食品添加物について語るときの資料
2021年1月、初の共通テストの英語の問題で、食品添加物のことが危険性をあおるような感じで題材にされていましたが、食品添加物の昭和のあの時代についたイメージはなかなか消えてくれないものです。
食品添加物について語ることは色々できますが、今回は食品添加物について私がスライド作って話す時にどういったところを参照しているのかを紹介したいと思います。
基本
食品添加物協会
まずはここを読まないと。
正直、ここを読めば食品添加物について大概のことは書いてあります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.html
食品衛生法でも重要な位置づけにある食品添加物。法的なことやリストはこちらです。
食品衛生(監視)戦後史
http://www.saturn.dti.ne.jp/~sasai/sengosi.pdf
食品添加物というよりは食品衛生全般の資料ですが、戦後からしばらくは良くも悪くも添加物が目立った時代でもあります。こういった歴史があるから現在があることを認識することが大切だと思います。
FOOCOM
https://foocom.net/tag/additives/
食情報の消費者団体ですが、ここは最新事情を把握するのに役立ちます。過去記事をみていけば結構な知識がつきます。最近ページがリニューアルされ、添加物って項目でもリンク出来るのでそれを。
表示について
東京都 食品衛生の窓 食品添加物
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/shokuten/index.html
法的なことは、国よりも地方自治体の方がうまく情報を整理してくれています。
現在の表示も、リンク先に消費者庁の該当ページがちゃんとあったりします。
食品添加物の表示の経緯
この検討会の資料は見る価値あります。特に、食品添加物表示制度に関する検討会(第1回)資料2が推移とか定義とか諸外国の表示とか内容が盛りだくさんです。
諸外国との比較
これも時々、不思議なくらい外国が少なくて日本が多いと言った論調の話を目にしますが、以下の資料をみたらそんなことはないということがわかります。(先ほどの消費者庁の資料も含みます)
添加物規制に関する国際比較
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000727387.pdf
日本、アメリカ、コーデックスにおける規制の比較表です。
不定期に更新されるようなので、リンクが切れていたら、
「添加物規制に関する国際比較」で検索した方がいいです。
諸外国における食品添加物の規制等に関する調査報告書
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000046927.pdf
2014年の情報ですが、アメリカ&コーデックス以外にもEUやカナダ、中国など多くの国の情報があります。
安全性
株式会社ウエノフードテクノ
安全性はどのように評価・管理されているか|食品添加物の安全性|ウエノフードテクノ
これは、添加物メーカーの(株)ウエノフードテクノのページがわかりやすいです。
食品添加物協会と同様に、食品添加物の基本事項も充実しています。
ここまでいくつも紹介してきましたが、国&地方自治体、添加物協会や添加物製造会社と、ほとんどが公的・公式なところの情報だけになってます。
正確な情報を得ようとすると、こういうところからになります。
食品添加物の正確な知識は、まずは基本・基礎的なこれらあたりから読んで学んでほしいです。
…逆に、書籍から情報を得ようとするのは、あまりおすすめしません。
本屋・コンビニで売ってるような書籍は、知識がないと内容が妥当かどうか判断できないので、買わない方がマシなことが残念ながら圧倒的に多いです。
次亜塩素酸水について3 ~市販品は当てにならない~
その1、その2と次亜塩素酸水についての情報を整理してきたので、
一部報道で言われている次亜塩素酸水が新型コロナウイルスの対策に使えるかどうか…
結論から先に書きます。
次亜塩素酸水
一般に購入できるのは
使わないで
まず、容器で売られている製品。
次亜塩素酸水の大前提として生成装置から流水で使用するものなので…
容器で売られているような物は、有効塩素は消失している可能性がとても高いです。
そもそも容器に詰めた製品に効果あるなら、食品添加物から指定外れることもなかったですからね。
なお、その1,2には書いてないけど関係あるものにも言及しておきます。
次亜塩素酸ナトリウムと塩酸やクエン酸等を混ぜて調製した製品もあります。いわゆる塩素ガスの”混ぜるな危険”に近い形ですが、次亜塩素酸水とほぼ同様の状態にはなります。
しかしこれは、平成16年(2004年)の厚生労働省通知で「販売は認められない」と明記されています。
【食安基発第0825001号】 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/10/dl/s1028-8f.pdf
なので、この製品も同様に当てにならないです。
では加湿器のようにミスト・霧状にするのは?
いくつかの製品紹介とか見る限り食塩を電解しているので、ほぼ強酸性次亜塩素酸水と推測されます。(弱酸性も可能性としてはありえますが)
で、繰り返しになりますが生成装置から流水で使用する次亜塩素酸水、霧状にして…
・液体&流水で使用して効果あるものを霧状にして、効果あると思いますか?
ミストとして出る直前には効果あっても、室内に出たらとても薄まるのでまず意味ないです。
・万が一効果がある程度あったとしたら…口内や気管支、最悪肺までミストがたどり着くことになり、粘膜にダメージある程度与えますので、使用は控えた方がいいことになります。食品添加物的に言えば濃度100ppm以上の濃度となり規格違反にもなります。
・そもそも生成装置の使用上の注意で『塩素ガス&水素ガス』が出るので換気を…となっているので、ある意味そっちの方が危ないかもしれない。
・次亜塩素酸水のうち強酸性次亜塩素酸水だと、ある程度レベルの塩酸酸性溶液(pH2.7以下)でもあるので、水ですすがないと塩酸によるダメージが別にありそうです。
・製造装置からではなく、別途水を汲んでミストを出すタイプは大本の次亜塩素酸水に有効塩素残ってないと考えられ、論外。
…というわけで、ミスト状にするのも効果ないです。
では最後に製造装置から直接容器に受けて使用するのは?
…これも正直効果は薄いです。有効塩素が短時間に消失することがあるので、容器に移して持ち運ぶ間に失活して効果なくなってる可能性がとても高いです。(同じ建物内でキレイな容器にいれてすぐ使うくらいならまあ効果あるかもですが)
というわけで、次亜塩素酸水とは?というのを整理しながら書いてきて、新型コロナウイルスにはどうなの?一部報道で言われている効果は?ところを説明したつもりです。
…本当に効果あるなら、ニュースでよく見る専門のお医者さんたちが迷わず使用しますからね。そんな話がないということは…ね。
普通にものの消毒は、使っていい物質ならハイター等の次亜塩素酸ナトリウム溶液を適宜希釈して使用してください。
では最後に。
厚生労働省、次亜塩素酸を含む消毒液の噴霧については、すでに新型コロナウイルス感染症への対応関係の通知の中で、こう書いてあります。
次亜塩素酸を含む消毒薬の噴霧については、吸引すると有害であり、効果が不確実であることから行わないこと。
https://www.mhlw.go.jp/content/000605425.pdf
2020年4月6日追記
ツイッターで教えてもらった情報ですが、上記の次亜塩素酸とは、次亜塩素酸ナトリウム溶液のことだったとのことで、みえ消しにいたします。
「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について(令和2年3月6日付事務連絡)」に関するQ&Aについて
https://www.mhlw.go.jp/content/000608916.pdf
ただ、ここにはこんな文章も。
「次亜塩素酸水を用いた市販の製品等の安全性等に言及するものではない。また、消毒については、本事務連絡では清拭することとしていることに留意すること。」
次亜塩素酸水について2 ~公定書解説書にはどう書いてある?~
次亜塩素酸水について1 の続きです
ではさっそく、第8版食品添加物公定書解説書から次亜塩素酸水についての解説を抜き出していきます。が、長いので今回は最初に要点を書いて、その後の説明に付き合ってもらう形にします。
・次亜塩素酸水は、安定性の面から供給する手段のない次亜塩素酸を使用段階で製造し、利用できるようにしたもの。
・製造装置と使用上の定義が別通知で出されている特別なパターン。
・用途は(汚れを落としてから)野菜・果物や機器・器具などの消毒・殺菌に用いる。
・最終食品の完成前に次亜塩素酸水を除去する必要があります。
ここから細かいけど抜粋した話になります。
・いわゆる「電解水」の一つとして研究されてきた。
・強酸性電解水の殺菌効果が1990年に報告され、食品や医療の衛生管理に一部使用されるようになった。
・次亜塩素酸は、過去には食品添加物に指定されていたが、保存安定性が悪いために普及せず、使用実態なしで1991年に指定から外れた。
はい、まずここに注目。
昔は食品添加物に指定されていたが、保存安定性が悪く使用実態もないので指定から外されてます。で、それとは別に電解水の研究もされてきていて、その結果が2002年に再指定のような形となります。
・2002年に強酸性電解水と微酸性電解水が次亜塩素酸水として指定された。(2012年に弱酸性次亜塩素酸水が追加)
・次亜塩素酸水の範囲、生成装置や使い方に関する留意点などが通知された。(食基発第0610001号) https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8m.pdf
この通知、食基発第0610001号が地味ながらとても重要です。
・生成装置内で電解することにより得られる
・電極や電解槽、ポンプなどの生成装置のハードウェアに関する留意点
・次亜塩素酸水の使用上の注意(pH及び有効塩素濃度の確認、食品の汚れを洗浄後使用する、精製時に微量の塩素ガス&水素ガスが発生することから装置の作動時には十分な換気を行う、最終食品の完成前に除去しなければならない(=水道水の塩素レベルまで)
・次亜塩素酸水は、安定性の面から供給する手段のない次亜塩素酸を使用段階で製造し、利用できるようにしたものである。
(重要なので繰り返しました)
次亜塩素酸水は、食品添加物公定書及び解説書だけではなく、通知についてもしっかり把握する必要がある特殊なものと言えます。
また、性質を調べて個人的に驚いたのが、強酸性次亜塩素酸水は手指の消毒例が記載されていたこと。
正確には、陰極側で作られる強アルカリ電解水(=0.2%くらいの水酸化ナトリウム溶液)で洗浄後、強酸性次亜塩素酸水で消毒との記載があります。
(個人的には強酸性次亜塩素酸水のpHは2.7以下なので、さらに水ですすぎたいです。床の消毒では軽くすすぎって文言があるのに…)
で、解説の途中に、この文章が書かれています。
『対象物との接触により有効塩素が短時間に消失することがあるため、流水で使用することが望ましい』
これは、最初に次亜塩素酸が指定取り消された理由ともつながります。すぐ消失してしまうからこそ、装置から蛇口から水道水を出しっぱなしにするかのごとく、次亜塩素酸水を流しっぱなしで使用するということです。
書かれている毒性も読んでみてある意味驚いた。
経口投与:特筆する変化なし
口腔組織(粘膜):上皮層の肥厚、粘膜組織の軽度の変化
皮膚刺激性:認められず
解説書に書かれている内容だと、そんなに毒性高くないのです。ただし、粘膜にはある程度の障害が起こりうるかなと言えます。
その1、その2によって、次亜塩素酸水についての特徴がわかってきました。
ここまで情報をそろえて、何に使えるか・どう使うべきか等、語ることができるようになります。
新型コロナウイルスの対策に使えるかどうかについては、1,2の情報を中心に、その3で書いてみたいと思います。
次亜塩素酸水について1 ~食品添加物公定書による定義~
新型コロナウイルスに対する消毒に、次亜塩素酸水が効果あるとかなんとか言われています。報道によっては、酸性電解水とも言われてます。
さて、ではこれが効果あるかどうか!?
…の前に、そもそも次亜塩素酸水とはなんぞや?というところを押さえたいと思います。
次亜塩素酸水という表記をされるようになったのは食品添加物に指定されてからです。そこで、食品添加物公定書に記載されている次亜塩素酸水について整理しながら抜き出していきます。
・次亜塩素酸水とは?
定義(抜粋、要約)
塩酸又は塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。本品には、強酸性次亜塩素酸水、弱酸性次亜塩素酸水及び微酸性次亜塩素酸水がある。
第9版食品添加物公定書 D成分規格・保存基準各条
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000192868.pdf 634,635ページから
現時点で次亜塩素酸水は三種類あります。有効塩素の量については種類によって定義が若干異なりますが、全部ひっくるめると有効塩素10~80mg/kgの範囲で含んでます。
製造方法も書いてあるので、そこを整理して書いてみます。
強酸性次亜塩素酸水:0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電解して、陽極側から得られる水溶液。pH2.7以下。
弱酸性次亜塩素酸水:適切な濃度の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電解して、陽極側から得られる水溶液又は陽極側から得られる水溶液に陰極側から得られる水溶液を加えたものpH2.7-5.0。
微酸性次亜塩素酸水:適切な濃度の塩酸又は適切な濃度の塩酸に塩化ナトリウム水溶液を加えて適切な濃度に調整した水溶液を無隔膜電解槽内で電解して得られる水溶液。pH5.0-6.5。
大まかに言うと、
強酸性・弱酸性:塩化ナトリウム(要するに食塩)を電解して製造し、
微酸性:塩酸を電解して製造しているってことになります。
シンプルにいうなら、次亜塩素酸水とは
・食塩または塩酸を電解してつくる水溶液
・有効塩素濃度は数十mg/kg
・pHは酸性領域
定義としては三種類ありますが、概ねこのようなものだといえます。
ここまでは、食品添加物の次亜塩素酸水の成分規格のお話です。実際にどのように使われているかとかの情報は、公定書に書かれてませんので、普通ならネットで検索して色々資料を探すところですが…
これがやっかいでして、ネット上から適切な情報源を探し出すのは非常に困難です。
なので、専門書の食品添加物公定書解説書から情報を探すことにしました。解説に品質とか使用法とか毒性とかが書かれており、信頼できる情報源です。
次回は、第8版食品添加物公定書解説書の解説部分に、次亜塩素酸水がどう書かれているかをある程度かみ砕いて説明したいと思います。
…はい、今回の記事はまだ序章です。まずは、次亜塩素酸水の定義の確認をしたというところです。
カビ毒に汚染・・・されてません
7月発売されたとある週刊誌に、こんな見出しの記事がありました。
40代男の体内に!「カビ毒」こんなに住んでいる
その後しばらくして、Web上でも記事があがりました。
ガンにアルツハイマー…あなたも「カビ毒」に汚染されている(SmartFLASH) - Yahoo!ニュース
この記事、カビ毒を知ってる人からするとおかしなことだらけなのですが…
カビ毒って農薬や食品添加物と違って検証されずに放置されそうなので、
私がおかしなところをとりあえずざっくりと書いていきます。
・カビ毒を作るカビは種類が限定される。
例えば元記事で黒麹カビとか書かれているアスペルギウス属。
見出しではこれがアルツハイマーを…などと恐怖を煽ってますが
黒麹カビがすべてカビ毒を持ってるわけでも作るわけでもありません。
というか、相当限定されます。
(カビ毒のアフラトキシンを産生するカビは代表的なのは2種類、
オクラトキシンというカビ毒を作るカビだと4種類くらい)
で、家の水回りとか家庭で生える黒麹カビは、まずカビ毒作りません。
その他の家庭で見られるカビも、カビ毒は作りません。
(ただし、カビを放置しているとカビの胞子によるアレルギーやぜんそくなどの病気になる可能性があるので、カビ毒を作らないからといって放置していていいものではない。しかしそれはカビそのものの問題であって、カビ毒ではない)
・オクラトキシンAの毒性は腎臓特異性。しかも、オクラトキシンが原因で人間が病気になったと確定された事例は存在しません。(関係があると言われていたバルカン腎症ですら、可能性は低いのです。)
で、アルツハイマーとカビ毒の関係って、食品検査の私の知見では…聞いたこと無いです。そんな重大な病気に関連あるなら、論文書くときに引用文献として確実に書きます。
一応元論文らしきものを読んでみたのですが…
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4789584/
本文中ではカビ毒が関係ありそうなことは書いてありますが、引用文献がついてないのですよ。本当に関係があるのなら、少なくとも文献の2つや3つくらいつきそうなものです。
つまり、この論文では筆者の考えが書かれているだけで、根拠はないってことになってしまうのですよね…。
・尿中のカビ毒の検査は怪しい。
食品中の検査ではppbオーダーで検査しますし出来ますが、尿中や血中の検査が同レベルでできるとは思えません。(基本的に生体試料の方が検査は困難)
…というか、雑誌の元記事の図には、こんな注意書きがあるのですよ。
”この検査はFDAの承認を受けていません。”
要するに、アメリカの検査機関といっても正しい検査をしている保証がないのです。
検査機関でよく見る証明書の形式も見当たらないし…。
・土や植物、埃、空調設備に存在…していません。
もし存在していたら、あちこちから検出されてまともな検査出来なくなります。
・ロリジンEとベルカリンAはトリコテセン系ではあるが、カエンタケの毒素、すなわちキノコ毒であって、カビ毒ではない。
エニアチンはフザリウム属が作るとされているが、通常カビ毒に分類しない。
ミコフェノール酸は、普通に検索するとミコフェノール酸 モフェチル(薬の名前)と出てくる。
ミコフェノール酸というカビ毒ってのは…まああるけど現実的に汚染はない。
まあ今回は個別に間違ってるところを指摘するって感じにしました。
カビ毒についてはここ2年ほど、Web上の記事で書かれるケースが増えてきたと感じてますが…
今回取り上げたものに限らず、大体カビ毒に関する記事は誤っていますね。
後日ポイントをわかりやすく書いて…みたいなぁ…
(書いてもわかりやすくなる自信があまりない(^◇^;))
メロンパンは普通に食べよう
本日、こんな記事がありました。
メロンパンは人体に超危険で国が規制!栄養なく危険成分まみれ、糖尿病等や内臓障害の恐れ
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16604.html
・・・ツッコミどころだらけの記事です。
たまにはこういった記事の誤りを指摘することも必要かと思い、書くことにします。
1.アルミニウム
・肝臓や腎臓の障害を引き起こす可能性
→肝臓についての障害についての資料はなかった。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail970.html
・厚労省がアルミニウムの規制対象食品として名指し
→そもそも、規制なんてしていません。
規制対象食品なんてものは存在しません。
厚生労働省 アルミニウムに関する情報
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/aluminium/
膨脹剤、色止め剤などの食品添加物(ミョウバン)にアルミニウムが含まれていて、それを使った対象食品の表があるだけです。
で、膨張剤を使った菓子パンの例としてメロンパンがあげられているだけです。
5%が、暫定許容量を上回っていたってのもウソ。
先にあげた厚生労働省のHPには、5%が許容量を超える可能性があると書いてあるだけです。
なお、厚生労働省はアルミニウムの件について依頼文書を出しており、
硫酸アルミニウムカリウム及び硫酸アルミニウムアンモニウムを含有する膨脹剤の使用量の低減について(依頼)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/dl/130701-02.pdf
メーカーはミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム及び硫酸アルミニウムアンモニウム)を膨張剤に出来るだけ使わない方向で動いています。
(市販の膨張剤・ベーキングパウダーの表示を見ると、最近の製品はミョウバンが入ってない製品が多いです)
食品中のアルミニウムについては、食品情報blogのこちらも参考にどうぞ。
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20140804#p4
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20080716#p12
2.乳化剤と遺伝子組み換え大豆
まず…
・『遺伝子組み換えでない』という表示が義務
→そんな義務はありません。
任意で「遺伝子組換えでない」旨の表示をすることができますが、
義務ではありません。
消費者庁 食品表示
http://www.caa.go.jp/foods/qa/kyoutsuu03_qa.html
・乳化剤には記載の義務がないため、遺伝子組み換え大豆を使いやすいという実情があります
→大豆レシチンに遺伝子残っているの?残ってないです。無いものの話をして何の意味があるのか、というのが1点。
そして、遺伝子組換え食品は実質的同等性が確認されており、食べても何の問題もないのに危険を煽っているというのがもう1点。
この2点で大きく間違っています。
遺伝子組換え食品については、こちらを読んで勉強して頂きたいと思います。
くらしとバイオプラザ21 「メディアの方に知っていただきたいこと」シリーズ
http://www.life-bio.or.jp/about/publi.html
3.栄養バランス
・栄養バランスという面でも、メロンパンは最悪の食べ物
→そりゃ、メロンパンに限らず、他の菓子パンや白米ばっかり食べていたとしたら…
生活習慣病につながる危険がありますね。
普通穀類だけで3食毎日過ごさないでしょう?
…って、なんで管理栄養士のAさん、栄養士ではない私にこんなこと突っ込まれるの…
・砂糖のとりすぎは体内のカルシウムを溶かしてしまうため
→論外。
・・・見ての通り、記事の主要な内容は全否定となりました。
今回取り上げた記事、最大の問題点は…
「厚生労働省や消費者庁に書かれている情報と異なる内容を堂々と書いている」
執筆者が最初から平気でウソを書いているってことです。
相当悪質です。
少なくとも、このジャーナルや執筆者については、食品系の記事は怪しいと疑ってかかる必要があるでしょう。
あと、今回に限ったわけではなく、専門家に管理栄養士が出てくると、
どうも記事の内容が怪しいケースが多く見受けられる気がします。
ネット上で、管理栄養士かつ信頼出来る記事を書くのは、成田崇信さんくらいしか見受けられないです。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/naritatakanobu/
http://d.hatena.ne.jp/doramao/
暫定的に、成田さん以外の管理栄養士が絡んだ記事は疑ってもいいかもです。
農薬検査と栄養成分検査の難しさの違い
女子栄養大学出版部から、「栄養と料理」という雑誌が販売されています。
http://www.eiyo21.com/eiyo/eiyo.shtml
美味しくて栄養的にも気を使った料理の作り方の他に専門家のコラムもあり、なかなか読み応えのある雑誌です。
万人におすすめ出来ます。
その2016年9月号に科学ライターの松永和紀さんががこんな記事を書いてます。
科学記者のつぶやき帖 「栄養成分、残留農薬…食品分析の裏側は?」
この記事はみんなに読んで頂きたいですが、この中で分析会社の方がこんなことを言っています。
「いえ、(残留農薬分析よりも)栄養成分分析の方が、じつはうんとむずかしいんですよ。」
私のブログを見ている方でも、農薬や食品添加物、重金属の分析については何となく難しくて大変だろうってイメージはあるかと思います。
でも、栄養成分分析の方が難しい・・・?
記事では水分測定を例に、(中略)経験が必要と言っています。
分析技術の細かい点は記事に載ってないので、ちょっと分析屋の視点から、これについて説明してみようと思います。
まず、前提として…
分析技術・知識・測定機器については残留農薬分析の方が高度で専門性が高く、分析技術を習得するのは大変です。
(クロマトグラフィー、質量分析計、検出器の特性、測定対象の化学的知識、ppm・ppbオーダーの低濃度を測定、大学では通常深く学ばない分野)
一方、栄養成分の分析は、検査の手技・知識そのものは、そこまで大変なものではありません。
(基本的に化学・食品系の大学で学ぶ内容が多い、基本成分は%オーダーの測定、器具もシンプル)
単に分析手法だけでいうなら、栄養成分の方が早くマスターできます。
では、何が難しいのか?
その1.試験の検証ができるかどうか
残留農薬は、基本的に食品には含まれていない前提で測定し、検査法が妥当かどうかについては添加回収試験
(食品に既知濃度の農薬を加え、ちゃんと加えた濃度が出るかどうかを確かめる試験)などで、検証が出来ます。
栄養成分の場合…
基本的に、測定すれば必ず数値が出ます。
この数値が真実の値なのかどうなのかは、神のみぞ知るところでありまして…
数値を必ず出さなくてはならない、でも試験法が妥当なのかを検証する方法が残留農薬試験と違って検証する術がほとんど無いのです。
特に大変な例として、脂質の分析についてざっと説明します。
まず、試験法自体が5種類掲載されています。
別添 栄養成分等の分析方法等
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150914_tuchi4-betu2.pdf
・エーテル抽出法
・クロロホルム・メタノール混液抽出法
・ゲルベル法
・酸分解法
・レーゼゴットリーブ法
牛乳・乳製品ならゲルベル法やレーゼゴットリーブ法って決まっているのですが、
その他の食品については、代表例こそ書かれていますが、どれがベターなのかは、ある程度経験を積まないと、どの試験法にするのか判断できません。
(まあ、ここまでなら、大変ではあるけれど、難しいとまでは言いません。)
その2.測定対象の違い
そして、残留農薬分析と栄養成分分析の決定的な違い&難しさは、測定対象にあります。
一言で食品の分析といっても…
農薬:野菜、果物など原材料について測定する
栄養:基本的に、加工食品を測定する。
農薬は、測定対象が比較的決まっているので、大体適切な試験法があります。
一方、栄養成分は、穀類・野菜・肉・魚等々色んなものが混ざった状態です。
例として、ショートケーキの脂質を分析するとしましょう。
先に挙げた脂質の分析法、原材料別に戻って最適とされる試験法を並べるとこうなります。
小麦粉、砂糖:酸分解法
卵:クロロホルム・メタノール混液抽出法
牛乳:ゲルベル法
バター、生クリーム(?):レーゼゴットリーブ法
苺:エーテル抽出法
検査するときには、苺くらいなら、1個だけ取って分析できなくもないですが…
他の成分は入り交じった状態です。
分析法を組み合わせることは基本的に出来ません。
さあ、どの手法で分析しますか?
私がやるなら、比較的脂質の分析でオーソドックスなエーテル抽出法か、調理加工食品でよく使われる酸分解法でやるか、
あるいはクロロホルム・メタノール混液抽出法でやるか、この3種類やって平均値出すか…。簡単に答えはでません。
そして、抽出時間とか加熱時間とか他にも分析に関わるファクターはあるわけです。
栄養成分の基本項目である脂質でざっと考えてみても、これだけの要因があり、しかもここまでやっても真値かどうか断言までは出来ないのです。
ついでに他の基本項目でいうなら
・タンパク質:窒素を分析し、タンパク質係数をかけてタンパク質として求めている。
窒素の測定値そのものは信頼出来るのだが、タンパク質以外に窒素を含む成分があると当然数値が高く出るので、それが原材料に使われているかどうか注意を払う必要がある。
(例えばカフェインが含まれていたら、別途カフェインを測定し、カフェイン量を差し引き計算する。野菜が多かったら、硝酸塩を別途測定し、差し引く必要有り)
・水分;記事にあるとおり、自由水と結合水の問題があり、大変です。ついでに、乾燥法の他にカールフィッシャー法という方法もあり、ものによってはこちらの方が適切な場合もあります。
・食塩相当量(ナトリウム)、灰分:これは他の栄養成分とは違って、比較的正確に測定出来ます。
ここまでの内容をまとめると、
栄養成分分析は、考慮することが色々あって、正確な結果を出すには、ある意味残留農薬分析よりも大変である。
で、言うまでもないですが、残留農薬分析はまた別の困難さがあるので…
正直、一概にどっちが大変とは言い切れません。
というわけで、最終結論は、 「食品分析はなんでも難しい」 とさせて頂きますm(_ _)m