網戸

     ○網戸より山風入れば海へ抜く
(あみどよりやまかぜいればうみへぬく)
風を入れる
    ○てふてふうらからおもてへひらひら  という山頭火の句を思い出しました。二階の机に座って、首を左に向けば山、右に回せば海が臨めます。風を蝶に置き換えればそんな表現がふさわしいと思いました。
 かって松山にある「一草庵山頭火の旧居を訪ねたことがありました。お寺の下にあった庵はまさしく「蝶々裏から表へひらひら」の一間の家でした。漂白の旅の末、松山に辿り着いて一年あまりでその一草庵にて亡くなっています。心に残った句を幾つか。
     ○ いつでも死ねる草が咲いたり茂ったり
     ○ さてどちらへ行かう風が吹く
     ○ ここで寝るとする草の実のこぼれる
     ○ この道しかない春の雪ふる
     ○ もう明けそうな窓開けて青葉
     ○ こころすなほに御飯がふいた
     ○ けふもいちにち誰も来なかったほうたる
     ○ やっぱり一人がよろしい雑草