藤岡真『ギブソン』

ギブソン (ミステリ・フロンティア)

ギブソン (ミステリ・フロンティア)

 2005年4月購入。2年1ヶ月の放置。突如として姿を消した敬愛する上司を捜す男の話なのだが、わらわら出てくる手がかりのことごとくが空振りに終わる。大量のレッドへリング大放出で興味をひきつけておきながら、落としていく展開でともすればとほうもない徒労感を味わおうものだが、テンポよく進んでいくために徒労ではあっても退屈ということはない。結末で見せる語り手の認識と現実の落差はなかなか苦いものがあり、読後感は決して爽快なものではないが嫌いではない。また、この認識と現実の落差という点は、派手さや大風呂敷ぶりには欠けるがいかにも『ゲッペルスの贈り物』『六色金神殺人事件』の作者らしい。