Hatena::ブログ(Diary)

みそ記

2017-07-21

7/21夕

| 19:18

素麺。二人で2束。夫が3/4で私が1/4。私はそれに「たまごとうふそうめん(卵豆腐を素麺の形状にしてあるもの)」を1パック追加。「とうふそうめん」や「たまごとうふそうめん」だけでは食べているときに「麺に見えるが麺ではない」感があるが少量の小麦でできた素麺を間で口に入れるとなんとなく脳がだまされるような麺を食べた満足感がある。

具はきゅうり、温泉卵、ツナ。

ミネラルウォーター(立山の天然水)に昆布を泳がせておいたものと白だし(チョーコー京風だしの素うすいろ)を混合しただしをかけて。

逆流防止のため小麦麺は避けているが、夏の間に素麺は食べたい気持ちがあり、1食あたり25gくらいならしんどくならないかもしれない、と期待しての夕食。

夕食後やはり喉のひりひり感はある。喉にくふくふとした咳が出そうな感覚もある。これまでのようにひとりで1束半食べるのは難しいのだろうがまた食べたくなったらこの方法で食べることにしよう。

2017-07-20

7/20夕

| 20:42

ソーセージと丸茄子と空芯菜の炒め物、塩コショウ出汁粉末で味付け。丸茄子は甘くておいしいが小さめに切って長めに加熱したほうがよい。

茹でたて枝豆。

きゅうりと温泉卵をゲランの塩で。

冷奴。

食後に二十世紀梨のシャーベット、生協で購入した大山乳業のもの。

2017-07-19

7/19夕

| 20:51

豚肉と小松菜の炒め物、山椒の実を事前に油で炒めておき豚肉と小松菜を炒めたら塩コショウ出汁粉末豆鼓醤で味付け。仕上げにすりごまをのせる。

オクラをさっと茹でてスライスしたものと納豆と生卵を混ぜて醤油で味付け。

冷奴、おろし生姜と醤油で。

黒豆。

カットきゅうりゲランの塩まぶし。

2017-07-18

7/18夕

| 21:22

リーフレタス、炒り卵、ハムステーキ。

2017-07-17

7/17夕

| 20:00

空芯菜の炒め物、塩コショウ出汁粉末オイスターソースで味付け。

茹でたジャガイモの皮をむいてスライス。

小松菜とコーンとアスパラガスとハムのサラダ。

目玉焼き。

2017-07-16

7/16昼

| 16:22

昼食といっても実際にお料理がテーブルに運ばれ始めたのは午後2時。

一階のお魚屋さんで食材を選んで二階のお料理屋さんで料理してもらう。

夫はこの時期旬の岩牡蠣を酢牡蠣で食す。

甘鯛の半身をお刺身に、もう半身を塩焼きに、そして頭を味噌汁にしてもらった。味噌汁はひとつはネギ抜きで注文したが調理の段階でうっかり両方共にネギを入れたらしく取り除いてからネギ抜きとして供してくださったようで味噌汁をかき混ぜると小さな小口ネギが舞うため食べるのは諦めて残した。

鯵の半身をお刺身に、もう半分はアジフライに。アジフライは夫はタルタルソースで、私はお醤油で。

サザエのつぼ焼きをひとり2個ずつ。重さによってお値段が違うのだがつぼ焼きにするなら小さいほうがおいしい(お刺身で食べるなら身が大きいほうがいいのだけど)と教えてもらい一番安い100円のサザエを4個購入。たしかに大きいものに比べると苦味が少なくておいしいかも。サザエの苦味はあれはあれで好きなのだけど、100円サザエの苦味で十分満足。

茶八目の煮付け。あっさりとしたメバル的な味わいで脂っぽすぎずたいへんにおいしい。

食事を終えると3時。お昼のお魚で満たされているので今日の夕ご飯はたぶんキウイとスモモをカットしたものになりそう。サラダ菜も食べたかったら食べる。夫は食パンに美ノ国のハムを挟んで食べようかなと言っている。

2017-07-15

7/15夕

| 20:23

とんかつ屋さんで鹿児島黒豚ロースカツ200g。単品で。キャベツのドレッシングはなしで。ソースは出てくるけど使わずにおいしい塩とからしで。

夫は同じく鹿児島黒豚ロースカツ125gの定食で、私のロースカツを2切れ食べ「125gのよりも200gのほうが柔らかくておいしい」と言う。

「誕生日なんだからなんでも好きなものを好きなだけ食べてくれ」

「やったー、ありがとー」

ということで誕生日の夕ご飯はトンカツとキャベツ。

2017-07-14

7/14夕

| 20:54

鶏肉とジャガイモのアンチョビバジル炒め

バジルソースはニンニク不使用のもの 株式会社アイケイIKF


なめこの味噌汁

昨夜の残りを冷蔵保存しておいたものを再加熱


野菜豆

大豆、ニンジン、昆布、筍、蒟蒻を煮てあるもの、生協で購入


洋梨のアイスキャンディー

7/13夕

| 12:04

なめこと麸のお味噌汁

マルシマの出汁粉末使用。逆流の調子がわりとよいのでいい気になって小麦製品(麸)を2日連続で食べたらちょっとよくないかんじ。


シャキシャキフリルレタス

生協購入。洗わずちぎるだけで食べられる。


タチウオのバターソテー

生協購入。塩コショウみりん等(五葷なしの調味料)で下味をつけて小麦粉をまぶし冷凍してあるものをそのままフライパンで焼く。食べる時に生姜醤油を少しつけたほうがおいしかった。


そばがき

半年くらい前に蕎麦を食べに行きそばがきの素を購入していたのがふと見ると賞味期限が切れていたため作って半分食べた。残り半分は翌朝用にしたが一度冷えたそばがきはあまりおいしく食べられなかった。夕食に炭水化物を摂取するのは久しぶりであったが食べるとやはり喉がつまってひりひりとした感覚がありよろしくない。

2016-10-12

海辺の家

| 20:05

夫が借りてきたDVD。一緒に見た。

映画が始まり画面に『Life as A House』と表示されたあと日本語で『海辺の家』と表示され随分と趣の異なるタイトルだなと思ったが内容としてはどちらのタイトルでも大丈夫なかんじだった。個人的には『Life as A House』のほうがぴったりとそしてぐっとくる。

夫が「こんなとこに住むのいややなあ」と言う。「海が近くて塩で家が傷むから?」と訊くと「そういうわけじゃないけど、断崖絶壁というわけでもないけど、なんかこう安定感がないじゃん」と言う。

主人公の家はたしかに海がすぐ側にあり走って飛んでそのまま海に飛び込むことができる。しかし海とは反対側には隣家がいくつもある住宅街で土地としてそんなに不安定というわけではない。

主人公の自宅は古い簡素な家でそれを取り壊して自分で新しい家を建てる。息子と一緒に。家を建てている間の住まいはガレージでその住環境は全然快適ではないがそれなりに暮らしつつ建築作業を進める。

新しい家は古い家とは違い美しくしっかりとしている。主人公は家の完成を見ることなく完成後の家に住むこともなく、さらにその家のともに建築にあたった息子が受け継ぐのでもなく、息子は父の思いを受け継いで行動にうつす。

夫が借りてきたDVDにしては『紙の月』も『海辺の家』も両方とも当たりの映画だったと思う。

キャプテン・フィリップス

| 19:23

夫がテレビでバラエティ番組を見ていたとき私はバラエティ番組の音声が苦手なため「その番組を見るならイヤホン繋いで見て」と言ったら夫は「承知」と言いイヤホンをして視聴。その後そのままテレビを消すことなくなんとなくかえたチャンネルでたまたま放映していた映画を見始める。英語音声で字幕で。私には音声は聞こえないが映像と字幕だけで充分ストーリーについていけてそのまま一緒に最後まで視聴。

視聴を終えて夫が「あー面白かったー」と言う。「なんていう映画だったの?」と問うと夫は「知らん。わからん」と言う。「どうやらくんが今手に持っているそのリモコンでテレビの画面を番組表にしたら映画タイトル出るんだから面白かったと思う映画ならそのタイトルくらいは知っておこうよ」と言うと「あ、そうか」と言ってテレビに番組表を表示し「キャプテン・フィリップスって書いてある」と言う。

私にとっては暴力と感じられるシーンもあり音声音響なしで画面と字幕だけで見たから淡々と最後まで見ることができたのかもしれない。

2016-10-11

紙の月

| 21:46

夫が借りてきたDVD。一緒に見た。

主人公の恋人役を演じた俳優さんにどこかで見覚えがあるような気がしてどこでこの人の仕事を見たのだろうかとさぐってみると、大河ドラマ「義経」で少年期の源頼朝を演じていたとある。いくら私が大河ドラマはわりとこまめに視聴しているとはいってもそして「義経」はけっこうまじめに視聴したほうだとはいっても少年時代の源頼朝の風貌までは記憶してないよねと思う。それならばと次に自分が知っていそうな作品といえば大河ドラマ「風林火山」。たしかにこれもかなりまじめに視聴したが、風林火山の武田勝千代勝頼役と言われてすぐにその姿や形が思い出せるほどではない。それに義経は2005年、風林火山は2007年で今から10年前後前の作品。となると当時は少年で青年時代の現在とは異なり随分と子役に近い少年役。あとは私が知っている作品といえば「新撰組!! 土方歳三 最後の一日」の市村鉄之助役。このあたりで『あ、土方さんから生きて帰る任務を言い渡されて嫌だ自分もここで皆と共に闘い散りたい、とごねていた男の子だ』と記憶が近くなる。しかしこの作品も2006年で10年前の作品、青年というにはまだ幼く青年になる前の少年役だったイメージ。しかし私がこの人の仕事見たことあると思うのはもうちょっと今の大きさ姿形に近い時期の作品なんだけどなんだろう、と見ていくと、あ、これだ、オリエント急行殺人事件の自称探偵の青年だ。これならば撮影は2014年頃で放映が2015年新春。『紙の月』は2014年の作品だから身体的な時期は似ているはず。ということは先にオリエント急行殺人事件でこの人の仕事を見たのね、そういうことか、とスッキリ。

2016-08-17

ゴーヤスープに生姜梅酢

| 20:24

以前書いた「ゴーヤと豚肉と春雨と梅干しのスープ」を久しぶりに作った。一夏に何度かは作るので約一年ぶり。

義実家では夏になると義母がゴーヤカーテンをしつらえる。居間の南側の日除けとしても頼もしいがゴーヤの実が今年も大豊作。義母は毎朝ゴーヤとバナナと牛乳をミキサーで撹拌してジュースを作り義父と一杯ずつ飲む。

今回の帰省で義実家を出発するときにゴーヤを2本収穫してもらい保冷バッグに入れて持ち帰ってきた。

昨日はゴーヤ1/4本と冷凍バナナをやや解凍したものと牛乳とりんごジュースと梅シロップでジュースを作った。夫が「今朝広島で飲んだのとちょっと味がちがうけどゴーヤとバナナと牛乳以外に何か入ってる?」と訊くから「りんごジュース。梅シロップも少し入ってるけどそれはあまり味に影響していない気がする」と応える。夫は「広島で飲んだやつよりもこっちのほうが爽やかでおいしい。牛乳だけじゃなくてりんごジュースも入れたほうが爽やかになるんやな。これはかあさんにりんごジュースも入れろいうてメールして」と言う。義母の携帯宛にショートメッセージを送る。「ゴーヤとバナナと牛乳とりんごジュースでゴーヤジュース作りました。おいしい。りんごジュースも入れてみてとかあさんに伝えてくれと頼まれたのでメールします」義母からは「わかった。つくってみます」と返信がくる。

そして残り3/4を使って夕食にゴーヤチャンプルを作った。こちらも体にほうっと染みこむおいしさで夏の体が満足する。

今日は残りもう一本のゴーヤのうち約3/4使いスープを作る。作り方は毎回上記の過去日記を開いてはレシピを確認する。今回は千代のだし1パックを水出ししておいたものと昆布出汁粉末スティック半分くらいとマルシマだしの素を1/4包くらいでだしとする。煮立てたところに塩コショウで下味をつけた豚肉と種と実をほぐした梅干しを入れる。梅干しもこの夏の義母作。レシピをよく見ると種は一緒に煮立てるが実はあとで上に飾ることになっており、追加でもう一個梅干しの種を鍋に入れ実を飾り用に残した。

豚肉と梅干しを5分ほど中火で煮たらゴーヤと春雨を加え胡椒で味を整えひと煮立ちさせて出来上がり。ゴーヤは薄く切り塩をまぶしたあと水洗いして水気を切ったもの。春雨は水につけておき水を切ったもの。

器に盛り付け飾り用の梅の実をのせる。夫が「なんかまえはもっと梅の酸味の主張が強かった気がするんだけど」と言う。そうねえ、そういえばこれまではうちで私がむかし漬けた梅干しを使っていて、しかも料理用には小梅のしょっぱいやつ(しょっぱすぎて梅干しとして食べるのはつらいため料理用調味具材となった)を加えて使ってたからその小梅の主張が強かったんかな、それで梅の風味がちがうんかもしれん。お義母さんの梅干しの瓶の底に少しある梅酢を足してみようか、いや、待って、それよりも、ただの梅酢よりも、なんとなく、こっちのほうが合うような気がする、と冷蔵庫から新生姜の梅酢漬けを取り出す。その梅酢部分をスプーンですくい器の汁に加える。夫が「どう? おいしい? 生姜の味が染み出てるけど生姜の味が加わってもいけそう?」と訊く。少しだけ生姜梅酢を加えた汁を味見する。おおっ、これは、この生姜梅酢を加えたほうが完成度が高い。「私は好き。これを入れたほうが好き」と応える。夫も少しだけ加えて味見し「おお、これは」とさらに生姜梅酢を足す。

新生姜の梅酢漬けはいつもあるとは限らないが初夏に漬けて夏の間くらいはあるようにしておけばゴーヤのスープを作るときには必ず調味料として入れてまたこの味を再現できるかも。

2016-01-11

ビューティフル・マインド

| 10:18

夫が借りてきたブルーレイ。私は以前にもレンタルビデオやテレビ放映ケーブル放送放映で何度か見ており好きな作品なのでそれをこのたびブルーレイで視聴できることによろこぶ。手元のPCではCDとり込み作業をしつつ目はテレビ画面を見つつ視聴。

ブルーレイで見ると調度品や建造物木々や水面などがより一層美しく映る。かつて見たときには学生時代から仕事を初めて間もない時期の主人公の若々しさがたいそう若々しく見えたものだが、こちらはブルーレイで見ると若作りメイクをものともせず役者さん本人の演技時の年齢を肌のハリツヤなどによって露わにする側面もあった。それは老けメイクに関しても同様で、今は技術が進化してブルーレイで見ても気にならないレベルのメイクになっているのかもしれないがこの作品に関しては老けメイクを施したのですね感があったもののそれはそれとして作品自体は以前と変わらず以前以上におおいにたのしめた。音楽の音も今回ブルーレイで聴くほうが繊細にクリアに聞こえる気がしてこちらもたのしかった。

この作品は夫も過去に視聴しているはずなのだが「帽子をかぶったひとが出てきた」のをおぼえている以外はほぼまったく記憶がなく「すごく新鮮な気持ちで見られたなー」と喜ぶ。私はというとほぼすべてのシーンをいちいち記憶しているため夫のようにまるで新作を見るような新鮮さを得ることはできないが自分のお気に入りのシーンをじっくりと見て堪能する歓びはある。

レンタル屋さんから帰宅した夫に「今回は何を借りたの?」と尋ねると「ビューティフル・マインドとインサイド・マン」と言う。

「ああ、ビューティフル・マインドは美しい映画だったよね」

「え、見たことあるん?」

「うん、何回か見てるよね、どうやらくんも一緒に見たと思うよ」

「そうじゃないかなとは思ったけど全然おぼえてないけん借りてきた。みそきちはどんな話だったかおぼえてるん?」

「うん、天才数学者の主人公が統合失調症にかかって……、はっ、うわーっ、ごめん、ごめん、ネタバレしてしもうたー、どうやらくんはネタバレなしが好きなのにー、ほんっとごめん」

「いや、それくらいはレンタル屋さんのケースにも書いてあるからかまわん」

「そ、そ、そうなん?」

そんな話をしてから見始めたが、見れば見るほど、かつて見た時にこのシーンでは夫とこんな話をしたなあんな話をしたなという記憶がよみがえる。同じ映画を一緒に見てあれだけいろんな話をしていたのに夫は帽子のひとが出てきたことしかおぼえていないだなんて。そのときに妻と話したことなどかけらもおぼえていないことであろう。

最後まで見てから私は自分のお気に入りのシーンが入っているチャプターを開けてもう一度二度三度と見る。

「私ね、この、みんながテーブルにペンを置いてくれるシーンが好きなの」

「ああ、これなあ、こんなにようけいペンもろうても困るやろ思うたなあ」

「いや、このシーンはそういう実用の問題じゃなくて、こういうことほぎにおける型・様式だから」

「マナーみたいなもんなんかなあ。でもあのもらったペンあとからどうするんやろうなあ。くれた人達各自に返すんかなあ。返してもらえんのんじゃったら自分が書きやすくてすっごく気に入っているペンはあんまりあげたくないしかといってあそこであんまりやっすいボールペンじゃあいかんのやろうし、しかしあんなに万年筆ようけいもろうても使いきれんし」

「わからんけどああいう立場の人たちはそういう場面に備えてそれ用のペンを持ち歩いてはるんとちがうかな」

「ああ、それならええわ」

「このシーンってさ、前半のまだ学生だったときにも同じ場所で別のずっと年上のひとが同僚たちにペンで祝福されるシーンと均衡がとれていてそれも美しいでしょ」

「え、そうやったか?」

「そうだよ、ほら、ここ(とそのシーンを再生)」

「あー、そういえば」

「あと、後年図書館で声をかけてきた若者に『食事はしたか』と尋ねて妻が作ったマヨネーズのサンドイッチを与えるシーンもね、前半でルームメイトが『最後に食事したのはいつだ、ピザとビールを』って主人公を問い詰めて食事に誘うシーンとかぶってて、寝食忘れて研究に没頭する学者の気質と食事のことを気にかけてくれるひとがいることのいとおしさみたいなものがにじみ出ていて、かつてたとえ自分が創りだした幻覚幻聴で得たものであってもそのいつくしみを持ち回りで後世の者に手渡していくのも美しい構成ですきよ」

「映画のそういう細かいところが好きなひとは好きなんやろうなあ」

「細かいというにはどっちもけっこう重大なシーンだと思うんだけど」

「おれは最後の最後まで、あのノーベル賞の授賞式が済んだところではっと気がついたら病院のベッドの上に戻ってるんじゃないかと思って、授賞式もその前の研究の日々も病気からの回復の過程もそれこそすべてが幻覚だったっていうオチなんじゃないかと思って見てたんだけどちがったなあ」

「それじゃバタフライ・エフェクトになってしまうじゃん。この映画はそういうサスペンスじゃないから」

「そうなんだけど。ビューティフル・マインドの分類は『ドラマ』『ヒューマン』でバタフライ・エフェクトは『サスペンス』だったからちがうのはわかってるんだけど、ここまで『あれは幻覚でした』っていうことならこれも幻覚かなって思うじゃん」

「いや、もう、私はこの映画の展開を知りすぎていてもうそんなふうには思えんけど、でもいちばん最初のときはあらすじも何も知らずに見て前半ずっとルームメイトのことも秘密の任務のことも主人公に同化して実際の出来事だと思って見てて病院のシーンで『え、え、え、どういうこと? ええええー、今までのことのどことどこが幻覚でどれとどれが現実だったのー』と混乱はした。あの混乱はあれはあれで面白い体験だった」

幻覚に翻弄されるのはたいへんそうだけど、夫のように現実のことであってもそれをほぼまったく記憶していないのはちっともたいへんそうじゃない。

2015-12-29

レ・ミゼラブルとフォレスト・ガンプ

| 21:49

土曜日に夫が借りてきたDVD。まず「レ・ミゼラブル」ほうが再生される。夫はまじめに見るつもりで私は他のことをしている状態で音楽は聴けば聴こうかなくらいの視聴態勢。

本編が始まりしばらくすると画面が止まる。雪のひどい日にケーブルテレビの映像が止まるような止まり方。再生しなおしてもまたその場面で止まる。

チャプターをかえてもジャン・バルジャンが司祭様に救われる場面のところでまた止まる。DVDの問題なのか、うちの再生機の問題なのか。

そのあたりで私が夫に「どうやらくんがミュージカルを借りてくるなんてめずらしいね」と言うと夫は「え、これ、ミュージカルなん?」という。

「うん。さっきも皆さんほとんど歌ってはったやん」

「そういえば、なんでセリフを歌いながら言うんじゃろうとは思ったけど」

「レ・ミゼラブルじゃけんねえ」

「レ・ミゼラブルはミュージカルなん?」

「もともとがミュージカルというわけじゃないけどレ・ミゼラブルはミュージカル作品がたくさん作られてるような気がするよ」

「そうなんじゃ。知らんかった」

夫はもう一枚のDVDとして「フォレスト・ガンプ」を借りてきていた。フォレスト・ガンプを再生機に入れ再生してみるとこちらはなんの問題もなくすんなりと展開する。我が家の機械の問題ではなくレ・ミゼラブルのDVDの円盤に何か問題があるのかも。

フォレスト・ガンプはふたりで一緒に見た。以前も借りて見たことがあり、テレビ放映やケーブルテレビの放送でも何度か見返しているが、夫は「久しぶりに見ると新鮮に見れたなー」と言う。私もそうは思ったが、きっと私は夫に比べると以前に見た時の記憶が多く蘇り夫ほどの新鮮さは感じていないかもしれないと思う。

フォレスト・ガンプで私が好きなのは、息子フォレストを紹介されたときにフォレスト・ガンプが息子の知能を心配するシーン(そして「この子はとても賢くて優秀な子のクラスにいるのよ」という説明を聞いたときのフォレスト・ガンプの表情)、ベトナム戦争時の同じ隊の上官がエビ漁の船から海に飛び込んで「かみさまとなかなおり」するシーン。

夫がDVD返却に行く時に「レ・ミゼラブルのお金返してもらおうかな」と言う。帰ってきた夫に訊くと「事情を話して百円返してもらった」という。

「それは、よかったね。お店のひともあのDVDは貸し出す前にチェックしたほうがいいだろうからちゃんと言うてあげるのが親切じゃと思う。けど、どうやらくんにしてみたらレ・ミゼラブルがうまく映らんでくれてむしろラッキーじゃったかも」

「うん、ミュージカルって知っとったら借りとらんかったもんなあ」

「予備知識なく先入観なくまっさらな状態で視聴する醍醐味もあるとは思うけど、構成がミュージカルだというだけで視聴がつらくなるどうやらくんみたいなひとはそこは気をつけて借りんたほうがいいんじゃないかなあ」

「歌わんでもふつうに台詞を喋ってくれたらそれでいいのになあ」

「それじゃあミュージカルにならんじゃん。歌劇には歌劇の在り方があるんじゃけん」

「なんでお芝居なのに歌うんかなあ」

その後夫は映画のタイトルを書きだしたメモ(レンタルDVDが見つかったら借りてきて見たい作品リスト)を取り出しPCでタイトル検索を行いその作品のジャンルを調べタイトルの横に書いていた。

2015-05-14

登山用靴下

| 12:14

5月2日、お蕎麦屋さんでの夕食を終えホテルに帰宅してくつろぐ。外出中も窓は開け放していたけれど戻ってからはドアチェーンになる留め具をドアに挟んでずっと少し風が通るようにして過ごす。廊下を行き来する他のお客さんの気配もなく静か。夫は館内の一階にあるらしい喫煙所に煙草を吸いに行って戻ってきてうがいをする。私は夜7時すぎるのを待って館内の温泉大浴場へ入浴に行く。その間も部屋のドアは少し隙間を開けて。私が大浴場に入ると先に入っていたひとがあがり結果私ひとり貸切状態でゆっくりと入浴。大浴場とはいっても洗い場三つで浴槽は畳一畳くらいの大きさだろうか。クセのない温泉源泉が常時流入しておりそれがわりと高い温度なので水道水の蛇口に取り付けてある太いホースが浴槽の中にありその蛇口で水を入れて湯温を適温にして入浴する。私はお湯が源泉100%掛け流しであることよりも適温であることを重要視するほうなのでじゃんじゃん加水する。手足を伸ばして湯浴みを堪能する。

部屋に戻りまず化粧水をつけてから部屋備え付けのドライヤーをユニットバスのコンセントに差し込んで髪の毛を乾かす。旅行前に美容室で髪の毛を整えてもらっておいたから頭のお世話がラクでいい。事前にホテルの備品情報を見てドライヤーが備え付けなのはわかっていたけれどどの程度のパワーのドライヤーなのかは実物を使ってみないとわからないため、旅のドライヤー(コンパクトなのにパワフル)を旅行かばんに入れては来たけれど、ここのホテルのドライヤーは十分な強風で素早く髪の毛を乾かしてくれる。ドライヤーに関してはドライヤーが宿にあるからと思って持参せずに来て宿のドライヤーを使ってみたらヘナヘナな風力で、やる気あんのか私の多毛と剛毛を甘くみんなよ、な気持ちになることがある。かといって事前にホテルに電話してドライヤーのパワーはどれくらいでしょうかと問い合わせるのも難しく、何ワットですと言われてもそれでなるほどこれくらいねと思えるようなものでもなく、なかなかに判断が難しい。車の旅は余計な荷物を少々運んでも苦ではないから旅のドライヤーは一応鞄に入れておいて、宿のドライヤーがよければそれをお借りし、宿のドライヤーがへなちょこの場合には持参のドライヤーを使う、という形に今のところ落ち着いている。

髪が乾いたらベッドに寝転んでスキンケアの続きを行う。温泉が染みこんだ肌に化粧水やクリームを加えるとモッチモッチとした感触になる。

夫が旅の鞄を開けて何かをさがしている。「おかしいな、入れたはずなんだけどな」と言いながら。

「何をさがしているのですか。登山靴下?」

「うん、山用靴下。入れたはずなんだけど」

「車の中に置いてる山用リュックのほうに入れてるとか?」

「ああ、そうかも、見てくる」

夫はすぐに駐車場に行って「よかったー、あったー」と戻ってくる。

「よかったね。二度あることは三度ある、って言うもんね」

「え、おれ、靴下忘れて登ったことなんかないよ」

「そうだっけ、このまえうちの近所の山に日帰りで行ったとき、現地で靴下履き替えようと思ったら持って行ってなくて、ふつうの靴下だと靴ずれになるからその日は山に登るのやめて帰ってきたことがあったじゃん」

「うん、あのときは結局登らんかったんじゃけん、忘れて登ったことにはならん。だからおれはまだ靴下を忘れてそのまま山に登ったことは一度もないのさ」

「ようわからんけど、まあよかったね」

「それに、もしも山用靴下を忘れても、ふつうの靴下を二枚履きして登るという手もある。昭和初期の登山方法らしいけど」

「せっかくいい山登り用靴下買って持ってるんじゃけん、それを使ったほうがいいよ。で、明日は結局どっちのお山に行くの?」

「もしかすると蓼科も霧ヶ峰も両方行ってくるかもしれん。蓼科に行って疲れがひどかったら蓼科だけで帰ってきて後日霧ヶ峰にするけど、明日天気いいし、蓼科登って下りて余裕があったら霧ヶ峰もちゃっと行ってこれたらそうする」

「へえ、一日で百名山二個制覇するなんてすごいね」

「そうは言うても霧ヶ峰はハイキングコースみたいなもんやからなあ。みそきちはどうするん?」

「部屋で楽譜を堪能してから、ちょっと近場にお散歩に行くかも。諏訪大社に行くかもしれないし、それよりもスーパーの鮮魚コーナーに鯉がいるらしいのを見に行きたいかも」

「鮮魚コーナーに鯉?」

「うん、今回下諏訪に旅行に行く話をしたら、職場の長野出身のひとがいろいろ教えてくれて、お魚コーナーに鯉の切り身がパックに入って売ってるって聞いたから見てみたいの」

「またー、そんなん騙されてるんやって」

「鯉だけじゃなくてこっちで売ってるものもいろいろ見てみたいけん。どうやらくんは何時頃帰ってくるん?」

「蓼科だけなら1時半くらいかなー、霧ヶ峰も行ったら4時半くらいになるかなー」

「そっか、わかった」

明日は山も下界のお散歩もいいお天気になりそう。

2015-05-03

下諏訪五葷道

| 14:45

夕方ホテルを出かけてお蕎麦屋さんへと向かう。途中にお土産物屋さんとおやき屋さんがある場所に立ち寄る。いろんなおやきがあるなあ、明日またここに来てどれか食べよう、と思う。

夕ごはんのお蕎麦屋さんでは玄関で靴をぬいで畳の上にあがる。お好きな席へどうぞと案内される。

メニューを見る。食べたかった馬刺しがある。やったー。山菜の天ぷらはないけれど天ぷら盛り合わせがある。あたたかいお蕎麦にも冷たいお蕎麦にも天ぷら蕎麦があるけれど天ぷら盛り合わせは2切れずつ供されるようなので二人で分け合うのにちょうどよい。

夫はざるそばを、私はおろしそばを。単品で馬刺し、しらすおろし、冷奴、天ぷら盛り合わせ、もろきゅう、だし巻き卵。

ざるそば以外は「ネギ抜き」でとお願いする。お店の方が「ざるそばに葱は付きますが薬味で別についてきますのでお好みに合わせてお使いくださっても残してくださっても」と説明してくださる。

「だし巻き卵には葱は入っていますか。鬼おろしがかかっていると書いてありますが鬼おろしとはなんですか」

「だし巻き卵も葱なしでお作りしますね。鬼おろしというのはですね、大根おろしなんですが、おろし金の目が粗くてふつうの大根おろしよりも大根が大きくおろしてあるんです、それが少し卵の上にかけてあります」

「そうですか、大根なら大丈夫です、では、葱なしのだし巻き卵をお願いします」

「念のため今一度確認させていただきますね、ざるそばひとつ、おろしそばひとつ、馬刺しひとつ、だし巻き卵ひとつ、冷奴、天ぷら盛り合わせ、ざるそばの薬味以外はすべてネギ抜きですね」

「はい」

ここで夫が「お酒を注文したいんですが、おすすめはどれですか」と質問する。お店の人は一瞬「う」と答えにつまるが「あの、わたしの個人的な好みでもよろしいでしょうか」と問い返す。夫は「ぜひ、そのほうがいいです」と言う。

「この地方のお酒は全般的に辛口のスッキリタイプなんですが、わたしはこれが好きで、あと、下諏訪唯一の酒蔵のどこどこさんが力を入れて作っているのがこちらなんです、これは他の地域ではあまり出回っていないかと」

「じゃ、それを一杯お願いします」

オーダーが厨房に通される。「ざるそばの薬味以外すべてネギ抜きでお願いします」「はい、すべてネギ抜きねー、了解ー」。

冷酒は升の中に小さめのグラスが置かれそこに一升瓶から注がれる。なみなみと溢れ升の中にもお酒がたまる。一口飲んだ夫は「わー、辛口だけど思ったよりもずっとやわらかい」と満足そう。

しらすおろしは丼たっぷりのしらすと「細かいぶつ切り」かと思えるようなあらびきの大根おろしに蕎麦のつゆと海苔がかけてある。それを大きな木のスプーンですくって小皿に取る。

馬刺しは赤身が多くスジが少ないふんわりやわらかタイプ。水菜が付け合せに盛られている。おろし生姜と豆板醤を好みでつけて食べる。馬刺しだけで食べてもおいしいが、生姜と水菜を一緒にくるんで醤油をつけて食べたほうがおいしい。夫はこれに豆板醤も追加する。

冷奴はざるそばのざるの上にのって出てくる。花かつおがかけてある。おろし生姜もたっぷり。夫が「ここのお店はおろし生姜の気前がいいなあ、大根おろしの気前もいいけど」と感心する。

もろきゅうは縦に半分横に半分に切ったきゅうりとマヨネーズともろみ味噌。卓上の升に塩と炒った蕎麦の実が入れてあるそのお塩をぱらりとかけて食べてもおいしい。

だし巻き卵がテーブルに乗った時、夫と私の動きが止まる。

「あの、この、卵の中の緑色のものは」

「はっっ。この緑色のものはっ。すぐに確認してまいります」

厨房で「卵に入っている緑色のものは?」「緑色? うわーーーーーっ。そうやったーーーー。六番さん全部ネギ抜きやったーーーー」という会話が交わされる。「すぐに作りなおすとお伝えして、はっっ、いや待って、卵が今もう数がない…」

その後なにやら厨房で小声でやりとりがなされたあと接客係の方がテーブルに来られ「誠に申し訳ないのですが、先ほどのだし巻き卵に間違って葱を入れてしまいまして、葱なしのものを作りなおしてお持ちしようとしたのですが、卵の在庫を少々切らしておりまして」

「そうですか、でしたら、だし巻き卵の注文はキャンセルで」

「いえ、もしよろしければ、お代はいただきませんので、今の玉子焼きの一部をサービスとして葱が食べられる方だけにでもお召し上がりいただくということにさせていただいてもよろしいでしょうか」

「え、いいんですか」

「はい、本当にすみません」

その後しばらくして先ほどのネギ入りだし巻き卵が先程と同じ量同じお皿で登場する。「このままお出しいたしますが、食べられるだけ食べてあとは残してください。本当にすみません。あと天ぷらとお蕎麦お持ちしますね」

そう言って引き返した店員さんに厨房の中の人が「もしかすると、葱がだめってことは玉ねぎもだめなんかな、訊いてみてくれるかな」と言う。接客係の人が来て「もしかして葱だけでなく玉ねぎもだめですか」と問われるので「はい、だめです、私は食べられません」と首と腕を横に振りながら答える。

しばらくすると厨房で料理を作っていた男性が天ぷらを持ってテーブルに出てこられ、「先程のだし巻き卵は本当にすみませんでした。こちらの天ぷらのここに玉ねぎがありますが、こちらも無理そうでしたら残してください」と案内してくださる。夫が「あ、ぼくが食べますんで、大丈夫です」と答える。

夫のざるそばと私のおろしそばが来る。おろしそばは越前のおろしそばとは見た目が異なり大根おろしは先程の鬼おろしで大根おろし以外に大量のしらすと天玉(天カス?揚げ玉?)と海苔がのる。越前のおろしそばは辛味大根というシャープな辛味の大根おろしと花かつおがのるのが基本だがここのおろしそばにははなかつおはのっておらず大根おろしの大根も辛くない。丼の真ん中に鎮座するきざみ海苔を夫に引き取ってもらう。海苔は食べても頭痛にはならないが食べるとうまく消化できず胃が固まったように固くなるようになったのでここ数年食べるのを控えている。夫はざるそばの上にたっぷり海苔をのせて「ざるそばがもりそばになった」と言う。

天ぷらは蕎麦のだしつゆにちょんとつけたり、卓上の升の塩をぱらりとかけたりして食べる。エビと玉ねぎとかぼちゃとなすとしし唐辛子。私はカボチャとナスとエビを食べた。夫がしし唐辛子(これも食べると頭が痛くなる、ピーマンやパプリカも同様)を食べてくれ玉ねぎも食べると言っていたから私もなんとなく頑張ってエビの天ぷらを食べたが、やはりエビを食べると「エビはもう卒業したのにまた間違って食べてしまった感」を覚える。おいしくないわけではないがおいしいとも言えない、以前はあんなにエビが大好きだったのに、こんなに食べてもハッピーではなくどちらかというと控えおろうな感覚がわくのはなんでしょうねえ、と思う。

最後に飲むそばつゆがこっくりとおいしい。さらさらすぎず、どろどろすぎもせず、蕎麦の味と香りがしっかりと移っている。お茶はそば茶。

時間が夕方になり、食べたものでちょうどよく体がひんやりとし、涼しく気持よくお腹がいっぱいになる。

夫は結局だし巻き卵は半分食べ半分残し、玉ねぎは二切れのうち一切れたべてもう一切れは残した。ちょうど私が食べなかったぶんを残した形で、注文した量としてはふたりで分け合うのにちょうどいい量だったんだなと自分たちの適切な注文量を称える。

暑い日のお蕎麦夕ごはんは涼しくておいしくて満足満腹。

お蕎麦屋さんを出たら斜め向かいのコンビニエンスストアに立ち寄る。道路を歩きながら夫に「下諏訪五葷抜き、惜しかったけど、外食の五葷抜きの道はやっぱり険しいね」と話す。

「険しかったなあ。あそこで葱を入れようと思って入れたわけじゃないんだろうなあ」

「うん、もう、体がね、いつも作るレシピどおりにすうーっと動いちゃうんだろうねえ」

コンビニエンスストアでは夫はあまいトマトジュースを私はブルーベリーヨーグルトドリンクを買う。夫が棚を指さして「朝食のゆで卵は?」と訊く。「ゆで卵はないけどうずらの燻製たまごを持ってきてるよ」と答える。飲み物の棚を夫が指さして「ヤクルト、飲もうか」と言う。ホテルの部屋の冷蔵庫で冷やしておいて、5本パックのものを一本ずつ引っ張りだしては、ちびっとぐびっとヤクルトを飲む自分たちを想像するとなんだか豊かで愉快な気持ちになってきて「うん、買って買って、飲む飲む」と言う。

帰り道がホテルの前に通じるオルゴール通りになるとまたもや例の唱歌が聞こえる。「春の小川」「春がきた」「蜂が飛ぶ」「めだかの学校」など春っぽい歌が続くのだが夫に「これ何時まで続くんだろう、なんというか、しんどいよう」と訴える。

「うーん、6時までかな」

「今何時?」

「えーと6時半になるところ」

「6時までで終わってないじゃん」

「んじゃ7時までかな」

「うわーん、うわーん、朝は何時から始まるんだろう」

「6時かな」

「なんでー、いやー、そんなのいやー」

「なんとなく。おれ明日6時にはもういないし、何時からか聞いてみて」

「今日でおしまいでもいいのー。明日はもうこれ流してくれなくていいよう」

と話していたらぴたりと音楽が止まる。

「あれ、止まったよ」

「ほんまやな、消えたな」

「私が文句言ってるのが聞こえたんだろうか」

「6時半までだったんちゃう?」

「明日はイヤホンで音楽聞いて対抗してみる」

そして今朝は9時半頃から同じようにオルゴール通りで唱歌が繰り返し流れ始めたように思うがイヤホンでカフェードミンゴのクラシックに始まり清盛から花子とアンのサントラまで聴き続けたら唱歌は気にならず過ごすことができめでたしであった。

長い下諏訪初日前半

| 11:01

5月2日土曜日出発で長野県の下諏訪に来た。夫の目的は百名山の蓼科と霧ヶ峰。私の目的は温泉宿だらり滞在と楽譜遊び(楽譜遊びについてはおそらく後述もしくは別途書く予定)。

自宅を出る前に洗濯機を2回稼働させて1回めのものを外に干して乾かしている間に2回めの洗濯を行う。それと同時に食洗機であるだけの洗い物を済ませ乾燥終了したら食器棚に片付ける。家中を掃除機でざあっと掃除する。2回めの洗濯物が仕上がる頃には外の洗濯物は半分以上乾いている。サンルームにすべての洗濯物を干して戸締まりをする。こうしておけば帰宅した時の家はさっぱり快適でやり残しの家の雑務がない状態で「ああ、帰ってきてよかった、旅先もいいけどお家も最高」と帰宅の歓びに集中できるはず。

出かけてすぐに最寄りのコンビニによりATMでお金をおろす。夫に紙幣を渡しつつ「4泊5日でどうだろう4万円で足りるかな」と訊く。

「宿泊ひとり七千円、一室一泊1万4000円くらい?」

「うん、それくらい。正しくはひとりあたり一日6500円かな。あと昼ごはんと夕ごはんとで、どうかな、4万5000円かな」

「わかった、じゃあ、4万5000円預けるね、ここからふたり共通の支払い一式お願いします」

私のお財布には自分ひとりで何かを買って食べたり現地の何かを購入するお金だけ持つ。おとなのお財布にしては控えめな高校生の小遣い程度の金額だが、職場におみやげ菓子を買いたいのと、長野のおやきを買って食べたいのと、旅のソフトクリームを買いたいのと、温泉銭湯の入浴料金数百円を使いたい以外にはこれといってお金を使う予定がないのでこれくらいあればいいか。あ、そうだ、車のガソリンを満タンにしておかないといけないからその金額も予算に入れて。

高速道路走行はほぼ渋滞もなく概ね順調で、快晴で気持ちはよかったが暑かった。

途中賤ヶ岳サービスエリアでおにぎりを買いベンチに座ってお昼ごはんに食べる。賤ヶ岳サービスエリアのレストランはいつの間にかなくなっておりレストラン利用はできなかったが、焼き鯖のおにぎりとちりめん山椒を混ぜ込んだご飯を高菜の葉っぱで包んだおにぎりが思った以上においしい。食後にはサービスエリアで購入したあんこ入り和菓子を車中でわけあって食べる。和菓子は菓匠禄兵衛さんの「本之木餅」。ああ、そうか、この和菓子屋さんの住所が滋賀県の木之本(きのもと)でそれをひっくり返して本之木、そのあとに餅をつなげることによって音が「ほんのきもち(気持ち)」になるのか。

滋賀県の木之本地方では竹の皮に包んで蒸したでっち羊羹が名物で、木之本周辺に来た時に見つければ必ず買うようにしている。

この地方にある私のお気に入りのお宿ではウェルカム茶菓子にでっち羊羹とお抹茶を出してくれる。でっち羊羹の存在はそのお宿に初めて泊まったときに知った。

昨年友人らとこの宿を再び訪れた時にもでっち羊羹が供され、友人が「これはどこのお店のものですか、どこで買えますか」と宿の方に尋ねたときに「今お出ししているのはどこどこのものなんですが、以前は菓匠禄兵衛さんというところのものをお出ししていたんです。和菓子屋さんは何軒かあってどこもそれぞれにでっち羊羹を作っています。菓匠禄兵衛さんはお店が開いていれば品揃えも豊富でおみやげを選ぶのにはたのしいかと。禄兵衛さんは息子さんの代になってからはお菓子の種類も増えて都会での営業や通信販売にも力を入れるようなったので木之本においででない方にも食べていただけるようになったんですよ」という意味のことを案内してくださった。ほうほうとその説明を聞き翌日菓匠禄兵衛さんのお店の前を通ってみたらその日は休業ではあったもののガラス越しに見える店内の様子も品揃えもなんというか「菓匠」という名前にふさわしく豊かだった。結局は私が気に入っていつも利用している個人商店、店内の様子も品揃えもなんというか素朴すぎる小さな商店ででっち羊羹をそれぞれに買って帰った。随分高齢のおじいさんがひとりで店番をしておられ包装紙ででっち羊羹を包んでくれるのだが高齢過ぎて目や指先の自由度が低下しておられるようで留めたはずのセロテープが全然違うところについていて包装紙が留まっていなかったりするけれど、私はそのまま、友人らは「セロテープもらいますね」とおじいさんに声をかけて自分で包装紙を留め直して持ち帰った。

滋賀県木之本のでっち羊羹の思い出話はこのくらいにして、高速道路を4時間程度東へ東へと移動する長野県下諏訪への旅路の話に戻ろう。

高速道路を下りて下諏訪の町までは順調に来た。下諏訪では四連泊の予定で温泉ビジネスホテルを予約してある。夫と私はそれぞれにwebで予習してホテルは下諏訪駅から歩いてほどない位置にあることを知った状態で下諏訪に来た。自宅出発時に夫がナビにホテルの電話番号を入れたがピンポイントでは表示されず住所を番地まで入れても周辺までは案内できるがあとは自力でなんとかしろと言われると言う。

下諏訪の町まで来ても結局よくわからないまま上諏訪方面に移動していて、それでも道中に道の駅でもあれば今日はこんなに暑いからソフトクリーム食べたいねと話しつつドライブするものの道の駅もソフトクリーム取り扱い店もなく下諏訪駅に引き返すことにする。ナビで下諏訪駅を設定し駅前まで来る。「このへんなんだけどなあ」と言いながら運転する夫に私は「いったん駅の駐車場に駐めて駅の人に訊くかしましょう」と提案する。しかし夫は「いや、大丈夫、ここまで来たらもうわかるからこのまま駅の前の道をまっすぐ行く」と言う。夫はそのまま車を走行させる。右手に郵便局が見える。

「どうやらくん、郵便局があるということは、すぐとなりがホテルのはずよ、私の予習では」

「ホテルの近くに郵便局なんかあったかなあ」

「あったよ、地図に書いてあった。旅先で書いた手紙やハガキを投函するのに郵便局が近くにあると便利だから、ポストでもいいんだけど、郵便局が近い宿泊施設は私の中でポイント高いの」

「でも隣にホテルなんかないぞ」

そうして走っているうちに下諏訪駅からも郵便局からも離れる。そのまましばらく走行すると大通りに出る。「どうやらくん、今一度素直に下諏訪駅を目指そうよ」「わかった」。

大通りの途中にあるコンビニエンスストアの駐車場で運転を替わる。私は「ソフトクリーム売ってたら買って食べたいからお店の中に入ってみる」と言い、夫も一緒に店内に入る。結局ソフトクリームはなかった。夫は店内のガイドブックの地図を開いて見ている。私が「車の中からホテルに電話して訊いてみるよ」と言う。夫が「訊くにしてもここからじゃなくて下諏訪の駅から電話したほうが案内するほうもされるほうもわかりやすいと思う」と言う。だから先程私がそうしようと下諏訪駅前で言うたではないか。それを君が「いやもうわかるから」と言って運転し続け結局わからなかったのではないか。ここでも夫の『私に比較するとさっさと尋ねようとしないヘキ』が出現するのだな。しかしこうして迷って手間をかけて辿り着いた末に「ああー! あったー!! 着いたー!!!」という歓びと感慨を得るためにはむやみに気軽にさっさと誰かに尋ねたのでは彼にとってはその歓びが得られなくてだめなのかな。などいろいろと思うが、どちらにしても妻の言うことにはいったん逆らっておきたい妖怪に言うてもせんないことなのでナビの言うとおりに下諏訪駅を目指す。

ナビがこちらの道においでなさい、と示しているのでその道に入ろうとする交差点の手前で夫が「できればここを右に行って」と言う。「相当の根拠があるなら別だけど私は先程ここを通って下諏訪駅に行ったとおりにもう一度こちらの道を通りたい。右に行く根拠は何?」と問うと夫は「なんとなく。でもいい、ナビの通りでも」と言う。

ナビの言うとおりに下諏訪駅手前の三叉路に来たとき夫が「地図の番地からしたらこの突き当りがホテルのはずなんだけどなあ、ホテルらしいものがないなあ」と言う。この三叉路の突き当りには先程も一度来ておりそのあと左折して下諏訪駅の前を通過した。今回はその三叉路で一旦停止したときに正面に見える塾の看板や旗とレストランの日替わり定食飲み放題パーティーの旗以外にもホテル駐車場の立て看板が右側の隅のほうにあるのが見える。「どうやらくん、ここ、ホテルだ。さっきは左の駅側に行ったけど、右に行くと、ほら、ホテルの駐車場に到着」。と無事というには紆余曲折あったが3時半頃に到着。

ホテルの駐車場は斜めに車を並べて駐車するように線が引いてある。私は駐車場を囲うフェンスに車の頭を向けて一度停車したが夫が「こんな駐め方をしていたら出る時出られなくなるよ。出やすいように頭を通路側に向けて駐めたほうがいい」と言う。

「うーん、出る時にはうまいことバックすればそんなに難しくなく出られると思うなあ、私達の荷物はハッチバックを開けて取り出さんといけんじゃろ、バックで駐めたらフェンスがあるから荷物取り出しにくくなるなあ。あ、そうか、出る時って、明日どうやらくんがひとりで山に登りに行くときに車が出しやすいほうがラクだからすぐに出られるように車の頭が進行方向にあるといいな、っていうことならわかるけど」

「そのとりです、お願いします」

バックしつつ後方をモニターで確認しつつ前方の空き具合も見つつ下がっていたらカッシャーンと車がフェンスのネットに当たった音が聞こえる。駐車場のラインの前方部分の切れ目にちょうどよく駐車すると後ろはダメなのね、と思い少し前進する。夫は「そんなことしたら車に傷がつくじゃん」と若干の責め口調で言うが、慣れない駐車場でのフェンスやポールとの接触はままあることだ。そういう接触はもちろんなければないほうがいいが、到着までの放浪で疲れ注意力が低下しているときにはそれで器物破損したり車の修理が必要になるようなへこみができるわけでなければそういうこともあるときにはありそれは重大な事故に比べれば全然たいしたことではなく旅先で疲労した状態で悔やんで気力を消耗するようなことではないと思いそういうときには「あ、ちょっとあたっちゃったね、次は気をつけよう」くらいで済ませることにしている。

夫が「荷物を出すから少し前に出して。あとでもう一回バックして駐めなおそう」と言う。数十センチ前方に出るが夫がハッチバックを開けようとしてもフェンスに扉がつかえて開かない。「もう少し前に出て」と夫が言う。もう数十センチ前に出る。今度はハッチバックの扉を完全に開くことができる。夫が「どの荷物を持って出るの?」と私に訊く。夫の山用品以外は私が用意したものに関してはすべて部屋に持ち込むことを伝える。自宅から自宅マンション下の駐車場には一度で運べたからホテルの駐車場からホテルまでも一度で運べるだろうがやや多い。そして重い。かさばっている荷物の多くはホテル滞在中に消費してなくなるもので帰りにはコンパクトになる。旅先だからとあまり変わったことや省略したようなことをせず、紅茶も棒茶も緑茶も茶葉で用意し、生協で購入した普段食べている日持ちするパンを持ってきた。ここしばらくずっと食べたいなあと思ってこれも生協で購入したカステラも持ってきた。あとは茶葉をおいしく飲むためのワンカップティーメーカーと大きめのプラスチックマグカップをふたつずつ。旅の荷物を用意する段階ではホテルで使うスプーンは使い捨てのプラスチックのものを持って行こうかと思ったが途中で、いやいや滞在を快適にするためには気に入ったもの使い勝手のよさを知っているもの使って幸福感があるものを持って行こう、これまであちこち旅してきたけど持参したものを宿に忘れて帰ってきたことはない子なんだからお気に入りのものを持って行ってもちゃんと持って帰ってくるよ、と思い直し、会津で買った木のスプーンと柄の長い金色の小さな丸スプーンを用意した。木のスプーンは口にあたる感触が心地よく、金色の丸スプーンは毎日自宅で紅茶リーフティーの計量スプーンとしてちょうどよく紅茶に甜菜糖や牛乳豆乳を加えて撹拌するときに用いているものの柄の長いタイプ。自宅では柄の短いほうを愛用しているが普段使っていない柄の長いほうを旅に連れて行って使うのはいい考えだ。自宅の冷蔵庫で飲みかけで保存していた牛乳と豆乳はそれぞれ空のペットボトルに入れ保冷剤を入れた保冷バッグで運んできた。自宅でいつも飲んでいる炭酸水と効率よく水分補給したいときのためのOS-1、普段仕事中の血糖値補給で飲んでいる小さな紙パック入りのりんごジュース、生協で掲載されるたびに購入している島の恵みバナナ(小さいサイズで食感がしっかりしていて味が濃くておいしい)、うずらの卵の燻製。旅先の部屋での朝食用にコンビニエンスストアでゆでたまごを買って食べるのも好きだけど、うずらの卵の燻製があればそれはそれでおいしくゆでたまごの代わりになる。あとは普段ほぼ毎日ちょびっとずつ食べているヤクルト製のドライプルーンとアーモンド。旅先でも普段どおりにプルーンを食べているほうが外食続きでも快便を保ちやすいはず。紅茶に入れる甜菜糖は丸スプーン1杯弱分ずつ薬包紙に包んで持ってきた。塩は以前の旅先で購入した卓上用の小さな瓶入りのものと迷ったが結局以前乗った飛行機の機内食で供された塩の小袋を持ち帰ったものを数個持ってきた。室内で何か塩をかけたりつけたりして食べたいものがあったとしてもこれだけあれば十分だろう。紅茶はリーフティーがもともと入っていたチャック付きビニール袋に少し入れて、棒茶はもともと入っていたパッケージの袋に数日分の量を入れて口を折りたたんでゴムできゅっと留める。緑茶は自宅で使っているそのまま小さなジャムの空き瓶に茶葉を入れた状態で持ってきた。緑茶も薬包紙に包んでチャック付きビニール袋に入れて持ってくることも考えたが砂糖を薬包紙に包む作業をしたら飽きたので茶葉は多少瓶が重くてもそのままでよしとした。これらの殆どは滞在中に消費しつくすから帰りにはなくなる。あとはカステラを食べるときのためにお皿を二枚。昔夫とアウトドア旅に出かけていた頃使っていたプラスチックのお皿を持ってきたがこれもそろそろ新たに普段と旅用に使い勝手のよい軽くて壊れにくい木のお皿を導入してもいいかもしれない。そのほうが旅の満足感と幸福感はきっと間違いなく高まる。あと今回の荷物で重いのはパソコン。ホテルの室内でLANケーブルを差し込めばそのまま使えると予習で知り今回はパソコンを連れてくることにした。茶類が揃い、普段食べているものがあり、PCで普段どおりの作業ができ旅先の情報収集も部屋でその都度できると自宅以外の場所でも自宅にいるようにゆっくりのんびりとくつろぎやすい。

チェックインのときにフロントの方が「四連泊ということで、念のため明日のご予定をお伺いしたいのですが、何時頃お出かけでしょうか、それともお部屋でチェックアウト時間よりもあとまでお過ごしになられますか」と訊かれる。「一名は朝早く出かけます。もう一名は部屋で過ごしますが日中ホテルの近くに散歩に出るかもしれません」と私が答える。フロントの方が「朝早くは何時頃でしょうか」と問い夫が「蓼科に行きたいので、朝5時頃にと思っています」と答える。

「承知いたしました。それでは朝5時には玄関を開けてお出かけいただけるようフロントに待機するようにいたしますね」

「あ、でも、目標5時なんで、もしかすると6時くらいになるかもしれません」

「そうですか、では5時から6時ということで予定しておきますね。あとお部屋で過ごされる場合なのですが、お部屋のお掃除などはどのようにさせていただきましょう」

今度は私が「タオルとゴミ袋の交換をしていただければ他はそのままでかまいません」と答える。

「では、朝チェックアウト前後の時間帯にお部屋の前に使用済のタオルとゴミ袋を出しておいていただけましたら、新しいタオル類とゴミ袋を袋に入れたものをドアの前に置いておきますのでご利用ください。もし日中お出かけのときにフロントが不在にしておりましたら、お部屋の鍵はそのまま外出先までお持ちになってください」

「はい。わかりました、ではそれでよろしくお願いします」

夫が「蓼科まではここから1時間くらいと思っておけばいいですか」と質問する。フロントの方が「そうですね、朝早ければ道路が混んでいないので1時間前後で登り口まで行けますね。ちょっとお待ちくださいね、地図を持ってきますので。簡単な地図なんですけど、下諏訪側からだとこの道を、上諏訪からだとこの道を行きます。ここがうちのホテルですからこの道をこう走っていってください。ところで山の上では走られるかなにかされるんですか?」

思いがけない質問に夫が答えに窮する。代わりに私が「いえいえ、走るのではなく、山に登るだけです」と答える。フロントの方が「そうか、そうですよね、山ですものね、登るんですよね、失礼いたしました」と言われる。

ここのホテルには温泉大浴場がついている。現在は時間ごとの男女入れ替え制で交替で利用する。ホームページを見た時には24時間入浴可能と書いてあったので、夜にもしも混んでいても私は連泊だから日中にゆっくり入ればいいわね、と思っていたが、日中は利用できずチェックインの15時からチェックアウトの10時までの間の指定の時間の利用となる。連休中で混んでいるようであれば室内のユニットバスを利用するつもりにするがこちらはお湯が温泉ではない。ただホテル近隣には温泉銭湯が何箇所かあり他の宿の日帰り入浴サービスもあるからそういうところを利用することもできる。

チェックインして私が荷物を解き、ホテル備え付けのもので使わないもの(バスルームの洗浄料類や歯ブラシ等)はクローゼットの隅に置き持参の自分が使っても皮膚や体調が安全なものを使いやすいように設置する。冷蔵庫の中には飲み物バナナ燻製うずらを片付け、保冷剤は冷凍スペースに入れる。パンを入れた箱はテレビ台にもなっているチェストの上に置きプラスチックのお皿にアーモンドとプルーンと塩を置く。茶葉と砂糖はパンの箱に一緒に入れる。カステラはパンの箱の手前に置き、開封後は冷蔵庫に入れる。持参のカップとティーメーカーとスプーンは持参のハンドタオル布巾の上に置く。

加湿器も持参したが到着してしばらくは暑くエアコンのドライ運転でいったん部屋を涼しくし、加湿器は所定の場所に待機させる。

今回は部屋で長く過ごすつもりで、部屋の椅子で快適に座れるように円座を持参した。これまでは長距離ドライブの車中で円座を使い腰痛防止に努めてきたが室内にまで持ち込むことはなかった。それを今回は部屋にも持ち込んでみた。

部屋のティッシュは小さいサイズのものが置いてあるが、サイズ紙質ともに満足度がやや低い。夫は「なくなれば新しいのもらえるじゃん」と言うが私は「量の問題だけじゃなくて滞在中の快適満足の問題なの、うちから箱ティッシュ持ってくればよかったなあ、明日にでもコンビニででも使い勝手のいい幸福感の高い箱ティッシュ買ってきて置こうかなあ」と考えて、そうだ車の中にいつも置いてるうちで使っているのと同じ箱ティッシュを持ってくればいいじゃん、と気づく。

毎日の薬やサプリメント、スキンケア用品メイク用品が入ったポーチをデスクの上に使い勝手よく配置する。

持参のハンガーをクローゼットにぶらさげかけておきたい衣類をかける。備え付けの木のハンガーが4つはあるがもっとたくさん貸し出してくださいとお願いしてもいいけれど、どうせ大きな旅行かばんを持っていくならそして車の移動ならハンガーも持って行くと頼む手間がなくて気がラク。

そうして私が部屋を自分仕様に整えている間に、夫は「男湯は夕方5時からかー。今は入れないんだったら近くの銭湯に行って来ようかなあ。みそきちどんさんも行く?」と訊いてくる。「ううん、私はまだ部屋のセッティング作業がしたいから、どうぞ行ってきて」と答える。夫は「とりあえず明日の山に持っていく魚肉ソーセージとか買いたいから買い出しに出てくる」と言ってでかける。

今回滞在する部屋は禁煙室というわけではない。このホテルにはツインは2室のみで禁煙喫煙設定がない。部屋には「ベッドでは煙草を吸わないでください」のプレートがある。しかし灰皿は置いてない。部屋は煙草臭いというほどではないが、窓を開けて換気し続けていないと壁や天井やカーテンに染み付いた煙草のにおいが漂う。窓を全開にして換気し持参の月桃消臭スプレーを室内に噴霧する。禁煙室でないなら使いたいと思い旅の鞄に常備して持ち歩いている消臭浄化のお香を焚きたい。灰皿はどこかなーと部屋の中をさがしても見つからないのでフロントに電話する。

「ちょっとお尋ねしたいのですが、こちらのお部屋が禁煙室ではないのであれば持参のお香を焚きたいと思いまして、可能であれば灰皿を貸していただけますか」

「はい。もちろんです。それでは灰皿をただいまお部屋までお持ちいたしますね。あの、普通の灰皿で大丈夫なんでしょうか」

「はい、普通の灰皿で、お願いします」

ほどなくフロントの方が部屋のドアをノックされる。はーい、ありがとうございます、と、もともと換気用にドアチェーンのフックで隙間を開けていたドアを開ける。

「ほんとに、こんな、味気のない灰皿なんですが、よろしいんでしょうか」

「はい、ありがとうございます、お借りします」

「では、どうぞごゆっくり」

銀色の直径15センチほどの丸い灰皿の中央に葉っぱの形の香立てを置きスティックお香に火をつける。

しばらくすると夫が帰ってくる。買い出ししたふうな荷物は持っていない。

「あれ? 買い出しは?」

「ホテルで教えてもらったスーパーが思ったより遠かったけん挫けた。あとでコンビニででも買う。近くに温泉銭湯あるから行ってくるけど、どうする?」

「私はまだ部屋作りの作業があるし、部屋でお茶飲んでゆっくりしてる」

「わかった。じゃ、行ってくる」

夫がタオルを持って出かけたあと冷蔵庫の上に備え付けで置いてある電気ポットでお湯を沸かす。電気ケトルではないが容量1リットルと小さめで電気ケトルではないので煮沸に多少時間はかかるが消費電力は少なめでそのまま保温をしてくれるポットだ。備え付けの緑茶ティーバッグ4パックと茶托と湯のみが2個ずつある。持参のマグカップにワンカップティーメーカーを入れなたまめ茶と棒茶を入れて熱湯をかけ蓋をして蒸らす。数分放置してからティーメーカーを取り出す。蓋を裏返しにするとティーメーカーの茶こし置き台になる。あたたかいお茶を飲みながら部屋の窓から外を眺める。

銭湯から帰ってきた夫が「気持よかったー」と満足そうに暑そうにTシャツを脱ぐ。

「お客さんは多かった?」

「ううん、まだ早いからほぼ貸し切り。おれが出てきた頃に続々とお客さんが入ってきてた。230円であの設備はいいなあ。沸かさなくていい温泉が出てくるからこその値段なんやろうなあ」

「お部屋がだいぶん自分用になってきたよ。ここの部屋広くて快適。ちょっと煙草のにおいはするのはするけど換気と消臭香で気にならないレベル、和風温泉旅館の灰皿の置いてある和室と同じくらいだと思う。それよりなにより何が快適って、カメムシがいないのが快適、カメムシのにおいがしないのが快適」

「ほんまやなあ、おらんなあ。カメムシがおらん旅行って久しぶりやなあ。ここんとこ毎年必ずいたもんなあ。やっぱり和風建築じゃなしにホテルだとカメムシおらんのんかなあ」

「時期なのか地域なのか気候なのか物件によるのか、同じ時期でも地域でも気候でもホテルの作りはカメムシの越冬には構造が適してないんかもしれんね。ここのホテルね、カメムシいなくて広くて便利で快適だけど、さっきからずっと外から聞こえる唱歌が、唱歌はきらいなわけではないけど、鯉のぼりの歌も一年生になったらの歌も聴きたいわけじゃないときにずっと聞こえてくるのが少し快適でない。耳栓しててもうっすら聞こえてくるん。明日からはイヤホンで音楽聞いてたら対抗できるかなあ」

「商店街のここのホテルの前の道『オルゴール通り』とかなんとか書いてあったなあ、そういえば」

「フロントにもオルゴール置いてあったよね。オルゴールのメロディーだけならまだラクかなあどうかなあ。でもそれも町内放送のスピーカーでずっと流れていたらどうかなあ。唱歌はねえ、歌詞の意味が聞き取れていちいち頭の中で映像化されるから余計につらいんだと思う」

「そういやあ、ずっと流れてるなあ」

夫は馬耳東風機能が高いから、私にとっては快適滞在のうえでノイズになる音声でもあまり気にならないのかもしれない。

「夕ごはん何食べに行く?」

「そうだなー、こっちにいる間に馬刺しは食べたいなー」

「さっき駅で外食屋さんの案内もらってきた。こことかどうかな」

「見せて見せて。あ、私、今日の夕ごはんじゃなくていいから、ここにいる間にここに載ってるこれ食べたい」

「なに?」

「ソフトクリームとおやきとお茶のセットでハッピーセットって名前がついてる」

「それはまたハッピーな組み合わせやな」

「でしょ。で、今日は、そうだなー。暑いから気持ちとしては蕎麦なんだけど。山菜の天ぷらとお蕎麦がいいなあ」

「じゃ、そうしよう。他のところは5時半にならないと開いてないけど、蕎麦屋なら5時でも開いてる」

「やったー。私はあったかいやつでも冷たいやつでもお蕎麦を食べると体がひんやりするから暑くないと食べられないけど今日くらい暑かったら体温的にもちょうどよくておいしいはず」

「蕎麦って体冷やすんか?」

「ううん。陰陽の分類では陽のはずなんだけど私の体では陰で作用するみたいで、なんか一般的な陰陽分類の軸と私の体の陰陽の境界軸とはちょっとズレがあるみたい。一般的にはこうのはずだからって無理して食べて具合わるくなるのは悲しいけん自分の体に合う基準で食べることにしてる」

「じゃ、行きますか」

室内の電気を消して鍵を持つ。エレベーターから少し離れたところに自動販売機と電子レンジがある。

「フロアに電子レンジがあるならレンジで温めて食べるご飯を持ってきてもよかったね」

「みそきちどんさんは部屋にいるんならそれと佃煮かなんかあれば食えるもんなあ」

「今回は自炊のつもりじゃなかったから持ってきてないからまあいいけど、持ってきたパンもちょびっとあっためるとおいしいだろうし、ほら、長野のおやきを買ってきて食べるときにも冷めてたらあっためるといいね」

「ああ、おやき、なあ」

「今回はどの具のおやきにしようかなあ。なすの味噌炒めのもいいし、切り干し大根もいいし、かぼちゃやあんこもいいよねえ。野沢菜には唐辛子がたくさん入ってると頭痛くなるし、肉味噌っぽいのは玉ねぎや葱が入ってることがあるからこれも頭痛的にだめだから、安全そうなところで」

「出かける前に車に寄って明日の山の行き先設定うまく表示されるかどうか準備しといてもいいかな」

「いいと思うよ、ぜひともそうしたほうがいいと思う。目的地に思うように辿りつけなくて今日みたいなことになってもいけんじゃん。私は車の中の日傘も取ってバッグに入れておきたいし」

「日傘?」

「うん、明日散歩に出るときも今日みたいな日差しだったら日傘したほうが安全なかんじでしょ。帽子もかぶるしUVブルーライトカットのダテメガネもするけど、全身を傘で日光からガードしたほうが熱射病っぽくなりにくくて安全じゃけん」

それではホテルのフロントに鍵を預けてお蕎麦屋さんに向けてお出かけにいってきます。