マーヴィン・ゲイで2デイズ

代替文


 3月と書いて番組改編と読む。包装業界。違う。法曹業界。それはもっと違う。放送業界。正解。バナナあげる。
 なんとか切り抜けましたよJ-WAVEさんの編成方針。今回は月〜木の「ランデヴー」(午後2時〜4時30分)のナヴィゲーターだったVieVieさんがお休みに入ってナヴィ交代ということもありましたからね。金曜の我々はその陰に隠れて4月の壁を突破するという、バスケットで言えばセンターとフォワードのスクリーンプレイみたいな、アメフトで言えばTフォーメイションからパスと見せかけてランニングバックにショートパスみたいな、サッカーで言えばバックスの裏に出すスルーパスみたいな、野球で言えば隠し球みたいな(笑)、相撲で言えば猫だましみたいな(ニャー)、ま、そんなことでしょうきっと。


 いずれにしても4月以降も「J-WAVEのなんでも受け皿番組」(あはは)としてサバイボーしましたので、聴くチャンスのある方は4649です。そういえば半蔵門にあるFM局さん(東京ミッドタウンにサテスタ作ったそうですな)がずいぶんと布陣を変えてくるってウワサですね。いぢめる? あんまりいぢめないでください。仲良くやりましょうよ〜。やれないのか(笑)。バナナあげるのになあ。


 VieVieさん、とりあえずお疲れさまです。番組最後でちゃんとご挨拶できず、すまんです。
 昨日はTaiji All Starsライヴ@渋谷クラブクアトロ。最後の方しか観られませんでした、すまんです。佐藤タイジさん、めちゃくちゃかっこよかったですなあ。ずらりとステージに咲いたヴォーカリストは、UAさん、Leyonaさん、hitomiさん、birdさん、松雪泰子さん、COLDFEETさん。すばらしい。UAやっぱりすげえ。生UAの歌オーラ別格。バナナ100本。タイジくんには101本。


ホワッツ・ゴーイン・オン +25 アイ・ウォント・ユー+17〈デラックス・エディション〉 レッツ・ゲット・イット・オン (DELUXE EDITION) Live at the London Palladium


で、今日は何の話しかと言えば、マーヴィン・ゲイさんであります。明日4月1日が命日。花冷えの候に逝く。明後日4月2日がお誕生日。桜の花咲く候に生まれる。享年44歳(というかピッタリ45年)。父に殺された男。
 驚くべきことに、いつの間にやらワタシ、マーヴィンより「年上」になってました。

 歳月は人を待たず。だってこのワタシがね、すでにマーヴィンより年上ですよ、今となっては。マーヴィンの見たことのない「おっさんの自分」を見ているわけです。かの名盤『WHAT'S GOING ON』の発表された当時(1971年)には小学校6年生だったこのワタシが。南沙織が好きだったこのワタシが。チェリーボーイなんてもんじゃなかったこのワタシが。
 それから幾星霜。「マーヴィンのアルバムでどれが好き?」と聞かれれば迷わず『I WANT YOU』と答えてしまう性癖のある“ちょいエロ”に成長」(以下省略)

(以上、4月発売の「bmr」誌掲載の拙稿「20世紀FUNKY世界遺産」より)


 とまあ、発売前の雑誌の原稿を掲載するのはルール違反なので(って、もう載せてるじゃん!)、以下、その「bmr」誌の「20世紀FUNKY世界遺産」に大昔に発表した駄文再録。あらためてマーヴィン・ゲイ様を哀悼。
 今、調べてみたら2本ありましたんで、今日明日で蔵出しときます。休日のおともにゼシ。って昨日も書いたな。

渡辺祐駄文蔵出し「ねずみ穴はやったんべえな」】*ここのタイトルの意味はわかんなくていいです。


「20世紀FUNKY世界遺産マーヴィン・ゲイさん」


 うお、うお、うおおおおお〜ん。断っておきますが遠吠えではありません。これぞ中年の嗚咽。CDプレイヤーから流れる歌声に流す涙のひとしずく。ああ、胸が苦しい心が痛い。こんなワタシに誰がした。渡辺祐41歳、過ぎ去った青春の日々に思いを寄せて男涙にむせぶ夜。さあ、歌っていただきましょう、心を込めてお届けするのは五木ひろしさんのナンバーで「終着駅」です! ♪しゅうちゃくえきぃぃぃ〜なまえをかえていきるのもいいねぇぇぇ〜。♪カーン(鐘の音)。

 すみません、また図に乗りました。本題です。今まさにワタシの目の前のCDプレイヤーから流れておりますのはマーヴィン・ゲイさんの名盤『WHAT'S GOING ON』のデラックス・エディション。そうです、賢明なBMR読者の皆さんはすでにご購入&ご愛聴のことでしょう、2枚組CDにオリジナル・アルバム・ヴァージョン、デトロイト・ミックス、シングル・ヴァージョン、そして1972年のライヴ・ヴァージョンをぶちこんだという涙ちょちょ切れる超弩級盤。あ、今、ちょうどライヴの「INNER CITY BLUES」にさしかかりました。なんと9分6秒の大熱演だ! 染みるぜ、オーマイダーリン。ごおおおおおお(また号泣)。

 まだ買ってない人は、今から輸入盤店に行ってお金を払って購入して(ポイント・カードも可)、CDプレイヤーに差し込んで続きをお読みください。

 さて。ワタシは以前、NHKのBSで70年代の「SOUL TRAIN」を100本オンエアするという怒濤の企画のお手伝いをしていたことがあります。ご想像の通り、これがまあ見たこともない映像の宝庫だったわけで、いろいろ目からウロコを落とさせていただきました。例えばほとんどのアーティストがクチパクで歌ってる(マーヴィンもだぜ!)のにJBだけはちゃんとナマだったりね。そりゃクチパクじゃできないだろ、ということもありますが(笑)、JBだけバンドで音出すとなれば“別予算”ですからね、TV 屋さん的に言えば。あとアレサ・フランクリンがミニのドレスみたいのを明らかに“着せられて”いて、もうやる気無しの助でイヤそうに歌ってる回も凄かったなぁ。ほほう、やっぱりアメリカとはいえ、それが“ザ・芸能界”なんですなぁ、ずずずずず(お茶を飲む音)、と思ったもんでした。

 実は、その目ウロコ落ちシリーズの中でも白眉と言えるのがマーヴィン・ゲイさんでありまして、これがもう落ちる落ちる。まずビックリしたのは、いきなりスタジオのダンスフロアにバスケットのボード立てちゃって、マーヴィンとドン・コーネリアスがワン・オン・ワンでバスケット対決してる回があるんですよ。いいですか、マーヴィンはまだしも、ドン・コーネリアスですよ。70年代ですから短パンぴっちぴちです。ハイソックスもキュキュっと上まで上げてます(たぶんソックタッチ使用)。そのぴっちぴちな二人が延々バスケやってるんだ。マーヴィンがゴール決めると「いえーい」なんてダンサーの皆さんから拍手が起こったりして。ああ、なんてダサいんだ、マーヴィン(笑)。ウロコぽろぽろ〜。

 ま、このご愛敬ヴァージョンはともかく、もうひとつの目ウロコ落ちは、スタジオでのライヴ歌唱シーンでのこと。バラード(今、曲名が思い出せない! これだから中年は嫌だ!)を切々と歌うマーヴィン(ニットキャップ時代)。まわりを取り囲んだ女性ダンサーたちのうっとりしっとり潤んだ瞳。す、するとマーヴィンさんたら、その中のひとりの女性に近づいて、いきなり“君のために歌うぜモード”に突入、そりゃもう、最高の切々を距離にして40センチぐらいのところで歌う歌う(ただしクチパク)。歌われた女性はもう失神寸前だ〜。でも、クチパクでハグとかそんなことしているもんだから、どんどん音とクチが合わなくなっていくマーヴィン。ずれてるぜ、マーヴィン。いいんだ、もうそんなことは、どうでもいいんだね、マーヴィン!

 というわけで、もしかしたら70年代にもTVで見ていたのかもしれませんが、そんなことはすっかり忘却の彼方に置いてきてるワタシは、そのフェロモン出しっぷり、潤沢な才能の惜しげもないサーヴィスっぷりに、またウロコ落ち。思い出ぼろぼろウロコぽろぽろ。

 最高のアーティストでありながら、立派にタレントでもあり続ける。これぞ芸能道の凄さであります。思うにマーヴィン・ゲイという人は、自らの“二枚目性能”と“音楽性能”の狭間にずっとはさまっちゃってたんでしょうね。それに悩んでみたり乗っかってみたり反逆してみたり利用してみたり結婚したり離婚したりメッセージ・ソング作ってみたりジャズ歌ってみたりセクシーで売ってみたり……と、とにかく試行錯誤の繰り返しだったんだよなぁ、ずずずずず(今度は焼酎のお湯割り)。最終的には、その悩みの種のひとつだったお父さんの存在という逃れられない壁に激突しちゃったわけですが……。

 そう言えば自分のアルバムに『離婚伝説』なんて邦題つけられちゃってるの知ってたんでしょうかね、彼は。まあ、そういうアルバムであることは間違いないんですが、知ってたらまた悩んじゃったかもなぁ……。
 ちなみに4月1日が命日です。合掌。
Here My Dear

[わたなべたすく]人生最大の後悔は「来日したマーヴィンのライヴに行かなかったこと」という41歳。行かなかった理由が「貧乏学生でお金がなかったから」というのが情けなくも哀しい。借金してでも行くべきだったな、それは。


(初出:2001年5月@black music review)


 長いっつの、このblog。バナナ没収。