2009-11-26
事業仕分け人 金田康正 東大大学院教授のトンデモ認識
|先日から始まった行政刷新会議による事業仕分け。京速コンピュータ等の科学技術関連事業の見送り・縮小の評決が各方面から批判を受けておりますが、防衛関連でも自衛隊広報施設の予算削減、国際平和協力センター事業の廃止等厳しい評決が出ております。
そんな中、本日は自衛官の実員増要求、備品、被服、銃器類・弾薬のコスト等の戦力の根幹に関わるものの仕訳も行われましたが、仕分け結果はどれも削減を求める悲惨なものでした。
さて、この仕分け作業全体を通じて、様々なところで取り上げられる仕分け人達のズレた認識ですが、今回もかなり悪質な印象操作と同時にそれを露見させた方がいらっしゃいました。金田康正 東大大学院教授がその人です。ニコニコ生放送にて中継された金田教授の銃器・弾薬コストの仕分けにおける発言を録画してアップしましたので、以下の動画をご覧ください。
この金田教授、まず朝日新聞でのカラシニコフの記事を引き合いに出し、こう述べています。
ガチガチに作っていないがために、例えば泥水に浸かったとしても水で洗えばね撃てるだとか、要するに有事に即した作り方をしているちゅうんですよ。そういう観点から、おそらく国産の場合は非常に綺麗に磨かなきゃダメだとか、どうせその〜撃てばカスが溜まりますからその〜かなりその〜掃除しなきゃダメだということがあると思うんですが、そこらへんの観点で国産を選ばれていると思うのですが如何でしょうか。要するにカラシニコフみたいにほとんどメンテ、いや使ったことないから分かりませんけど、そういう観点、有事に即した形の銃器を選ばれているのかどうかちょっとお願いします。
もう無茶苦茶な認識です。金田教授の言う朝日新聞のカラシニコフの記事というのは、松本任一氏が朝日新聞に連載した「カラシニコフ」のことを指すと思われますが、そもそもまともに「カラシニコフ」の連載を読んでいればこんな発言は出てきません。例えば「国産銃は綺麗にしなくちゃいけない」、「掃除しなきゃダメ」のあたりは、撃った後に銃の掃除をするのはどこの国も当たり前の話で、朝日新聞の「カラシニコフ?」にも米軍将校の話として「M16は優秀な自動小銃だが、掃除をきちんとしていなければならない」と述べています。発射薬の燃焼ガスが腐食の原因になる為、まともな軍隊では銃の掃除は必須です。掃除が必須な銃は有事に即していないとでも言いたいのでしょうか。第一、AK-47にだってクリーニングロッドは付いています。
で、この質問に対し、防衛省担当者は89式小銃の部品点数が64式よりも少ないという形で考慮している旨を伝え、カラシニコフがどのくらい泥水に強いかまでは把握していないと伝えると、金田教授は以下の発言を行いました。
いや、それは調べられた方が良いと思いますよ。
なんかもう、カラシニコフの新聞記事すら読解することができない人が言えるセリフじゃないと思います。
なお、カラシニコフについての誤認識はまだ続きます。この誤認識は事業仕分けの場において悪質な印象操作に等しいものです。
インターネットで調べたら一丁30ドルから買えるというのもありましたからね。
ソースはgoogleですかそうですか。
これも金田教授自身が挙げた「カラシニコフ」の連載に価格は載っています。ロシアでのイズマッシュ社製AK-74の工場渡し価格は1丁120ドル、米軍がアフガニスタン国軍用に買ったルーマニア製AKは一丁250ドルです。銃価格の比較を行うなら、正規のルートでの価格を用いるべきで、崩壊国家からの流入品や密造品等が出回る闇市場での価格(闇市場でも30ドルは安すぎます。今のソマリアでは200ドルでも買えないとも「カラシニコフ」で出ています)を提示することは全くもって不適当であって、これを比較対象とすることは、自衛隊が闇市場より武器を調達しろと言っているのに等しいです。
なお、補足までに言いますと、この120ドルと安価な価格でロシア政府にAKを供給しているイズマッシュ社は現在経営危機の最中にあります。
今回の仕分けも相変わらず観ていて不快なものばかりでしたが、金田教授の誤った認識でずけずけと防衛官僚に「調べたほうがよい」と言える神経にはほとほと呆れました。
最後に一つ。金田教授に出汁にされてしまった朝日新聞の「カラシニコフ」ですが、この連載自体はカラシニコフを軸にしたアフリカ等の紛争地域を描きだす傑作ルポです。ニコニコ生放送で「朝日新聞の〜」と出てきたとき、一斉に批判的なコメントが流れていましたが、このルポは先入観を消してぜひ読んで頂きたいと思います。文庫化されて手ごろな価格で手に入りやすいのも○です。くれぐれも金田教授のようにならないように、真面目に読んでいってね!!!
※11/27追記:「仕分け」を「仕訳」と表記した個所がタイトルを含め多くありましたので修正致しました。
- 1860 http://obiekt.seesaa.net/
- 632 http://obiekt.seesaa.net/article/134015889.html
- 263 http://keenedge.cocolog-nifty.com/
- 225 http://pipes.yahoo.com/pipes/pipe.info?_id=7ed2910a6358c42a7305fae463b19704
- 99 http://obiekt.seesaa.net/pages/user/m/article?article_id=134015889&stq=session::blog::c1cdb9fcb115ab516edd2074b32e6773
- 92 http://search.yahoo.co.jp/search?p=下総ミリタリー&search.x=1&fr=top_ga1&tid=top_ga1&ei=UTF-8
- 86 http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4GGIH_jaJP255JP256&q=防護力
- 79 http://kuon-amata.cocolog-nifty.com/blog/
- 54 http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/dragoner/20091126/1259246771
- 49 http://link2.in/jump?http://d.hatena.ne.jp/dragoner/20091126/1259246771
それはさておき「カラシニコフ」は名著ですよね。朝日新聞にもこういう人がいたのか、と思いましたよ私は。dragoner様の仰るとおり必読と思います。
コメント頂きありがとうございます。
事業仕分けそのものの理念は財政状況が厳しい中では非常に同意できるものなのですが、どうやって選考したかが不明瞭な「有識者」(昔からそうでしたけど)が、法的根拠の無い会議にて決定された事項を財務省が錦の御旗に仕立て上げて防衛省予算を削減するという構図は、ともすればシビリアンコントロールからの逸脱なんじゃないかとも思えます。
CODE774さまの大蔵省主計局別働隊という表現はまさに的を得たものとと思います。装備調達の仕分けに関しても、会議の終わり近くになって財務省担当者が戦闘機の性能向上、DDHの排水量増加を根拠に「単純な更新かは慎重な精査が必要」と言ったのには嫌らしい限りでした。DDHの排水量増加は一定の考慮はできますが、世界的に絶対性能が向上している戦闘機を単純更新ってどういうことよ、としか。
>それはさておき「カラシニコフ」は名著ですよね。朝日新聞にもこういう人がいたのか、と思いましたよ私は。
朝日新聞はやはり人材層は厚いと思うのです。元朝日記者が書いた「現代の海賊」はかなり丹念に取材経験に基づいて書かれていましたし、船橋洋一主筆の「ザ・ペニンシュラ・クエスチョン」も良い仕事していると思うのですよ。個人的に毎日や産経で注目している記者は少ないですけど、朝日は侮れない人がいます。
だがちょっとまって欲しい
Yahooかもしれないのではないか(キリッ
911前後に当時防衛庁が試験用で買ったAKとRPGは相当値が張ったと言われてるが幾らだったんだろう
ただ、この件、なんとなく教授の「無知」をクローズアップしてるように思いますが、全体的にみれば背広さんの
「AKがどのくらい泥水につかって・・(中略)調べたことがないのでわかりません」というのもちょっとどうかと
推測ですが、制服さんは個人的なり、研修なりでAKについて調べていると思うんです。そういう質問に関して制服組にマイクを渡して意見を述べてもらったりすればまた違ったのかもしれません。教授も最初に「使ったことないのでわかりませんが」と言ってるつまり自分もよくしらないとそういうのであれば背広でも制服でも理解している人間が教える意味で説明してもよかったと思います。
新生イラク軍向けの奴はブルガリア製だって聞いたからこっちもブルガリアの奴なのかと思ってましたが。
今回の事業仕分けでまた防衛予算が削減されるようです。毎年少ない予算でやりくりしている自衛隊は可哀想です………。この他にも古い戦車や船を更新せず、あと一年それを改修して使えとか無茶苦茶なイチャモンをつけていました。90式とかはもう20年たっているんですけど、それでも買い換えるなとか防衛をなんだと思っているのでしょうか? 仕分け人の人達は無知もいい所です。ちゃんと勉強をしてきているのでしょうか? もう今の内閣は変わって欲しいです………。
こうなったら、自分達が募金をして防衛省に持って行った方がいいかも。
コメント頂きありがとうございます。
数量は定かではありませんが、金額が窺い知れる随意契約資料は公表されております。Missile&Armsさんでレポートされていますので、ごらんください。
http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/9578/cyoutatsu17.html
時々見る人です。さま
ご意見頂きありがとうございます。
まずはじめに、私の書き方のせいで伝わらなかったと思いますが、本稿は「無知」に焦点を当てておりません。教授が自らリファレンスとして挙げた資料の内容とまるで反することを述べていて、その誤った認識を基に防衛省に「調べたほうがよい」などと平然と言う人間性の下劣さに呆れているのです。
私が本稿で挙げた内容はぶっちゃけ「カラシニコフ」を読んでいれば分かる内容であって、読んだと自分で言っている金田教授が何故理解できていないのか。これは「無知」とかそんなレベルの問題ではありません。嘘で政策を曲げようとしていると捉えられてもおかしくありません。
また、泥水云々について防衛省は「(自衛隊の小銃は)必要な能力は保持している」と回答しています。それをもっても「有事に即した〜」と言っている金田教授がどのような「有事」を想定しているのか私にも分かりません。
奈々氏さま
コメント頂きありがとうございます。
これも「カラシニコフ?」に載っていますが、米軍が配布した2万2千丁のうち、1万4千丁が旧国軍の倉庫にあったもので、残りの8千丁をルーマニアから購入したそうです。新兵訓練の銃は中古品で、ソ連・中国・ブルガリアと様々な生産国がありますが、クラス毎に生産国は統一しているそうです。
初めまして。コメントありがとうございます。
事業仕分け自体に法的拘束力はなく、仕分け結果自体は財務省のシナリオに沿っているものと思われますので、仕分け人の無知は実はたいして関係ないと思っています。むしろ、仕分け人は財務官僚の代わりにサンドバックになっているだけの人ですので、財務省にとっては無知の方が都合がよいんでしょう。
現内閣でも北沢大臣は防衛省予算削減に抵抗しておりますし、現実とのバランスも取れる方と思っていますので、北沢大臣が粘ってくれれば良いんですけども……
今回のそれが、ズバリ当てはまるとは限りませんが。要するに、秘密というものの取扱方法すら「も」知らないし、知る気がない仕分け人だと思いますが。
もっとも、答えにくい質問をあえて挙げることで、悪意のあるミスリードを行わせた、スクリプトライターこそ責める必要があるのかもしれませんね。
コメント頂きありがとうございます。
防秘に値するようなものでなくても、事業仕分けのような公開されてしまっている場においては、その場で言えるか判断できない機微情報の開示はまず無理でしょうに、あのような場を設けたこと自体悪質かと思います。これは防衛に限らない話ですが。
もう随分日がたったけど
http://20.niyaniya.info/src/20M3119.zip.html
パスは「ws」二文字
暇があれば偉大なる逆神様のワイドスクランブルでの仕分け御発言に
色々とやかく言っていただきたく思いますこの頃
コメントありがとうございます。
ワイドスクランブル映像、拝見致しましたが、神であらせられる逆神に何言っても無駄ですのでやる気ナッシングです。というか、このブログでそういう批判ネタを取り上げるのは正直不本意なのです。ここはあくまで軍事情報が本筋で、政治関連はできれば避けたいところ。そうは言ってられないのが悲しいのですが……
WestKOREAN氏で批判ページを立ち上げてはいかがでしょうか。
実は11月29日日曜昼のスクランブルでのレンホウ議員の方が酷かったので、こっちを取り上げようとしたのですが、外出先で見た映像でしたのでネットに転がっていないか探しているとこです。
サンスクでつか
http://ktkr.vip2ch.com/upload.cgi?mode=dl&file=2481
パスは「ss」二文字
でもレンホーさんもだけど
こっちでも凄まじく影響してる逆神様を見る事になられまするが
あー、これです。ほしかったのはまさにこの部分です。良くありましたね。
逆神様もそうですが、今日テレフォンショッキングデビューしたタモさんもいますよね。
これで、また検証ができます。これで記事多分書きます。かなり悪質な発言があるので。
改めて、しっかり読み直してみたい所ですね。
…紛争地帯の実態を知らしめたい著者の意図と裏腹に、俄か講釈の安っぽい論拠として利用されているのは、実に残念な事だと思います…
私のようなお馬鹿さんの類でもそんな安直な事しませんが。
これからもこういったネタをいじってやってください。楽しみにしております。
コメント頂きありがとうございます。
カラシニコフは名著ですが、こう歪んだ形で論拠とされるのは仰る通り残念でなりません。これを機会に本書の方を読んでくれる人が増えれば良いのですが……
低学歴さま
コメント頂きありがとうございます。
一応、金田教授はスーパーπ(私もお世話になりました)の開発者でコンピュータ関連では仕分け人の中で一番詳しい人物だと思います。問題はそんな人が他の分野にまでしゃしゃり出てくることでしょうか。
恐らくですが30ドルじゃなくて300ドルと言いたかったのでしょう。
この人よりも防衛に詳しい人はいくらでもいますが、たかが事業仕分けに専門家を選抜する余裕もない、
スパコンで呼んだ先生だが、防衛費についても経費削減に賛成の立場なら仕分けに出てくれと
頼まれたというのが真相な気がします。
金田氏本人は防衛費を下げるなどありえないと考えている(講義で言ってました)ので
先の発言については無駄な部分を省く努力をするよう求めただけではないでしょうか。