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2012年03月30日

[]ネット連動で示した災害放送の新たな地平「ラジオ福島の300日」

 2011年3月11日14時46分の東日本大震災発生から350時間14分にわたり、CMをカットした連続生放送を行い、地震津波原発事故情報から生活・避難情報まで様々な情報を流し続けたラジオ福島の1年近くに渡る闘いをつづった書籍。55名の社員の大半が名前・年齢付きで登場する。

 震災発生直後のスタジオ現場を描いた第1章は下のYoutube音声を聞きながら読むとものすごい臨場感が伝わってくる。スタジオも激しく揺れる中、ベテランの深野アナウンサーが即座に災害モードに切り替わり、冷静かつ的確に地震への警戒と沿岸部からの避難を呼びかける声はさすがプロだと感動してしまった。(※2分42秒が地震発生の瞬間)

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 ラジオ福島は、震災3カ月前の2010年12月の豪雪による交通マヒを1日近く報道できなかったことを教訓に、震災発生直後からいち早くリスナーからネット経由で情報を収集することを決断。停電で使えなくなった会社のパソコンではなく、スマートフォンGmailアカウントを取得し放送内でアドレスを告知した。さらには試験的に運用していたツイッターでの情報提供を呼びかけた。集まってきた情報は放送内で読み上げるだけなく、災害情報ポータルサイトを立ち上げそちらにも掲載した。ラジオ福島のツイッターアカウント(@radio_rfc_japan)は2012年3月現在でフォロワー数3万と、福島県内の報道機関としては最大。3月11日から24日までの2週間で届いたメールは1万通以上。災害情報ポータルサイトは現在も運用が続いており、毎日7回県内各地の放射能測定値を掲載している。インターネットとラジオを最大限に組み合わせた局として、復興のための挑戦が今も続いている。

[災害ポータル]⇒ラジオ福島 東日本大震災に関する情報サイト

 また、民間企業であるラジオ局が、被災地において営業的に存続していけるかという点についても現実的な視点からスポットを当てている。2011年上半期の営業売上は前年同期比で95.0%と相当踏ん張ったことがわかるが、これは4月5月に入った大口のスポット広告による特需も影響しており、今後どうなっていくかは不透明だ。それでも、この震災で「やはりラジオがあって良かった」「いざというときに頼りになる」と評価する声も多く、下半期も10月から3カ月連続で前年同月比100%を超えたとのこと。地域のメディアは地域によって支えられるものであり、意義が認められたことが数字につながっているのは部外者としても素直に嬉しい。

ラジオ福島の300日

ラジオ福島の300日

 2010年10月に民放連が発表した「震災時のメディアの役割」調査では、「被災地ではラジオの接触率、有用性評価がメディアの中で群を抜いていた」「新聞は震災2〜3日後以降から急速に評価が上昇」といった結果が出ていた。また、震災発生から1週間後ごろまでの間で、平常心を取り戻したり、安心感を得るうえで役に立った手段を聞くと「ラジオ」と「周囲や家族・親戚・友人との口頭での会話」が上位を占めた。他の調査でも災害時のラジオの有効性を示すものが多い。これら調査結果の裏にあるラジオ局関係者の奮闘を知る上で重要な一冊といえよう。

[参考1]⇒【電通】電通報 第4713号

[参考2]⇒大震災時のメディアの役割調査報告 備え、あり方など議論 文化通信 2011/11/07

 興味深かったのはCMカット放送中、お店情報などの生活情報も募集して流していたが、次第に「何をいくらでいくつ売る」という詳細な、露骨な宣伝とも受け取れる情報が目立つようになったとのこと。長すぎる情報を省略したところ提供元から「全部伝えて欲しい」とクレームを入れられたそうだ。こういった相手をリストに残し、CM再開した後に営業に行ったが全く役に立たなかったとのこと。寄せられる情報の扱いの難しさと営業現場のリアルな苦悩が伝わってくるエピソードだ。

 なお、ラジオ福島は福島県を対象とする県域局だが、さらに細かな地域を対象するコミュニティFM局を扱った本としては、「ラジオがつないだ命 FM石巻と東日本大震災」が河北新報出版センターから出ている。紹介文によると、FM石巻では多くのリスナーからSOSメールを受け、放送を通じ個人単位の安否確認を行ったそうだ。こちらもぜひ読んでみたい。

2012年01月12日

[]テレビとネット、対極的な現場「ニュースに騙されるな」

 在京テレビ局の政治部記者、ニュース番組のディレクターをまとめるキャップを経て、インターネットポータルサイトでニュース部門の運営に携わった経験を持つ著者による新書。テレビとインターネットという、今や人々の暮らしにとって欠かせない情報メディアのそれぞれの文化や価値観、ビジネスの捉え方がここまで違うということを描く。さすがテレビ番組ディレクター出身らしく、読者にも現場の情景が目に浮かぶようなドキュメンタリータッチでつづられている。

 前半は政治部記者時代の話。記者同士の「メモ合わせ」のやめられない実態や、「記者会見」と「懇談」の違い、「政府首脳」と「政府筋」はどう違うかと言ったトリビアから、記者クラブへの便宜供与や総理大臣の海外出張に同行する記者への至れり尽くせりのサービスなど、様々なエピソードが盛り込まれる。いわゆる「記者クラブ批判」の材料とするには事欠かない内容だ。

 また、番組ディレクター時代の話としては、「ラーメンは『最大公約数』」という例えで、テレビ局がなぜラーメン特集を頻繁にやるかというくだりが面白かった。1万円のフレンチを食べる人は少なくても、1000円以下のラーメンはほとんどの人が気兼ねなく払える。おまけに取材が楽で複雑な演出も不要。制作費も安く済む。つまりマスを相手にするテレビ的に最も効率が良いといった理由だ。しかし、大勢の人に受け入れられようと思うものばかり作ってきた結果、人々がテレビから離れてしまっているのはまさに皮肉である。

 後半はインターネットのポータルサイトを運営するネット企業に転職してからの話。新聞社やテレビ局からニュースを仕入れる交渉の話や、その際に支払われる「1ページ見られるごとに0.025円」という具体的な金額を挙げ、いかにコンテンツを安く仕入れ、売り上げの半分が利益という高収益体質を維持するかという話が語られる。また、一見自由闊達に見えるネット企業が、実は創業社長に権力が集中し、幹部社員が常に顔色を伺っている実態もある。ヒラ社員の給与や経費を下げ、会社の利益を上げるほど株式市場からは評価され、結果として多くの自社株を持つ経営陣の資産が増えるという現実は「勝者独り占め」の世界そのものだ。

 全般的に、テレビとネットそれぞれの世界の問題点を列挙しているが、唯一肯定的に描かれているのが「ヤフートピックス」。既存メディアを圧倒した理由について、「これまで新聞やテレビが見逃していた、人々のニュースへの本当の需要に応えたからだ」と説明。硬いニュースと軟らかいニュース、みんなが見ているニュースとそれほど注目されていないニュースを組み合わせ、思わせぶりな煽り見出しを使わず、信頼感を高めたことが成功の要因と分析している。特に新聞とテレビの記事の特性について、以下の部分が非常にわかりやすくまとまっていたので以下に引用する。

 新聞記者は記事を書くときに「賞を取りたい」「世間に衝撃を与えたい」と思うことはあっても、読者の需要をそれほど意識していない。定期購読で読んでいる人がほとんどなので、スクープ記事を書いても部数が増えるわけでもない。

 私の知っているベテランの新聞記者は「ニュースは誰の目にもわかる出来事を追いかけるものではない。静かな水面に小さくても波紋が立っていないか、目を凝らして観察するように、記者が探してくるものだ」と口癖のように言う。地に足の着いた取材がしやすい新聞社ならではの見方だろう。

 良くも悪くも、読者が知りたいことを伝えるのではなく、記者が伝えたいことを伝える存在が新聞なのだ。

 一方のテレビは、視聴者の関心に過剰に適応してしまった。テレビの視聴率は分刻みで明らかになる。どのニュースが人気だったか、一目瞭然でわかってしまう。不人気だとわかったニュースは、それ以降は取り上げない。視聴率が取れないニュースは、政策などの難しい話題、硬派な社会問題、海外の民族紛争、派手な演出を施さずに淡々と事実を伝えるニュースだ。どの番組も人気がありそうなニュースばかりを取り上げるので、どれも似たような内容になってしまう。

 ヤフートピックスは新聞とテレビの間にある、単純な数字に表れない本当の需要に応えたのだろう(p.134-135)

ニュースに騙されるな (宝島社新書)

ニュースに騙されるな (宝島社新書)

 さてこの本、それぞれの業界の人が読んだらどんな感想を持つだろうか。既存マスコミの人が読めば「やはりネット企業は信頼できない」「こんな企業が人々に支持され続けるはずがない」と思ってしまうだろうし、ネット業界の人が読めば「だからマスゴミはダメなんだ」「こんな実態があるからテレビ/新聞離れは止まらないんだ」となりそうな気がする。著者は二つの世界を経験したことでニュースの未来について絶望しかけているようで、その不安が残ってしまう読後感だった。

2011年12月11日

[]被災者とともに新聞を作り続ける「河北新報のいちばん長い日」

 10月28日の刊行から日にちが経ってしまったが、ようやく読み終えた。1000年に一度と言われる大災害の中、自らも被災しながら地元の新聞社が、どのような境遇の中新聞を作り、ニュースを発信し続けたのか、その肉声による記録が詰まったドキュメント。河北新報社が記者だけでなく社内全部署および販売店を対象に実施したアンケートを元に、社内の様々な人間を取材してまとめた「記録」となっている。

 12月5日付の文化通信によると、発売から1カ月で4刷3万2千部とノンフィクションとしては好調な売れ行き。また、来年3月にはテレビドラマ化も決まり、テレビ東京が予定している池上彰氏の特集番組内で放送される予定とのこと。新聞業界にとっては震災対応のバイブルとも言える「神戸新聞の100日」が、2010年1月に嵐の櫻井翔主演でドラマ化されたが、地震発生から15年後のことだった。今回の河北新報社は東日本大震災1周年に合わせた特別企画の中で取り上げられるようだ。

 新聞やネットで見る震災関連の記事が、どのようにして生み出されたのか。それは人の目を通して見たものが、言葉によって文章になり、あるいは写真として切り取られ、それらを構成し、媒体に移され、配達・配信する人を経て読者に届く。情報技術がそれらの営みを大きく助けることは間違いないが、根本的に変わることはないんだなということに気づかされた。

 また、5章では1章を割いてロジスティクス(兵站)について書かれている。本社で炊き出しを担当した「おにぎり班」や、欠乏するガソリンを買い集めるための努力、物資調達や炊き出しなど後方支援に徹した山形総局の取り組みなど、取材や新聞編集以外の奮闘ぶりも描かれている。同業他社のみならず、災害地での事業活動を考える意味で幅広い業界に参考になるだろう。

 被災地での取材活動は震災発生直後の凄惨な現場報道から、やがて「避難所からの発信」「被災地に寄り添う」といった、徹底的な地元目線での継続的な取り組みや深く掘り下げた報道へと移っていく。これらの各章と「河北新報特別縮刷版」や「東日本大震災全記録 被災地からの報告」といった実際に紙面化された記事と一緒に読むと、一つ一つの記事の裏側に込められた意図や取材背景などがより重層的に浮かび上がってくる。

河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙

河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙

 ただ一点気になったことは、インターネットについてほとんど言及されず、「電気がないからネットは役立たない」「紙こそ求められている」という、どちらかというとネガティブな捉え方が多かったこと。個人的に河北新報のネット部門は今回の震災において、被災地の内と外を繋ぐのに重要な役割を果たしたと思っているので、むしろ1章くらい割いてもいいんじゃないかと意外に感じた。

 確かに震災直後の被災地や新聞制作現場の肉声は「紙こそ求められている」だったのだろうが、継続的な取材活動や被災地の内と外を繋いでいくためにはネットも有用なはず。災害直後の紙の利便性は言うまでもないが、届けられなかったエリアも少なくはないだろうし、「紙面の都合」で掲載できなかった情報も多かっただろう。河北新報社ネット事業部長の八浪氏が言うように「情報は、必要な人に必要な形で届けるものであって、届ける手段がなければ別の方法を探すまで」なのだから、もう少しネットやラジオといった他メディアとの連携にもスポットライトを当ててほしかったと思う。

 ところでこの本の企画は、文藝春秋ノンフィクション局第二部長の下山進氏が5月ごろ河北に提案されたようだ。下山氏と言えば「勝負の分かれ目」や「アメリカ・ジャーナリズム」など、90年代後半に変貌するメディア業界を取材した本を出版された方だが、部長に昇進されてたことを知った。メディア業界に対する豊かな見識をお持ちだと思うので、次があれば、被災地からのネット情報発信についてもまとめてほしいなあ。

2011年09月26日

[]藤代さんの実体験が詰まったソーシャルメディア活用術「発信力の鍛え方」

 ソーシャルメディアとジャーナリズムについて積極的な発言や活動をしている藤代裕之さん(ブログ「ガ島通信」)の新刊新書。はてなダイアリーの先輩ブロガーであり、同じくはてなでブログを開設している者として興味深く読むことができた。

 一読して、読む人を多少選ぶ本かなという印象を持った。ブログ、ツイッター、フェイスブックなどのソーシャルメディアを、単にリアル友達とのおしゃべり程度にしか使わないユーザーにはそれほど興味を持たれないかもしれない。ただ、ソーシャルメディアの力を実際の仕事や活動に生かしていこうという人であれば、非常に頼りになる本といえるだろう。

 「鍛え方」とタイトルに銘打つだけあって、情報の効率的な収集方法や整理方法といった「収集」に関するものから、発信する情報をどう「より伝わる」形で表現していくか、といったノウハウが詰め込まれてる。また、「トラブルに対処するには」という項目については、おしゃべり程度にしか利用しない人も読んで損はない。ソーシャルメディアに情報を発信する時に注意したい3つのポイントを挙げている。

  • 友達や家族の前で言えないようなことは書かない
  • 公開する前に音読してみる
  • 怒っているときやイライラしているとき、酔っているときはやめる

 さらに一歩進んだ使い方として、ソーシャルメディアを通して知り合った人とリアルにつながっていくためにはどうしたらいいかということも解説している。セミナーや勉強会への参加から、運営を手伝ったり、自分で勉強会を主催するまでのステップは参加者としてではく、運営者としての視点も盛り込まれており具体的でわかりやすい。

発信力の鍛え方 (PHPビジネス新書)

発信力の鍛え方 (PHPビジネス新書)

 読み終えて思ったのは、この本に書いてあることはすべて藤代さんの実体験から会得したことではないかということだ。2004年と早い段階から新聞記者としてブログを始め、その後退職してgooニュースでデスクを務める傍ら大学講師として次世代のジャーナリスト教育に力を注ぐまでには、様々な人との出会いがあったことが記されている。また、東日本大震災時にはいち早くソーシャルメディアを活用したボランティア情報基盤を立ち上げるなど、情報発信をいかに行動に結びつけるかを実践している。

 本書の中に、「ソーシャルメディアでの情報発信は、一人で走り始めた男の周囲をいつしか人が取り巻き、伴走し始めるという『フォレスト・ガンプ』の有名なシーンに似ている」というくだりがある。誰が読んでいるかわからない孤独な作業の中で、それでも伝えたい思いを持ち続けたからこそ、藤代さんは後に続く人たちを大勢の人たちを生み出せたのだろう。

2011年09月16日

[]河北新報、後世に残す記録集「東日本大震災全記録 被災地からの報告」刊行

 河北新報社は8月5日、『東日本大震災全記録 被災地からの報告』を初版5万部で発行した。新聞紙面に掲載した記事や写真、データなどを地域やテーマ別に再編集した。伊集院静氏が巻頭言を寄せている。
 同社が4月8日に観光した写真集『巨大津波が襲った 3・11大震災』はこれまでに10刷45万部と、書籍扱いの震災写真集としては群を抜いた売れ行きになっているが、当初から夏には今後に残る記録集を刊行すると企画を立てていた。

(2011年8月22日付文化通信より)

 通常は3000部から4000部程度という販売地域を限定した地方新聞社の出版物としては、異例の45万部という売れ行きを見せた河北新報社の「巨大津波が襲った 3・11大震災」に続き、震災からの4カ月の記録をまとめた「東日本大震災全記録 被災地からの報告」が8月5日に刊行された。

 前作は「発生から10日間の記録」と銘打たれていたように、スピードを重視し発生から1カ月も経たない4月8日に発売されたが、今作は震災後の被災地の経過を写真で追ったり、震災の被害や影響を地域別・テーマ別に再編集するなど記録集としての役割を重視した構成となっている。立ち読みは以下のリンクから。

河北新報出版センター » ページが見つかりませんでした

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 一読して気づくのは読者など地元の人々から提供された写真の多さ。津波襲来の瞬間を屋上から撮影した写真や住宅に迫る津波、大津波警報を受け避難する人々など、文字通り着の身着のまま逃げる中撮影したようなリアルな写真も多数収録されている。地域に根ざす新聞社だけあって、記者だけでなく地元の声や記録を少しでも集め、後世に残していこうという意識が感じられる。

 同じ地点の震災前、直後、3カ月経過後の写真を見開きで並べ、ガレキが片付いていく様子がよくわかるページからは、失われたものの大きさと復興に向けて立ち上がる人々の意志が強く伝わってくる。

 また、宮城・岩手・福島の3県について、自治体単位で7月時点の被害状況を図表と文章でまとめており、それぞれの地域がどのような被害にあったのか概要をつかむこともできる。それぞれの市町村について新聞記事などからエピソードが掲載され、この大震災がいかに広い範囲に影響をもたらしたかに改めて気づかされる。

東日本大震災全記録―被災地からの報告

東日本大震災全記録―被災地からの報告

 惜しむらくは、販売ルートを河北新報の新聞販売店と大手取次の東北支店に限り、全国ルートに十分乗せていないことか。そのためか東北地方以外の書店ではなかなか入荷がなかったり、アマゾンでもあまり入荷されず、マーケットプレイスでないと入手できない状態が続いていた(bk1楽天ブックスでも購入可能)。震災発生から4カ月という一定期間を総括した本としての意味は大きく、より多くの人に読まれるようになってほしい。

2011年06月26日

[]河北新報、英訳版の震災報道写真集と特別縮刷版を刊行

 日本出版販売はこのほど、上半期(10年12月1日〜11年5月31日)のベストセラーを発表、河北新報社の『報道写真集 巨大津波が襲った 3・11大震災』が総合ランキングで16位に入った。トーハン発表の上半期ベストセラーでも「単行本・ノンフィクション」で6位となっている。
 河北新報出版センターによると、現在9冊43万部を発行。地元の新聞社が出している写真集ということに加え、書店から「記者の目線で撮った写真の評判が良い」との反応が寄せられているという。
 また、6月18日には写真集の英訳版も初版1万部で販売。「英訳版はないのか」という問い合わせがあったほか、海外にも震災の状況を伝えたいとして、英訳版の発行に踏み切った。
 さらに同紙の震災関連紙面を集めた『河北新報特別縮刷版 3・11東日本大震災1カ月の記録」が竹書房から発行された。3月11日から4月11日までの号外、1面、2面、社会面、生活面を中心に震災関連の紙面をそのまま掲載。1カ月のドキュメントと、被災状況をまとめた地図も収録した。(以下略)

 (2011年6月20日付文化通信より)

 1カ月ほど前に震災関連の報道写真集が良く売れているという話題をメモしたが、やはり被災地の地元紙・河北新報の強さは際立っているようだ。

 海外からも注目を集めているためか、6月18日には英訳版を刊行。Amazonのレビューなどでも「英語版なども出版して海外の方々にもぜひ見てほしい」などの声もあった。解説文の英訳は、東北学院大学英文学科の教員・職員・学生のボランティアが河北新報社からの依頼により行ったとのこと。ぜひ海外のAmazonでも取り扱われるようになって欲しい。

【大学リリース】⇒河北新報報道写真集の英訳を本学災害ボランティアステーションが担当|東北学院大学

【購入はこちら】⇒3・11大震災 巨大津波が襲った<英訳版>:河北新報出版センター出版物のご案内

また、6月20日には震災関連紙面の特別縮刷版も刊行した。226ページ、フルカラーで1260円と手ごろな価格である。ただし、朝日や読売の特別縮刷版に比べ収録ページ数はやや少なく、朝日のように索引や目次はついていない。

 先行した読売と朝日の特別縮刷版同様、震災当日の号外から1カ月後の4月11日までの震災関連紙面を収録している。読売同様全ページフルカラーということもあり、写真やイラストで構成された紙面のインパクトが伝わってくる。

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 震災当日、自社工場での印刷ができなかったため、災害時相互協力協定を結んでいた新潟日報で印刷した1面と終面をつないだ紙面。発生から9日目の3月21日に、2人が救助された感動を伝える紙面をはじめ、避難所の様子や復興に向けた動きを詳しく伝える地元紙ならではの視点が存分に伝わってくる。

 

河北新報特別縮刷版 3.11東日本大震災1ヵ月の記録

河北新報特別縮刷版 3.11東日本大震災1ヵ月の記録

 惜しいのは、収録したのは朝刊の震災関連紙面のみで、夕刊がカットされてしまったこと。現在は消去されてしまったようだが、河北新報のウェブサイトには少し前まで震災関連紙面のPDFが掲載されており、そこには夕刊紙面も掲載されていた。仙台など都市部の動きが中心であったが、より地元の人たちの暮らしに密着した情報が掲載されていただけにカットされたのは残念。また、縮刷版を出版物として発売したためか、ウェブサイトから紙面PDFが消去されてしまったのも残念である。

2011年06月22日

[]6月も震災本ラッシュ 岩手日報の写真集、東京新聞特報部の報道記録

 東日本大震災津波で大きな被害を受けた岩手県の地元紙・岩手日報が6月17日、「平成の三陸大津波 東日本大震災 岩手の記録」と題した報道写真集を出版した。A4判148ページで1,050円。売り上げの一部は被災地支援に寄付されるとのこと。

 「平成の大津波」とタイトルにあるとおり、岩手日報の沿岸支局記者が各地で撮影した巨大津波襲来の瞬間に多くのカットが割かれている。また、震災の様子を岩手県内の市町村別に記録している。

 また、震災発生から時間が経過していることから、避難所での生活やさまざまな支援の様子も紹介。天皇、皇后両陛下の被災地訪問や、著名人の避難所への慰問の様子も収録している。

岩手日報社 特別報道写真集 平成の三陸大津波 東日本大震災 岩手の記録

岩手日報社 特別報道写真集 平成の三陸大津波 東日本大震災 岩手の記録

 また、東京新聞(中日新聞東京本社)は「3・11の衝撃 震災・原発 特報部は伝えた」という震災・原発の特集本を6月18日に刊行した。東京新聞の名物コーナーである「こちら特報部」に掲載された記事を中心に、東京新聞の原発・震災に関する2カ月の報道をまとめている。こちらもA4判180ページで1,050円。

 東京新聞の特報部と言えば、反原発の論客である京都大原子炉実験所助教の小出裕章氏や作家の広瀬隆氏、原発技術者の後藤政志氏らをいち早く取り上げたことで、この3カ月ツイッター等を中心にウェブ上で急速に評価を高めた。ほかにも「新日本原発紀行」という洒落たタイトルの連載企画で全国各地の原発と周辺に住む人々を取材したり、「原発天下り村の実態」や「東電、電力不足キャンペーンで“情報操作”」といったような、東京電力や原発行政を厳しく批判する記事を掲載し続けている。

 しかし、東京新聞のウェブサイト上では記事の前文のみしか紹介せず、全文を読みたい場合は有料携帯サイトスマートフォンは不可)に加入するか、紙の新聞を購入してねというスタンスであったため、ネット上では不満や残念がる声も大きかった。今回の出版にはそうした声に応える意味合いもあるのかもしれない。

3.11の衝撃 震災・原発 特報部は伝えた

3.11の衝撃 震災・原発 特報部は伝えた