今朝の春〜みをつくし料理帖〜/高田郁”ははきぎ飯”

高田郁さんの”みをつくし料理帖”シリーズの4作目「今朝の春」からははきぎ飯です。
ふとしたことから、地膚子という小さな実を手に入れた澪が
どうしたらこの実を食べられるかと考えて作った料理です。

「これは地膚子です」
「じふし?」
「ええ。ほうき草の実を乾燥させた薬種です。古くからある薬で、腎の臓の病、それこそ浮腫みを取るのによく使われるのですよ」


ははきぎとはほうき草の古い呼び名だそうで、わたしたちが知っている名前でいうと、とんぶりのこと。

「乾燥させ、茹でてから幾度も水に晒して固い皮を外すのです。皮が外れるまで、気が遠くなるほど冷たい水で揉み洗いせねばなりません。そして重石をかけての水抜き、どれも恐ろしく厄介なことで、思い突きのみで試すのなら、止めた方が良い。」


とにかく、とんぶりを食べられるようにするには恐ろしく手間がかかるようで
さすがにそこまではできないので、とんぶりは食べられる状態のものを購入です。
じつはこのははきぎ飯、作るのは今回二度目なんです。
というのも、最初に近所のスーパーで100円で買ったとんぶりは
なんだか色も真っ黒で、しかも歯触りもなんとなくふにゃふにゃとして
「とんぶりってこんなんだったっけなあ」という、非常にがっかりする仕上がりになってしまったのでした。
で、やっぱりおいしいとんぶりを!と思い、有楽町の交通会館で買ってきました。



秋田のアンテナショップ、秋田ふるさと館
スーパーで買ったのとは全然違くて、ちゃんと緑色で粒もしっかりしていました。よかった。

 濃い目の出汁に酒、塩、醤油を加え、ひと煮立ち。おりょうに手伝ってもらい、団扇で煽いでしっかり冷ます。擂り鉢でていねいに擂った山芋に、それを少しずつ加えて伸ばしていく。江戸の山芋は、大阪の「つくね」と呼ばれる山芋に比し、粘りが薄い。だが、今回ばかりはその粘りの薄さが澪には嬉しかった。
 炊きたてで湯気の上がっているご飯を、艶やかな朱塗りの椀に装った。拵えの終わった山芋をぬくぬくの飯の上にとろりとかけ、件の実を匙で掬って真ん中に置く。
(中略)
 混ぜ込んでしまうよりも、こうして白いとろろの上に薄緑の実を置くことで、色味の対比が美しく映える。見つめていると、早く食べてみたい衝動に駆られるのだ。



いつものとろろごはんも、とんぶりをトッピングしただけで
見た目も食感もだいぶ変わって、ちょっとくせになるぷちぷち感です。
だけど、今日使った大和芋がことのほかいいもので(笑)
もちもち感たっぷりだったので、少しとんぶりの食感が負けてしまいました。
もうちょっと、おだしを多めにして、とろろをゆるめにしたほうが、よりとんぶりの食感が楽しめそう。
マグロとか、お刺身の上にかけていただいてもきっとおいしいです。

 用意した膳の上には、先に作っていた料理がもう一品。細造りした烏賊をほうき草の実と和えて、中身をくり抜いた柚子を器に見立てて詰めたものだ。仕上げに柚子を軽く絞る。



ついでにもう一品。これもきっと実際に作ったら奇麗だろうなあと想像しながら読んでいました。
柚子の器というのも、色、香りともにすてきです。
見た目にもきれいで、食べておいしくて、しかもからだにもいい。
シンプルだけれど、こういうごはんをていねいに、作って食べていけたらいいなあと思います。


おまけに、秋田ふるさと館で見つけたビールを買ってきちゃいました。



泣ぐ子はいねがぁ〜〜!(笑)



非熱処理、無濾過のモルト100%ビール。
名前と色のわりには、思ったよりどっしり感はなく、口当たりはすっきり。
甘めでフルーティな感じです。意外とやさしい、なまはげさん。

今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)

今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)