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2006-09-05

dream92006-09-05

[] 「鳥獣花木図屏風」の真贋論争


さて、またまた伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」です。先日まで東京国立博物館で開かれていた「プライスコレクション 若冲江戸絵画」展で実物を見て感激しました(感想はコチラ)が、コレ、本当に若冲の作品なのかどうか、疑わしいという声もあります。


若冲研究者で、滋賀県にある美術館「MIHO MUSEUM」館長の辻惟雄さんが、展覧会のカタログにこう書いています。

ちなみにこの作品については、賞賛だけでなく、いろいろ議論がなされている。プライス氏は「どんなに細部を拡大してみても、みごととしか言えないこの作品に、若冲以外の筆の関与はありえない」と若冲工房の関与を否定しておられる。一方、この画面に若冲らしい形の特徴が認められないと、若冲自身の関与を否定する日本研究者もいる。

若冲工房」というのは、若冲とその弟子たちのグループのことですね。若冲が複数の弟子を使って絵を描いていたのは事実らしいです。


「鳥獣花木図屏風」が若冲作であることを否定しているのは、例えば東大教授佐藤康宏さん。今年2月に東京美術から出た「もっと知りたい伊藤若冲−生涯と作品」という本の中で、こう言い切っています。

あの屏風は絶対に若冲その人の作ではない。若冲の描く緊張感に富んだ形態はまったくなく、すべてはゆるみきって凡庸である。

実はもう1点、「鳥獣花木図屏風」によく似た作品があります。静岡県美術館が所蔵している「樹花鳥獣図屏風」です(コチラ)。佐藤さんは、プライスさん所蔵の「鳥獣花木図屏風」と静岡の「樹花鳥獣図屏風」を比較して、このように結論付けています。

静岡の屏風の配色が自然らしさに配慮したものであるのに対して、プライス氏の屏風の配色は平板で抽象的な模様を作るだけに終わっている。工房作というにはあまりにも若冲画との落差が大きいので、稚拙な模倣作というべきだろう。


これに対して、明治学院大教授山下裕二さんの反論。昨日の書き込み(コチラ)でも紹介した、小学館雑誌「和楽」(コチラ)の特集記事です。

僕はまったく逆だと思いますね。静岡のものは明らかに模倣作です。

同じ記事の中で、学習院教授小林忠さん。

若冲画で間違いないと思いますね。

伊藤若冲 (新潮日本美術文庫)

小林さんによれば、その根拠は以下の通り。

  • ひとつひとつの枡目がきちっと几帳面に描かれている
  • 描かれた動物のディテールがピシッとしている
  • 構図が計算し尽くされている

持ち主のジョー・プライスさんはといえば、「若冲江戸絵画」展のブログにこう書いておられます。2006年5月11日のページです(コチラ)。

この絵については

若冲の作であるとかないとか

いろいろな説が飛び交っていますが

若冲にしかできなかったであろう

技巧が鏤められているんですよ。


私が初めてこの絵と対面するときも

若冲ではないと思うよ」と

釘を刺されていました。

しかし、屏風を開いた瞬間に衝撃が走りました。

私にはこれは若冲の作としか思えないのです。



「鳥獣花木図屏風」が若冲作かどうかはともかく、ちょっと気になることがあります。プライスさんは世界的な若冲コレクターなわけですが、佐藤康宏さんの本「もっと知りたい伊藤若冲」には、プライス・コレクションの作品の図版がひとつも出ていないのです。


もっと知りたい伊藤若冲―生涯と作品 (ABCアート・ビギナーズ・コレクション)

その理由について、佐藤さんがAmazonの「著者からのコメント」でこう書いています(コチラ)。

 佐藤康宏です。ひとつ釈明しておきます。この本にプライス・コレクションの作品が1点も掲載されていないのは、私の意思ではなく、先方から図版の掲載を断られたためです。これまで何度か若冲の図版を載せる本に関わりましたが、プライスさんの所蔵品をまったく入れないのは初めての経験です。でも、若冲の世界の豊かさはじゅうぶんに伝わる本になっていると思います。


 モザイクのような、いわゆる桝目描きの技法で作られ、プライス・コレクションに入った屏風を、私は若冲の画とは認めません(従来も繰り返し、この本でも述べているとおりです)。少なくともエツコさんはその見解がお気に召さないらしく、ほかの作品まで掲載を断られてしまいました。プライス夫妻とは30年のおつきあいですし、ジョウさんの鑑識眼を信頼してもいました。いまでもあの「鳥獣花木図屏風」以外は重要なコレクションだと賞賛しています。今回の措置も残念ですが、それ以上に、だれよりも若冲を愛していたジョウ・プライスさんにして、あんな下手な屏風を若冲の作と信じてしまうものかと、あらためて悲しくなりました。

なんだかこじれてますねえ。悲しくなりますねえ。ジョー・プライスさんの奥さんは日本人で、エツコさんといいます。そのエツコさんが佐藤氏に対して、プライス・コレクションの図版掲載を断った、ということらしい。



正直、私にとっては、「鳥獣花木図屏風」がだれの作品だろうが、あんまり関係ないです。例え伊藤若冲作でなかったとしても、私の中でのこの作品のすごさは、揺らぎようがない。


そういう意味では、佐藤氏の「あんな下手な屏風」という評価は、私には理解しがたい。35年前に、東京国立博物館のお偉方が「下品な絵」と評したのとよく似ている気がします。


ちなみに佐藤さん、「もっと知りたい伊藤若冲」の「はじめに」の中で、こんな風に自己紹介しています。

イタリア美術勉強しかけていた私は迷ったあげくやめて、若冲を主題に卒業論文を書いた。たぶん、若冲について卒論を書き、美術史専門家になるために大学院に進学した、日本で最初の学生だったと思われる。1978年のことである。

ふーん。そうなんだ。

ヨッちゃんヨッちゃん 2007/01/16 21:07 佐藤康宏先生の卒業論文は、たしか、池大雅だったような気がするのですが。

dream9dream9 2007/01/17 02:44 そうなんですか?!ご本人が勘違いしてるってことですかねえ。ナゾですね。

栃の嵐栃の嵐 2007/01/17 15:54 1月17日、金色夜叉の日、佐藤康宏先生のお誕生日です。佐藤先生お誕生日おめでとうございます。

ルージュルージュ 2007/01/18 15:30 佐藤康宏先生の卒論は、池大雅だと思います。早くも卒論において頭角を現し、絶賛されたそうです。添附した写真が全部モノクロであったにも拘らず、その独創性は高く評価され、プロフェッサー間違いない、との評判だったのを記憶しています。しかし先生ご本人がおっしゃることですから、いかに私が鮮明に記憶していても仕方がありません。私の記憶では池大雅間違いありません。

河豚河豚 2007/01/19 11:51 佐藤先生は修士論文に若冲をお書きになったはずです。卒論は大雅ですよ。先生が教養学部文科稽爐忘潦悗気譴討い燭箸、イタリア語の勉強はなさってました。先生は語学の才能もお持ちです。しかしながら、美術史を進学先に選ばれたのはまことに意外でした。先生は進学先として、印度哲学か西洋古典学のどちらに進むか深刻に迷っているとおっしゃってました。「大法輪」を購読しておられたり、チャーハンを食べるときにハムだけ残しておられたとのうわさもあります。まぁ、単なるうわさでしょうが。インド人のように眉間に印をつけた写真を拝見したことがあります。どこに進学されても偉大な教授になられたと思います。

dream9dream9 2007/01/20 20:34 卒論ではなく修論だとすると、「もっと知りたい伊藤若冲」の「はじめに」の記述はウソになってしまいます。あれだけ若冲作品の真贋にこだわっている佐藤康宏さんが、ご自身の経歴を捏造するとは考えにくいのですが、もしそうだとすると、佐藤さんのお書きになったものすべてを疑ってかからなければなりませんね。

宿六宿六 2007/01/21 12:35 佐藤先生バッシングは本筋から外れます。別に経歴捏造ではなく、若沖の大家であることに間違いはありません。てっきり印度哲学に進まれるものだと思ってましたけどね。西洋古典学もありうる選択だったでしょう。「語学は古典ギリシャ語とラテン語しかできない」とまでは豪語なさらないにしても、大変な実力をお持ちだったそうです。仏教に深い造詣をお持ちであり当然仏教美術にも関心をおもちでしたね。当然文学部印度哲学科または西洋古典学科へのご進級が予想されました。美術史へ進学なさったとお聞きしたときは、狐に抓まれたような気分でした。あんな凄いのがゆくんだから美術史もラッキーだなと思いましたよ。人柄も温厚円満です。宝塚がお好きで心のやさしい先生との評判です。

dream9dream9 2007/01/22 00:33 あらま。話を本筋、というか「もっと知りたい伊藤若冲」に戻したつもりだったのですが…。佐藤康宏氏の語学力とか進級の話なぞは、私はまったく興味がありませんので、もうこの辺で終わりにしていただけないでしょうか。よろしくお願いします。

dream9dream9 2007/01/22 01:17 本筋とは無関係な佐藤康宏氏礼賛コメントが相次いだので、ちょっとアクセス記録を調べてみました。

そしたらなんと、栃の嵐さん、ルージュさん、河豚さん、宿六さんの4人は、IPアドレスが完全に同じでした。ブラウザに特殊なソフトを組み込んでおられるという特徴も一致しています。そして、このブラウザの特徴は、最初にコメントをいただいたヨッちゃんさんにも該当しています。他の多くの方のブラウザには無い特徴です。

コメントを下さった皆さんがもし同一人物ならば、毎回名前を変えるのではなく、同じお名前で書き込んで下さい。もし皆さんが別人で、同じパソコンと回線を使っているのであれば、何も私のブログで佐藤氏をヨイショし合う必要はないはずです。仲間内でお話をされればよいと思います。