不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

20センチュリー・ウーマン/時間は待ってくれない


 自らのセンスと感覚を信頼して生きているけど、それはイコールあなたのセンスと感覚も信頼している事でもあって、自分と相手の理解と乖離の狭間にあるものが個性なのだし、それを縁(よすが)にして繋がっていくしかないのだろう。教えて欲しいのは誰かの思想やイズムではなく、悲しい時には踊るんだという事なんだ。
「湖に浮かべたボートを漕ぐように人は後ろ向きに未来へ入っていく。目に映るのは過去の風景ばかり、明日の景色は誰も知らない」という一文のように、その時の商品や数字を眺める事で時間の流れや、世界の変質、過剰な消費を感じさせる。あのカーターの演説は、間違ってはいなかったのだ。
 15歳の少年の青春譚のようで、その実は三人の世代の違う女性の願いやイノセンスを投影させた姿がジェイミーであり、それぞれのタフネスを受け止めるのはなかなか難儀だし、元少年としてはいろいろと「それは酷やで」とつい思ってしまったのであった。ただ、個人的には前作『人生はビギナーズ』の方が沁みた。たぶん俺は、ジェイミーよりもオリヴァーなのだ。抱えている屈託の違い。

ジーサンズ はじめての強盗/俺たちにも明日はある


 原題「GOING IN STYLE」なのにこんな邦題なのかよ、と愚痴一つくらいはやはり書いておかねばならないとして、しかし邦題のひどさでスルーしてしまうには勿体無い一品(の感想をいまさら書くのも申し訳ないのだが)。
 弱者(老人、有色人種)から強者(白人とそのシステム)への痛烈かつチャーミングな反撃と煌めきに泣き笑い。年齢そのまま老人っぷりを競う大御所三人の演技は楽しげだったし、バーで「あと寿命、何年あると思う?」という話をしていたのは、そのまま役者自身にも通じる話になるわけで、見ているものは二重でドキッとしてしまう。それでも計算して残り時間の少なさにしんみりするのではなく、「こんなもんしかないのなら、もっとやってやんよ」的な構えでいたのはとてもよかった。
 身体が動かないぶん洒脱な演出でリズムとアクションを作り、一癖ある登場人物たちの演技は味わいあり。スーパー店長の抜け目なさもいい。サスペンスは薄くて、ドラマも甘いけれど、晩年という言葉の日暮れ時のような温かさと切なさが沁みた。出てくる人物が特殊な能力を持っているのではなく、平凡そのものであったのもよかった。それにしてもアン・マーグレット、76歳にはとても見えない!