チェルノブイリ原発事故,甲状腺とヨウ素

ecochem2006-04-25

2006/04/22に書いたように,明日はチェルノブイリ原発事故から20年になる。
甲状腺がんを防ぐために,多くのこども達に対して甲状腺摘出手術がなされ,医療器具が不足したり医師の技術が未熟だったために,のどに傷が残ってしまったことは映像でもよく知られ,日本から医師が駆けつけて高度な手術法を行なうと同時に技術を伝授したことはよく知られている。
ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間 (ノンフィクション・隣人たちの哲学)

原発事故が起こった際に,ヨウ素剤が配布されるが,これは131I(ヨウ素131)などの放射性ヨウ素が,ヨウ素を含む甲状腺ホルモン(恒温動物の代謝を維持するほか,哺乳類では成長・成熟にも必要)を産生する甲状腺に取り込まれるのを防ぐために,事前に非放射性のヨウ素を摂取してしまうためである。
甲状腺ホルモンには,1分子中にヨウ素を4つ含むチロキシン(T4)と3つ含む3,5,3'-トリヨードチロニン(T3)があり,後者の方が生物活性が高い。上図はチロキシンとその受容体のPDBデータ例(1y0x)である。
甲状腺ホルモンを含めた生体内でのヨウ素の働きについては,2006/04/05で紹介した,

のpp.116-125で詳述されている。
なお,以下のページにもT4,T3を含むPDBデータを追加した。

    ※追記
    「生命元素事典」について,KASOKEN satelliteからトラックバックをいただいた上に,上記Jmolページも見てくれたとのコメント。ユニークな切り口で科学・化学ネタを取り上げてくれるブログとして本当に頼もしい限り。