、冒頭から「本はただ読むだけでなく『気づき』が重要」だの「脳の回転数が上がっている状態で本を読め」だの書かれているのだが、その辺はとばして「役職別 『一歩抜きんでる』貫禄の126冊」のパートへ。タイトルはアレだが、役職別に見てみる。

新入社員

あまりここで取り上げるべき本はない。経営者の自伝や自己啓発本、なぜかビジネスパーソンには人気の般若心経本などが並ぶ。挙げておくとすれば

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

くらいだろうか。新入社員は自己啓発しながら奴隷のように働けということか。紹介者は、プレセナ・ストラテジック・パートナーズ代表取締役の高田貴久氏。

中堅社員

うってかわって組織論の本が登場。中堅は辛いのだな。社会科学方面で言うと

新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)

新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)

虚妄の成果主義

虚妄の成果主義

あたりが重要だろうか。『失敗の本質』くらいは学生のうちに読んでおきなさいとも思うが。紹介者は丸善代表取締役社長の小城武彦氏。

部課長1

司馬遼太郎など、小説や歴史物が中心なので割愛。紹介者は神鋼電機代表取締役会長の佐伯弘文氏。

部課長2

幅の広いセレクションだが、以下の三点をピックアップする。

文明の衝突

文明の衝突

知識創造企業

知識創造企業

モーセと一神教 (ちくま学芸文庫)

モーセと一神教 (ちくま学芸文庫)

紹介者は、元マイクロソフト社長で現在インスパイア社長の成毛眞氏。

営業マン

営業は別に男だけでは、などと『PRESIDENT』に求めても仕方ないか。

1997年――世界を変えた金融危機 (朝日新書 74)

1997年――世界を変えた金融危機 (朝日新書 74)

紹介者は、兵庫県立大学教授の中沢孝夫氏。

女性社員

女性と男性では自己啓発の源がいかに違うか、ということを知るためにこそ役立つラインナップなのだが、取り上げるのは以下。

自由からの逃走 新版

自由からの逃走 新版

フラット化する世界 [増補改訂版] (上)

フラット化する世界 [増補改訂版] (上)

フラット化する世界 [増補改訂版] (下)

フラット化する世界 [増補改訂版] (下)

紹介者は、NPO法人 J-Win理事長の内永ゆか子氏。

役員・社長候補

候補、というのはどの程度までを指すのか分からないが、以下は誰にも重要。

紹介者は、一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎氏。

感想

時代が変わったなあと思うのは、『日本人とユダヤ人』ほか、ユダヤ関係の書籍が目立たなくなり、アメリカ系の経営理論が伸びていることか。

日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)

日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)

その昔、ビジネスパーソンが世界で仕事するといえば、キリスト教ユダヤ教イスラム教についての知識が役に立つと思われた時期があった。中国哲学もしかり。おそらく現在では、グローバルなビジネス環境に適応した人びととのネットワークの方が重要になっているので、その辺を勘案する必要はないと思われているのだろう。これは社会科学のトレンドそのものの変化とも大きく関わる。マルクスヴェーバーは、社会哲学であると同時にビジネス書になり得た。だから小室直樹だって受け入れられた。その役割が終わったとは思えないが、そんな余裕はないということだろうか。というよりむしろ、その種の本は、実際の仕事の現場で「奴ら」とコミュニケートする過程でどうしても「グローバル・スタンダードに収まりきらない残余」が気になりだしてから読めばいいのかもしれない。

同誌では他にも「『実践で役立つ』傑作150」でダンコーガイ氏がドラゴンボールを勧めていたりと愉快な部分もあるので手に取ってみるといいのではないか。