黒田研二『カンニング少女』

カンニング少女

カンニング少女

 天童玲美の姉は交通事故で不慮の死を遂げる。遺品である日記を見ていた玲美は姉の死そのものに疑問を抱く。真相を知るためには駒田学院に入学し、姉の担当教授とその助手に会う必要がある。今の学力では駒田学院入学は困難な玲美は友人たちの助けを借りて受験合格を目指す。合格するために用いられたテクニックは、カンニング――
 デビュー以来ミステリの秀作を発表し続けてきた黒田研二だが、それらの作品からはトリックメーカーだという印象を受ける。本書はミステリではないが、さまざまなカンニングの方法を生み出すあたりにトリックメーカーの片鱗をうかがい知ることができる。カンニングといういわば後ろ暗い行為を題材として扱いながら、こうもまっとうな青春小説に仕上げて見せるとは。こういったテイストの作品はまだまだ読んでみたいので作者の今後に期待。