2009-05-22-Fri
■[理工][日々是失敗]注射針の先

あるところで、注射針の角度指定という話になり、45度で切り落とすというネタがあったんです。
えー?45度?それじゃセプタムに刺さらないって。
私「注射針の角度は医療用で12度よ。それじゃ、注射針の先のファセットが取りづらいでしょ?」
しかし、聞いても誰もそれを知りません。
では少し、情報をリークしましょう。極秘情報ですぜ。
百聞は一見にしかず。これが現行の標準の医療用注射針(T社製)の先端です。
今、これはランセットポイントという研磨が主流です。レギュラーベベルと言われます。
ただ斜めに切り落としているだけじゃないのがおわかりいただけますか?
針先を斜めに研磨したファセットのことが、ベベル。
ただ単純な斜め切り落としは、フラットベベル。
これをさらに角度を変えて研磨し、先端を鋭く切りなおしたのが、ランセットポイントです。
ランセットはメスの刃。ポイントは先端部のこと。
T社は基本的にランセットです。
フラットベベルは先端部が丸く、尖ってないため刺すのに力を要し、当然痛みを生じるので、もう二回ファセットしなおして、先端を尖らせるのです。
横から見ると、再研磨の角度関係がはっきりします。
数年前までは潤滑剤として、シリコーンオイルが塗布してあったので、するっと皮膚を通ったのですが、規制により使用できなくなり、以前より注射の痛みが増していると思います。
この針は、カテラン針という長めの針です。長さ6.5cm7cm。
化学の実験室ではこの長さが一番使いやすいのですが、もともとは医療用です。
お尻に注射を打つとき、しばしば女性のお尻では脂肪が厚くて長さが足りず、このぐらいの長めの針を用いるのだそうです。
女性の平均臀部脂肪の厚さって、4cm近くあるらしいのね。知らんかった。
ランセットポイントカットは、使い捨てならいいんですが、何度も使うと先が丸くなり、刺しづらくなります。
理化学実験用ではこのタイプ。
バックカットポイントと言います。
先端部の刃が鈍らないように、ポイントを横側ちょっと後から研磨してあります。
痛みが生じてもいいタイプです。
液クロものだと、針先をわずかに曲げた、ベンドディップというタイプがあります。
すべては、利便性のため。
人に対する痛みが少なく刺せたり、あるいは耐久性を持たせるための工夫です。
これ、非常に細かい話なんですが、知らないと損をします。
肝心要なものや、本当にきめ細かい気配りって、さりげなさすぎて目には見えないものです。
なお、痛くない注射の打ち方については、以前の調査報告を参考のこと。
http://d.hatena.ne.jp/doublet/20051201#p1
(メモ)撮影レンズはすべて Zeiss Luminar 40mm Green Dot。三枚玉とは思えない写りと抜けの良さ。







>さくぅ〜っと刺して
あいててててててて。いたいいたすぎる。
ところで書き忘れましたが、ピアスでセプタムというのは牛の鼻輪みたいに左右の鼻の穴の間にあけるアレのことなのです。
化学だと、「セプタム」というのは、フラスコなどの開口部にするゴムの栓のようなものです。シリンジ針を突き刺して液を入れたり出したり。
注射針の角度が12度なのは知ってましたが、こんなふうにベベルが付いてるんですね、勉強になりました。
毎日患者さんに打っているにもかかわらず、知らなかったです。
今度、未使用のをじっくり観察してみようと思うのですが、31ゲージ、EL-Nikkor50/4のリバースでクリアに見えますかね?
痛くない注射の打ち方、私も一家言ありますのでお教えいたしましょうか?
ぜひ撮影してみてください。
この針は、テルモカテラン針 20G 7cm ですからかなり太めです。
これをベローズの先端にテープで止め、マクロ専用の 40mm レンズで撮影し、これをトリミングしてあります。
31G を 50mm でも、十分に先端が撮影できると思います。ちょっと小さいかな。
>痛くない注射の打ち方、私も一家言ありますのでお教えいたしましょうか?
ぜひぜひお願い致します。プロの技をご披露いただけると嬉しいです。
光源は、リバーサル用のライトボックスでも大丈夫なのでしょうか?
僕ら歯科の世界は、注射=麻酔の事で粘膜相手が主ですけど、幾つかコツと理屈を。
注射をするときの痛みは、3種類に大別できます。
針が刺さるという心理的な痛み、針が皮膚なり粘膜を突き破る時の痛み、そして針や薬液が組織内に侵入する時の痛みの3つです。
・針が刺さるという心理的な痛み
針を見せないなどの手技や言葉の使い方も重要ですが、一番大事なのは患者さんの年齢・性別・体型などから、痛みに対する閾値の高低を判断する事です。年齢が高いほど閾値は高いですし、男性よりは女性の方が閾値は高い。また痩せた方は太った方より神経質な事が多いので、閾値は低い。また、緊張している方は痛がる及び麻酔が効きにくい傾向にあるので、少し時間をおくなりしてリラックスさせるのが、有効です。
ガチガチに緊張した10代後半の男性なんか、かなりの難物ですね。時々、疼痛性ショックで意識消失する方も居ますし。
・針が皮膚なり粘膜の表面を突き破る時の痛み
皮膚ではあまり効果はありませんが、粘膜ですと表面麻酔をする。
針を刺す位置、刺入点と呼んでいますが、痛覚の少ない部分を選ぶ。
あらかじめ粘膜を引っ張って緊張させておいて、針を刺す瞬間に緩める。
針先カットと粘膜のなす角は90度よりやや浅めで、表面をすくい取るように刺す。刺入点によって、この角度は変化するというか、変えざるをえないのでこれに関しては絶対ではありませんが。
・針や薬液が組織内に侵入する時の痛み
針が組織を傷つけたり、組織間隙を押し広げるのが痛みの原因ですので、ゆっくり麻酔液を押し出しながら、麻酔が効いた範囲を徐々に広げながら所定の深さまで刺すのが基本です。
歯科において30や31Gなんて細い針を使うのは、針が組織を傷つけるのを最小限に押さえるのが一番の理由です。
組織が固い部分は避け、柔らかい部分に針を進める。
他にもいろいろ要素はあって、痛くない麻酔の打ち方に関しては薄い本が一冊書けるぐらいは色々なテクニックが存在します。
実際に体験するのが一番なんですが、必要も無いのに射つのもどうかと思いますので、参考までに。
長文、失礼しました。
まさにテクニシャンなんですね。
そこまで気を遣ってくださっているとは思いませんでした。感謝感激。
写真の照明については、どこまで金属の表面粗さを写真で表現するか、という必要によります。
この写真は、フラッド4方向+レフ1方向で、光を作っています。
マクロ写真でよく使われる、白いボックスに入れて周りから無方位照明ですと、結晶や研磨した金属は面が白く飛んじゃうことが多く、フラッドランプの照明のエッジで、表面組織を表現することが多いです。
ご参考まで。
男は黙ってテッサー、ですよね。
このレンズはさらに枚数の少ない3群3枚のトリプレットですが、大変よく写ります。
バイトン瓶にHgCl2(aq / KOH(aqなんかを刺しまくっていた時代に知っていたかったです。モノがモノなので、あんまり針交換なんてしたくないんですよ。
バリが出るので、そのカエシを取ります。
ついこの間まで、医療用注射針も再利用され、刺さりの悪くなった針は研ぎ直されて使われていました。
たぶんフラットベベルです。手先の器用な人ならバックカットもできるでしょう。
馮二斉ほどは研げないでしょうが。
あれだけ振動に悩まされるとは想像以上で、doubletさんがあれだけ撮影台にこだわっている理由を、今更ながら理解しました。
光の作り方なども含めて、あれだけキレイに撮られる事に敬服します。
EL50/4を使うのは、ここの読者でマクロ初心者なら当然のチョイスなのでは。
拙い写真ですが、トラックバックさせていただきました。
フレーミングを決め、ペラペラの被写界深度をうまく対象物に乗せ、小絞りボケが許される程度まで絞って、優しく優しくシャッターをミラーアップで切って、やっと見られる「図鑑写真」が出来上がります。
顕微鏡写真の方が楽かも、と、よく思います。
>ここの読者で
BlackCrane さんがこの日記を訪れてくれているとは思いもしませんでした。ありがとうございます!
初心者の図鑑写真ばかりですが、いろいろアドバイスいただけると幸いです。
医学誌であることを知りました
いつも読ませていただいております。
こちらの写真の美しさに刺激されて注射針(私のは先が曲がってしまっていますが…)を撮りましたのでトラックバックさせていただきました。
手短ですがご連絡まで。