蛭子ミコト:ブログ版second

主に食品添加物や食品衛生のことについて書いていくブログ

じゃがいものソラニンによる食中毒

私なんかは本当にまたか!と言いたくなるのですが、今年は大阪でじゃがいも中のソラニンによる中毒事例が起こりました。

植物性自然毒による食中毒の発生について
http://www.pref.osaka.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=13676

患者の発症状況がソラニン類による食中毒症状と一致していること、ジャガイモの調理残品からソラニン類が検出されたこと、
患者を診察した医師から食中毒の届出があったことから、八尾保健所は食中毒と断定した。


ここで、改めてじゃがいも中のソラニンについての情報を整理します。

じゃがいもの芽は毒という話は、結構知られていると思います。
(この毒の名前がソラニン類と呼ばれ、主にα-ソラニンとα-チャコニン。ソラニンとチャコニンの毒性はほとんど一緒。これ以降、ソラニン類のことをソラニンと書いていきます)
ジャガイモの皮が緑色になったら、そこは芽と同じで危ないって話も、人によっては聞いたことがあると思います。

しかし…普通の色が変わっていないじゃがいもの皮、これにもソラニンは含まれています。
この、普通のじゃがいもを食べて食中毒になることもあるのです。(市販品での事例はほとんど聞いたことないけど)

小学校でほぼ毎年起きているじゃがいも中のソラニンによる食中毒は、大抵こんなケースです。

・(児童が栽培した)未成熟な小さいじゃがいも
調理実習で皮ごとゆでて食べる

学校の授業で生徒が栽培するとなると、農家が作りスーパーに並ぶような立派な物が出来ることは多くないでしょう。未成熟の小さなじゃがいもの比率が高めなのは容易に想像出来ます。

ここで問題なのが”小さなじゃがいも”だということ。

未成熟な小さいじゃがいもはソラニン類が多く含まれているといわれています。
(個人的には、小さい故、全体に占める皮の比率が高いからだと思ってます)

そしてさらに問題なのが、そのじゃがいもを皮ごと食べているケースが多いということ。
先にも書いたように、皮の方がソラニンの量、遙かに多いんです。
例えば、ここの測定データをみてみると、 皮に0.880、可食部に0.036mg/gソラニンが含まれていることがわかります。
http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/health/16/1-3.html (2007年公開)


中毒を起こす量は、出典元により多少異なってます。
厚生労働省より:体重が50 kgの人の場合、ソラニンやチャコニンを50 mg摂取すると症状が出る可能性
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/higher_det_08.html

神奈川県より:ソラニン類を大人が200〜400mg摂取すると発症するとされています
http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/008_topics/files/topics_080820.htm  (2008年公開)

今回の大阪の事例でいくと、ソラニンが591mg/kg含まれているじゃがいもをどれくらい食べれば中毒になるのか?
厚生労働省のページによる数値だと約100g、神奈川県の数値でみると約300g食べると中毒を起こすことになります。
・・・ただし、この数値は大人の場合です。

過去の事例から、子供は1/10の量で発症すると考えられています。(まだ代謝系が完成されていないからではないか?と現在のところ考えられてます)
つまり、皮ごと食べると10-30g食べるだけで中毒症状を起こすことになります。このくらいなら、簡単に食べちゃいますよね…。


要するにまとめると、
ソラニン量が多い小さいじゃがいもを
・特に多く含まれている皮ごと
ソラニンが少量でも中毒になりやすい子供が食べる


小学校で行われているじゃがいもの調理実習は、ソラニン中毒を起こしやすい条件が見事にそろっていることになります。

あと、もう一つ重要なこととして・・・ソラニンは茹でても焼いてもほとんど減りません!
(下にある東京都のページに詳しくあります)


本当に、毎年どこかの小学校で中毒が起きてニュースになるという現状は、どうにかならないのでしょうか?
厚生労働省文部科学省共に、中毒が起こるたび通知は出しているのですが、抑止効果は残念ながら薄いようです。

小学校の授業プログラムがどのように決められているのか、私は残念ながらわかりませんが…
じゃがいも中のソラニンによる中毒は原因・理由ともにはっきりわかっているのですから、いくらでも対策は出来ると思うのです。

1.そもそも、じゃがいもを育てない。
2.じゃがいもを育てる授業はあってもいいけど、作ったじゃがいもは食べない(調理実習は購入したジャガイモを使用する)
3.調理実習でじゃがいもとソラニンの話に触れ、皮は絶対に剥くようにする。
(可食部のソラニン量は、小さいじゃがいもでも1kgあたり36mgなので、これだけでも中毒リスクは限りなく0に近づく)

子供達に危害が及ばないように、小学校関係者や文部科学省は、この辺のことを考慮していただけないものでしょうかね。

なお、以下のページも参考にしてください。

東京都 食品衛生の窓 じゃがいも いも知識 (2007年公開)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/anzen_info/poteto.html

ポテトエッセイ第45話 http://www.geocities.jp/a5ama/e045.html(2010年最終更新?)

食の安全情報blog STOP! じゃがいも食中毒 (2010年公開)
http://d.hatena.ne.jp/ohira-y/20100223/1266900237

とらねこ日記 ほったいもたべるな (2011年公開)
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20110807

Togetter http://togetter.com/li/519517 (2013年、私のつぶやきが結構あります)


今回、リンクの最後に公開年をわざわざ書いたのは…
じゃがいも中のソラニンに関する情報は公的機関や個人ブロガーなど、
ほぼ毎年、なんらかの形でどこかが注意喚起をしているのです。
私の今回の記事も、中毒を防ぐための一助となれば幸いです。