不安症オヤジの日記

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2011-02-01 連帯保証人制度は世界の恥だという脳科学者

[][][]連帯保証人制度は日本固有のものではない

脳科学者の茂木健一郎氏が連帯保証人制度は、日本独自の文化で世界の恥だなどとtweetしたもので、はてブなどで注目が集まっている。こういうことを言う人は茂木氏に限ったことでないが、勉強不足としか言いようがなく、科学者とは思えない言説であること、ブコメなどを読んでいると理解不足の人が多いので反論しておこうと思う。

その前に、ぼくのスタンスを言っておくと、連帯保証人制度は厳しく運用されるべきだと思っている。保証能力がない人を保証人にとった場合や連帯保証人の責任を正確に説明しなかった場合は、契約を無効にしてよいと考える。なお、保証能力というのは、自宅を売却するとか退職金を担保に労働金庫から借りるなんてことなしに支払えることを意味する。つまり、保証債務を支払っても、生活が破壊されるなんてことがないということである。したがって、保証金額には自ずと限界があるし、保証人になれる人も限られてくる。サラリーマンならちょっと高級な自動車1台分くらいが保証できる限度だろう。できれば、有限責任の連帯保証人や部分保証の連帯保証人というのを設ければよいと思う。能力に見合った保証しかできないようにするのである。これらを守れば、他人の保証で不幸になる人はかなり減ると思う。

ただし、オーナー経営者の場合は話が異なる。中小企業は、経営者で成り立っているといっても過言ではない。資金面でも技術や営業でも経営者の力に大きく依存している。その経営者が交代したら、その企業の存立も危うくなるわけだから経営者が逃げないように保証してもらわなければならない。また、オーナー経営者は金融機関から借りるに当たって、いちばんの受益者なのだからリスクをとるのは当然である。個人企業の経営者との公平性を保つという意味もある。もっとも、極端にいえば、貸し手は債権の保全ができればそれでかまわないので、十分な担保があるならば、オーナー経営者の個人保証はなくてもよいかもしれない。

さて、以下が反論である。

・連帯保証人制度は日本固有の制度ではない。アメリカなら、文書が英語なのでたいていの人にとって調べるのが簡単だと思うので例に挙げる。アメリカでは中小企業庁(SBA)が中小企業の債務保証を行っているが、企業の形態がパートナーシップや株式会社である場合、一定割合を出資している人は必ず連帯保証人にならなければならない。これは担保の有無とは関係ないし、経営に携わっていなくても関係ない。こうしたルールは、民間の銀行でも広く見られることである。SBAや銀行の申込書をダウンロードしてみればすぐわかる。

 ただし、まったくの第三者を連帯保証人にとるケースは少ない。アメリカの金融機関は担保主義であり、裁判でもめる可能性がある第三者の連帯保証よりも何らかの担保を要求することが多い。動産を担保にとることもあるが、不動産が最も一般的な担保であることは日本と同じである。動産と不動産など、複数の担保をとることも珍しくない。詳しく知りたい人は、FRBが行っているSSBFという調査の結果をみるとよい。もっとも、日本円で100万円に満たないような小口で短期の融資だと、無担保・無保証で融資することもある。

 自動車ローンなどはノンバンクが主に担当している。自動車が担保なので連帯保証人はとらないが、クレジットリポートのスコアが一定以上ないとローンを組めない。また、すこしでも返済が遅れるとレポマンがやってきて、とっとと自動車を引き上げてしまう。サブプライムローンを借りて住宅を買っていた人たちは、払えなくなったとたん自宅を差し押さえられていたが、アメリカの金融機関による担保処分はすばやい。

アメリカの連帯保証人制度について詳しく知りたい人は下記のウェブページが参考になる。

http://www.wisegeek.com/what-is-a-guarantor.htm

・連帯保証人をとって金融機関はリスクフリーになる

この誤解もとても多い。本当にリスクフリーになれるなら、バブルがはじけた後に、あれほど不良債権問題が深刻になることはなかっただろう。連帯保証人をとったからといって、金融機関はリスクフリーになるわけではない。連帯保証人が弁済に応じないなんて普通だし、交渉にはものすごい手間がかかる。強制執行しようにも、執行できる対象がないこともあるし、好き勝手に差し押さえできるわけでもない。この点は不動産担保も同じで、評価額が債権額と大差ない場合は、処分しても回収できないことがある。金融機関がリスクフリーになれるのは信用保証協会が100%保証してくれた場合に限られる(その場合でも融資時点で期待していた利息収入は得られない)。なお、金融機関はもっとリスクをとれという人がいるが、そのつけは預金者や株主、場合によっては納税者が払うことになるということを、わかっているのだろうか。サブプライムローン問題がいい例だ。

・金融機関はちゃんと審査できないから連帯保証人をとる

これはあながち間違いとはいえない。連帯保証人や担保に依存した融資があるのは事実だし、信用保証協会に審査を丸投げなんていう金融機関もある。しかし、完璧な審査などありえない。なぜなら、われわれは不確実性に満ちた、不完全情報の世界に住んでいるからだ。つまり、どんなに審査しても不測の事態が起こる可能性は排除できない。だれもが優良企業だと思っていた企業が突然倒産することなど珍しくもない。銀行や信用金庫はベンチャーキャピタルと違って予想以上に儲けることができない。あらかじめ定めた金利以上の利益は得られない。一方、預金は原則として元本を保証している(ペイオフはあるけど)。元本保証をうたって集めた資金をリスクのある融資で運用するのだから、貸し倒れになるリスクを最小にすることが必要になる。そのための手段が、連帯保証人や担保なのだ。もし、債権保全をとらないのであれば、きわめてリスクの低い企業・個人にしか融資できなくなる。その場合、借り手が大幅に減るから貸出金利は上がることになるだろう。さもなくば消費者金融のような高利にならざるをえない。これとて上限金利が規制されたため収益を上げにくくなっているのだが。

不確実性と不完全情報は、病院や不動産賃貸にも当然あてはまる。ぼくは両方とも連帯保証している。治療費を払わない人、家賃を払わない人はいないという保証がない以上、連帯保証人が必要なのはやむをえないと思う。どちら慈善事業ではないのだから。もし、連帯保証人がいなければ、料金の滞納と同時に追い出されることになるだろう(現にちょっと滞納しただけで鍵を付け替えてしまうアパートがある)。もっとも、複数人必要だとは思えないし、保証人調査なんてまったくしていないようなので、無理な保証を強要している可能性はあり、それは問題だと思う。ちなみに、連帯保証することで、ぼくは確実にメリットを得ている。病気の親を自分で世話しなくていいし、親と同居した場合の様々なコストを回避できているからだ。

・連帯保証人には何のメリットもなく、損ばかりだ

これは正しい場合が少なくない。身内とか親しい友人だととくにメリットがなくても保証を断れないこともあるだろう。だが、上に書いたように連帯保証をしたほうが得な場合もある。ほかにも、親が子供の保証をする場合がある。現金で支援することはできないが、最悪の場合、自宅を処分することになってもよいから、連帯保証人になることで子供を応援したいというケースである。はじめから自宅を処分して子供に貸すというのは合理的な行動ではない。事業がうまくいき、子供がちゃんと返済すれば自宅を処分する必要はないからである。自由意思に基づき、連帯保証人の責任を理解した上での保証まで、排除するべきではない。

・連帯保証人制度があるから日本の開業・企業が減った

反論するのもばかばかしい。日本の開業率が高かった高度成長期にも、ずっと連帯保証人制度はあった。連帯保証人制度と開業率を結びつける人は、これを説明できるのか?日本の開業が減ったのは、経済成長率が低下したからである。さらにいえば、資本のない人が他人の信用を利用することで資金を調達し、活発に開業してきたというのが過去の日本の姿である。また、開業率の低下がいわれるけど、労働力調査でみると、この10年くらいは新規に自営業になる人は増加傾向にある。

連帯保証人制度はないにこしたことはないと僕も思う。でも、誤解と思い込みで連帯保証人制度を否定することは間違いである。政治家ならともかく、科学者のやることではないと思う。

追記

ぼくとは視点が異なるけれど、teruyastarさんが「連帯保証人制度は世界の恥なのか?」というエントリーを書いている。全面的に同意することはできないが、なかなか興味深い。

しかし、グラミン銀行については誤解している。グラミン銀行はグループ貸付によって、モニタリングコストを削減し、リスク管理に成功したわけで、現在もグループ制度は残っているが、貸付は個人単位で行われ、保証人も連帯責任もない。そもそも初期のグループ貸付でも契約上は連帯責任はなかった。ただ、最初に借りた2人が返済しないと、残りの3人が借りられなくなるので、結果として代位弁済が行われることがあった、つまり連帯責任になったということだ。それは意図していたのではないかと思われるが、建前はグループメンバーによる相互監視にとどまる。グラミン以外のマイクロファイナンス機関では事実上の連帯保証人をとるケースも見られる。

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