シオドア・スタージョン『一角獣・多角獣』

一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)

一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)

 2005年11月購入。1年10ヶ月の放置。絶版期間が長く、復刊されたこと自体が話題になった作品集。一角獣神話を元ネタとした「一角獣の泉」、子どもの夢と教授の現実が交差する「熊人形」、白痴少女の手に抱くフェチ心が高ずる「ビアンカの手」、宇宙人とのコンタクト、そしてその宇宙人からの予想外のメッセージ「孤独な円盤」など、短編巧者・スタージョンの作品集だけあって、どれも高クオリティだ。

樋口有介『魔女』

魔女 (文春文庫)

魔女 (文春文庫)

 樋口作品には定型がある。主人公あるいはその周辺人物の昔(学生時代であることが多い)の女性(元カノとか初恋の人だったりする)が死んでしまう。主人公はその女性の死に疑問を抱き独自に調査に乗り出す。その捜査の過程で、被害者及びその周辺の人間関係が暴かれていき、結果的に主人公は知らなくてもいいことを知ってしまい、苦い思いをする――本書の展開もその定型に当てはまる。そして『魔女』というタイトルからも想像可能であるように、捜査過程で暴かれる女性の魔女性が問題視されていき、この魔女性が主人公に苦い思いを抱かせることになる。このタイトルは樋口作品の読みどころを示す上では非常にダイレクトなものであり、かつ、樋口ファンの望む展開を見せてくれる作品でもある。従来の樋口作品が肌の合う読者にとっては諸手を挙げて歓迎したい作品だ。