ショーシャンクの空に

夫が山からの帰り道に借りてきたブルーレイ。私が仕事から帰宅したら夫が「久しぶりに見たら全然記憶がなくてすごく新鮮な気持ちで見れて面白かったー」と言う。
「どうやらくん、前にもこの話ほとんどおぼえてないって言うてたもんね」
「え? みそきちどんさん、この映画の内容おぼえてるん?」
「うん、おぼえてるよ」
「なにを? どれくらい?」
「んー、刑務所に入らなくていい人が刑務所に入ることになって、散々な目に遭って、無罪を証明できそうな人が同じ刑務所内にいたのにその人は抹殺されて、それでもなんとか生きのびて脱走の計画をコツコツと進めて、脱走して新しい暮らしをする」
「そうそう。よう知ってるなあ」
「いや、前に見たから。刑務所モノ苦手だなあと思いながら。遭遇するたびに何度か見てる。見ると面白いからつい見ちゃうんだけど何度見てもやっぱり刑務所モノ苦手だなあと思う」
「あれだけアメリカのクライム(犯罪捜査)モノ見てて?」
「クライムは平気なの、苦手なのはプリズン」
「おれ、前に見たことあるけど、脱走するところとそのあと友達と再会するところしかおぼえてなかった。それ以外のところは初めて見る映画ですっごい面白かった」
「どうやらくん、前にこの映画の話をしたときにも私がおぼえているところを全然おぼえてないって言ってたよね」
「え?」
「当時私とそういう話をしたことも忘れとるんじゃろ?」
「う、うん、そんな話、した、か、なー」
「えーとね、私たぶんむかしのみそ記に書いてると思うよ」
「あー、いっぺんなんかに書き出すと記憶って定着するよなー」
「どうやらくん、当時『ショーシャンクの空に』のことを『ショーシャンクのはたのもと』って言ってて、ハラハラドキドキワクワクの映画って言ってたらしいよ」
「へー」
「というような話を私としたこともおぼえてないけん今日見たのが新鮮でたのしかったんじゃね」
「二時間以上あったけど時間の長さを感じんかったなー、また最後のところだけ見なおしてもいいなー。いや後半半分だけでも、いや全部見なおしてもいいなー」
「どうやらくん、まえに見たときには二時間以上の二時間の部分を寝てたんじゃないん?」
「くーっと寝てて、で、最後の脱走のところと再会のところだけ見たんかなあ」
「どうやらくんならありえるよ」
「まえにこの映画見たの十年くらい前だと思うんだけど、いいなあ、十年くらい経つとまえに見た時の記憶がなくなって面白かった映画をまた新たな気持ちで新しい映画を見るように見れるっていいよなあ。何個か自分が面白いと思う映画を持っといて十年くらい経ったら見るようにしたらいいんじゃないかなあ」
「私はそんなには忘れられんとは思うけど、でもまあ十年経つと自分の中に新たな視点は自然とできるし久しぶりに見ると新鮮なのは新鮮で面白いとは思う」
「今回もう一本借りてきたのは初めて見るやつだけどたぶん面白いはず」
そしてふたりで見る『桐島、部活やめるってよ』。映画部の男の子は源義経くんを演じたひとだ。