万城目学『鹿男あをによし』
- 作者: 万城目学
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/04/01
- メディア: 文庫
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大学時代の教授から「君は神経衰弱だから」と言われるようにメンタル面の弱さが見られる主人公は、赴任先の女子高でも生徒との関係に悩まされる。この情けない男が鹿と出会い事件に巻き込まれ成長していく、というのが物語の本筋である。教師としての主人公と生徒との触れ合いも本筋に沿ってしか描かれないので、固有名詞のある生徒は一人しか出てこない。教師のではなく、あくまで鹿男の物語だ。教師としての顔を見せるのも、多少の例外があるにせよ大半がこの女生徒――堀田イトに対してのみである。しかもその接し方も教師と生徒というよりも共犯者のそれに近い。本書で描かれる主人公の世界は非常に狭い。これは成長小説であるが極めて焦点を絞った成長小説である。