不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ人文書

 スディール・ヴェンカテッシュ『社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた』(東洋経済新報社望月衛訳)。『ヤバい社会学』の続編でシカゴからニューヨークへ。出てくる人物も事件も事象もおもしろいし興味深いんだけど、とにかく著者の我や自意識が前面に過剰に出ていて、かなりウンザリしたのが正直な感想。そもそも原題の直訳が『たゆたう街――はぐれ社会学者がニューヨークのアングラ経済で自分を見失い、そして見つけ出す』だから、そういう自分語りの本なのは予定通りなんだろうけど、俺が読みたいのは著者自身じゃなくて対象なんだよなぁ……。せめてもっとドライに書いてくれたらよかったんだけど。ちと残念。

社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた

社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた

 水野和夫『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書。経済成長しなくていい派は何を言っているのかと思い読んでみた。コペルニクスから論をダイナミックに展開し、「資本主義はもう限界だから、閉じて定常を目指してやっていく方がいいよ」という話で、読むと納得しそうになるが、煙に巻かれた気分にも。これだけくっついてしまっている世界経済を閉じて切り離す事ができるのか、発展途上国はどうなるんだろう、定常といっても経済は一応前へ進まないと後退してしまうからやっぱり進む事は必要ではないのか……といった疑問がいくか浮かんできた。確かに資本主義の限界というのはよくわかる。経済成長も(先進国は)それほど望めないだろう。だからといって閉じて内にこもればいいのか、こもれるのか……。これはこれでおもしろいんだけど、あくまで発想の転換をしようという提案に過ぎない気がしたな。
閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済 (集英社新書)

閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済 (集英社新書)

 浅羽祐樹・木村幹『だまされないための「韓国」 あの国を理解する「困難」と「重み」』(講談社ビーシー。たまにはこういう本も読んでみる。やや扇情的なタイトルだけど、だまそうとしているのはいい加減な識者たち。中身はいたって冷静かつフラットで、現在の韓国(そして日本との関係)を知れる一冊。これをヘイトと言われたら、もう何にも論じれないと思う。木村幹氏の言う、「人間をイデオロギーで論じない」「ロジカルに考える」は日韓だけでなく、全ての事に言えるよなぁ。
だまされないための「韓国」 あの国を理解する「困難」と「重み」

だまされないための「韓国」 あの国を理解する「困難」と「重み」