荻原規子『西の善き魔女Ⅷ 真昼の星迷走』

西の善き魔女〈8〉真昼の星迷走 (中公文庫)

西の善き魔女〈8〉真昼の星迷走 (中公文庫)

 2005年12月購入。1ヶ月の放置。文庫では8巻だがノベルズ版外伝3巻にあたる。当初の位置づけは本編の後日譚にあたるのだが、実質完結編といってよいだろう。世界の謎は解明されたものの、その先の指針をはっきりと示しきっていないため中途半端な完結編となったノベルズ版を本書がきっちりと補完している。すなわち今巻では、フィリエルにこの先試練が待ち受けていようともルーンがついていればきっとくじけることがないのだ、といわんばかりの甘ったるいだけのラストだったのを試練とその解決――その結果としての主人公の成長を具体化して見せた。その点をきっちりと描いたことで良質なビルドゥングス・ロマンとして物語を昇華させることに成功した。
 余談だが、ルーンというキャラクターは男性版ツンデレと位置づけることが可能と思うが、そういった形で萌えている女性読者は存在するのだろうか?