島田荘司『帝都衛星軌道』

帝都衛星軌道

帝都衛星軌道

 2006年5月購入。3年3ヶ月の放置。誘拐された息子を取り返すため、母親は犯人の指示に従って動く。警察は母親を見張ることで身代金を受け取ろうとする犯人のもくろみを阻止しようとする。しかし、犯人のトリックによって警察はまんまと母親を見失ってしまう。しかも後日、息子は無事に帰ってきたのだが、今度は母親が行方をくらましてしまうのだった……
 島田荘司らしい大胆なトリックと、そのトリックを支えることとなる帝都=東京を取り巻く環境に関する都市論めいた描写の二つの読みどころがある作品。とりわけ後者の切り口はユニーク。とはいえ、肝心のストーリーはいささか単調で、結構なボリュームではあるが、作者特有のページをめくるごとに高まる高揚感といったものはさほど得られない。その点が残念だ。