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蛭子ミコト:ブログ版

2016-09-10

メロンパンは普通に食べよう

本日、こんな記事がありました。

メロンパンは人体に超危険で国が規制!栄養なく危険成分まみれ、糖尿病等や内臓障害の恐れ
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16604.html

・・・ツッコミどころだらけの記事です。

たまにはこういった記事の誤りを指摘することも必要かと思い、書くことにします。

1.アルミニウム

肝臓腎臓の障害を引き起こす可能性
肝臓についての障害についての資料はなかった。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail970.html

厚労省アルミニウムの規制対象食品として名指し
→そもそも、規制なんてしていません。
規制対象食品なんてものは存在しません。


厚生労働省 アルミニウムに関する情報
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/aluminium/

膨脹剤、色止め剤などの食品添加物ミョウバン)にアルミニウムが含まれていて、それを使った対象食品の表があるだけです。
で、膨張剤を使った菓子パンの例としてメロンパンがあげられているだけです。

5%が、暫定許容量を上回っていたってのもウソ
先にあげた厚生労働省HPには、5%が許容量を超える可能性があると書いてあるだけです。

なお、厚生労働省アルミニウムの件について依頼文書を出しており、
硫酸アルミニウムカリウム及び硫酸アルミニウムアンモニウムを含有する膨脹剤の使用量の低減について(依頼)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/dl/130701-02.pdf
メーカーはミョウバン硫酸アルミニウムカリウム及び硫酸アルミニウムアンモニウム)を膨張剤に出来るだけ使わない方向で動いています。
(市販の膨張剤・ベーキングパウダーの表示を見ると、最近の製品はミョウバンが入ってない製品が多いです)


食品中のアルミニウムについては、食品情報blogのこちらも参考にどうぞ。
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20140804#p4
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20080716#p12

2.乳化剤と遺伝子組み換え大豆

まず…
・『遺伝子組み換えでない』という表示が義務
そんな義務はありません。
任意で「遺伝子組換えでない」旨の表示をすることができますが、
義務ではありません。


消費者庁 食品表示
http://www.caa.go.jp/foods/qa/kyoutsuu03_qa.html

・乳化剤には記載の義務がないため、遺伝子組み換え大豆を使いやすいという実情があります
大豆レシチン遺伝子残っているの?残ってないです。無いものの話をして何の意味があるのか、というのが1点。
そして、遺伝子組換え食品は実質的同等性が確認されており、食べても何の問題もないのに危険を煽っているというのがもう1点。
この2点で大きく間違っています。

遺伝子組換え食品については、こちらを読んで勉強して頂きたいと思います。
くらしとバイオプラザ21 「メディアの方に知っていただきたいこと」シリーズ
http://www.life-bio.or.jp/about/publi.html


3.栄養バランス
・栄養バランスという面でも、メロンパンは最悪の食べ物
→そりゃ、メロンパンに限らず、他の菓子パンや白米ばっかり食べていたとしたら…
生活習慣病につながる危険がありますね。
普通穀類だけで3食毎日過ごさないでしょう?

…って、なんで管理栄養士のAさん、栄養士ではない私にこんなこと突っ込まれるの…

・砂糖のとりすぎは体内のカルシウムを溶かしてしまうため
→論外。


・・・見ての通り、記事の主要な内容は全否定となりました。


今回取り上げた記事、最大の問題点は…
厚生労働省消費者庁に書かれている情報と異なる内容を堂々と書いている

執筆者が最初から平気でウソを書いているってことです。

相当悪質です。
少なくとも、このジャーナルや執筆者については、食品系の記事は怪しいと疑ってかかる必要があるでしょう。

あと、今回に限ったわけではなく、専門家に管理栄養士が出てくると、
どうも記事の内容が怪しいケースが多く見受けられる気がします。

ネット上で、管理栄養士かつ信頼出来る記事を書くのは、成田崇信さんくらいしか見受けられないです。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/naritatakanobu/
http://d.hatena.ne.jp/doramao/


暫定的に、成田さん以外の管理栄養士が絡んだ記事は疑ってもいいかもです。

2016-09-01

農薬検査と栄養成分検査の難しさの違い

女子栄養大学出版部から、「栄養と料理」という雑誌が販売されています。
http://www.eiyo21.com/eiyo/eiyo.shtml

美味しくて栄養的にも気を使った料理の作り方の他に専門家のコラムもあり、なかなか読み応えのある雑誌です。
万人におすすめ出来ます。

その2016年9月号に科学ライターの松永和紀さんががこんな記事を書いてます。
科学記者のつぶやき帖 「栄養成分、残留農薬…食品分析の裏側は?」

この記事はみんなに読んで頂きたいですが、この中で分析会社の方がこんなことを言っています。
「いえ、(残留農薬分析よりも)栄養成分分析の方が、じつはうんとむずかしいんですよ。」


私のブログを見ている方でも、農薬食品添加物、重金属の分析については何となく難しくて大変だろうってイメージはあるかと思います。
でも、栄養成分分析の方が難しい・・・?

記事では水分測定を例に、(中略)経験が必要と言っています。


分析技術の細かい点は記事に載ってないので、ちょっと分析屋の視点から、これについて説明してみようと思います。


まず、前提として…
分析技術・知識・測定機器については残留農薬分析の方が高度で専門性が高く、分析技術を習得するのは大変です。
クロマトグラフィー、質量分析計、検出器の特性、測定対象の化学的知識、ppmppbオーダーの低濃度を測定、大学では通常深く学ばない分野)

一方、栄養成分の分析は、検査の手技・知識そのものは、そこまで大変なものではありません。
(基本的に化学・食品系の大学で学ぶ内容が多い、基本成分は%オーダーの測定、器具もシンプル)

単に分析手法だけでいうなら、栄養成分の方が早くマスターできます。

では、何が難しいのか?

その1.試験の検証ができるかどうか

残留農薬は、基本的に食品には含まれていない前提で測定し、検査法が妥当かどうかについては添加回収試験
(食品に既知濃度の農薬を加え、ちゃんと加えた濃度が出るかどうかを確かめる試験)などで、検証が出来ます。

栄養成分の場合…
基本的に、測定すれば必ず数値が出ます。
この数値が真実の値なのかどうなのかは、神のみぞ知るところでありまして…

数値を必ず出さなくてはならない、でも試験法が妥当なのかを検証する方法が残留農薬試験と違って検証する術がほとんど無いのです。

特に大変な例として、脂質の分析についてざっと説明します。
まず、試験法自体が5種類掲載されています。

別添 栄養成分等の分析方法等
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150914_tuchi4-betu2.pdf

エーテル抽出法
クロロホルムメタノール混液抽出法
・ゲルベル法
・酸分解法
・レーゼゴットリーブ法

牛乳・乳製品ならゲルベル法やレーゼゴットリーブ法って決まっているのですが、
その他の食品については、代表例こそ書かれていますが、どれがベターなのかは、ある程度経験を積まないと、どの試験法にするのか判断できません。
(まあ、ここまでなら、大変ではあるけれど、難しいとまでは言いません。)

その2.測定対象の違い
そして、残留農薬分析と栄養成分分析の決定的な違い&難しさは、測定対象にあります。

一言で食品の分析といっても…

農薬:野菜、果物など原材料について測定する
栄養:基本的に、加工食品を測定する。

農薬は、測定対象が比較的決まっているので、大体適切な試験法があります。


一方、栄養成分は、穀類・野菜・肉・魚等々色んなものが混ざった状態です。

例として、ショートケーキの脂質を分析するとしましょう。
先に挙げた脂質の分析法、原材料別に戻って最適とされる試験法を並べるとこうなります。

小麦粉、砂糖:酸分解法
卵:クロロホルムメタノール混液抽出法
牛乳:ゲルベル法
バター、生クリーム(?):レーゼゴットリーブ法
苺:エーテル抽出法

検査するときには、苺くらいなら、1個だけ取って分析できなくもないですが…
他の成分は入り交じった状態です。
分析法を組み合わせることは基本的に出来ません。
さあ、どの手法で分析しますか?

私がやるなら、比較的脂質の分析でオーソドックスなエーテル抽出法か、調理加工食品でよく使われる酸分解法でやるか、
あるいはクロロホルムメタノール混液抽出法でやるか、この3種類やって平均値出すか…。簡単に答えはでません。
そして、抽出時間とか加熱時間とか他にも分析に関わるファクターはあるわけです。

栄養成分の基本項目である脂質でざっと考えてみても、これだけの要因があり、しかもここまでやっても真値かどうか断言までは出来ないのです。

ついでに他の基本項目でいうなら
タンパク質窒素を分析し、タンパク質係数をかけてタンパク質として求めている。
窒素の測定値そのものは信頼出来るのだが、タンパク質以外に窒素を含む成分があると当然数値が高く出るので、それが原材料に使われているかどうか注意を払う必要がある。
(例えばカフェインが含まれていたら、別途カフェインを測定し、カフェイン量を差し引き計算する。野菜が多かったら、硝酸塩を別途測定し、差し引く必要有り)
・水分;記事にあるとおり、自由水と結合水の問題があり、大変です。ついでに、乾燥法の他にカールフィッシャー法という方法もあり、ものによってはこちらの方が適切な場合もあります。
・食塩相当量(ナトリウム)、灰分:これは他の栄養成分とは違って、比較的正確に測定出来ます。


ここまでの内容をまとめると、

栄養成分分析は、考慮することが色々あって、正確な結果を出すには、ある意味残留農薬分析よりも大変である。

で、言うまでもないですが、残留農薬分析はまた別の困難さがあるので…
正直、一概にどっちが大変とは言い切れません。

というわけで、最終結論は、 「食品分析はなんでも難しい」 とさせて頂きますm(_ _)m

2016-05-12

水素は添加物だけど…

ちまたでは、水素水なるものが話題になってます。

まあ、科学的にどうこうなのかは、こちらのサイトを読んで頂きたく思います。

水素水の宣伝をニセ科学と呼ぶしかない理由
http://www.cml-office.org/wwatch/alkalli/comment-ph-08


まあ、なんとなく水素水のHPを検索してみると、ある文章が個人的に目につきました。

水素は、厚生労働省によって「食品添加物」として認可されています。”

たしかに、既存添加物の168番に水素はあります。
http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/a11c0985ea3cb14b492567ec002041df/c3f4c591005986d949256fa900252700?OpenDocument

しかし、その後に続く文章が問題です。
食品添加物として健康に害が無いことを厚生労働省が認めています。”


・・・食品添加物として認可されていることと、健康に害がないことはイコールではないのですが・・・
厚生労働省は、別にそんなこと認めてないと思いますよ。


ここで、食品衛生法による食品添加物の定義を記載します。
添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によつて使用する物をいう。」


一方、「既存添加物名簿収載品目リスト注解書」という専門書によると、水素は以下の用途で使われていると書かれています。

不飽和脂肪酸水素を添加して飽和脂肪酸とし、固形脂肪とする。
 (いわゆる、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングの製造に使います)
糖アルコールを製造するとき

つまり、水素は製造の過程において使用する添加物であり、摂取するために食品や飲料に加える類の添加物ではない、ということです。

この手の添加物は、加工助剤と呼ばれます。
 食品の加工の際に添加されるもので次の3つに該当する場合は、表示が免除されます。

1 食品の完成前に除去されるもの

2 最終的に食品に通常含まれる成分と同じになり、かつ、その成分量を増加させるものではないもの

3 最終的に食品中にごくわずかな量しか存在せず、その食品に影響を及ぼさないもの


私が加工助剤の説明でよく取り上げるものとして、塩酸(有名な強酸)、水酸化ナトリウム(強アルカリ性)があります。
この2つは添加物ですが、そのまま口にしたら火傷など重篤な傷害を引き起こします。
ただし、「最終製品から除去されている」ので、危害は起きません。

水素はもちろんここまでの劇物ではありませんが、加工助剤なので食品飲料中にはほとんど残らないのは同じです。

添加物には、製造・加工に用いて、口にはしない種類のものもあるのです。

添加物として認可されているから安全とか害がないとか、逆に危険だとかはいえません。
どんな性質で、どのように用いられているのかをきちんと確認する必要があります。(添加物に限りませんが)

最後に…
食品添加物としての水素について認識してないメーカーが水素水を販売しているということを指摘して、本記事を終了致します。



追記:なお、「健康食品」の安全性・有効性情報にも、水素の情報は何一つありません。
https://hfnet.nih.go.jp/

追記2:6月中旬に、「健康食品」の安全性・有効性情報に水素水の情報が公開されました。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail3259.html
Foocomにも記事がありますので、そちらもどうぞ。
http://www.foocom.net/column/editor/14450/

2015-07-05

添加物への栄養成分表示の義務付け、大丈夫か?

6月8日に開催された、食品表示基準に係る説明会を聴きにいってました。

話を聞いているうちに、こんな話が出てきました。

すべての消費者向け加工食品及び添加物への栄養成分表示の義務付け

最初、さらっと流していたけど・・・
添加物も!?

それって、店頭に置いてある食品添加物ってこと?

ちょっといくつかのケースを考えてみる。

重曹(炭酸水素ナトリウム

えーと、これは100%重曹(NaHCO3)だから、栄養表示すると…
100gあたり

熱量:0kcal
たんぱく質:0
脂質:0
炭水化物:0
ナトリウム:27.4g(食塩相当量:69.6g)

うん、(食塩相当量)がついたことによって、すごい変なことになったね。

あ、ちなみになぜ100gあたりで熱量を計算しているかというと、分析方法が100gあたりで結果を出しているため。

栄養成分等の分析方法等
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150331_tuchi4-betu2.pdf
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150914_tuchi4-betu2.pdf

1gあたりに書き直してみても、
ナトリウム0.3g(食塩相当量:0.7g)と、食塩が含まれていないのに食塩がほとんどって感じに見えちゃいますね。


次、調味料としてハイミー。
構成成分は、L−グルタミン酸ナトリウム 92%、5’―リボヌクレオタイドナトリウム 8%だそうな。
栄養成分が書かれていたのでそのまま書いてみる。
http://www.ajinomoto.co.jp/products/detail/?ProductName=hime
0.4gあたり(3ふり)の標準栄養成分
エネルギー:1.1kcal
たんぱく質:0g
脂質:0g
炭水化物:0g
ナトリウム:49mg
アミノ酸:0.3g

ハイミーの表示に基づき私が計算して、食品表示法的に書くとすると、
100gあたり【0.4gあたり】
熱量:292kcal【1.17kcal】
たんぱく質:79.5g【0.32g】
脂質:0
炭水化物:0
ナトリウム:12.3g(食塩相当量:31.1g)【50mg(食塩相当量:0.1g)】

これは、グルタミン酸ナトリウムのうちグルタミン酸たんぱく質と見なし、核酸については熱量の換算係数が不明のため0とした場合。

これ、たんぱく質を公定法で分析するとどうなるかというと…

100gあたり
熱量:400kcal
たんぱく質56.7g
脂質:0
炭水化物45.3g
ナトリウム:12.3g(食塩相当量:31.1g)

5’―リボヌクレオタイドナトリウムには2種類ありますが、この製品がその一つグアニル酸ナトリウムですべて占められているいるとした場合の計算です。

なぜたんぱく質量が違うのかというと…
上:グルタミン酸ナトリウムの理論値
下:公定法で測定した場合の数値(係数:6.25)

本来なら理論上は、グルタミン酸ナトリウムの係数は12くらい、グアニル酸ナトリウムの係数は5.5くらいですが…
添加物の係数は表として整理されてないので6.25を使うことになるので、こんなことになります。

さらに、炭水化物は差し引き計算で求めるため存在していないのにあることになり、その結果、熱量も増えてしまうことに。


続いて、食用色素 赤

デキストリン85%、食用赤色102号15%とのことなので、
この表示に従って食品表示法的に書くと
100gあたり
熱量:340kcal
たんぱく質:0g
脂質:0
炭水化物85g
ナトリウム:11.4g(食塩相当量:28.8g)
デキストリン炭水化物として計算しています。

これを公定法で分析すると…
100gあたり
熱量:400kcal
たんぱく質29g
脂質:0
炭水化物71g
ナトリウム:11.4g(食塩相当量:28.8g)

に、多分なります。食用赤色102号の分子式はC20H11N2Na3O10S3で、
窒素が含まれているので分析上はたんぱく質と見なされ、換算係数6.25で自動的にやるとこんな謎数字になります。


とりあえず3つ計算してみましたけど…
どれも分析値が現実とかけ離れた酷い結果に。

公的な分析方法があくまで栄養成分の分析法なので、何も考えず添加物に当てはめるとこんなことになるということです。


結論
・そもそも、一般消費者が購入する食品添加物は大量に使うことがないので、栄養表示はしない方がいい
でも、法律となってしまったからこれは多分簡単に変更することは難しいと思われる。

それなので、こちらの意見も提案。
添加物にも栄養成分を表示するなら、個別成分をきちんと定量して、それから熱量を求めること
現在の分析法では、ビタミンミネラルと、有機酸や糖アルコールの一部を除き添加物の分析法について何も述べられていません。
別添 栄養成分等の分析方法等 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150331_tuchi4-betu2.pdf
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150914_tuchi4-betu2.pdf

それゆえ、食品添加物には個別分析を使用してもよいとの文章と、個別分析については規定の方法で判定はしないとの文章を組み込んで欲しい。
規定の方法で分析する方がおかしな結果になるのは明らかなので。
(個別分析だけなら現状の分析方法等でも使用して構わないのだが、最終判定は規定の方法でと明記されている)

食塩を含んでいない食品添加物に限り、ナトリウム表示だけにする
食品添加物には、○○○ナトリウムというものはたくさんあります。
明らかに食塩(=塩化ナトリウム)ではないので、食品添加物に限りナトリウム表示だけにすればよいと思います。

この2点を提案したいと思います。


タイトルの”添加物への栄養成分表示の義務付け、大丈夫か?”は、正確に書くとこうなりますかね。

「そんな分析法で大丈夫か?」
「大丈夫じゃない、問題だ。」

2015-06-13

栄養表示成分の分析についてざっと語る

今までは健康増進法に基づく栄養表示基準で、2015年4月1日からは食品表示法が施行され食品表示基準となりますが、
栄養成分の表示について定められています。

今回は、普通の化学分析とはちと異なる、栄養成分の分析に大まかに語ってみようと思います。

なお、現在の分析法はこちらになります。
食品表示法 別添 栄養成分等の分析方法等
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150331_tuchi4-betu2.pdf
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150914_tuchi4-betu2.pdf

栄養表示で必ず表示されるのは、
・熱量
たんぱく質
・脂質
炭水化物
・食塩相当量(ナトリウム


この5つの分析法を説明していきます。

たんぱく質
たんぱく質そのものは測定出来ません。そのため、窒素を測定して、その値に一定の係数を掛けてたんぱく質量として求めます。

脂質
脂質すべて全種類を測定することは出来ません。そのため、エーテル等の有機溶媒で脂質をすべて抽出し、重さで求めます。

食塩相当量
食塩、すなわちNaClそのものを測定することは出来ません。NaまたはClを測定して換算して求めます。
食品表示法では、ナトリウムを測定して換算することになっています。

…今まで書いたように、
たんぱく質窒素からの換算、
脂質は正確に言えば脂質以外の成分も微量ながら含まれていて、
食塩相当量はナトリウムを測定しているため、食塩以外の食品由来ナトリウムも測定されてしまう

厳密に言えば、正確な数値ではありません。
しかし、%オーダーでみれば、この程度のずれは測定の誤差範囲に収まってしまうので、ほとんど問題になりません。
(食品中にあるすべてのものを分析するのは不可能のため、他に適切な方法がないともいう)



・水分
乾燥減量やカールフィッシャー法などにより、水分を測定します。

・灰分
灰化して有機物及び水分を除いた残留物の量のことです。

いきなり表示にないものの分析が出てきました。これは、炭水化物を求めるために必要なデータなのです。

炭水化物
炭水化物は、基本的には測定せず、計算で求めます。

先に挙げた分析法等には、こう書かれています。
炭水化物は、当該食品の質量から、たんぱく質、脂質、灰分及び水分量を除いて算出する」
式にすれば、こういうことです。

炭水化物=測定食品量−(たんぱく質量+脂質量+水分量+灰分量)

水分、灰分を測定したのはこのためです。

なお、この計算では食物繊維炭水化物として計算されます。
食物繊維の表示をするときは別途食物繊維を測定し、先の計算からさらに食物繊維量を引いたものを糖質とし、糖質食物繊維の合計量を炭水化物とします。
炭水化物食物繊維糖質
糖質=測定食品−(たんぱく質量+脂質量+水分量+灰分量+食物繊維量)


熱量
ここまで来て、熱量を計算するのに必要なたんぱく質・脂質・炭水化物のデータがそろいましたので、
修正アトウォーター法に基づき計算します。
求めたたんぱく質・脂質・炭水化物の量に、以下の係数をかけて熱量を求めます。
たんぱく質:4kcal/g
脂質  :9kcal/g
炭水化物:4kcal/g


栄養成分の基本表示の分析についてざっと語ってみました。
普通のイメージの分析とは違っていると思いますが、これも分析です。


なお、もう少し詳しく知りたい方は、一般財団法人食品分析開発センターSUNTEC のメルマガを参照してください。

栄養成分分析の実際
https://ssl.mac.or.jp/mail/121201/02.shtml

栄養成分分析の実際 その2 〜栄養表示(ビタミン)〜
http://www.mac.or.jp/mail/130201/03.shtml