『箪笥』を観た(@新宿シネマミラノ)

観てきました。20代のカップルを中心に7割ぐらいの入り。前の回が終わるまでロビーで待ってたんだけど、劇場の係り員が「お待ちの間はお静かに願いまーす」と叫ぶも、誰も聞いてやしないのが歌舞伎町らしいなと思った(笑)。


箪笥 [DVD]

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  • イム・スジョン
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映画の詳細は以前の日記を参照。


監督のキム・ジウンは、前回『memories(THREE/臨死)』でダメダメな心霊描写を見せた人なので、その点については全く期待してなかったんだけど、こっちの方が全然良かったです。もちろん、あいかわらず根本的なとこをわかってないので、心霊ホラーからとっとと手を引いて欲しい気持ちには変わりないんだけど、それだって別に「キム・ジウン憎し!」という気持ちからではないんだよね。この人、映像のセンスはいいの。特に今回は美術も音楽も良かった。でも、相変わらず心霊描写を単なる恐怖アイテムとしかとらえてないから、平気でつじつまの合わないことをしてくる。そこがむかつく(笑)。本作の醍醐味といえば、次第に狂気をエスカレートさせてゆく姉と継母、そしてそれに怯える可哀想な妹、この3人の描写にあるわけで、心霊抜きでも全然成立する話。だからこそ心霊抜きで作り込んで欲しかった。そこが惜しい。


韓国ホラーの描写でちょっと日本は勝てないぞっていうのが2つある。ひとつは容赦ない暴力描写。もうひとつは「興奮しすぎて死ぬんじゃないか?」ってほどのヒステリックで狂信的な怒りの発露。これはねえ、日本の女優さんじゃ無理です。今回も姉役のイム・スジョン、継母役のヨム・ジョンア、共に凄かった。この二人、話が進むほどにどんどん似てくるんだよねえ(笑)。特にヨム・ジョンア! 彼女はとても良くて、目つきは完全に逝っちゃってるし、最初の登場シーンなどは、廊下を歩いてくる足取りからしてこの世のものとは思えない。声色や喋り方も普段の喋り方とは全然違い、人をいらつかせるようにかなり作り込んである。ステキです。


女優さんの演技が上手すぎるので、それらが全部伏線となり、謎は割と早くに察しがついてしまう。ラストは、音楽が明るいので、もっと妹の悲愴さを煽ってくれても良かったかなと。関係ないが、お父さん役の人は大杉蓮に似てますね(笑)。


思うんだけど、韓国はストーカーやサイコパスものには興味がないのだろうか。『座敷女』や『洗礼』みたいに、女性の狂信的な執着や狂気を全面に押し出した作品の方が絶対向いてると思うので、一度誰かお願いします



「くりいむレモン」特典DVD入手!

テアトル新宿に寄ったら、前売り特典のDVDが出来上がってました。DVDは予告編、対談、メイキングの3部構成。村石千春メインの作りになってるので水橋研二ファンはちょっと肩すかしかもしれないけど、山下敦弘監督と千春ちゃんの対談は思ったより長くて、途中、山本浩司も参加するなど、裏話満載のおもしろトークに仕上がっておりました。千春ちゃんはちょっと加護ちゃん系だね。

江戸川乱歩の20世紀展&旧乱歩邸・土蔵を見に行く

土日は混んでいるかなと思い、月曜日休みとって見てきました。今日に限って気温がぐぐっと下がりホッと一安心。


企画の詳細は以前の日記↓を参照。


池袋駅につくと、まずは「江戸川乱歩の20世紀展」を見に東武百貨店池袋店へ。平日といえど、やっぱ夏休み。それなりに混んでました。客層は男女半々で、20代から上はどこまでも。一番はしゃいでたのは30〜40代ぐらいの女性たちかな。もっとちゃちいものを想像してたけど、ざっと見るだけでも1時間ぐらいかかるほどの充実ぶりで、年表や展示物をじっくり隅々まで見るには2時間ぐらい必要とみた。展示内容に関しては公式ページを参照してもらうとして、面白かったのは当時の犯罪記事。執筆当時、乱歩の小説を地でゆく犯罪が起こったということで、乱歩自らスクラップした新聞記事が展示されていたのだが、記事を書いた記者の「グロ」という言葉の定義が微妙。「『屋根裏の散歩者』を地でゆくグロ犯行」と書いてるのに、なんてことはない、他人様の家の屋根裏に勝手に住み着き、夜な夜な台所にお邪魔しては飢えをしのいでた男が捕まった、というだけの話。その後も「このグロ犯人は…」などと表記してるのだが、何を指して「グロ」と言っているのか皆目検討がつかない。おまえは「グロ」って言いたいだけちゃうんか!と問いたかった。また、児童から送られた年賀状も面白かった。子供だけあって欲望と稚拙さのあいまった文面に心なごむ。「江戸川先生がんばって!」「これからもハリキッテますます面白くしていってください」と子供に励まされる巨匠・乱歩(笑)。「あけましておめでとうございます。妖人ゴングの正体は怪人四十面相ですか?教えてください(ひみつに)」なんて書いてきてる子もいました。イラストを描いてる子も多かったし、いつの時代も子供は同じか。


そして次はいよいよメインの土蔵見学! 池袋駅から歩くこと10分。立教大の向かい側の敷地の門をくぐり、チケットを見せ奥まで進むと、旧乱歩邸の手前には既に50人ぐらいが列を作って並んでた。20人づつ邸内に入れるようになってて、待つこと15分。ようやく順番が回ってきた。まずは庭先に入り手前にある旧乱歩邸の応接間を覗く。中には乱歩が撮った家族旅行の8mmフィルムが上映されていた。もっとごちゃごちゃ物が置いてあるかと思ったが、割と簡素。そしていよいよ土蔵へ! 事前に中には入れないと聞いていたので戸口からガラス1枚挟んで中を覗くだけでもそれなりに楽しめた。外観は修復直後ということで味もへったくれもなかったけど、土蔵の中はイメージ通りでしばし妄想に耽る。そりゃあ、二階に昇れたらもっとよかったけどさ。土蔵は修復時に白壁を本来の色である鼠色に塗り替えたらしい。色を出すのに白の漆喰に墨を混ぜ鼠色を作り出したとあって、近くで見ると硯のような質感・光沢だった(手触りも)。ひとつ嬉しいことが! 東京を散歩してると、割と土蔵って残っているんだけど、いつも見ていて疑問に思っていたことが今回ひとつ解消した。土蔵の壁には等間隔で引掻き棒みたいなのが突き出してることが多い(こちらの写真を参照)。しかもかなり上の方まで。ただのデザインにしてはおかしいし、何につかうんだろうといつも不思議だったんだけど、係りの人によれば、何かの時に道具を引っ掛けられるようにと取り付けてあるんだそうだ。大抵は作業用具を掛けて置くことが多いんだけど、海辺なんかじゃ小船を引っ掛けることもあるらしい。スッキリしました。


土蔵を出た後は、土蔵修復に関するビデオを見るため、近くの講堂へ。17分ぐらいのビデオだったが、土蔵に関する部分は「江戸川乱歩の20世紀展」でも上映されていたのと同じだった。隣の講堂にも人がわらわらと入っていくので行ってみたら、なんと土蔵待ちの人だった。どうやらものの30分ぐらいの間にものすごい人数の人が押しかけてきてたらしく、急遽、先にビデオを見せることになったらしい。1時間待ちの人もいたということなので、少し来るのが遅ければ危うく待ちぼうけ組になるところだった(汗)。



乱歩は自分が日本の古い町並み好き、建物好きになるきっかけとなった人だったので、少しだけとはいえ土蔵を見れたことは、これからへ向けての一区切りというか、貴重な体験となりました。