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2008-04-22 映画「靖国」問題 新潮・アエラ

この問題の発端となった週刊新潮の記事と、刈谷氏のインタビューが載っているアエラの記事です。

週刊新潮』07年12月20日号 P147-148

8 反日映画靖国は「日本の助成金」750万円で作られた

 靖国神社ドキュメンタリー映画が、中国人監督によって作られた。中国反日プロパガンダに用いた南京事件の「捏造写真」も挿入され、「反日映画」と言わざるを得ないのだが、何と文部科学省所管の独立行政法人日本芸術文化振興会から助成金が出ていたのだ。

 映画『靖国』を撮影したのは、日本に長く在住する中国人李纓監督(44)。少人数で靖国神社の境内に入り、カメラを回した。
大東亜戦争は自衛のための戦いだった」
「日本は侵略国ではない」
 と絶叫する軍服姿の右翼活動家をはじめとして、旧軍人、戦没者の遺族、星条旗を待って境内入りを試みた米国人男性、靖国に合祀された祖霊を返せと訴える台湾人女性、小泉元首相参拝の反対を訴えて暴行を受けた男性など、靖国を訪れる様々な人々を撮影。小泉元首相の参拝シーンや集会で演説する石原都知事も収録している。
 その一方で本作は、戦前、靖国神社内で作られていた「靖国刀」の刀匠(90)を登場させ、靖国のご神体である「靖国刀」をクローズアップ。
 こうした珍しい靖国神社の記録は、中国人監督の労作と言えなくもない。しかし、首を傾げざるを得ないのが、南京事件での「百人斬り競争」の新聞記事を紹介している点。加えて、この映画の締めくくりに、昭和天皇靖国神社に参拝する記録映像と、中国がしばしば南京事件日本軍の蛮行として引き合いに出す「証拠写真」が相前後するように使われている点だ。その反日メッセージは、露骨なまでに強烈なのである。
 李監督は中国紙のインタビューにこう答えている。
「この映画には私の強い主観的なものがあり、私はできるだけそれを抑制したが、ドキュメンタリー映画を客観的なものにするのは不可能である」

「作家性を尊重」

南京事件「証拠写真」を検証する』(草思社刊)の著者で、亜細亜大学東中野修道教授はこう語る。
「刀を持って、僧侶らしき人物を斬ろうとする写真を検証すると、写っている人物の影の大きさ、太さが一致しなかったり、足の出し方が反対だったり、明らかに提造写真と思われるものです。タバコを咥えた生首の写真は、1938年の雑誌『ライフ』に掲載されました。日本軍がやったように書かれていましたが、果たして本当に日本軍の仕業なのか、この写真が南京で撮られたものか、誰が撮影したのかさえ不明です」
 李監督に、南京事件の「捏造写真」を使った真意を尋ねると、代わって宣伝会社がこう回答した。
 「監督は、捏造写真ではないとの確信を持って使用したと言っています。また反日映画として撮影したつもりはないし、その写真だけで反日映画と断じられるのは不本意です」
 この記録映画には、文科省所管の日本芸術文化振興会から、平成18年度の助成対象活動として750万円が出ている。独立行政法人とはいえ、政府が拠出した基金からの運用益だ。
 助成金を出した日本芸術文化振興会はこんな説明。
「記録映画は社会性、政治性などのメッセージ性が強い作品が多く、『靖国』についても相当議論されたようです。しかし専門委員会で、助成対象作品として採択され、完成確認でも疑義があったわけではない。企画書から大きく違っていない以上、作家性を尊重する観点から、ここがおかしい、あそこを修正してほしい、とは言いません」(基金部)
 再び東中野教授の話。
「記録映画に、捏造された写真や不確かな写真を挿入するのは禁じ手です。元は税金なのですから、返していただきたいですね」
 反中映画に、かの国で助成金が出ることはあるまい。

週刊新潮』2008年3月20日号 P49-50

6 助成金750万円の反日映画靖国を巡る「検閲」騒動

 4月12日に公開される映画『靖国 YASUKUNI』(李纓監督)には、南京事件の「捏造写真」が使われている。どう見ても「反日映画」としか思えないこの映画に、わが国の助成金が出ていたから、国会議員が試写を求めた。これに対し配給側は「検閲」と反発する騒動になっている。

 本誌(昨年12月20日号)はこの映画に、中国反日プロパガンダに用いた南京事件の「捏造写真」が使われ、文部科学省所管の独立行政法人日本芸術文化振興会から750万円の助成金が支出された事実を報じた。
 振興会は政府の出資と民間の寄付を原資とし、運用益で各種の芸術文化活動に支援を行なっている。我々の血税が回りまわって「反日映画」に使われているわけだから、国会議員が問題視するのは当然であろう。
 自民党稲田朋美衆議院議員と、同議員が会長を務める自民党若手の勉強会「伝統と創造の会」が、2月12日に文化庁を通じて試写を要請。一旦、3月12日に東京国立近代美術館フィルムセンターでの試写をセッティングしたが、2月下旬になって、李監督が難色を示し出した。「伝統と創造の会」事務局長の赤池誠章衆議院議員はこう言う。
「自分の映画に批判的な国会議員が試写会を開こうとしているという話を聞いて、監督は絶対に許可できないと主張したんだそうです」
 配給・宣伝会社側は「検閲ではないか」と反発していたが、一転して3月3日、全国会議員を対象に、『靖国』の試写会の案内をファクシミリで送信。
〈本作品の劇場公開に先駆け、ぜひ国会議員の皆様にご高覧頂きたく、文化庁の協力による国会議員向けの特別緊急試写会をご案内させていただきます〉(アルゴ・ピクチャーズ
 なぜか稲田議員赤池議員にはこの案内が送られてこなかったそうだが、アルゴでは送り漏れのあった議員には郵送したという。

「結社の自由を侵害」

「検閲」と反発しておきながら、文化庁の協力を得て国会議員向けに試写会の告知を送るなど、配給・宣伝会社の対応には一貫性がない。試写を計画していた稲田議員らも、欺かれた格好である。
「アルゴのチラシを見ると、田原総一朗氏も推奨している立派な映画と書かれている。私たちが計画した試写会は、『靖国』が客観的なドキュメンタリーになっているのかどうかを検証するのが趣旨だったのに、全く違うものにされてしまっていたのです」(赤池議員
 アルゴ・ピクチャーズの説明は、
税金が入っていたとしても、事前に見せるのは問題があると思っています。批判的な意見を持つ一部の議員だけでなく、多くの国会議員に見ていただくべきだと思っています」

 この「検閲」騒動に首を突っ込んできたのが朝日新聞(3月9日付朝刊)。配給側の「事実上の検閲」というコメントを見出しにして紹介し、何やら、かつてNHKの「従軍慰安婦」番組を見た国会議員が内容の改変を求めた、と朝日が報じた事件を彷彿とさせる。
「試写会を検閲と表現するなら、私たちは結社の自由を侵害されたことになります」(赤池議員
 稲田議員はこう語る。
「私たちの試写会は、決して検閲ではありません。750万円という助成金がこの映画に投入されていることが妥当かを検討するためです。税金が客観性を欠く反日映画に使われているわけですから、試写を見て、文化庁と意見交換した上で、返還してもらえないか、話をしてみるつもりです」
 国会で、助成金を出した張本人を追及してほしい。

『AERA』2008年4月21日号

靖国」李監督120分インタビュー

「出演は了承していた」

「上映見送り」から一転「上映」の映画館も。だが、今度は出演者をめぐって、一部政治家と監督側が対立。監督が本誌に製作の経緯などを語った。

 高知県に住むある老夫婦の自宅に、朝から記者がひっきりなしに詰め掛けたのは今月10日のことだった。
 静かに暮らしていた夫妻が急に注目を浴びたのは、3月27日の参院内閣委員会有村治子議員自民)の発言がきっかけだ。
靖国神社問題と交ぜ合わせて使われている自分の映像を、映画から一切外してほしいと夫妻が希望している」
 「映画」とは、上映を中止する映画館が相次いだ「靖国 YASUKUNI」。老夫婦は、映画で日本刀づくりを披露する刀匠、刈谷直治さん(90)と妻だ。
 「靖国」の手緩監督は、本誌に2時間にわたり、こう反論した。
 「刈谷さんとは何回もコミュニケーションを取りながら撮影を進めた。最終的には刈谷さんが作る刀が靖国神社につながることももちろん了承してもらっている。今になって削除を求められるのは、刈谷さんに何らかの圧力があったからに違いない」

 夫は黙って見ていた

 李監督の説明では、刈谷さんの撮影は2005年以降、高知を10回以上訪れながら進めた。刀の資料を一緒に見るなどし、刈谷さんの刀が軍刀だったことも共通認識としてあったという。
 昨春、出来上がった作品を見せたところ、妻は刈谷さんが登場する場面に不快感を示したが、本人は黙って見ていた。最終的には国際映画祭への出品やチラシにキャストとして名前を掲載することにも同意したという。
 「刀について、夫婦の認識は、大きく違っていた」(李監督)
 改めて刈谷さん夫妻を訪れ話を聞くと、たしかに妻は、
 「夫が作る美術刀剣の撮影かと思っていた。(作品を見た感想は夫と)全然違う。私は暴力や血がいやなので、この映画に主人の映像は使わないでほしいと監督さんたちに言ったことかあります。でも主人は、監督と助監督が作品を見せに来たときも、黙って最後まで見ていました」
 と話す。一方、口数の少ない刈谷さんは次のように答えた。
――靖国神社に関する映画ヘの出演だと知っていましたか。
 「知っていた」
――作品を見て問題があると思いましたか。
 「思ってないね」
――監督に自身のシーンの削除を求めたことは?
 「ない」
――今後削除を要求しますか。
 「いや」
 では、有村氏が「刈谷さんに確認を取った」とする「削除の要望」は、どこから出てきたのだろう。
 夫妻に確認すると、委員会の前に、妻は有村氏と話をしたが、刈谷さんは話をしていないという。有村氏は本人とも話したと主張している。
 有村氏はホームページで、夫妻に接触したのは、気持ちを変えさせる意図ではなかったと主張。内閣委員会という場での質問のために、伝聞ではなく、「自らの論証を正確にしていくための調査を重ね」る目的だった、と説明している。
 だが、李監督はこう憤る。
 「公開前に、しかも出演者に政治家が電話すること自体が『圧力』。こんな事態は日本映画史上初めてのことではないか」

 靖国の抱える深刻さ

 李監督は空気が変わったのは、3月12日に行われた国会議員向けの「上映会」直後だと感じている。文化庁によると、封切り前の作品を議員がまとまって見ることは前例がないという。事実、この直後から、上映を見送る映画館が相次いだ。
 議員らに上映会参加を呼びかけた稲田朋美衆院議員自民)は、
 「(国側による750万円の)助成の妥当性だけを問題にした上映会なので、公開の前か後かはまったく気にしなかった」
 と説明する。だが、李監督は、
 「靖国神社を取り上げた映画のときだけ、公開前の議員上映会のような動きが出てくることこそが、日本が抱えてきた『靖国』という問題の複雑さ、深刻さを象徴している。政治家がここまで神経質になるのは、この映画によって靖国神社の存在が揺らぐと思っているからでしょう」

編集部 田村栄治

(K−K)