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日本生態系協会|アメリカの自然生態系を守る制度とダム

2014-09-05

(参考資料)持続可能な水資源管理に向けて〜5〜

4−4 自然環境
自然環境における水必要量は一体どの程度であるのかを判断することは非常に難しい。これは自然生態系の機能というものが現在まで完全には解明されていないことも大きな要因である。このような状況で将来における水政策を考える場合、回復不可能な負荷(例えば種の絶滅や貴重な生物生息域の破壊等)を自然環境に与えることは避けるべきである。今までにも自然環境保全のための様々な対応がなされてきた。例えば、連邦及び州法の原生・景観河川法(Wild and Scenic Rivers acts)では、いくつかの河川における最低必要水量の確保、湿地および絶滅の危機にある野生生物種の保護、回遊魚類の生息環境の復元が求められている。2020年に向けて同州で過去さまざまな形で行われた水資源開発から自然生態系回復するためには、上記のような政策の他、政府と環境NGO等の非政府組織の協力による生態系監視体制づくりなども必要になる。また、土地利用計画水資源管理をリンクさせることも必要である。今までのようにまず施設等をつくってから水源を捜すのではなく、その施設ができた場合どの程度の水が必要になり、それを自然生態系を破壊せずどのように確保できるかを構想・計画段階で検討し明らかにする必要がある。なお、大規模な未開発地域については、その地域を保護し、将来世代のために残していくことも非常に大切である。
1990年の実績を基に水資源局が推測したカリフォルニア州における2020年の水需要量は、483.0億m3とされている。これに対し、本レポートが示している施策が実施された場合の総需要量は、434.9億m3と推定され、供給量の方が需要量を27.1億m3上回る。水の需給バランスは、水利用法の一層の工夫や再利用水の効果的な使用によりさらに安定的に保つことができる(図表−3)。

4−5 経済手法
現在まで水の価格は完全にはその費用(水資源開発に伴う環境破壊等の社会的費用やプラント・設備の資金)を反映していなかった。水の価格構造を変える必要がある。より効果的に水を使用する試みとして、変動価格レート(周期レートseasonal rates、段階別レートtiered-block rates)がある。周期レートは、水の需要量が多い時期に適用され、水供給量増加分の費用の補填及び水使用量抑制に活用される。段階別レートでは、いくつかの価格を水使用量に応じて設定している。需要の価格弾力性についてみると、一般的に夏場の方が冬場より価格弾力性があるといえる。特にこの傾向は、屋外での水使用の方が、屋内での水使用量より顕著に認められる。このようなことからも、今後、より効率的な水利用を促進するための水の価格設定を考えることが重要である。

4−5 法規制
水需要量を抑制するための規制が過去にも様々な形でなされてきた。例えば、1976〜77年にかけての干ばつの影響から、カリフォルニア州では新規建設住居すべてを対象に効率的な水洗トイレ(13.3リットル/回)の設置が義務づけられた。最近では、1992年国家エネルギー政策法によりトイレ、シャワー等による水消費を抑制する規定が設けられた(図表−4)。「1991年ランドスケープの水保全に関する法律(Water Conservation Landscaping Act of 1991)」では、屋外での水使用量を削減するため、芝生サイズの制限、在来種を用いた効率的な散水の促進等を求めている。このような法規制は、本レポートが示す2020年ビジョンの達成に非常に効果的である。

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2014-09-03

(参考資料)持続可能な水資源管理に向けて〜4〜

4 2020ビジョンに向けて
「2 持続可能な水資源管理」で述べたように、我々人間にとって最低限必要な水の量は、一人1日当たり約76リットルである。この量を確保するためには、2020年には13.6億m3の水が必要になる。しかしこの最低基準以上の水を確保するには、どのような配慮が必要になるか、またどの程度改善できるのかを評価する必要がある。
4−1 都市部
新築時あるいは改修時の屋内における水利用効率向上のための備品取付は、長期的にみても非常に有効である。これは、1992年国家エネルギー政策法の水利用効率基準で規定されていることもあり、将来的にも実行性がある。多くの調査報告では、この国家エネルギー政策法の基準により、1980年以前に設置したものを取り替えた場合、水道・シャワー・トイレでの水使用量を62%、1980〜1992年に設置したものに関しては39%減らすことができると評価している。もし2020年までにすべての非効率な水道・シャワー・トイレの設備を取り替えたとしたら、屋内での水使用量は、1990年レベルより10%削減することが可能である。カリフォルニア州の屋内での水使用量を抑制するための備品の交換等の促進において最も障害となるのは、その取付費用ではなく、その効果、備品の入手方法、取付法等を含めた情報が十分に住民に対し提供されていない点にある。
屋外での水使用量の改善については、すでに様々な形での取り組みがなされている。例えば、灌漑効率の改善・芝から在来種への変換・乾燥に強い植物の活用・再利用水の有効利用などがある。これらの取り組みをより積極的に取り入れることにより、屋外での水使用量は比較的簡単に減らすことができる。居住地域の庭での散水効率は50〜80%で、残りの水は蒸発等により未使用のまま失われている。このような屋外での植物への必要量以上の水供給の他、低い水料金設定等による水の大量使用も大きな問題となっている。屋外での効率的な水利用は、水使用量を減らすと同時にそこで使う肥料農薬・燃料・労働力等も同時に削減できる。いずれにしても、一般市民に対し提供する情報量が少ないことが水使用量を削減する上での課題であり、今後は教育ビデオやパンフレットの配布、セミナーの開催、専門家の育成等様々な活動を通し、正確な情報を市民に提供していくことが必要である。

4−2 農業分野
1990年カリフォルニア州における農業活動にともなう地下水の使用量は、16.0億m3に達した。これらの水使用量を削減し、かつ現行農業活動へのインパクトを少なく抑えるには水使用量の多い農作物栽培を削減する必要がある。具体的には水使用量が多く収益の少ない稲作・綿花アルファルファ・牧草等の耕地面積を減らし、水使用の少なくかつ収益性の高いトマト・アーモンド・グレープ等、対象地区の条件にあった農作物へ転換していく必要がある。農業分野における非効率な水使用の大きな原因は、低い水の料金設定にあり、「4.4経済手法」で紹介するような方法についても検討すべきである。
技術的側面では、水を大量に使う灌漑農業のやり方についても見直す必要がある。水の過剰使用は、農地からの化学肥料等の流失を促進し、これが地下水や河川を汚染し、生態系に大きな負荷を与えている。新しい灌漑技術としては、改良スプリンクラー・滴下灌漑システム・水分モニタリング等があげられる。これらの技術を効果的に使うため、灌漑時期・システムデザイン等の管理を徹底させることも重要である。また1982年開拓改善法に基づく節水措置(水資源保全計画)についても積極的に進める必要がある。

4−3 農業以外の産業分野
農業以外の産業分野における水使用量は、各産業での水利用効率を向上させることで、約20%削減することができる。これに加え、産業構造を変化させることでさらに20%水利用効率をあげることができる。1980年から1990年までの間に、これらの対応により同州の産業分野での水使用量は33%削減された。このような対策が促進された場合、今後25年間でさらに40%の削減が可能である。
排水の処理水が現在使用できる工程が多数あるということは、十分認識されているが、どのように利用を促進するかという点で課題が多いといえる。今後、再利用水の活用を促進するには、再利用水の総合評価とその使用用途で要求される水質基準、水処理と運搬コストなどについて十分把握する必要がある。現在実施されている「カリフォルニア中央地域における水資源管理プロジェクト(Central California Regional Water Project)」では、2020年までに年間2.5億m3程度の再利用水の使用が見込まれている。

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2014-09-01

(参考資料)持続可能な水資源管理に向けて〜3〜

1−1 都市部
1990年以降の水管理に対する関心の高まりを受け、水浪費を抑えるための様々な技術開発が進む。住宅地・商用地・公共建造物の水に関連するインフラのうち、特に古い水浪費型のものは、より水損失の少ないものと取り替えられる。新規建造物に関しては新基準を満たす必要に迫られている。(現在、1992年国家エネルギー政策法National Energy Policy Actにより、全ての水道水関連備品の設置には、節水観点から一定の基準が既に設けられている。)また個人レベルでの水消費を抑えるため、庭での水使用の際に再利用水(reclaimed water)を使用したり、水消費量の少ない植物を植えるなどの工夫がされる。再利用水パイプラインは低利息ローンで建設が促進され、一般家庭で利用可能になっていく。この結果、住宅地における一人当たりの水使用量は1990年レベルの54%まで削減され、同州の人口は2020年までに1990年レベルの60%まで増加するが、同州の水消費量は90年レベルより全体で10%以上減少する。図表−1は、1990年2020年ビジョンの個人住宅での水利用方法の変化例を示した絵である。

1−2 農業分野
90年代前半の灌漑による牧草、アルファルファ綿花、稲作は、カリフォルニア州における灌漑耕作面積の40%を占め54%の農業用水を使用していたが、同州の農業収益の17%を満たすにすぎなかった。このような、水を大量に消費する経済的価値の低い農産物から、高付加価値でかつ水使用量の少ない農作物に転換した上で、より効果的な灌漑技術を採用する。農作物としては、特にアーモンド、グレープ、クルミ、オリーブアプリコット、ナシ、アーティチョークといったものの栽培が促進される。これに伴い、90年に40%を占めていた水多消費型農作物による灌漑耕作地の割合は、2020年には26%にまで削減され、農業による水消費量1990年の261.2億m3から2020年には230.4億m3まで削減される。同時に、農業からの収益は、90年レベルより12%増える。

1−3 農業以外の産業分野
2020年までに、水を大量に使用する化学・金属工業(製紙・石油精製等)の割合が減少し、代わって水使用量の少ないコンピュータ・電子機器・自動車産業の他、幅広いサービス産業の割合が増加する。これらの産業において、その工程で使用される水道水の一部は、再利用水で置き換えることが可能となり、上水道の消費が減る。

1−4 自然環境
自然生態系各部分が必要な水資源全てを保全するというより、特定の自然環境の保全(例えば回遊魚のための淡水環境や水鳥の生息する海岸線湿地)が進められている。また、総合水環境管理(Integrated management to protect water for environment)により、2020年までに自然の復元を通し、在来魚を河川に呼び戻す試みがなされいる。堤防改修においても、一部の堤防は意識的に改修せずに残し、河川の流れに以前のような自由度をもたせ、自然生態系の復元が進められている。

1−5 情報公開
地下水を含めた全ての水資源の状況(水質・水量等)を把握する。これらのデータは州政府から独立した水関連機関、州の学術団体、非政府組織を通じ、一般に公開されている。

2 持続可能な水資源管理
人間が健康を維持するための飲料および食品加工等で使用する最低限の水必要量は、一人当たり1日約20リットルといわれている。これに加え、人間は日常生活における衛生・洗浄等により約76リットルの水を消費する。このためカリフォルニア州2020年の人口を4900万人とした場合、年間の水最低必要量は13.6億m3となる。同州の年間平均水利用可能量は、この量の約70倍にあたる。しかし現在、この最低限の水必要量を将来にわたって保証するための制度が存在していない。また、自然生態系にとって必要最低限の水量が一体どの位なのかに関する合意はなされていない。自然環境に必要な水量を考える場合、様々な変動要因(気候・季節等)を考慮し、ある程度の幅をもたせ考える必要がある。同時にどんな生態系をどう維持・復元していくか、それを確認するための指標種を何にするかについても検討する必要がある。
再利用水の利用用途等が拡大していくにつれて、使用用途ごとの水質基準というものを考える必要がでてくる。飲料水として使用する水は、当然汚染物質等を厳重に取り除く必要があるが、それ以外の用途での使用ではそれほど厳しい基準を設ける必要はない。基準の見直しをしないことは、再利用水の使用用途を制限することにもつながる。

3 都市における水利用状況
カリフォルニア州の90%以上の人口は都市部に居住している。州水資源局(Department of Water Resources)の報告によると都市部における水利用量のセクター別割合は、居住地域(57%)、商業(18%)、産業(9%)、政府(6%)となっている。この居住地域における水使用量は、屋内及び屋外での使用の両方を含んでいる。図表−2に1990年の居住地域の水使用の内訳を示す。個人レベルでは、一般的に高所得者一人当たりの水使用量は低所得者より高くなる。
農業以外の産業部門の水利用量は、1979年の11.3億m3から1990年には7.6億m3まで減少した。この要因として、一つには各産業分野において水利用効率が改善されたこと、もう一つには産業構造の変化をあげることができる。このような変化には、新たな水質基準の設定・水処理費用の低下、技術改善等といったことが背景にある。

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2014-08-29

(参考資料)持続可能な水資源管理に向けて〜2〜

2020年カリフォルニア州における持続可能な水資源管理』
California Water 2020: A Sustainable Vision
本レポートの目的は、カリフォルニア州における持続可能な水利用計画をたてるため、2020年の同州における一つの水環境ビジョンを示し、それをどのように達成していけるかについていくつかの角度から提言することにある。本レポートは、2020年水環境ビジョン達成に、個人あるいは各セクターに対し極端な行動・活動の変化を求めてはいない。むしろ現実的な技術改良、政府及び産業界の政策変更、個人レベルでの水環境へ配慮した新しい価値観の創出等によってそれが十分達成できることを証明している。

1 本レポートが描く2020年の水環境ビジョン
2020年におけるカリフォルニア州の総人口は、1990年の3,100万人から4,900万人あまりに膨れ上がると予想される。水供給量は、20世紀後半とほぼ同じで、コロラド川やカラマス川からの流れによる地上の平均水供給(取水)量は、年間862.4億m3と考える。また年間の取水地下水量は、気候条件や他の水供給源の状況にもよるが、86.2億〜147.8億m3程度と考える。1990年代との大きな違いの一つに、地球規模の気候変化等による年間水供給量の変動がある。20世紀同州で地表水量が最も少なかった年は、年間184.8億m3、一方最も多かった年は1,602億m3を越えた。20世紀終わりにかけては、このような両極端な水量変動が頻繁にみられた。2020年までには、このような状況はさらに引き続き起こるほか、シエラネバダの降雪量減少、雪解けによる河川増水時期の変化等が見られるようになる。以下にカリフォルニア州における、持続可能な水環境に向けての分野ごとの2020年ビジョンを示す。

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2014-08-27

(参考資料)持続可能な水資源管理に向けて〜1〜

参考資料

持続可能な水資源管理に向けて

カリフォルニア州では1956年水資源局が政府内に創設され、翌57年からほぼ5年おきに水需給に関する将来予測を行っています。しかし、水資源局の想定水需給状況は需要が供給を上回るものでした。人口の増加を背景に、都市用水の確保、さらに生態系回復のために水を確保する必要もあり、常に水需給状況は逼迫しています。これまで通りの水資源政策と計画策定の方法では、潜在的危機を増大させる一方であり、社会的にも、生態系の面でも近い将来大パニックが起こることが十分予想されています。
こうしたなか、1995年に『2020年カリフォルニア州における持続可能な水資源管理』という一つのレポートが発表されました。これはアメリカ非営利団体の一つ「開発・環境・安全に関する政策研究のための平和機構」(Pacific Institute for studies in development, environment, and security)が作成したものです。
水需給状況が切迫し、社会的大混乱の発生も予測されるカリフォルニア州。これに対する非営利団体の持続可能な水資源管理に向けた現実的緊急提案は、アメリカにおけるダム建設の代替案を考える上で、大いに参考になります。

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