Hatena::ブログ(Diary)

蛭子ミコト:ブログ版

2016-05-12

水素は添加物だけど…

ちまたでは、水素水なるものが話題になってます。

まあ、科学的にどうこうなのかは、こちらのサイトを読んで頂きたく思います。

水素水の宣伝をニセ科学と呼ぶしかない理由
http://www.cml-office.org/wwatch/alkalli/comment-ph-08


まあ、なんとなく水素水のHPを検索してみると、ある文章が個人的に目につきました。

水素は、厚生労働省によって「食品添加物」として認可されています。”

たしかに、既存添加物の168番に水素はあります。
http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/a11c0985ea3cb14b492567ec002041df/c3f4c591005986d949256fa900252700?OpenDocument

しかし、その後に続く文章が問題です。
食品添加物として健康に害が無いことを厚生労働省が認めています。”


・・・食品添加物として認可されていることと、健康に害がないことはイコールではないのですが・・・
厚生労働省は、別にそんなこと認めてないと思いますよ。


ここで、食品衛生法による食品添加物の定義を記載します。
添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によつて使用する物をいう。」


一方、「既存添加物名簿収載品目リスト注解書」という専門書によると、水素は以下の用途で使われていると書かれています。

不飽和脂肪酸水素を添加して飽和脂肪酸とし、固形脂肪とする。
 (いわゆる、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングの製造に使います)
糖アルコールを製造するとき

つまり、水素製造の過程において使用する添加物であり、摂取するために食品や飲料に加える類の添加物ではない、ということです。

この手の添加物は、加工助剤と呼ばれます。
 食品の加工の際に添加されるもので次の3つに該当する場合は、表示が免除されます。

1 食品の完成前に除去されるもの

2 最終的に食品に通常含まれる成分と同じになり、かつ、その成分量を増加させるものではないもの

3 最終的に食品中にごくわずかな量しか存在せず、その食品に影響を及ぼさないもの


私が加工助剤の説明でよく取り上げるものとして、塩酸(有名な強酸)、水酸化ナトリウム(強アルカリ性)があります。
この2つは添加物ですが、そのまま口にしたら火傷など重篤な傷害を引き起こします。
ただし、「最終製品から除去されている」ので、危害は起きません。

水素はもちろんここまでの劇物ではありませんが、加工助剤なので食品飲料中にはほとんど残らないのは同じです。

添加物には、製造・加工に用いて、口にはしない種類のものもあるのです。

添加物として認可されているから安全とか害がないとか、逆に危険だとかはいえません。
どんな性質で、どのように用いられているのかをきちんと確認する必要があります。(添加物に限りませんが)

最後に…
食品添加物としての水素について認識してないメーカーが水素水を販売しているということを指摘して、本記事を終了致します。



追記:なお、「健康食品」の安全性・有効性情報にも、水素の情報は何一つありません。
https://hfnet.nih.go.jp/

2015-07-05

添加物への栄養成分表示の義務付け、大丈夫か?

6月8日に開催された、食品表示基準に係る説明会を聴きにいってました。

話を聞いているうちに、こんな話が出てきました。

すべての消費者向け加工食品及び添加物への栄養成分表示の義務付け

最初、さらっと流していたけど・・・
添加物も!?

それって、店頭に置いてある食品添加物ってこと?

ちょっといくつかのケースを考えてみる。

重曹(炭酸水素ナトリウム

えーと、これは100%重曹(NaHCO3)だから、栄養表示すると…
100gあたり

熱量:0kcal
たんぱく質:0
脂質:0
炭水化物:0
ナトリウム:27.4g(食塩相当量:69.6g)

うん、(食塩相当量)がついたことによって、すごい変なことになったね。

あ、ちなみになぜ100gあたりで熱量を計算しているかというと、分析方法が100gあたりで結果を出しているため。

栄養成分等の分析方法等
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150331_tuchi4-betu2.pdf
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150914_tuchi4-betu2.pdf

1gあたりに書き直してみても、
ナトリウム0.3g(食塩相当量:0.7g)と、食塩が含まれていないのに食塩がほとんどって感じに見えちゃいますね。


次、調味料としてハイミー。
構成成分は、L−グルタミン酸ナトリウム 92%、5’―リボヌクレオタイドナトリウム 8%だそうな。
栄養成分が書かれていたのでそのまま書いてみる。
http://www.ajinomoto.co.jp/products/detail/?ProductName=hime
0.4gあたり(3ふり)の標準栄養成分
エネルギー:1.1kcal
たんぱく質:0g
脂質:0g
炭水化物:0g
ナトリウム:49mg
アミノ酸:0.3g

ハイミーの表示に基づき私が計算して、食品表示法的に書くとすると、
100gあたり【0.4gあたり】
熱量:292kcal【1.17kcal】
たんぱく質:79.5g【0.32g】
脂質:0
炭水化物:0
ナトリウム:12.3g(食塩相当量:31.1g)【50mg(食塩相当量:0.1g)】

これは、グルタミン酸ナトリウムのうちグルタミン酸たんぱく質と見なし、核酸については熱量の換算係数が不明のため0とした場合。

これ、たんぱく質を公定法で分析するとどうなるかというと…

100gあたり
熱量:400kcal
たんぱく質56.7g
脂質:0
炭水化物45.3g
ナトリウム:12.3g(食塩相当量:31.1g)

5’―リボヌクレオタイドナトリウムには2種類ありますが、この製品がその一つグアニル酸ナトリウムですべて占められているいるとした場合の計算です。

なぜたんぱく質量が違うのかというと…
上:グルタミン酸ナトリウムの理論値
下:公定法で測定した場合の数値(係数:6.25)

本来なら理論上は、グルタミン酸ナトリウムの係数は12くらい、グアニル酸ナトリウムの係数は5.5くらいですが…
添加物の係数は表として整理されてないので6.25を使うことになるので、こんなことになります。

さらに、炭水化物は差し引き計算で求めるため存在していないのにあることになり、その結果、熱量も増えてしまうことに。


続いて、食用色素 赤

デキストリン85%、食用赤色102号15%とのことなので、
この表示に従って食品表示法的に書くと
100gあたり
熱量:340kcal
たんぱく質:0g
脂質:0
炭水化物85g
ナトリウム:11.4g(食塩相当量:28.8g)
デキストリン炭水化物として計算しています。

これを公定法で分析すると…
100gあたり
熱量:400kcal
たんぱく質29g
脂質:0
炭水化物71g
ナトリウム:11.4g(食塩相当量:28.8g)

に、多分なります。食用赤色102号の分子式はC20H11N2Na3O10S3で、
窒素が含まれているので分析上はたんぱく質と見なされ、換算係数6.25で自動的にやるとこんな謎数字になります。


とりあえず3つ計算してみましたけど…
どれも分析値が現実とかけ離れた酷い結果に。

公的な分析方法があくまで栄養成分の分析法なので、何も考えず添加物に当てはめるとこんなことになるということです。


結論
・そもそも、一般消費者が購入する食品添加物は大量に使うことがないので、栄養表示はしない方がいい
でも、法律となってしまったからこれは多分簡単に変更することは難しいと思われる。

それなので、こちらの意見も提案。
添加物にも栄養成分を表示するなら、個別成分をきちんと定量して、それから熱量を求めること
現在の分析法では、ビタミンミネラルと、有機酸や糖アルコールの一部を除き添加物の分析法について何も述べられていません。
別添 栄養成分等の分析方法等 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150331_tuchi4-betu2.pdf
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150914_tuchi4-betu2.pdf

それゆえ、食品添加物には個別分析を使用してもよいとの文章と、個別分析については規定の方法で判定はしないとの文章を組み込んで欲しい。
規定の方法で分析する方がおかしな結果になるのは明らかなので。
(個別分析だけなら現状の分析方法等でも使用して構わないのだが、最終判定は規定の方法でと明記されている)

食塩を含んでいない食品添加物に限り、ナトリウム表示だけにする
食品添加物には、○○○ナトリウムというものはたくさんあります。
明らかに食塩(=塩化ナトリウム)ではないので、食品添加物に限りナトリウム表示だけにすればよいと思います。

この2点を提案したいと思います。


タイトルの”添加物への栄養成分表示の義務付け、大丈夫か?”は、正確に書くとこうなりますかね。

「そんな分析法で大丈夫か?」
「大丈夫じゃない、問題だ。」

2015-06-13

栄養表示成分の分析についてざっと語る

今までは健康増進法に基づく栄養表示基準で、2015年4月1日からは食品表示法が施行され食品表示基準となりますが、
栄養成分の表示について定められています。

今回は、普通の化学分析とはちと異なる、栄養成分の分析に大まかに語ってみようと思います。

なお、現在の分析法はこちらになります。
食品表示法 別添 栄養成分等の分析方法等
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150331_tuchi4-betu2.pdf
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150914_tuchi4-betu2.pdf

栄養表示で必ず表示されるのは、
・熱量
たんぱく質
・脂質
炭水化物
・食塩相当量(ナトリウム


この5つの分析法を説明していきます。

たんぱく質
たんぱく質そのものは測定出来ません。そのため、窒素を測定して、その値に一定の係数を掛けてたんぱく質量として求めます。

脂質
脂質すべて全種類を測定することは出来ません。そのため、エーテル等の有機溶媒で脂質をすべて抽出し、重さで求めます。

食塩相当量
食塩、すなわちNaClそのものを測定することは出来ません。NaまたはClを測定して換算して求めます。
食品表示法では、ナトリウムを測定して換算することになっています。

…今まで書いたように、
たんぱく質窒素からの換算、
脂質は正確に言えば脂質以外の成分も微量ながら含まれていて、
食塩相当量はナトリウムを測定しているため、食塩以外の食品由来ナトリウムも測定されてしまう

厳密に言えば、正確な数値ではありません。
しかし、%オーダーでみれば、この程度のずれは測定の誤差範囲に収まってしまうので、ほとんど問題になりません。
(食品中にあるすべてのものを分析するのは不可能のため、他に適切な方法がないともいう)



・水分
乾燥減量やカールフィッシャー法などにより、水分を測定します。

・灰分
灰化して有機物及び水分を除いた残留物の量のことです。

いきなり表示にないものの分析が出てきました。これは、炭水化物を求めるために必要なデータなのです。

炭水化物
炭水化物は、基本的には測定せず、計算で求めます。

先に挙げた分析法等には、こう書かれています。
炭水化物は、当該食品の質量から、たんぱく質、脂質、灰分及び水分量を除いて算出する」
式にすれば、こういうことです。

炭水化物=測定食品量−(たんぱく質量+脂質量+水分量+灰分量)

水分、灰分を測定したのはこのためです。

なお、この計算では食物繊維炭水化物として計算されます。
食物繊維の表示をするときは別途食物繊維を測定し、先の計算からさらに食物繊維量を引いたものを糖質とし、糖質食物繊維の合計量を炭水化物とします。
炭水化物食物繊維糖質
糖質=測定食品−(たんぱく質量+脂質量+水分量+灰分量+食物繊維量)


熱量
ここまで来て、熱量を計算するのに必要なたんぱく質・脂質・炭水化物のデータがそろいましたので、
修正アトウォーター法に基づき計算します。
求めたたんぱく質・脂質・炭水化物の量に、以下の係数をかけて熱量を求めます。
たんぱく質:4kcal/g
脂質  :9kcal/g
炭水化物:4kcal/g


栄養成分の基本表示の分析についてざっと語ってみました。
普通のイメージの分析とは違っていると思いますが、これも分析です。


なお、もう少し詳しく知りたい方は、一般財団法人食品分析開発センターSUNTEC のメルマガを参照してください。

栄養成分分析の実際
https://ssl.mac.or.jp/mail/121201/02.shtml

栄養成分分析の実際 その2 〜栄養表示(ビタミン)〜
http://www.mac.or.jp/mail/130201/03.shtml

2014-03-19

基準値だけで判断してはならない(後半)

前半の続きです。


ここで、基準値の決め方とADIの関係について見てみたいと思います。

・実際の食品の摂取量からTMDIを算出し、ADIに対する比率を計算してADIを超えていないことを確認している
参考”のPDF18枚目より引用
「各食品について基準値案の上限までクロチアニジンが残留していると仮定した場合、
国民栄養調査結果における各食品の平均摂食量に基づき試算される、1日当たり摂取する
農薬の量のADI に対する比は、以下のとおりである。詳細な暴露評価は別紙3(PDF26枚目以降)参照。
なお、本暴露評価は、各食品分類において、加工・調理による残留農薬の増減が全くないとの仮定の下に行った。」
TMDI(理論最大1日摂取量)試算は、基準値案×各食品の平均摂取量の総和として計算している。

実際に食べる食品の摂取量を、農薬を最大限使用してかつ最大限残留している場合の値で計算しています。

この表のように、いずれもADIを超えることはありません。
f:id:ebi_j9:20140221214835j:image

ほうれん草を○○g食べた場合などのような仮定の計算ではなく、実際の食品の平均摂食量から計算して超えないことから…
最大限残留していてもクロチアニジンによる健康被害はまずないと考えられます。

ここまでは、ADIを使用した安全性の説明ですが・・・
実は、この基準値設定の流れで、先日の報道で出てきたARfDという単語は一回も使われてません。


そもそも、食品中の農薬の残留基準値の設定についてどのように決めるかというと、
厚生労働省はこのようにしています。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/dl/s0127-15s_0001.pdf

これについて、経緯を含め詳しく説明されているページがあります。
農業環境技術研究所 永井孝志さんのページおよび資料)
http://shimana7.seesaa.net/article/211141044.html
http://shimana7.web.fc2.com/research/PDF/g3-6.pdf

一部引用します。
「基準値は農薬を適正に使用していればこの値は超えないだろうという意味を持つものであり」
「基準値超過の際に適切に農薬を使用するような営農指導などには有用ですが、リスクがあるかどうかの判断には役にたちません

簡潔に整理すると、こういうことになります。
農薬の基準値はADIも考慮して決めているが、基準値そのものはリスクの判断には役に立たない


では、リスクの判断はどうするのか?そこで用いるのがARfDです。ARfDの値を目安に健康影響がどうかを考えます。

ARfDを用いる計算は、実際に食品に残留していた時のリスク評価として用いるものなので、基準値と比較するとおかしいことになります。
今回の報道はまさに間違った使用例でしょう。


そもそも、クロチアニジンほとんど検出されていない

実際に重要なのは、残留実態はどうなのか?ということです。
過去のクロチアニジンの調査結果を見てみます。

食品中の残留農薬検査結果の公表について(平成17〜18年度)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/121029-1.html
平成18年の詳細
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/dl/121029-1-21.pdf

ほうれん草のクロシアニジンは、75件中1検体のみ0.05ppm検出。(H18時点の基準値は0.02ppm)

前半で、「実際の残留量はさらに少ないことが想像される」と書きましたが、現実に少なかったです。
実際には、ほとんど検出されていないのです。
基準値設定に計算したものよりも、TMDI/ADI比はとても小さなものになっています。
現実の数字からみても、危険性を煽る報道には問題があると思われます。

2014.5.27追記
コメントにありますようにH18年時点では、ほうれんそうには適用登録されていません。
なので、上記の記述は、基準値が制定されたあとの実態は反映されないです。

なので、参考になると思い、H18年の調査で作物を問わずクロシアニジンを検査した結果を集計してみました。
検査総数:5788
 検出数: 32
 検出率:0.55%
検出されたものを探す方が疲れるくらい、検出率低かったです。
なので、危険性を煽る理由はないと判断し、修正まではしませんです。


…まあ、クロチアニジンの基準値を上げた明確な理由が検索しても出てこないのも、余計不安をあおっている一因かと思います。
今後は、国なり企業なりがその辺の情報も具体的に挙げていって欲しいと思います。


まとめ
1.農薬ADIとARfDは各種動物実験などを元にして決められますが、両者は使い方が違います。

ADI :残留基準値の基本データ
ARfD :実際に摂取したときのリスク評価の指針として


これからは、このように考えていきましょう。


2.実際の残留実態調査では、ほとんど検出されておらず、わずかに検出された濃度も0.1ppm以下と、とても少ないです


蛇足:前回の計算…実はARfDの議論には全く関係ない計算です。農薬の使用時にどういう計算をするのかの参考として頂ければ幸いです。

2014-02-21

基準値だけで判断してはならない(前半)

先日、こういう報道がありました

ほうれん草40gで子どもに急性中毒リスク 国の残留基準緩和案で農薬漬けになる野菜はこれだ!
http://www.mynewsjapan.com/reports/1977
ネオニコ農薬2000倍緩和、裏で住友化学が動く
http://www.alterna.co.jp/12527
署名12,739筆を厚生労働省に提出――ネオニコチノイド農薬の食品中への残留基準の規制緩和に反対
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/press/2014/pr20140218/

記事を要約すると、ネオニコチノイド農薬であるクロチアニジンの新しい基準値は、ほうれん草なら2株(40g)で急性毒性のリスク発生の恐れがあるので問題だ!ってことです。

数値を出して計算してみますと…
EUでのクロチアニジンの急性参照用量(ARfD)は0.1mg/kg体重/日、ほうれん草の新しい基準値は40ppmなので、
基準値40ppmのほうれん草40gを食べると1.6mg摂取することになります。
体重16kgの子供ではちょうどARfDの値になり、問題であるとの主張でしょう。

計算上ではそうなりますが、この考え方は妥当なのでしょうか?検証してみたいと思います。

f:id:ebi_j9:20140221214834j:image
図:クロチアニジン

・計算に用いられた数値が妥当とは考えにくい
まず、記事中に使用されている急性参照用量(ARfD)から考えてみます。いきなりEUを否定するような書き出しですが…
これはARfDとADIの定義からみると、とても違和感を感じる数値なのです。

まずは、ADIとARfDの定義から。
ADI:「人が一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康に影響を及ぼさないと判断される量」
ARfD:「24時間以内に摂取した食品や水に含まれる物質が、現時点での知見から消費者に対してなんらかの健康リスクを示さない、通常体重あたりで示される推定量」

EUでのクロチアニジンのADI及びARfD(単位:共にmg/kg体重/日)は、
ADI: 0.097
ARfD: 0.1
…ほとんど一緒です。一生涯食べ続けても影響がない量(ADI)と、1日単位で健康リスクのない量(ARfD)が同じ?
普通に考えればおかしい話だと思います。
一応、ADIとARfDは同じ数値になることもあることはあるのですが…
FAO/WHO合同残留農薬専門会議(JMPR)ではADI:0.1、ARfD:0.6とされているので、個人的にはこちらの数値の方がより妥当だと思います。
http://fcsi.nihs.go.jp/dsifc/servlet/SearchApp?key=331&appkind=pestressearch&searchkind=detail_page&searchcondition=id

また、体重16kgの子供というのは、年齢で言うと大体4歳前後です。4歳の子供を代表例に使うのはどうか、という疑問もあります。


・クロチアニジンはこんなに残留しない
そもそも、基準値が40ppmだからといって、クロチアニジンが40ppm残留するということはあり得るのでしょうか?
まずは、ここの”参考”のPDFファイルをご覧ください。
「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の一部改正(食品中の農薬(クロチアニジン)の残留基準設定)」に関する意見の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495130138&Mode=0

この中に、国内での使用方法という表があります。
ほうれん草の場合、16%クロチアニジン水溶剤を4000倍希釈して、10aあたり最大300L使い4回以内、
または0.5%クロチアニジン粒剤を6kg/10a、4回以内 との旨が書かれています。
また、この資料によると、ほうれん草は10aあたり1220kgとれるそうです。

平成22年産秋冬野菜等の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量(全国)
http://www.maff.go.jp/j/tokei/sokuhou/syukaku_syutou_10/


これらのデータから、以下の式にて計算してみます。なお、この計算は、使用したクロチアニジンが100%ほうれん草に残るという前提の計算です。
(1kg当たりの粒剤中のクロチアニジン量(mg/kg))×(10a当たりの使用量)×(使用回数)÷(10a当たりのほうれんそうの収穫量)
0.5%クロチアニジン粒剤を4回使用した場合:500mg/kg×6kg×4回÷1220kg=9.83mg/kg
16%クロチアニジン水溶剤を4回使用した場合:(160000mg/L÷4000)×300L×4回÷1220kg=39.3mg/kg

40ppmという基準値は、一番使用した方法で、かつクロチアニジンがすべて残留するという前提っぽいですね。

では実際にクロチアニジンがすべて残留するのか? ”参考”PDFの21枚目に試験結果がちゃんと書いてあります。
6kg/10a 播種時播溝処理(1回)+16%水溶剤+ 2000倍 200L/10a(3回)
この条件では、すべて残留した場合で約61.475mg/kgになり、先の計算よりも多い総量を使用しています。
さらに、最終使用から収穫までの期間を最短とした場合で最も大きい値が記載されているものです。
(要するに、一番高い濃度となる条件の試験と言ってもいいです)
試験結果は、9.97と27.0mg/kg。大きい数値の方で考えても、最大44%残留という結果です。

基準値40ppmでも、ほうれん草に残るのは17.6ppmということになります。

現実には、こんな短期間に複数回農薬使用しませんし、出荷時期も考慮すると実際の残留濃度はさらに低いものになるでしょう。

これで、記事中の計算条件の一つが崩れました。
(もっとも、この数値を記事に突きつけたとしても、ほうれん草の量を増やされて危険と騒がれそうではありますが…。)

あえて今回の記事を3行で書くと…
・計算に使われたARfDの値はおかしいのでは?
・一番残留する条件でも、半分も残らない。実際の残留量はさらに少ないことが想像される。

・資料から必要なデータ抜きだして計算するのは面倒くさい(ぉぃ


で、ここまで計算して長くなってなんですけど…
これ、後半に続きます(汗)
今回の報道にARfDが出てきたので、あえて数値・計算に付き合った形です。
後半は、そもそも基準値はどのように設定されるのかなどについて書く予定です。
(実は、農薬がらみの記事は初めてです)