不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

確かにハードボイルド

 高野秀行・清水克行『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』(集英社インターナショナル。名著『世界の辺境とハードボイルド室町時代』の名コンビ is BACK。続篇ではなく、読書会という形のスピンオフ。意外と高野氏が「ウケたからといって、続けない方がいい」と言ったが、読書会ならええやないか、と本書。
 さすがに前作には及ばないながらも、やはり抜群におもしろく、脳のしわが読んでいるだけで増えていく気分を味わえる。歴史や認識は本来は修正されるものなのだと再認識。取り上げられた本の中では『ギケイキ』『ピダハン』だけ読んだ事があった。ただ、あくまでこれらは課題図書で、他にも山と参考図書が出てくる。下準備が大変そうな読書会だな……と思っていたら、高野氏があとがきで「何度も辞めたいと思った」と書いていた。だろうなー。そのぶんやっている時のおもしろさと高揚感は格別のようで、それは文章からビシビシと伝わってくる。
 高野氏はこれによって「教養の意義」を実感したという。すなわち「ここではない何処か」へ行くための、「ここが今どこなのか」を把握する羅針盤が教養だったのだと。そして《教養を学ぶのが遅すぎることはない》。この本のおもしろさが教養なら、俺も教養を学ぼう。この高野氏の一文を読んで、ふとタモリの「教養なんてのは、あってもなくてもいい。大人のおもちゃなんだから、あれば遊びが増えるだけの話」という言葉を思い出し、正反対に見えて実は同じ事を言っているのではないか、と思った。
 とりあえず、本書に出てきた気になる本を読んでいこうと思いました。特に俺は横の線(現在の世界の話)は興味あるけど、縦の線(歴史)は薄いので、そちら側も読んでみようと。そう思わせるだけ、これはいい本だったという事です。

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦