21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由

最近よく耳にする「デザイン思考」とは、イノベーションを得るための発想法や技術のこと。デザイン思考が役立つ場面について本書では「既存のビジネスの枠を超えた新たな商品やサービスの開発の必要性に迫られているときや、新規事業創造やブランドの立て直しなど、0の状態から1(ときにはマイナスからの1かもしれません)をつくりださなければいけない局面」(p98)としていますが、ビジネスと別にしても日々を創造的にすごすための考え方(引き出し)の一つとして十分意義があるのではと感じました。
筆者はソニーの新規事業創出プログラムであるSAP(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げにも携わっている方で、本書で示される(実際のデザイン思考プログラムにおける)実践的なフレームワークの説明も有用でしたが、筆者の理解するデザイン思考についての整理(MBAマーケティングによる商品開発プロセスとの違い(P103〜))やマインドセットに関する話も興味深かったです。特にマインドセットについては、「デザイン思考でプロジェクトをすすめるツボ」(p148〜)として紹介されているポイントが考え方の本質を示していると思います。(下記のポイントは本の内容に基づき私の理解する文章に修正しています。)

  • ユーザのライフストーリにおいて共感できるレベルで理解できているか。
  • そこで解決したいと願う(時にはユーザ自身も認識していない)真の課題を抽出できているか。
  • 自分がその課題の解決に本当にチャレンジしたいと思えているか。
  • 課題を解決する方法を検討する場合、いかにチームや自分の中に無意識に存在するバイアスを壊せるか。

また、特に印象に残った文章として、筆者が「創りだすための方法を理解したことで、日々のすごし方ですら変わってくるのです。」と述べるその気持ちを後輩のブログの引用で示されていたので、ここにご紹介したいと思います。

今は、自分が携わっているソリューションの完成度の成否を数字で図りたいというモチベーションはほとんどない。その代わりに日々問うているのは、「自分のソリューションの使い手にどういう感情を抱いて欲しいか」「頭にユーザとして思い描いている彼女はこのプロダクトを手にとって笑顔になってくれるだろうか」「ターゲットユーザに含まれてそうな、通りですれ違った黒人の兄ちゃんに”クール”と思ってもらえるだろうか」「彼にとってかけがえのないものを作れるか」ということ。そして、「いやいや、このままじゃダメ、もっと改良しないと」って。(p226)

21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由

21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由